2007年5月25日 (金)

臨界事故と不正処分をめぐり保安院と市民が交渉

Hoanin20070523 20070523p1000181 臨界事故と不正問題処分をめぐる市民と保安院との交渉が5月23日に行われました。市民側は,石川,福島,新潟,宮城,静岡,大阪,首都圏の各地から15名,保安院側は検査課2名,防災課1名,企画調整課1名の合計4名でした。経済産業省別館の会議室で予定を15分ほどオーバーして1時間45分のやりとりでした。

はじめに石川の方から,処分を見直し,設置許可の取消や運転停止の厳しい措置をとるよう求める市民30団体による要望書を提出,その後,事前に提出した質問書にしたがって回答と議論を行いました。 総じて明らかになったのは,保安院が臨界事故及び制御棒引き抜けについて,事の重大性についての認識が全く無く,調査もろくにせずにただただ電力の報告を鵜呑みにし,罰なしの処分で早急に事を収めようとする姿勢でした。

報告:福島老朽原発を考える会 S

■保安規定違反に運転停止処分を下さない理由はしどろもどろ

 保安院は,一連の不正について保安規定違反を認めながらも,原子炉等規制法33条の設置許可の取消処分や運転停止処分を下していません。なぜかと聞くと,現時点の原子炉の安全性を損なうものではない,33条2項の趣旨や総点検のねらいから適当ではない,との回答でした。しかし法律のどこを見ても現時点の安全性が確認できれば運転停止処分を下さないとは書いてありません。それに「総点検のねらいから」というのはどういう意味でしょうか。正直に言ったのだから許してあげようとでもいうのでしょうか。それこそ,違反を罰して再発を防ごうとする33条の趣旨に反するのではないでしょうか。

 それに,今回の措置は,2002年の原発不祥事の時に,1年間の運転停止処分を下した福島第一1号機の格納容器検査偽装に対する措置とあまりに異なります。このときは,その当時の原子炉の安全確認とは無関係に運転停止処分を下していました。この点を指摘すると保安院は,いやこの時は原子炉の安全性は確認されていなかったんだと反論,しかし,当時の文書から,処分が不正の重大さに鑑みて出されたものであり,当時の安全確認がなされたこととの関係が何も書かれていないこと,事の経緯からして,安全確認よりも処分を優先したことは明らかであることを指摘すると,「当時の文書には『安全性確認との関係』は書かれていないが」と認めた上で、それでも「安全性確認」を強調していました。

 さらに,その論理でいけば,同様の格納容器検査偽装が今回明らかになった敦賀2号機について,現在の安全確認がなされていることになるが,それはいつやったのかと聞くと,特別な保安検査でと。ではそれはいつかと聞くと、検査課の高橋氏は手帳をくりながら「2月19日です」と答えました。ところが敦賀2号機の検査偽装が発覚したのは3月30日です。特別な保安検査は6月に行われる予定です。ありえない回答です。結局,「現在の安全性」を確認していないことを自ら語ったわけです。保安院が主張する「現在の安全性が確保されているから停止命令は出さない」が,いかにデタラメであるかがはっきりしました。

■リターンライン撤去については問題を承知していない

 リターンラインさえ開く手順にしておけば引き抜けは起こらないと繰り返す保安院ですが,そのリターンラインが古い炉では,撤去されている問題があります。圧力容器に直結したリターンラインのノズル部でひび割れが多発したためで,東電によると福島第一1~5号機などでは,制御棒隔離の際,リターンラインを使うときには撤去した配管をわざわざつなぎ直して使っているとのことです。これについて,保安院が状況を把握しているのか,引き抜けが頻発していることとの関係はどうかと聞きました。

 保安院は,把握はしていると言いながら,具体的にどの炉で撤去されているのかについて「島根1号とか敦賀1号とかいうのがある」というだけできちんと名前を挙げることができず,古い炉で,リターンラインが原子炉圧力容器に直結していることすら知らないというありさまでした。

■事故調査は電力の報告書を読んだだけ

 福島第一3号機の臨界事故について,手がかりとされる元東芝社員が持っていた手書きのメモについて保安院でも検討したのかと聞きました。回答は正式にはその手の資料は請求していない(非公式には見た)というものでした。では何を検討したのか。はじめはこんなに分厚い資料をと手の平を広げて見せたのですが,よくよく聞くとそれは不正全体についてで,福島第一3号機については10ページほどだと。結局東電が公表している報告書のレベルでした。こんなに早く事故調査が終わりこんなに早く処分がでたカラクリはここにありました。電力の報告書を読んで終わりにしていたのです。それにしても,保安院の事故そのものに対する関心のなさには驚くばかりです。臨界事故の実態を把握しよう,明らかにしようという姿勢が全くないのです。

■制御棒引き抜けについての報告要請は「口頭」

 保安院は,4月20日付調査報告書で,「BWRをもつ電力会社に制御棒の引き抜けについて報告するよう要請した」としていますが,日付も文書も明らかにされていません。そこで,これを明らかにするよう求めたのですが,回答は,「3月15日に口頭で行った」というものでした。制御棒引き抜けによる臨界事故をいかに軽く見ているかを示しているのではないでしょうか。本当に指示が出ていたのかも怪しいものです。(甘利が「私が指示をして不正を調べさせた」と豪語している昨年11月30日の不正調査指示も実際には保安院院長名で出たもので,甘利が…というのは後で作ったのではないかという疑義もあります)

