2007年3月16日 (金)

志賀原発1号機のスクラム信号は「中性子束高高」

★志賀原発1号機は事故時に緊急自動停止(スクラム)信号が発信しています。しかし制御棒が入らずに15分間は臨界状態が続いたとのことです。保安院は「臨界に係わる事故」と称しています。

★臨界は原発の運転時には通常のことですから,これでスクラム信号が出る訳ではありません。3本の制御棒が引き抜かれ,臨界に達して出力が急上昇し,それによって中性子の量が増え,それが検知器に引っかかり,「中性子束高高」というスクラム信号が発信したたのです。

★素人考えですが,次のような事が起きていたのではないでしょうか。3本の制御棒が引き抜かれたことによって,その周辺は核分裂連鎖反応が継続する臨界状態となり,中性子が急速に増えてスクラム信号が出る,しかし制御棒が入らずにさらに出力が増す,この間他に手が打てなかったとすれば,反応は水が沸騰して泡が出ることによってようやく抑えられ,暴走せずに臨界が続いたのではないでしょうか。

★当時原子炉圧力容器の蓋は開いていた(開けっ放しで制御棒の出し入れの試験をするのが信じられませんが)ので,気圧は1気圧で,水は100℃で容易に沸騰します。(通常の運転時は270℃で沸騰しています)もちろん,だからよかったということにはなりません。記者会見で示された出力チャートを見た人の話では,出力は乱高下していたとのことです。核暴走に至る可能性が全くなかったとは言えないのではないでしょうか。

Hokuriku2 ★制御棒が引き抜かれ,スクラム信号が出ても制御棒が入らなかったのは,閉めてはならない弁(F101弁)を誤って閉めたからと言われていますが,今静岡地裁で係争中の浜岡原発運転禁止請求事件でも,現場検証の際にこの弁が問題になりました。原告側はこの弁を閉めたらスクラムがかかっても制御棒が入らないこと,なのに弁には閉止禁止のふだがなかったことを確認しています。

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保安院→北陸電力 法的根拠がなくても停止指示ができる

志賀原発1号機の制御不能臨界事故で保安院がプレスを出しています。http://www.meti.go.jp/press/20070315003/20070315003.html

このうち,「2.経済産業省の対応」に
(2)甘利経済産業大臣の指示を受け、原子力安全・保安院は、本日、北陸電力(株)に対し、
① 原子炉を早急に停止して、安全対策の総点検を行うこと、
② 本事故の事実関係及びその根本的な原因の徹底的な究明を行うこと
③ 早急に実施することができる技術的な再発防止対策及び抜本的な再発防止対策を策定すること
を指示することとしています。また、上記②及び③については、法律に基づく報告を求めることとしています。

とあり,①で運転停止指示を出ています。②,③は「法律に基づく報告を求める」としており,これは電気事業法106条に定める報告徴収だと思われます。ところが運転停止を指示した①については,法律との関係が何も書いてありません。この点を保安院に電話で聞いてみました。すると,この運転停止指示は,法的根拠のない行政処分であり,法的拘束力はなく,北陸電力が自主的に従ったとのことです。

事の重大さに,法的根拠だ時効だ言う前に止めざるをえなかったということのようです。この例に従えば,東電の案件についても,検査妨害についての電気事業法の条項は時効が3年だから云々言う前に,3年以上前でも後でも,悪質なものについては,停止指示を出すことができるということです。

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2007年3月15日 (木)

志賀1号機であった信じがたい制御不能事故

Hokuriku 北陸電力志賀原発1号機で過去の定期検査中に制御棒の挿入試験を行い、その際に制御棒3本が引き抜けて出力が急上昇し、自動停止(スクラム)信号が発せられたが15分間も制御棒が入らず、これを隠して記録を残さなかったという信じがたい事件が発覚しています。北陸電力のプレスは以下にあります。
http://www.rikuden.co.jp/press/attach/07031501.pdf

想定外に制御棒3本が引き抜け
原子炉が臨界状態となりました
原子炉自動停止信号が発信したが制御棒が直ちに入らず緊急停止せず
約15分間制御棒が全挿入されないという事態
必要な記録を残すことなく、国および自治体に報告せず
定期検査中で上蓋をはずした状態だった

