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2007年4月23日 (月)

福島第一3号機臨界事故問題で東電本社交渉

19日に東電本社交渉が行われました。6時間に及ぶ長丁場の交渉でした。主に福島第一3号機の臨界事故について、詳しいやりとりがありました。この件で保安院がおとがめなしで幕引きを図ろうとしていることは腹立たしい限りですが、実際には問題が山積みであることが交渉でも明らかになっています。主なものをご紹介します。

■臨界事故の評価とデータの扱いについて

臨界事故がどの程度のものであったかという評価の信頼性は、元データにかかっています。交渉では元東芝の社員が持っていたとされる手書きのデータがほぼ唯一の手がかりであり、信頼性に乏しいことが明らかになりました。

それだけではなく、問題の東芝の社員のデータはおろか、引継日誌など東電が持っていたデータについても、東電は一切公表せず、今後も公表のつもりはないと言い張り、国へもみせていないことを明らかにしました。隠ぺいの体質は全く変わっていません。

東電は、東電が依頼した弁護士が見たから客観性、信頼性は確保されているというまったく身勝手で独りよがりの主張を繰り返していました。

Q 中性子数(SRM)の推移や制御棒の引き抜け状態は何によって確認したのか。
A メーカーから提供された資料と聞き取り結果から認定。手書きだったよう。メモ。数値は報告書に書いてある。チャートはなかった。東芝さんものなので公表できない。
Q 元データを公開して欲しい。
A 東芝さんのものなので公表できない。
Q 運転日誌、引継日誌、原子炉圧力・水位・水温度記録計データや使用前検査成績書など東電の資料も全く公開されていない。
A 社外弁護士が検討して事実認定をして報告書を出している。
Q データが全く添付されておらず信頼性がない。
A 信頼している。

■リターンラインの撤去について

保安院は臨界事故と制御棒引き抜けを構造的な欠陥ではなく、操作手順の問題に矮小化し、リターンラインを開ける手順にさえしておけば問題ないとしています。東電も同様です。しかし、東電では、配管のひび割れをおそれて肝心のリターンラインを撤去していたことが明らかになっています。詳細を聞くと、配管は短管がはずされており、リターンラインを使うために、わざわざはずした配管をつなぎ直さなければならないということです。しかも、ひび割れとの関係で原子炉が高温のときはつなげても使えないはずです。ひび割れをおそれて使わないラインに臨界防止を託すというおかしなことになっているのです。

Q 制御棒駆動水戻しライン(リターンライン)は第1回定期検査で撤去したとのことだがどこを撤去したのか。その状態でリターン運転をどのように行うのか。
A リターンラインのフランジとフランジの間の短管をはずして閉止フランジを取り付けた。前後の弁を閉じた。定期検査中は,閉止フランジをはずして短管をとりつけて全部の弁を開いて通水するようにしていたと思われる。短管は人が扱えるくらいの大きさ。現状もまま。
Q 撤去している号機は。
A 福島第一1~5号機まで。撤去するかあるいは閉止板を入れている。運転中は17機全てでリターンラインを使わないノンリターン運転を行っている。

■保安規定上の問題

保安規定との関係では、東電はただただ引っかからないようにという考察しかしていません。そのためにいかにねじまげて条項を理解しているのかという説明が続きました。保安規定が本来もつ安全確保の意義については全く念頭にないようです。

Q 保安規定に抵触しているのではないか。
A 保安規定について。当時の保安規定について抵触の可能性について検討している。結果として問題はなかったと考えている。29条の原子炉停止余裕について。停止余裕の確保について,保安規定は低温で未臨界に保持することができるようにこれを維持するという要求がある。当直長はその確認ができない場合は原子炉を停止するという要求がある。抜けた制御棒を全数挿入する操作をしており問題はなかった。
A 27条と28条の制御棒の操作手順。現在の保安規定は運転または起動においてと要求ある。当時の保安規定に記載はないものの当時も同様な考え方であったと想定している。停止時における制御棒操作は本条項に抵触するものではないと考える。
Q 当時の保安規定には運転中という条件はないのでは。
A そう。当時は明確な定義はなかった。考え方としては当時も同様なもの。
A 40条と45条に異常時の措置というのがある。当時,臨界を報告すべき異常とするという明確な考え方がなかった。本条文に抵触するものではない。
Q 異常時というのはスクラムが必要な事態ではないのか。
A 明確な考え方なかった。スクラムという手段で挿入したということ。
Q 影響が軽微なものは除くとある。臨界は軽微なのか。
A …
Q 運転日誌,引継日誌の改ざんは当時の保安規定16条に違反しているのではないか。
A 運転日誌のSRM熱出力および制御棒の位置については,社内の記録の改ざんにあたる。16条の当直長の運転日誌,引継日誌を引き渡して運転状況を申し送るについて,これに対して抵触していた可能性は否定できないが,プラント停止中の運転状況ということで当時明確な要求がなかったことから,直ちに保安規定に触れるものではない。

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