■志賀の燃料棒調査は地震により中断

 志賀の臨界事故について北陸電力の調査報告書に,当時の燃料の外観検査の写真は9体中3体しかありません。それはなぜかと聞いたら「地震により中断していると」の回答でした。そんなことは報告書のどこにも書いてありません。にもかかわらず、「燃料の健全性は確保されている」と結論づけてしまっているのです。

■設備上の対応についてはマイナスの効果を懸念

 保安院は調査報告書で,手順さえ守れば制御棒引き抜けは起きないといいながら,一方で設備的な対応について期待されるとしており,構造上の問題を認めています。この辺について聞くと保安院は,東電などが行おうとしている設備上の対応(自動的に減圧して引き抜けを防ぐような改造)について「マイナスの効果がある可能性があり,やるべしとまで言えない」と批判的に述べていました。

■最後に

 保安院が生き生きと回答していた質問があります。保安院が課題として挙げている「検査制度見直しの加速」が電力会社まかせであり危険ではないかという質問です。保安院は,平成20年度に導入をめざすとしている新しい検査制度について,喜々として語っていました。今回の事件で保安院サイドがねらっている「焼け太り」がここにあるのではないでしょうか。参加者はこのあたりについて監視の目を強めていこうと話しました。

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保安院に提出した要望書と質問事項

5月23日に行われた市民と保安院との交渉において以下の要望書を提出しました。添付の質問事項は事前に提出し、当日議論しました。

質問事項回答付きは以下(美浜の会)
http://www.jca.apc.org/mihama/accident/hoanin_qa070420.htm

****************************
原子力安全・保安院院長
広瀬 研吉様

2007年5月23日

要 望 書

臨界事故隠しや検査妨害をはじめとした電力会社の不正問題について、貴職は保安規定違反を認めながら罰を与えない処分を下しました。これは電力会社を免罪するだけでなく、甘い規制で事故を引き起こした貴院自身をも免罪するものです。福島第一原発1号機に対して1年間の運転停止処分を下した2002年の原子力不祥事への対応と比べても、余りにも甘い措置であり、とうてい受け入れられるものではありません。また、度重なる臨界事故や制御棒引き抜け、誤挿入により制御棒駆動機構の構造的欠陥が明らかになった沸騰水型原子炉(BWR)については、現在の安全性が保証されない以上、直ちに停止措置をとるべきです。この件につき、以下の措置をとるよう要望いたします。また、添付した質問事項に対して納得のいく回答を行うようお願いします。

1.不正問題に対する処分を見直し、臨界事故隠しや検査妨害など、保安規定違反が認められた原子炉について、原子炉等規制法第33条を適用し、原子炉設置許可の取り消しや長期の運転停止を含めた厳しい措置をとること。

2.構造的欠陥が明らかになった制御棒駆動機構を持つ沸騰水型原子炉(BWR)に対して停止指示を出すこと。

志賀原発差止め訴訟原告団(石川県)命のネットワーク(石川県)原発震災を案じる石川県民(石川県)北陸電力と共に脱原発をすすめる株主の会(富山・石川県)脱原発福島ネットワーク(福島県)双葉地方原発反対同盟(福島県)みどりと反プルサーマル新潟県連絡会(新潟県)柏崎原発反対地元三団体(新潟県)プルサーマルを考える柏崎刈羽市民ネットワーク(新潟県)島根原発増設反対運動(島根県)浜岡原発に反対する静岡ネットワーク(静岡県)原子力発電に反対する石巻市民の会(宮城県)グリーン・アクション(京都府)美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(大阪府)核のごみキャンペーン・中部(愛知県)プルトニウム・アクション・ヒロシマ(広島県)からつ環境ネットワーク(佐賀県)R-DANネットワークさがんもん(佐賀県)唐津の海を守ろう市民の会(佐賀県)花とハーブの里(青森県)東京電力と共に脱原発をめざす会(埼玉県)チェルノブイリ子供基金(埼玉県)ストップ・ザ・もんじゅ東京(東京都)原発・核燃とめようかい(東京都)ふぇみん婦人民主クラブ(東京都)脱原発・東電株主運動(東京都)たんぽぽ舎(東京都)原子力資料情報室(東京都)原発を考える品川の女たち(東京都)福島老朽原発を考える会(東京都)

<連絡先>〒162-0825 東京都新宿区神楽坂2-19銀嶺会館405号AIR気付 TEL03-5225-7213 FAX03-5225-7214 福島老朽原発を考える会/ストップ・ザ・もんじゅ東京

保安院4月20日付「調査報告書」及び「総点検評価書」に関する質問事項

1.臨界事故発覚の経緯について

(1)保安院の4月20日付「調査報告書」では、3月15日に志賀1号機の臨界事故の報告を受けたとなっている。また「沸騰水型軽水炉(BWR)を有する全ての電力会社に対し、過去に起こった制御棒の引き抜け事象について報告するよう要請した」(同3頁)と書かれている。この要請を行ったのはいつか。また,その要請を行った保安院文書(NISA文書)を示されたい。