と信じがたい文言がならんでいます。

制御棒が落下する事故は、スリーマイル事故タイプの冷却材喪失事故とならんで、安全審査で要求される事故想定ではもっとも重大な事故である反応度事故(チェルノブイリ事故タイプの核暴走事故)を引き起こす大変厳しい事故です。プルサーマルでは、プルトニウム放出をもたらす事故として私たちがよく問題にするのですが、東京電力などは、これは念のために想定するだけであって、実際には起こりえないんだと突っぱねてきました。

それが現実に、しかも3本もの引き抜きが起きていたということだけでも驚きです。「引き抜き」の程度にもよるのでしょうが、出力の急上昇はどの程度だったのでしょうか、想像すると背筋が凍る思いです。そのデータも隠滅してしまったのでしょうか。

その上、15分間も制御棒が入らないというのもびっくりです。原発は何かことがあればまず制御棒が挿入される、たとえ制御棒駆動機構が壊れても、自然に制御棒が入っていく、地震が起きようが何しようがこれに失敗することなどないと、東京電力からも中部電力からもさんざん聞かされてきました。

共同電によると、保安院は北陸電力に対し厳重注意とありますが、福井新聞の速報では、運転停止命令を出すようです。
http://www.fukuishimbun.co.jp/nationaltopics.php?genre=main&newsitemid=2007031501000340&pack=FN

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2007年3月14日 (水)

低出力時のスクラム(自動停止)はBWRの欠陥ではないか?

070314_15320002本日原水禁主催の東電交渉がありました。焦点の一つが自動停止(スクラム)隠蔽と福島第一原発4号機の停止時のトラブル問題でした。

Jidoteishi Onagawa自動停止(スクラム)隠蔽は,今のところ柏崎刈羽原発1号,福島第二原発1号機,それと東北電力女川原発1号機の3例が明らかになっています。このうち,柏崎刈羽原発1号機の自動停止隠蔽は,例のECCS検査偽装があった92年の定期検査の,まさにそのための停止操作の際に起きていました。柏崎刈羽原発が公表した出力線図を見せていただきましたが,女川原発1号機で東北電力がHPで公開しているのと似たような形状でした。

原発の停止手順ですが,原子炉出力が下がっていき,同時に電気出力も下がっていきます。先に発電を停止し,所内の電源を外部電源に切り替えます。その後,蒸気はタービンをバイパスさせるのですが,出力が低く不安定な状態で,蒸気と流量をうまくバランスさせながらスムーズに出力を下げるのに,微妙な操作が要求されるようです。上記の3例は,いずれもその最後の操作にさまざまな理由で失敗し,出力が急に上がり中性子束高の信号が発せられるといった状態になって自動停止し,それを隠蔽していたのです。

東電が2件の自動停止隠蔽を公表したのが3月1日でしたが,その前の2月11日に福島第一原発4号機は奇妙な停止の仕方をしていました。

原子炉出力,電気出力を下げる過程で,発電機を切り離す作業を行い,このとき運転員が誤った操作をしたために,原子炉に水を供給する給水ポンプを止めてしまい,原子炉水位が下がりました。そのため水位を回復するためにポンプを立ち上げたところ今度は水位が上がりすぎて「原子炉水位高」の警報が発生し主タービンが自動停止します。この間に出力は10%から一旦6%に落ち,その後23%に上昇と乱高下していました。4時間の格闘の末,ようやく停止したとのことです。今日の東電の話では,発端は運転操作ミスだが,その後については操作ミスだけとはいえず,機械的なトラブルがあった可能性もあるとのことです。

東電はこの福島の事例を,原子炉自動停止ではないので,自動停止隠蔽事例とは別扱いにしようとします。しかし,上記のことから,低出力時の不安定性というBWRの欠陥が浮かび上がってはこないでしょうか。運転停止時にうまく軟着陸できないことは,実は日常的に起きているのではという疑念が浮かびます。そのうちいくつかが自動停止になってしまい,そのうちいくつかを隠さざるをえなかったのではないでしょうか。自動停止に至らない場合でも,福島第一原発4号機のように綱渡りを余儀なくされた事例はもっともっとあるのではないかと思われます。

