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2007年5月26日 (土)

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■臨界事故・不正処分で保安院と市民が交渉
保安院交渉報告
保安院に提出した要望書と質問事項

質問事項回答付(美浜の会)

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2007年5月25日 (金)

臨界事故と不正処分をめぐり保安院と市民が交渉

Hoanin20070523 20070523p1000181 臨界事故と不正問題処分をめぐる市民と保安院との交渉が5月23日に行われました。市民側は,石川,福島,新潟,宮城,静岡,大阪,首都圏の各地から15名,保安院側は検査課2名,防災課1名,企画調整課1名の合計4名でした。経済産業省別館の会議室で予定を15分ほどオーバーして1時間45分のやりとりでした。

はじめに石川の方から,処分を見直し,設置許可の取消や運転停止の厳しい措置をとるよう求める市民30団体による要望書を提出,その後,事前に提出した質問書にしたがって回答と議論を行いました。 総じて明らかになったのは,保安院が臨界事故及び制御棒引き抜けについて,事の重大性についての認識が全く無く,調査もろくにせずにただただ電力の報告を鵜呑みにし,罰なしの処分で早急に事を収めようとする姿勢でした。

報告:福島老朽原発を考える会 S

■保安規定違反に運転停止処分を下さない理由はしどろもどろ

 保安院は,一連の不正について保安規定違反を認めながらも,原子炉等規制法33条の設置許可の取消処分や運転停止処分を下していません。なぜかと聞くと,現時点の原子炉の安全性を損なうものではない,33条2項の趣旨や総点検のねらいから適当ではない,との回答でした。しかし法律のどこを見ても現時点の安全性が確認できれば運転停止処分を下さないとは書いてありません。それに「総点検のねらいから」というのはどういう意味でしょうか。正直に言ったのだから許してあげようとでもいうのでしょうか。それこそ,違反を罰して再発を防ごうとする33条の趣旨に反するのではないでしょうか。

 それに,今回の措置は,2002年の原発不祥事の時に,1年間の運転停止処分を下した福島第一1号機の格納容器検査偽装に対する措置とあまりに異なります。このときは,その当時の原子炉の安全確認とは無関係に運転停止処分を下していました。この点を指摘すると保安院は,いやこの時は原子炉の安全性は確認されていなかったんだと反論,しかし,当時の文書から,処分が不正の重大さに鑑みて出されたものであり,当時の安全確認がなされたこととの関係が何も書かれていないこと,事の経緯からして,安全確認よりも処分を優先したことは明らかであることを指摘すると,「当時の文書には『安全性確認との関係』は書かれていないが」と認めた上で、それでも「安全性確認」を強調していました。

 さらに,その論理でいけば,同様の格納容器検査偽装が今回明らかになった敦賀2号機について,現在の安全確認がなされていることになるが,それはいつやったのかと聞くと,特別な保安検査でと。ではそれはいつかと聞くと、検査課の高橋氏は手帳をくりながら「2月19日です」と答えました。ところが敦賀2号機の検査偽装が発覚したのは3月30日です。特別な保安検査は6月に行われる予定です。ありえない回答です。結局,「現在の安全性」を確認していないことを自ら語ったわけです。保安院が主張する「現在の安全性が確保されているから停止命令は出さない」が,いかにデタラメであるかがはっきりしました。

■リターンライン撤去については問題を承知していない

 リターンラインさえ開く手順にしておけば引き抜けは起こらないと繰り返す保安院ですが,そのリターンラインが古い炉では,撤去されている問題があります。圧力容器に直結したリターンラインのノズル部でひび割れが多発したためで,東電によると福島第一1~5号機などでは,制御棒隔離の際,リターンラインを使うときには撤去した配管をわざわざつなぎ直して使っているとのことです。これについて,保安院が状況を把握しているのか,引き抜けが頻発していることとの関係はどうかと聞きました。

 保安院は,把握はしていると言いながら,具体的にどの炉で撤去されているのかについて「島根1号とか敦賀1号とかいうのがある」というだけできちんと名前を挙げることができず,古い炉で,リターンラインが原子炉圧力容器に直結していることすら知らないというありさまでした。