(2)福島第一3号機の臨界事故について、福島県には3月19日の段階で「第一でもすでに50年代に同様の自然に制御棒が引き抜けることは経験済み」という内部告発が寄せられていた。保安院がこれを確認したのはいつか。この内部告発によって事故がようやく明るみに出てきたというのが真相ではないか。

2.臨界事故の実態と原因把握について

(1)志賀1号機の臨界事故について、北陸電力は「事故当時の平均出力領域モニタのデータは計測器が点検中だったため存在しない」としているが、保安院はこのことを確認したのか。また、北陸電力の言っていることが事実であれば、制御棒の検査中にこの計測器を点検すること自体問題ではないか。

(2)志賀1号機の臨界事故の燃料への影響について、北陸電力の事故報告書には燃焼度の低い燃料集合体の一部の外観検査結果しか公表されていない。この検査では、全てを観察したといえないのではないか。また、シッピング検査は行ったのか。

(3)福島第一3号機の臨界事故について、東京電力は「予期せぬ臨界」(東京電力3月30日付報告書原117頁)としているが、保安院も同じ認識か。

(4)福島第一3号機の臨界事故について、東京電力は制御棒引き抜けの「原因は特定されていない」(東京電力3月30日付報告書原119頁)としているが、保安院も同じ認識か。

(5)東芝の元社員が持っていたとされる手書きのデータは保安院でも検討したのか。そこには「SRMが7時間半も振り切れていたことを示すグラフが描かれていた」とのことだが、東京電力が評価に使ったのは、SRMが振り切れる最大値であって、実際にはそれ以上であった可能性があるのではないか。福島第一3号機の臨界事故の実態は把握されたといえるのか。

(6)福島第一3号機の事案について保安院は「5本の制御棒引き抜け事象」「制御棒引き抜けに伴う原子炉臨界」と称している。志賀1号機を臨界事故としているのにこれを「事故」としないのはなぜか。(7)東京電力は、東芝の元社員が持っていたとされるデータはおろか、引継日誌や運転日誌など、東京電力の社内データについても一切公表せず、自らが依頼した弁護士が見たというだけで客観性は確保されているなどと主張している。これらの資料を全て公開させるべきではないか。

3.制御棒引き抜け防止対策について

(1)保安院は、HCU隔離作業時に、リターン運転とするか、制御棒駆動水ポンプを止めるか、制御棒駆動系駆動水量をゼロにすることが必要としている(保安院「調査報告書」21頁)。隔離について3つのいずれかを実施すれば、制御棒引き抜けは絶対に起きないということか。

(2)同じ報告書21頁に、「複数本の制御棒が想定外引き抜け状態になったことについては…1本ずつ状況を確認しながら操作することにより回避できることから、設備上の問題があるとはいえない」とあるが、結局操作に頼っているのではないか。度重なる制御棒引き抜け、誤挿入事案は、手順の整備や管理の徹底だけでは防止できないことを示しているのではないか。

(3)隔離操作によって101弁を閉めることにより、スクラムができなくなってしまうのは、構造上問題があるのではないか。

(4)同じ報告書に「制御棒駆動水圧系の設備的な対応の可能性についても視野に入れて、事業者において対策の検討がなされることが期待される。」とあるのは、設備上の問題を認めているのではないか。設備上、構造上の問題についての検討を優先すべきではないか。

(5)東京電力によると、福島第一1~5号機のリターンラインについて、ノズル部のひび割れが多発したために、配管の一部撤去が行われており、今も撤去されたままだという。リターンライン配管の一部撤去、閉止について保安院は全体を把握しているのか。全国のBWRで配管の一部撤去、閉止がされているのはどこか。リターンラインを使うためにはどのような作業が必要か。また、ひび割れを防ぐために、リターンラインの使用に際しどのような制限が課せられているのか。その制限を逸脱しないことをどのように確認しているのか。

(6)臨界防止措置として、北陸電力は「HCU隔離弁(101弁、102弁)の管理を厳重に行うため、施錠措置を行う」としている。保安院もこれを是認し、特別保安検査でこれの確認を行ったとしている。しかし、制御棒引き抜けが発生した際には、施錠により制御棒を挿入させる操作が遅れてしまい、かえって危険ではないか。

(7)柏崎刈羽原発3号機で昨年5月に発生した制御棒脱落については検討したのか。報告書に記載がないのはなぜか。

(8)海外の事例について、原子力安全委員会に88年のNRCの警告や海外への情報提供について指摘を受けたが、これに対しどのように対処したのか。

4.保安規定違反による行政処分について

(1)志賀1号機の臨界事故と事故隠しが、保安規定違反(引継、異常時の措置、原子炉スクラム後の措置、記録、報告の項)であるということで間違いないか。福島第一3号機の臨界事故について、原子炉スクラム後の措置の項を問題にしないのはなぜか。