福島第一原発4号機のケースについて,東北電力がHPで公開しているような出力や水位の線図を示すよう事前に要求していました。しかし東電は停止トラブルから1ヶ月以上も経つのに,原因究明が途中でという訳のわからない理由で拒みました。新潟や福島のみなさんの前で本当に情けない思いでした。

東北電力女川1号機 自動停止隠蔽時の出力線図
http://www.tohoku-epco.co.jp/whats/news/2007/03/12a.html
http://www.tohoku-epco.co.jp/whats/news/2007/03/12a.pdf

福島第一4号機の停止トラブル
http://www.tepco.co.jp/cc/press/07021101-j.html

柏崎刈羽地域の会での説明資料(線図はありません)
http://www.tepco.co.jp/nu/kk-np/tiiki/pdf/190308.pdf

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2007年3月10日 (土)

福島第一・第二原発で立て続けに発生している自動・手動停止トラブル

★福島第一・第二原発では,1月17日に第一原発2号機が手動停止,2月11日に第一原発4号機でタービン自動停止,2月18日に第二原発4号機で原子炉自動停止,2月19日に第一原発5号機で手動停止と,停止トラブルが立て続けに発生しています。このうち原子炉自動停止は第二原発4号機の1件だけですが,そんな中3月1日に過去に自動停止を隠していたという不正が発覚しました。これだけ停止トラブルが続くと,自動停止を隠さざるを得ない状況が今でも続いているのではないか,隠していた不正事案がまだまだあるのではないかと疑いたくなります。

定期検査中の福島第一原子力発電所2号機における自動減圧系制御回路の地絡にともなう原子炉手動停止に関する原因と対策について/1月23日東京電力
http://www.tepco.co.jp/cc/press/07012302-j.html

原子炉停止操作中の福島第一原子力発電所4号機における主タービンの自動停止について/2月11日東京電力
http://www.tepco.co.jp/cc/press/07021101-j.html

定期検査中の福島第二原子力発電所4号機の原子炉自動停止について/2月18日東京電力
http://www.tepco.co.jp/cc/press/07021801-j.html

「当社福島第二原子力発電所4号機(沸騰水型、定格出力110万キロワット)は、平成19年2月16日より原子炉を起動中で発電開始準備をしていたところ、本日午前9時21分、「主蒸気管放射能高高トリップ(主蒸気管の放射線レベルを連続監視し、通常範囲を超える放射線が検出された場合に原子炉の緊急停止信号を発信する警報)」の警報が発生したことにより、原子炉が自動停止いたしました。」

福島第一原子力発電所5号機の手動停止について/2月19日東京電力
http://www.tepco.co.jp/cc/press/07021901-j.html

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2007年3月 9日 (金)

福島第一4号機でタービン自動停止…出力が不安定に変動

★先月2月に定期検査に入った福島第一4号機は,2月11日の停止動作の際に「主タービンが自動停止する」という耳慣れないことが起き,原子炉を4時間かけて停止する際に出力が不安定になり,6パーセントから23パーセントに上昇するという事態が起きていました。

★「原子炉水位高」の警報が発生したときに、主タービンが自動停止するだけで,なぜ原子炉は自動停止しなかったのか。出力の不安定,変動はなぜ起きたのか,なぜそれが大きな問題としないのか,不思議です。実はこのようなことはよく起きていて,これまでは黙っていたのではないかという疑念もあります。

原子炉停止操作中の福島第一原子力発電所4号機における主タービンの自動停止について/東京電力株式会社平成19年2月11日
http://www.tepco.co.jp/cc/press/07021101-j.html

「発電が停止したことから、発電機よりプラントの機器に供給する電源の隔離作業を行いましたが、操作を誤ったため原子炉給水ポンプが停止し原子炉水位が低下しました。 このため、原子炉水位の回復操作を実施したところ原子炉水位が上昇し、午前0時26分、「原子炉水位高」の警報が発生し、主タービンが自動停止いたしました。」