■事故調査は電力の報告書を読んだだけ

 福島第一3号機の臨界事故について,手がかりとされる元東芝社員が持っていた手書きのメモについて保安院でも検討したのかと聞きました。回答は正式にはその手の資料は請求していない(非公式には見た)というものでした。では何を検討したのか。はじめはこんなに分厚い資料をと手の平を広げて見せたのですが,よくよく聞くとそれは不正全体についてで,福島第一3号機については10ページほどだと。結局東電が公表している報告書のレベルでした。こんなに早く事故調査が終わりこんなに早く処分がでたカラクリはここにありました。電力の報告書を読んで終わりにしていたのです。それにしても,保安院の事故そのものに対する関心のなさには驚くばかりです。臨界事故の実態を把握しよう,明らかにしようという姿勢が全くないのです。

■制御棒引き抜けについての報告要請は「口頭」

 保安院は,4月20日付調査報告書で,「BWRをもつ電力会社に制御棒の引き抜けについて報告するよう要請した」としていますが,日付も文書も明らかにされていません。そこで,これを明らかにするよう求めたのですが,回答は,「3月15日に口頭で行った」というものでした。制御棒引き抜けによる臨界事故をいかに軽く見ているかを示しているのではないでしょうか。本当に指示が出ていたのかも怪しいものです。(甘利が「私が指示をして不正を調べさせた」と豪語している昨年11月30日の不正調査指示も実際には保安院院長名で出たもので,甘利が…というのは後で作ったのではないかという疑義もあります)

■志賀の燃料棒調査は地震により中断

 志賀の臨界事故について北陸電力の調査報告書に,当時の燃料の外観検査の写真は9体中3体しかありません。それはなぜかと聞いたら「地震により中断していると」の回答でした。そんなことは報告書のどこにも書いてありません。にもかかわらず、「燃料の健全性は確保されている」と結論づけてしまっているのです。

■設備上の対応についてはマイナスの効果を懸念

 保安院は調査報告書で,手順さえ守れば制御棒引き抜けは起きないといいながら,一方で設備的な対応について期待されるとしており,構造上の問題を認めています。この辺について聞くと保安院は,東電などが行おうとしている設備上の対応(自動的に減圧して引き抜けを防ぐような改造)について「マイナスの効果がある可能性があり,やるべしとまで言えない」と批判的に述べていました。

■最後に

 保安院が生き生きと回答していた質問があります。保安院が課題として挙げている「検査制度見直しの加速」が電力会社まかせであり危険ではないかという質問です。保安院は,平成20年度に導入をめざすとしている新しい検査制度について,喜々として語っていました。今回の事件で保安院サイドがねらっている「焼け太り」がここにあるのではないでしょうか。参加者はこのあたりについて監視の目を強めていこうと話しました。

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保安院に提出した要望書と質問事項

5月23日に行われた市民と保安院との交渉において以下の要望書を提出しました。添付の質問事項は事前に提出し、当日議論しました。

質問事項回答付きは以下(美浜の会)
http://www.jca.apc.org/mihama/accident/hoanin_qa070420.htm

****************************
原子力安全・保安院院長
広瀬 研吉様

2007年5月23日

要 望 書

臨界事故隠しや検査妨害をはじめとした電力会社の不正問題について、貴職は保安規定違反を認めながら罰を与えない処分を下しました。これは電力会社を免罪するだけでなく、甘い規制で事故を引き起こした貴院自身をも免罪するものです。福島第一原発1号機に対して1年間の運転停止処分を下した2002年の原子力不祥事への対応と比べても、余りにも甘い措置であり、とうてい受け入れられるものではありません。また、度重なる臨界事故や制御棒引き抜け、誤挿入により制御棒駆動機構の構造的欠陥が明らかになった沸騰水型原子炉(BWR)については、現在の安全性が保証されない以上、直ちに停止措置をとるべきです。この件につき、以下の措置をとるよう要望いたします。また、添付した質問事項に対して納得のいく回答を行うようお願いします。

1.不正問題に対する処分を見直し、臨界事故隠しや検査妨害など、保安規定違反が認められた原子炉について、原子炉等規制法第33条を適用し、原子炉設置許可の取り消しや長期の運転停止を含めた厳しい措置をとること。