(2)各電力会社の不正事案に共通なものとして、引継日誌の改ざんが多数存在する。これは保安規定違反と判断しているのか。

(3)そうであれば、原子炉等規制法第33条を適用しての設置許可の取消処分や運転停止処分を下さないのはなぜか。

(4)新聞報道によれば、保安院青山審議官は福島県で、「いま保安規定に反している状態ではないため、停止させる理由はない。」と述べている。「現在の安全が守られていれば、過去の保安規定違反は問題にならない」との趣旨が原子炉等規制法のどこに書かれているのか。

(5)2002年に発覚した福島第一1号機の検査偽装に対し、発覚当時の安全確認とは全く関係なく一年間の運転停止処分を下したのと対応が全く異なるのはなぜか。

(6)特に敦賀2号の検査妨害は、福島第一1号機と同様の不正であるが、これに対して福島第一1号機と同様の措置をとらないのはなぜか。

(7)保安院は、2003年10月以降に法令に抵触するデータ改ざん等が報告されないことをもって「新しい検査制度が有効に機能している」(保安院4月20日付「総点検評価書」18頁)と判断している。しかし、美浜1号機の違法溶接は今年起きている。このこと一つをとっても、「新しい検査制度が有効に機能している」とは言えないのではないのか。

(8)保安院は、課題として「検査制度見直しの加速」(保安院「総点検評価書」20頁)を挙げているが、事業者が保全計画を立て、事業者に自己責任を負わせるような検査制度の見直しでは、かえって危険な状況になるのではないのか。

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2007年4月23日 (月)

福島第一3号機臨界事故問題で東電本社交渉

19日に東電本社交渉が行われました。6時間に及ぶ長丁場の交渉でした。主に福島第一3号機の臨界事故について、詳しいやりとりがありました。この件で保安院がおとがめなしで幕引きを図ろうとしていることは腹立たしい限りですが、実際には問題が山積みであることが交渉でも明らかになっています。主なものをご紹介します。

■臨界事故の評価とデータの扱いについて

臨界事故がどの程度のものであったかという評価の信頼性は、元データにかかっています。交渉では元東芝の社員が持っていたとされる手書きのデータがほぼ唯一の手がかりであり、信頼性に乏しいことが明らかになりました。

それだけではなく、問題の東芝の社員のデータはおろか、引継日誌など東電が持っていたデータについても、東電は一切公表せず、今後も公表のつもりはないと言い張り、国へもみせていないことを明らかにしました。隠ぺいの体質は全く変わっていません。

東電は、東電が依頼した弁護士が見たから客観性、信頼性は確保されているというまったく身勝手で独りよがりの主張を繰り返していました。

Q 中性子数(SRM)の推移や制御棒の引き抜け状態は何によって確認したのか。
A メーカーから提供された資料と聞き取り結果から認定。手書きだったよう。メモ。数値は報告書に書いてある。チャートはなかった。東芝さんものなので公表できない。
Q 元データを公開して欲しい。
A 東芝さんのものなので公表できない。
Q 運転日誌、引継日誌、原子炉圧力・水位・水温度記録計データや使用前検査成績書など東電の資料も全く公開されていない。
A 社外弁護士が検討して事実認定をして報告書を出している。
Q データが全く添付されておらず信頼性がない。
A 信頼している。

■リターンラインの撤去について

保安院は臨界事故と制御棒引き抜けを構造的な欠陥ではなく、操作手順の問題に矮小化し、リターンラインを開ける手順にさえしておけば問題ないとしています。東電も同様です。しかし、東電では、配管のひび割れをおそれて肝心のリターンラインを撤去していたことが明らかになっています。詳細を聞くと、配管は短管がはずされており、リターンラインを使うために、わざわざはずした配管をつなぎ直さなければならないということです。しかも、ひび割れとの関係で原子炉が高温のときはつなげても使えないはずです。ひび割れをおそれて使わないラインに臨界防止を託すというおかしなことになっているのです。

Q 制御棒駆動水戻しライン(リターンライン)は第1回定期検査で撤去したとのことだがどこを撤去したのか。その状態でリターン運転をどのように行うのか。
A リターンラインのフランジとフランジの間の短管をはずして閉止フランジを取り付けた。前後の弁を閉じた。定期検査中は,閉止フランジをはずして短管をとりつけて全部の弁を開いて通水するようにしていたと思われる。短管は人が扱えるくらいの大きさ。現状もまま。
Q 撤去している号機は。
A 福島第一1~5号機まで。撤去するかあるいは閉止板を入れている。運転中は17機全てでリターンラインを使わないノンリターン運転を行っている。

■保安規定上の問題

保安規定との関係では、東電はただただ引っかからないようにという考察しかしていません。そのためにいかにねじまげて条項を理解しているのかという説明が続きました。保安規定が本来もつ安全確保の意義については全く念頭にないようです。

