BWR原発の減肉問題 9
減肉による穴あき、水漏れの頻発が示すもの
年末から2月にかけて、BWRにおける配管の減肉による穴あき、水漏れが4件相次いでいます。これまでの減肉水漏れ事例は、1971年に敦賀原発1号機で2件、80年代に敦賀や浜岡で4件、90年代に浜岡原発2号機で1件が報告されているだけでした(美浜事故事故調査委員会第2回会合資料)。穴あき、水漏れの頻発は一体何を示しているのでしょうか?
■島根原発2号機-2004年12月
…第12回定期検査中に原子炉給水ポンプ駆動用タービン軸封蒸気排気配管(低合金鋼)のオリフィス下流のエルボ背側に貫通穴があることを確認。A系統に直径2㎜の貫通孔及び、B系統に直径10mm程度の貫通孔及び線状の穴。内面を観察した結果、減肉原因はグランド蒸気に含まれる凝縮水による浸食と推定。
http://www.energia.co.jp/energy/general/atom/teiken_2_12/notice-06.pdf
■福島第一原発4号機-2004年12月8日
…タービン駆動原子炉給水ポンプ駆動用蒸気ドレンライン(復水器へ凝縮水を排出する排水配管(外径約2cm、低合金鋼))で水漏れ。エルボ部に、直径約7㎜と11㎜の貫通孔及び、当該漏えい箇所の上流側に設置された水位調整弁に傷を確認。当該配管及び類似配管について放射線透過検査を行ったところ、漏えい箇所に減肉による貫通が確認されるとともに、類似配管の一部でも減肉傾向を確認。内面を観察した結果、減肉原因を浸食によるものと推定。
http://www.tepco.co.jp/cc/press/04120802-j.html
http://www.meti.go.jp/press/20050113003/050113mihama.pdf
■柏崎刈羽原発1号機-2005年2月4日
…定格出力運転中にタービン建屋地下2階復水器近くの小口径配管(外径約6cm、低合金鋼)からモヤ状に蒸気が漏えいしていることを発見。原子炉を停止して調査したところ、当該配管に直径約1㎜程度のピンホール2箇所を確認。当該部が部分的に減肉していることを確認した。
http://www.tepco.co.jp/kk-np/nuclear/pdf/17021101.pdf
http://www.tepco.co.jp/kk-np/nuclear/pdf/17020701.pdf
■浜岡原発3号機-2005年2月17日
…第13回定期検査中に原子炉給水ポンプ駆動タービングランド蒸気排気管エルボ部に小さな孔(2㎜×6mm)が1箇所あること及び孔の周辺が減肉していることを確認。
http://www.chuden.co.jp/torikumi/atom/hamaoka/joukyo/detail/129/data/tenken0216-2.pdf
① 減肉が起こりやすいエルボ(曲がり)部の代わりに直管部を測定していた
4例のうち東電の2例については、東電から直接話を聞きました。説明を聞いて驚いたのが、減肉が発生したエルボ部の代わりに減肉がより起こりにくいはずの直管部を測定していたという事実です。BWRでは、代表部位を選定することにより、大幅な点検省略が行なわれているのですが、その代表部位の選定方法や測定方法にも大きな問題があったのです。
◇福島第一原発4号機の場合
…貫通孔は、外径約2cmの小口径配管のエルボ(曲がり)部に2箇所あったのですが、東電によると、ここは代表部位が別に選定されていたため、これまで点検が行われたことはありませんでした。しかも選定されたのがより減肉しにくいはずの直管部でした。理由は、小口径配管のエルボ部は形状が複雑なのと表面がごつごつしているために、超音波探傷試験では正確に測る事はできないからとのことです。
…東電の説明は2つの点でこれまで信じ込まされてきたものを裏切るものでした。
1つは、超音波探傷試験は、配管の肉厚については、ひび割れと違って正確に測ることができるはずだという点です。しかし実際には小口径配管のエルボ部では難しいとのことです。
もう1つは、代表部位は、もっとも減肉しやすい厳しい部位が選定されているはずだという点です。しかし代表部位は、最も厳しい所を選定しているわけではありませんでした。東電によると、小口径配管の場合は、エルボ部の代表部位として直管部が選ばれており、ほとんどがそうであるとのことです。他の電力でも同様なことが行なわれているのではないでしょうか。
…東電が今後の対策として挙げたのは、「代表部位には直管部だけでなく曲がり部からも選定し当社減肉管理指針へ反映する」こと、そのために「超音波探傷試験(UT)ではなく放射線探傷試験(RT)を用いる」ことの2点でした。1点目は何をいまさらという感じです。2点目について、保安院は、放射性探傷試験で果たして信頼性のある結果が得られるのか疑問を呈しています。東電もこの点は心配していました。