「なお、本事象の発生にともない事象発生前約10パーセントの原子炉出力が、一時的に約6パーセントから約23パーセントまで変動いたしました。 その後、原子炉水位が安定したため引き続き原子炉の停止操作を継続し、午前4時44分、原子炉は安全に停止いたしました。 今後、操作を誤った原因を調査いたします。 これによる外部への放射能の影響はありません。 」

★昨日行われた柏崎刈羽原発の「地域の会」でも話題になったとのことです。
http://www.tepco.co.jp/nu/kk-np/tiiki/index-j.html
http://www.tepco.co.jp/nu/kk-np/tiiki/pdf/190308.pdf

★福島第一4号機は,その後,止まっているのにスクラムの誤信号が出るというトラブルも発生しています。
http://www.tepco.co.jp/nu/f1-np/press_f1/2006/pdfdata/bi7216-j.pdf

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2007年3月 7日 (水)

福島第一1号機,美浜1号機と並ぶ「老朽炉三兄弟」の長男というべき敦賀1号機で相次ぐトラブル

★福島第一1号機,美浜1号機と並び,日本で最も古い軽水炉であり,「老朽炉三兄弟」の長男というべき敦賀1号機でトラブルが相次いでいます。

敦賀原発で7000リットル水漏れ すぐ回収「環境へ影響なし」/中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/00/sya/20070306/mng_____sya_____016.shtml

「日本原子力発電(原電)は5日、定期検査中の敦賀原発1号機(福井県敦賀市)で、流量計から微量の放射能を含む水約7000リットルが漏れた、と発表した。漏れた水のほとんどはすぐに回収され、環境や作業員への影響はないという。」

敦賀1号機、他にもトラブル2件 原電発表 地震計誤作動など/中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/00/fki/20070306/lcl_____fki_____005.shtml

「敦賀原発1号機での水漏れを発表した日本原子力発電(原電)は5日、地震計の誤作動など敦賀1号機での他のトラブル2件も併せて発表した。いずれも周辺環境への影響はないという。」

「原電によると、2月22日午後5時30分ごろ、2系統ある地震計のうちの1系統が「地震加速度大」の警報を発信。別系統が警報を出さなかったことから誤作動と推定し調べたところ、地震計の電源をつなぎ換える手順を間違えたために電圧が下がり、誤作動したことが分かった。運転員が作った手順書に不備も見つかったため、改善した。」

「翌23日には、非常時に原子炉とタービンを分断する弁のばねが割れているのが見つかった。長さ28センチ、直径14センチのコイル状のばねが、長さ60センチにわたって最大1・7ミリの幅で割れていた。ばねは弁の内部にあり、弁が作動した場合に元に戻す役割をする。」

「原電はこの日、敦賀1号機で見つかった緊急炉心冷却装置(ECCS)の不具合について、流量を制御する弁が原因だったと発表。2月18日に弁の開き具合を電気信号に変える部品を交換したところ、正常に戻ったという。」

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2007年3月 6日 (火)

定期検査中の福島第一原発1号機でたまり水からトリチウム

★福島第一原発1号機のトラブル情報です。定期検査中にたまり水からトリチウムを検出しました。

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東電HP
1号機の定期検査状況について
http://www.tepco.co.jp/nu/f1-np/press_f1/2006/pdfdata/bi7303-j.pdf

原発1号機で放射性物質トリチウムを検出/福島テレビ
http://www.kfb.co.jp/news/index.cgi?n=20070306101100b8b6c8afa3

「東京電力は5日、定期検査中の福島第一原子力発電所1号機(大熊町)のタービン建屋で、給水加熱器ドレンポンプの埋設容器を収納する穴の中のたまり水を分析をしたところ、自然界に含まれる濃度よりも高い放射性物質トリチウムを検出したと発表した。穴にたまっていた水の量は5800リットル。トリチウム濃度は海水と比べ約3400倍だが放射能量は微量。建屋周辺の排水設備の水も分析したがトリチウムは検出されず、外部への影響はないとしている。」

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