Q 保安規定に抵触しているのではないか。
A 保安規定について。当時の保安規定について抵触の可能性について検討している。結果として問題はなかったと考えている。29条の原子炉停止余裕について。停止余裕の確保について,保安規定は低温で未臨界に保持することができるようにこれを維持するという要求がある。当直長はその確認ができない場合は原子炉を停止するという要求がある。抜けた制御棒を全数挿入する操作をしており問題はなかった。
A 27条と28条の制御棒の操作手順。現在の保安規定は運転または起動においてと要求ある。当時の保安規定に記載はないものの当時も同様な考え方であったと想定している。停止時における制御棒操作は本条項に抵触するものではないと考える。
Q 当時の保安規定には運転中という条件はないのでは。
A そう。当時は明確な定義はなかった。考え方としては当時も同様なもの。
A 40条と45条に異常時の措置というのがある。当時,臨界を報告すべき異常とするという明確な考え方がなかった。本条文に抵触するものではない。
Q 異常時というのはスクラムが必要な事態ではないのか。
A 明確な考え方なかった。スクラムという手段で挿入したということ。
Q 影響が軽微なものは除くとある。臨界は軽微なのか。
A …
Q 運転日誌,引継日誌の改ざんは当時の保安規定16条に違反しているのではないか。
A 運転日誌のSRM熱出力および制御棒の位置については,社内の記録の改ざんにあたる。16条の当直長の運転日誌,引継日誌を引き渡して運転状況を申し送るについて,これに対して抵触していた可能性は否定できないが,プラント停止中の運転状況ということで当時明確な要求がなかったことから,直ちに保安規定に触れるものではない。

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2007年4月19日 (木)

福島第一3号機臨界事故の保安規定違反1(異常時の措置)

福島第一3号機の臨界事故が当時の保安規定に抵触する可能性について,「異常時の措置」の条項についての考察してみました。

■異常発見時の措置

東電の報告書は「保安規定には,異常時の措置に関する規定はあるものの,予期しない臨界の発生に関する記載はない」とあります。これは明確には引っかかりませんよと言っているようですが,「異常時の措置に関する規定はあるものの…」というところは,異常時の措置の条項に引っかかる可能性を示唆しているようです。当時の保安規定にはこうあります。

(異常を発見したとき等の措置)
第40条 原子炉施設の運転状態に異常を発見した者は,その旨ただちに当直長に報告するものとする。
2.当直長は,前項の報告を受けた場合には必要な応急措置を講ずるとともに発電部長に報告(原子炉の運転におよぼす影響が軽微なものを除く。)するものとする。
3.発電部長は,前項の報告を受けた場合にはその原因を調査し,必要な措置を講ずるとともに所長および主任技術者に報告するものとする。

ここには何をもって異常あるいは異常時とするのかが書いてありませんが,次の第41条の中身とタイトルから,異常とは「原子炉が自動的にスクラムすべき事実が発生した」ことであると推察されます。

(異常時における原子炉の手動スクラム)
第41条 当直長は,原子炉が自動的にスクラムすべき事実が発生したと判断されるにもかかわらず,スクラム回路が作動しない場合は,ただちに手動により原子炉をスクラムしなければならない。
2.当直長は,前項の措置を講じたにもかかわらず原子炉がスクラムしない場合は,ただちにほう酸水注入系を作動させなければならない。
3.当直長は,前2項に定める場合には,遅滞なく所長,発電部長に報告するものとし,所長は,その後の措置について主任技術者の意見を求めるものとする。

「異常」の定義について,最近の保安規定はより明確で,以下のようになっています。

(異常時発生時の基本的な対応)
第76条 当直長は,原子炉施設に異常が発生した場合,当該号炉を所管する運転管理部長に報告する。なお,本節でいう異常とは,次に定めるものをいう。
(1)原子炉の自動スクラム信号が発信した場合。
(2)原子炉が自動スクラムすべき事態が発生したと判断される場合にもかかわらず自動スクラム信号が発信しない場合
(3)原子炉を手動スクラムした場合

臨界事故がスクラムすべき事実であることは明白なので,報告や原因調査などを行っていたのかどうかが問題になるでしょう。

■異常発見後の措置

次に異常発生後の起動時の措置についてです。

(原子炉スクラム後の措置)
第42条 当直長は、原子炉のスクラム後、その原因を調査のうえ、安全性の確認その他必要な措置を講じ、所長の承認を受けた後でなければ、原子炉を再起動してはならない。ただし、スクラムの理由が次の各号のいずれかに該当する場合は、所長の承認を受けないで原子炉を再起動することができる。

字面では,スクラムした場合につき,再起動の際に安全確認を要求しています。志賀1号機の場合,自動スクラム信号が発せられたが,挿入できずに手動で操作した。福島第一3号機の場合,制御棒ごとに手動スクラムするシングルロッドスクラムを行っています。

40条,41条の流れからすると,42条は,スクラムが実際がかかったかどうかが問題なのではなくて,スクラムをかけるべき異常時の後の措置としてみるのが,本来の主旨ではないでしょうか。スクラムをかけるべき事態でスクラムがかかった場合には安全確認を要求するが,スクラムをかける事態でスクラムもかけられなかったというより厳しい事態に対しては安全確認を要求しないというのはおかしいですよね。

最近の保安規定は

(異常収束後の措置)
第78条 当直長は,異常収束後,原子炉を再起動する場合は,その原因に対する対策が講じられていること及び原子炉の状態に応じて適用される運転上の制限を満足していることを確認する。