2.構造的欠陥が明らかになった制御棒駆動機構を持つ沸騰水型原子炉(BWR)に対して停止指示を出すこと。

志賀原発差止め訴訟原告団(石川県)命のネットワーク(石川県)原発震災を案じる石川県民(石川県)北陸電力と共に脱原発をすすめる株主の会(富山・石川県)脱原発福島ネットワーク(福島県)双葉地方原発反対同盟(福島県)みどりと反プルサーマル新潟県連絡会(新潟県)柏崎原発反対地元三団体(新潟県)プルサーマルを考える柏崎刈羽市民ネットワーク(新潟県)島根原発増設反対運動(島根県)浜岡原発に反対する静岡ネットワーク(静岡県)原子力発電に反対する石巻市民の会(宮城県)グリーン・アクション(京都府)美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(大阪府)核のごみキャンペーン・中部(愛知県)プルトニウム・アクション・ヒロシマ(広島県)からつ環境ネットワーク(佐賀県)R-DANネットワークさがんもん(佐賀県)唐津の海を守ろう市民の会(佐賀県)花とハーブの里(青森県)東京電力と共に脱原発をめざす会(埼玉県)チェルノブイリ子供基金(埼玉県)ストップ・ザ・もんじゅ東京(東京都)原発・核燃とめようかい(東京都)ふぇみん婦人民主クラブ(東京都)脱原発・東電株主運動(東京都)たんぽぽ舎(東京都)原子力資料情報室(東京都)原発を考える品川の女たち(東京都)福島老朽原発を考える会(東京都)

<連絡先>〒162-0825 東京都新宿区神楽坂2-19銀嶺会館405号AIR気付 TEL03-5225-7213 FAX03-5225-7214 福島老朽原発を考える会/ストップ・ザ・もんじゅ東京

保安院4月20日付「調査報告書」及び「総点検評価書」に関する質問事項

1.臨界事故発覚の経緯について

(1)保安院の4月20日付「調査報告書」では、3月15日に志賀1号機の臨界事故の報告を受けたとなっている。また「沸騰水型軽水炉(BWR)を有する全ての電力会社に対し、過去に起こった制御棒の引き抜け事象について報告するよう要請した」(同3頁)と書かれている。この要請を行ったのはいつか。また,その要請を行った保安院文書(NISA文書)を示されたい。

(2)福島第一3号機の臨界事故について、福島県には3月19日の段階で「第一でもすでに50年代に同様の自然に制御棒が引き抜けることは経験済み」という内部告発が寄せられていた。保安院がこれを確認したのはいつか。この内部告発によって事故がようやく明るみに出てきたというのが真相ではないか。

2.臨界事故の実態と原因把握について

(1)志賀1号機の臨界事故について、北陸電力は「事故当時の平均出力領域モニタのデータは計測器が点検中だったため存在しない」としているが、保安院はこのことを確認したのか。また、北陸電力の言っていることが事実であれば、制御棒の検査中にこの計測器を点検すること自体問題ではないか。

(2)志賀1号機の臨界事故の燃料への影響について、北陸電力の事故報告書には燃焼度の低い燃料集合体の一部の外観検査結果しか公表されていない。この検査では、全てを観察したといえないのではないか。また、シッピング検査は行ったのか。

(3)福島第一3号機の臨界事故について、東京電力は「予期せぬ臨界」(東京電力3月30日付報告書原117頁)としているが、保安院も同じ認識か。

(4)福島第一3号機の臨界事故について、東京電力は制御棒引き抜けの「原因は特定されていない」(東京電力3月30日付報告書原119頁)としているが、保安院も同じ認識か。

(5)東芝の元社員が持っていたとされる手書きのデータは保安院でも検討したのか。そこには「SRMが7時間半も振り切れていたことを示すグラフが描かれていた」とのことだが、東京電力が評価に使ったのは、SRMが振り切れる最大値であって、実際にはそれ以上であった可能性があるのではないか。福島第一3号機の臨界事故の実態は把握されたといえるのか。

(6)福島第一3号機の事案について保安院は「5本の制御棒引き抜け事象」「制御棒引き抜けに伴う原子炉臨界」と称している。志賀1号機を臨界事故としているのにこれを「事故」としないのはなぜか。(7)東京電力は、東芝の元社員が持っていたとされるデータはおろか、引継日誌や運転日誌など、東京電力の社内データについても一切公表せず、自らが依頼した弁護士が見たというだけで客観性は確保されているなどと主張している。これらの資料を全て公開させるべきではないか。