◇柏崎刈羽原発1号機の場合
…蒸気漏れ箇所は小口径配管のエルボ部に続く直管部でした。東電はこのエルボを代表部位に選定し、第10回定期検査で点検し、2㎜の減肉を見つけ余寿命35年と評価していました。しかしこのときに、今回穴の空いた2箇所の減肉を発見することはできませんでした。
…この小口径配管のエルボ部はやはり超音波探傷検査が不可能であるため、第10回定期検査で実際に点検したのは、エルボ部に続く直管部でした。となると、今回穴が開いた箇所は点検されていてもおかしくなかったのですが、実際に点検した範囲はエルボ部が終わってさらに45㎜先からでした。そして、今回の水漏れは検査からはずれたその45㎜の間で発生したのです。なんとも間抜けな検査です。後にエルボ部でも減肉が確認されました。
…この検査について、東電に点検箇所を示すスケルトン図を見せてもらったのですが、図面上ではエルボ部に印があり、エルボ部を検査したことになっていました。実際にはエルボ部ではなく、その先の直管部を測定していたのにです。これも大きな問題ではないでしょうか。
2月15日に行なわれた保安院交渉で、保安院にこのことをを知っていたのかと聞きました。保安院は「最近、現地の保安検査官事務所で確認した。今も調査中だ」、「直管部を測ってエルボ部の測定値としていることは認められない。そういう代表はない。きちんと是正させる」と述べました。今回の水漏れ事例がなければ、エルボ部の代わりに直管部を測定するなどという、おかしな測定が行なわれていることもわからなかったということです。私たちはこれまで、保安院に対し減肉の実態の把握をまず行なうよう繰り返し要求し、保安院はその度に拒否し続けてきました。その結果が水漏れの頻発という今回の事態です。保安院は最近、減肉配管管理の暫定指針を通達という形で出しましたが、減肉管理の実態も分からず、代表部位を選定することすらできないのが実状ではないでしょうか。直管部のデータをエルボ部のデータといっているようでは、データそのものに信憑性がありません。このような状況でつくった暫定指針など、絵に描いた餅ではないでしょうか。最後に 「東電以外の電力会社が、同じように直管部を測ってエルボ部の測定値にしていたということはないのか。それは調べているのか」と聞いたのですが、保安院の4名は顔を見合わせて「いいえ」とつぶやくだけでした。
② 女川原発の急激な減肉事例の普遍性
4件の事例のうち、浜岡原発3号機を除く3例は、炭素鋼ではなく、減肉がおこりにくい「対策材」とされる「低合金鋼」で発生しています。浜岡の事例もそうかもしれません。同様の事例が、女川原発1・2号機で発生していたことは、昨年9月の段階で明らかになっていました。そこでは、従来の炭素鋼におけるエロージョン/コロージョンではなく、高速の凝縮水によるエロージョン(浸食)が問題になっています。低合金鋼でもステンレス鋼でも削られてしまう減肉です。ステンレス鋼での減肉はPWRの美浜原発でも発生しています。昨年9月の段階で私たちは保安院に対し、この女川の事例について、事故調査委員会でも詳細に検討するように申し入れました。しかし当初保安院は、これを特殊な事例として別扱いにしようとしていました。今回頻発している穴あき、水漏れ事例は、逆に、女川の事例が、BWRあるいはPWRも含めた原発に普遍的に発生しうる現象であることを示しています。
■女川原発1・2号機-2004年9月公表
女川原発1・2号機の高圧給水加熱器ベント管で過去に激しい減肉を確認していた。当該箇所を低合金鋼に取り替え、さらにその後、低合金鋼での減肉が判明したため、厚肉タイプのステンレス鋼を使用。しかしながら、ステンレス鋼に取り替えた後も減肉が進展した。
http://www.tohoku-epco.co.jp/whats/news/2004/40929b1.htm
③ なぜ今になって頻発するのか?
最後に、なぜ今になって穴あき、水漏れが頻発しているのか?という問題です。東電は、立て続けに起きたのは偶然であり、これまでこのような事例はなかったと言っています。しかし、今になって急に頻発しているのはやはり変です。一つ思い当たるのが、水漏れは、原発を止めた場合にはじめて報告義務が生じるという点です。少々の水漏れがあっても、原発を止めずに次の定期検査まで引っ張ることができれば、報告せずに済ませてしまうことができます。水漏れはこれまでも頻発していたが、そのようにして報告せずに済ませてきたという可能性はないのでしょうか。いずれにしろ、保安院は、改めて減肉と減肉管理の実態について、徹底した把握につとめ、それを速やかに公開すべきです。

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