とあり,明確に異常時すべてを問題にしています。

臨界事故後,再起動に至るまでに東電は安全性の確認措置をとっていたのかどうか,東電は明らかにすべきでしょう。確認措置をとっていないあるいは不明確な場合には,保安規定に違反したとみなすべきでしょう。

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2007年4月14日 (土)

臨界事故について保安院と交渉(12日)

12日に行われた臨界事故について保安院との交渉(議員レク)がありました。市民側は,石川,新潟,福井,宮城,大阪や静岡からも駆けつけて多彩な顔ぶれでした。近藤正道議員,福島瑞穂議員も参加されました。

保安院側は,検査課,審査課,防災課他の7名。おもに検査課の筆頭課長補佐が回答したのですが,終始にやにやしながらのらりくらりと質問をかわしていました。回答も最悪な内容で,保安規定等については精査中とだけ(「引継」については,保安規定違反の可能性をにおわせていました),制御棒は構造欠陥ではなく手順の問題で,安全審査も問題ないと言い張りました。志賀と違い,福島第一3号機については,臨界事故とも認めませんでした。自分たちの責任は一切認めないし,精査の作業も自分らで密室で行うということで,参加者は,不正の温床は保安院にある,保安院の隠ぺい体質こそ問題だと怒りをあらわにしていました。以下,おもなやりとりです。

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<志賀1号機の臨界事故について>

■引継ぎ日誌は詳細な別なものがあるということだが
→2種類の引継書があることは私どもは承知していない。

■志賀1号機の臨界事故についていつ把握したのか,当時の運転管理専門官の点検が機能していなかったのはなぜか
→情報を得たのは前日の3月14日。平成12年に制度改訂をして保安検査を行う者として保安検査官を創設した。昔(運転管理専門官)は何の法律的権限もなく細かいところまでチェックすることはならなかった。反省すべき点はあったが、機能していたかどうか,よりよくする権限においては反省すべき点があった。

■志賀1号機の運転停止指示の理由と法的根拠
→法的根拠…行政指導なので経済産業省設置法。理由…安全性確認の総点検をしていただく必要がある。

■保安規定違反ではないか
→電力からの報告書(3月30日、4月6日)を精査しているところ。および強化した保安検査を実施したのでその結果も加えて、早急に精査しているところ。

<福島第一3号機の臨界事故について>

■保安規定違反ではないか
→精査しているところ。

■福島第一3号機で停止指示を出さないのはなぜか
→状況を確認しているた。どうやら臨界らしいというだけ(依然として臨界事故ではないとの認識)原子炉を停止してまで安全確保の総点検をする必要はない。保安検査などで同じような引き抜け事象は今は起こらないことを手順書などで確認している。

<制御棒脱落について>

■構造的欠陥ではないか
→構造的問題というよりは手順書をしっかり守っていれば起こらなかった。(手順書に関連して)こういう事故について今まで表に出ていなかったので、ニューシアで情報を共有する。必要な形で私どもも注意する。バルブの開閉について指示を出している。構造的欠陥というよりは運用上の問題、指令、手続き、オペレーションの問題。

■安全審査の想定を変えるべきではないか
→手順の問題であり,想定を変える必要はない。

■事故の把握すらできなかった保安院の責任は。
→検査データがきっちりと(正しい値が)報告されることが大前提。平成15年の法律改訂によって不正そのものについては相当程度回避できるような制度になった。平成14年の東電問題のときに制度的に反省すべき点があるとして今の制度が。私どもの仕事としては、そういうことができるだけ起こらないように必要な制度改訂をきっちりとやっていく。体質を改善してもらうべくしっかりと指導。

<能登半島沖地震について>

■能登半島沖地震について
→原発が稼動していれば、スクラム信号が出て原発は停止をしたことであったろうと認識している。

<やりとりのなかで>

■11月30日は院長の指示であり,大臣は関係ないのでは
→点検には4つのねらいがある。院長の指示だが号令は大臣から。何が出てくるか分からない段階なので院長名で。大臣の号令について証拠はない。

■不正事案の報告を今後も行うのか
→国としては求めていない。

■保安規定の「引継」について違反ではないのか
→適切にレポートはなされていなかった。保安規定違反については評価をやっている段階。書かれていた事象だけに注目すればそういうこと(保安規定に違反していた)かもしれない。さらなる精査が必要。

■臨界事故が電力の自主的な報告によるというのはウソではないか,福島県への内部申告があったからではないか
→前言を撤回する。わかりません。

■処分の重さを決める基準はあるのか
→前例を参考に

■福島第一1号機の以前の1年間の運転停止処分には懲罰的な意味合いがあったのではないか
→(認めず)

■保安院の検討について,委員会を立ち上げて公開で行うべきではないか
→(その予定はない)

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2007年3月30日 (金)