3.制御棒引き抜け防止対策について

(1)保安院は、HCU隔離作業時に、リターン運転とするか、制御棒駆動水ポンプを止めるか、制御棒駆動系駆動水量をゼロにすることが必要としている(保安院「調査報告書」21頁)。隔離について3つのいずれかを実施すれば、制御棒引き抜けは絶対に起きないということか。

(2)同じ報告書21頁に、「複数本の制御棒が想定外引き抜け状態になったことについては…1本ずつ状況を確認しながら操作することにより回避できることから、設備上の問題があるとはいえない」とあるが、結局操作に頼っているのではないか。度重なる制御棒引き抜け、誤挿入事案は、手順の整備や管理の徹底だけでは防止できないことを示しているのではないか。

(3)隔離操作によって101弁を閉めることにより、スクラムができなくなってしまうのは、構造上問題があるのではないか。

(4)同じ報告書に「制御棒駆動水圧系の設備的な対応の可能性についても視野に入れて、事業者において対策の検討がなされることが期待される。」とあるのは、設備上の問題を認めているのではないか。設備上、構造上の問題についての検討を優先すべきではないか。

(5)東京電力によると、福島第一1~5号機のリターンラインについて、ノズル部のひび割れが多発したために、配管の一部撤去が行われており、今も撤去されたままだという。リターンライン配管の一部撤去、閉止について保安院は全体を把握しているのか。全国のBWRで配管の一部撤去、閉止がされているのはどこか。リターンラインを使うためにはどのような作業が必要か。また、ひび割れを防ぐために、リターンラインの使用に際しどのような制限が課せられているのか。その制限を逸脱しないことをどのように確認しているのか。

(6)臨界防止措置として、北陸電力は「HCU隔離弁(101弁、102弁)の管理を厳重に行うため、施錠措置を行う」としている。保安院もこれを是認し、特別保安検査でこれの確認を行ったとしている。しかし、制御棒引き抜けが発生した際には、施錠により制御棒を挿入させる操作が遅れてしまい、かえって危険ではないか。

(7)柏崎刈羽原発3号機で昨年5月に発生した制御棒脱落については検討したのか。報告書に記載がないのはなぜか。

(8)海外の事例について、原子力安全委員会に88年のNRCの警告や海外への情報提供について指摘を受けたが、これに対しどのように対処したのか。

4.保安規定違反による行政処分について

(1)志賀1号機の臨界事故と事故隠しが、保安規定違反(引継、異常時の措置、原子炉スクラム後の措置、記録、報告の項)であるということで間違いないか。福島第一3号機の臨界事故について、原子炉スクラム後の措置の項を問題にしないのはなぜか。

(2)各電力会社の不正事案に共通なものとして、引継日誌の改ざんが多数存在する。これは保安規定違反と判断しているのか。

(3)そうであれば、原子炉等規制法第33条を適用しての設置許可の取消処分や運転停止処分を下さないのはなぜか。

(4)新聞報道によれば、保安院青山審議官は福島県で、「いま保安規定に反している状態ではないため、停止させる理由はない。」と述べている。「現在の安全が守られていれば、過去の保安規定違反は問題にならない」との趣旨が原子炉等規制法のどこに書かれているのか。

(5)2002年に発覚した福島第一1号機の検査偽装に対し、発覚当時の安全確認とは全く関係なく一年間の運転停止処分を下したのと対応が全く異なるのはなぜか。

(6)特に敦賀2号の検査妨害は、福島第一1号機と同様の不正であるが、これに対して福島第一1号機と同様の措置をとらないのはなぜか。

(7)保安院は、2003年10月以降に法令に抵触するデータ改ざん等が報告されないことをもって「新しい検査制度が有効に機能している」(保安院4月20日付「総点検評価書」18頁)と判断している。しかし、美浜1号機の違法溶接は今年起きている。このこと一つをとっても、「新しい検査制度が有効に機能している」とは言えないのではないのか。

(8)保安院は、課題として「検査制度見直しの加速」(保安院「総点検評価書」20頁)を挙げているが、事業者が保全計画を立て、事業者に自己責任を負わせるような検査制度の見直しでは、かえって危険な状況になるのではないのか。

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