【声明】全てのBWR原発の運転を即刻停止せよ/福島老朽原発を考える会
声 明(転載歓迎)
東電の臨界事故隠ぺい糾弾
制御棒引き抜け事故は、BWR原発に固有な構造的欠陥を示す
臨界事故を繰り返す日本は「世界で一番危険な原子力立国」
全てのBWR原発の運転を即刻停止せよ
2007年3月23日 福島老朽原発を考える会
志賀原発1号機に続き、浜岡原発3号機、女川原発1号機、福島第二原発3号機、柏崎刈羽原発1号機と、BWR(沸騰水型原子炉)の制御棒引き抜け事故が次々と明るみに出てきた。22日には、福島第一原発3号機で1978年に5本の制御棒が抜け落ち、7時間30分もの長時間にわたって臨界が継続していた事故が発覚した。東電は約30年間も隠ぺいを続けていた。原発の運転開始直後から重大事故を隠ぺいしていた。さらに、翌年の79年には福島第一原発5号機で、80年には同2号機で、定期検査中に制御棒1本が抜ける事故が起きていた。毎年制御棒引き抜けが起きていたことになる。電力各社は、これら全てを隠ぺいし続けてきた。北陸電力の取締役が隠ぺい工作に関与していた事実も明らかになった。まだまだ重大な事故などが隠ぺいされているに違いない。もはや電力各社に原発を運転する資格はない。そして国はこれらを長年見逃してきた。監督責任と、このようなウソにまみれた原子力発電を国策として推進してきた責任を明らかにしなければならない。 甘利経産大臣は、3月23日「より一層の安全性の確立に向けた過去の改ざん等の総洗い出しについて」 を発表した。その中で、「徹底的な“洗い出し”の最中」、「悪循環を断ち切る」、「不正の清算」を通じて「電力会社の体質を改善させる」としている。そして「世界で一番安全安心な原子力立国を構築してまいります」とまで述べている。そこには、過去の大事故やその隠ぺいについてなんら罰則を伴う厳しい措置をとる姿勢がない。志賀原発1号機の臨界事故隠し発覚直後には、「極めて悪質」として法的裏付けのない停止措置をとったが、たび重なる事故の発覚を前に、7時間半にも及ぶ福島第一原発3号機の「一層極めて悪質」な事故と事故隠しに対しては、運転停止の措置すら取ろうとしていない。そもそも安全軽視と隠ぺい、データねつ造等の電力会社の体質は、国の甘い安全規制、電力と国の癒着等によって長年にわたって醸成されてきたのではないのか。これらに対するひとかけらの反省もない。原子炉で臨界事故を頻発させている国がどこにあるというのだ。日本は現在既に「世界で一番危険な原子力立国」である。
現在明らかになっているだけでも、制御棒引き抜け事故は8件にも及ぶ。国は、これらを「操作ミス」「人為ミス」でかたづけようとしている。しかし、頻発する制御棒引き抜けと臨界事故の発生が示しているのは、BWR原発に特有な制御棒駆動装置の構造的欠陥である。
BWRでは、制御棒を重力に逆らって炉心底部から上方向に挿入することを余儀なくされ、その危険性が以前から指摘されていた。これに対して電力会社や国は「安全装置がついているから大丈夫」「故障しても安全側(挿入される側)に働くから問題ない」「制御棒は1本ずつしか動かせない仕組みになっているので、事故解析は制御棒1本の落下を想定すれば足りる」などと説明してきた。しかしこれが全くのうそだった。BWRの制御棒は挿入側の水圧と引抜き側の水圧の微妙なバランスで保たれており、それが定期検査時に水圧制御ユニットから隔離されると、スクラム(緊急自動停止)ができなくなる。引き抜き側の水圧が大きくなると、その水圧で安全装置がはずれ、複数の制御棒が同時に引き抜かれることが起こりうる。すなわち、止めた車のブレーキをはずし、僅かな力で動き出すような状況に置かれていたのである。これは操作手順の問題ではなく、構造的欠陥である。
制御棒が複数本抜け落ちる事故は、国の安全評価審査指針でも想定されていない。設計基準事故として想定されているのは、制御棒1本が抜け落ちる制御棒落下事故である。国の安全審査の想定がまったく不十分であったことをも示している。
東電の問題は、1978年11月2日の臨界事故だけにとどまらない。1980年前後に東電の福島第一原発1・2号機では、プルトニウム等のアルファ核種によるすさまじい汚染があったことが明らかになっている(「松葉作戦」)。2002年に美浜の会への内部告発により明らかになった事実であるが、その後の追及の中で東電が公表したグラフでもすさまじい汚染が見て取れる。この当時福島原発で働いていた人は労災認定を勝ち取り、現在、東電の被曝責任を明らかにするよう裁判で闘っている。東電や各電力会社は、原子炉容器や格納容器の蓋があいたままで臨界事故を引き起こしているが、「被曝はなかった」と何の証拠もなしに無責任に語っている。当時の被曝線量は、全国の原発の中で福島第一原発が群を抜いている。この異常な汚染の原因と被曝隠しについても東電は真相を明らかにしなければならない。国は「マスクさえしていれば大丈夫」として、過去の汚染について法令違反を認めることなく東電を守り続けてきた。国もその責任を明らかにしなければならない。
私たちは、構造的欠陥が明らかになったBWRの運転を全面的に停止することを強く要求する。志賀原発1号機と同様に、即刻、全てのBWR原発に運転停止指示を出すよう要求する。制御棒引き抜けと臨界事故に関する全ての資料を公表するよう要求する。
福島第一3号機(東電) 1978.11.02 5本引抜 臨界事故
福島第一5号機(東電) 1979.02.12 1本引抜
福島第一2号機(東電) 1980.09.10 1本引抜
女川1号機(東北電力) 1988.07.09 2本引抜
浜岡3号機(中部電力) 1991.05.31 3本引抜
福島第二3号機(東電) 1993.06.15 2本引抜
志賀1号機(北陸電力) 1999.06.18 3本引抜 臨界事故
柏崎刈羽1号機(東電) 2000.04.07 2本引抜
(参照)東電が公表した福島第一原発1・2号機の放射能放出濃度(美浜の会hpより) http://www.jca.apc.org/mihama/tepco_dt/fig_haikito.gif
http://www.jca.apc.org/mihama/tepco_dt/fukushima11_6th_review.htm
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