【申入書】制御棒の構造的欠陥が明らかになったBWR原発の運転を全面的に停止せよ

経済産業大臣 甘利 明様
原子力安全・保安院院長 広瀬 研吉様

制御棒の構造的欠陥が明らかになったBWR原発の運転を全面的に停止せよ

2007年3月29日
BWR原発を案じる全国の市民

 BWR(沸騰水型原子炉)での臨界事故と事故隠しに抗議する。志賀1号機には停止措置をとったのに,同じく臨界事故を起こした福島第一原発3号機をはじめ,制御棒駆動機構に構造的な欠陥を抱えていることが明らかになった他のBWRになんらの措置を講じない国に抗議する。安全装置の中核である制御棒の引き抜け事故,臨界事故を頻発させ,隠ぺいしてきたことは,もはや電力各社に原発を運転する資格のないことをはっきりと示している。わたしたちBWR原発を案ずる全国の市民は以下について要請する。

1.全てのBWR原発に直ちに運転停止指示を出すこと
2.保安規定違反の福島第一原発3号機を停止させ設置許可を取り消すこと
3.制御棒引き抜けと臨界事故に関する全ての資料を公表すること

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2007年3月29日 (木)

全BWRの停止を求める要請行動

本日は全BWRの停止を求める要請行動に全国からお集まりいただきありがとうございました。福島(2名),新潟(2名),静岡,島根,宮城から足を運んでいただきました。首都圏から参加されたみなさんもお疲れ様でした。

14:00~14:45 保安院へ申し入れ
 対応したのは検査課の二名,二人ともはじめから疲れ切った表情でした。申し入れの主旨を説明し,文書を手渡した後やりとりがありました。
 まず,志賀1号機で大臣による運転停止指示を出した理由を聞いた上で,なぜ東電福島第一3号機では同じ対応をとらないのかを質しました。ただ明日の発表を待っていると言うばかりで返答はありませんでした。
 次に,一つの弁操作で制御棒が複数本抜け落ちるのは,構造的欠陥ではないか,手順書が正しくても柏崎や福島第二では制御棒が引き抜けているではないか,と質したのですが,弁に注意を促す札を掛けるようにした,という情けない回答でした,一同は呆れて,それのどこがインターロックなのか,どこがフェールセーフなのかと声をあげていました。
 ここで,保安院として今回の事態をどう考えているのか,保安院としての反省や謝罪はないのかと問うたのですが,今朝の甘利の新聞広告よろしく,謝罪はおろか反省の弁は一言もなく,今の検査体制に問題はないとの姿勢でした。これには一同怒りを隠しきれませんでした。制御棒関係で報告対象を広げる措置をとったのだから,今までが不十分だったことを認めなさいと言ったのですが,それも認めませんでした。
 福島第一3号機については,保安規定違反であり,設置許可の取消をすべきではないかという点についても聞きました。こちらが当時の保安規定が,制御棒の操作については操作手順を定めてその通りにやることを要求していることを具体的に指し示して,臨界事故はこれに違反しているのではないかと。保安院側は,明日を待ってくれといいながら,確かに制御棒が意図せず操作されたことについては最も注目していると発言しました。保安規定にはひっかけようとしている感じでした。
 最後に,今回の報告が,報告徴収による法的な義務を負ったものではなく,電力の自主性にまかされたものに過ぎない点についてひとしきりやりとりがありました。

15:00~15:30 記者会見
 発表前日で取材に応じてくれないのではという心配はいい方向にはずれ,6社から熱心な取材を受けました。

16:00~18:00 院内集会
 人数は少なかったのですが,中身の濃い集会でした,本日の申し入れの主旨と申し入れの様子について報告のあと,福島,新潟,島根,静岡,宮城から報告が続き,「情報の共有化」を図りました。選挙で忙しい中,近藤議員にもおいでいただきました。明日の発表からまたスタートだ,法令違反の問題,耐震問題などで焦点を絞って力を合わせて攻めていこうと力強く訴えられていました。明日の発表を吟味したうえで,4月に再度結集することを約束して今日の行動を終えました。

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2007年3月23日 (金)

【声明】全てのBWR原発の運転を即刻停止せよ/福島老朽原発を考える会

声 明(転載歓迎)

東電の臨界事故隠ぺい糾弾
制御棒引き抜け事故は、BWR原発に固有な構造的欠陥を示す
臨界事故を繰り返す日本は「世界で一番危険な原子力立国」

全てのBWR原発の運転を即刻停止せよ

2007年3月23日 福島老朽原発を考える会

 志賀原発1号機に続き、浜岡原発3号機、女川原発1号機、福島第二原発3号機、柏崎刈羽原発1号機と、BWR(沸騰水型原子炉)の制御棒引き抜け事故が次々と明るみに出てきた。22日には、福島第一原発3号機で1978年に5本の制御棒が抜け落ち、7時間30分もの長時間にわたって臨界が継続していた事故が発覚した。東電は約30年間も隠ぺいを続けていた。原発の運転開始直後から重大事故を隠ぺいしていた。さらに、翌年の79年には福島第一原発5号機で、80年には同2号機で、定期検査中に制御棒1本が抜ける事故が起きていた。毎年制御棒引き抜けが起きていたことになる。電力各社は、これら全てを隠ぺいし続けてきた。北陸電力の取締役が隠ぺい工作に関与していた事実も明らかになった。まだまだ重大な事故などが隠ぺいされているに違いない。もはや電力各社に原発を運転する資格はない。そして国はこれらを長年見逃してきた。監督責任と、このようなウソにまみれた原子力発電を国策として推進してきた責任を明らかにしなければならない。 甘利経産大臣は、3月23日「より一層の安全性の確立に向けた過去の改ざん等の総洗い出しについて」 を発表した。その中で、「徹底的な“洗い出し”の最中」、「悪循環を断ち切る」、「不正の清算」を通じて「電力会社の体質を改善させる」としている。そして「世界で一番安全安心な原子力立国を構築してまいります」とまで述べている。そこには、過去の大事故やその隠ぺいについてなんら罰則を伴う厳しい措置をとる姿勢がない。志賀原発1号機の臨界事故隠し発覚直後には、「極めて悪質」として法的裏付けのない停止措置をとったが、たび重なる事故の発覚を前に、7時間半にも及ぶ福島第一原発3号機の「一層極めて悪質」な事故と事故隠しに対しては、運転停止の措置すら取ろうとしていない。そもそも安全軽視と隠ぺい、データねつ造等の電力会社の体質は、国の甘い安全規制、電力と国の癒着等によって長年にわたって醸成されてきたのではないのか。これらに対するひとかけらの反省もない。原子炉で臨界事故を頻発させている国がどこにあるというのだ。日本は現在既に「世界で一番危険な原子力立国」である。

 現在明らかになっているだけでも、制御棒引き抜け事故は8件にも及ぶ。国は、これらを「操作ミス」「人為ミス」でかたづけようとしている。しかし、頻発する制御棒引き抜けと臨界事故の発生が示しているのは、BWR原発に特有な制御棒駆動装置の構造的欠陥である。

 BWRでは、制御棒を重力に逆らって炉心底部から上方向に挿入することを余儀なくされ、その危険性が以前から指摘されていた。これに対して電力会社や国は「安全装置がついているから大丈夫」「故障しても安全側(挿入される側)に働くから問題ない」「制御棒は1本ずつしか動かせない仕組みになっているので、事故解析は制御棒1本の落下を想定すれば足りる」などと説明してきた。しかしこれが全くのうそだった。BWRの制御棒は挿入側の水圧と引抜き側の水圧の微妙なバランスで保たれており、それが定期検査時に水圧制御ユニットから隔離されると、スクラム(緊急自動停止)ができなくなる。引き抜き側の水圧が大きくなると、その水圧で安全装置がはずれ、複数の制御棒が同時に引き抜かれることが起こりうる。すなわち、止めた車のブレーキをはずし、僅かな力で動き出すような状況に置かれていたのである。これは操作手順の問題ではなく、構造的欠陥である。

 制御棒が複数本抜け落ちる事故は、国の安全評価審査指針でも想定されていない。設計基準事故として想定されているのは、制御棒1本が抜け落ちる制御棒落下事故である。国の安全審査の想定がまったく不十分であったことをも示している。

 東電の問題は、1978年11月2日の臨界事故だけにとどまらない。1980年前後に東電の福島第一原発1・2号機では、プルトニウム等のアルファ核種によるすさまじい汚染があったことが明らかになっている(「松葉作戦」)。2002年に美浜の会への内部告発により明らかになった事実であるが、その後の追及の中で東電が公表したグラフでもすさまじい汚染が見て取れる。この当時福島原発で働いていた人は労災認定を勝ち取り、現在、東電の被曝責任を明らかにするよう裁判で闘っている。東電や各電力会社は、原子炉容器や格納容器の蓋があいたままで臨界事故を引き起こしているが、「被曝はなかった」と何の証拠もなしに無責任に語っている。当時の被曝線量は、全国の原発の中で福島第一原発が群を抜いている。この異常な汚染の原因と被曝隠しについても東電は真相を明らかにしなければならない。国は「マスクさえしていれば大丈夫」として、過去の汚染について法令違反を認めることなく東電を守り続けてきた。国もその責任を明らかにしなければならない。

 私たちは、構造的欠陥が明らかになったBWRの運転を全面的に停止することを強く要求する。志賀原発1号機と同様に、即刻、全てのBWR原発に運転停止指示を出すよう要求する。制御棒引き抜けと臨界事故に関する全ての資料を公表するよう要求する。

  福島第一3号機(東電)  1978.11.02  5本引抜 臨界事故
  福島第一5号機(東電)  1979.02.12  1本引抜
  福島第一2号機(東電)  1980.09.10  1本引抜
  女川1号機(東北電力)  1988.07.09  2本引抜
  浜岡3号機(中部電力)  1991.05.31  3本引抜
  福島第二3号機(東電)  1993.06.15  2本引抜
  志賀1号機(北陸電力)  1999.06.18  3本引抜 臨界事故
  柏崎刈羽1号機(東電)  2000.04.07  2本引抜

(参照)東電が公表した福島第一原発1・2号機の放射能放出濃度(美浜の会hpより) http://www.jca.apc.org/mihama/tepco_dt/fig_haikito.gif
http://www.jca.apc.org/mihama/tepco_dt/fukushima11_6th_review.htm

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