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February 28, 2005

BWR原発の減肉問題 9

減肉による穴あき、水漏れの頻発が示すもの
 
 年末から2月にかけて、BWRにおける配管の減肉による穴あき、水漏れが4件相次いでいます。これまでの減肉水漏れ事例は、1971年に敦賀原発1号機で2件、80年代に敦賀や浜岡で4件、90年代に浜岡原発2号機で1件が報告されているだけでした(美浜事故事故調査委員会第2回会合資料)。穴あき、水漏れの頻発は一体何を示しているのでしょうか?

■島根原発2号機-2004年12月
…第12回定期検査中に原子炉給水ポンプ駆動用タービン軸封蒸気排気配管(低合金鋼)のオリフィス下流のエルボ背側に貫通穴があることを確認。A系統に直径2㎜の貫通孔及び、B系統に直径10mm程度の貫通孔及び線状の穴。内面を観察した結果、減肉原因はグランド蒸気に含まれる凝縮水による浸食と推定。
http://www.energia.co.jp/energy/general/atom/teiken_2_12/notice-06.pdf

■福島第一原発4号機-2004年12月8日
…タービン駆動原子炉給水ポンプ駆動用蒸気ドレンライン(復水器へ凝縮水を排出する排水配管(外径約2cm、低合金鋼))で水漏れ。エルボ部に、直径約7㎜と11㎜の貫通孔及び、当該漏えい箇所の上流側に設置された水位調整弁に傷を確認。当該配管及び類似配管について放射線透過検査を行ったところ、漏えい箇所に減肉による貫通が確認されるとともに、類似配管の一部でも減肉傾向を確認。内面を観察した結果、減肉原因を浸食によるものと推定。
http://www.tepco.co.jp/cc/press/04120802-j.html
http://www.meti.go.jp/press/20050113003/050113mihama.pdf

■柏崎刈羽原発1号機-2005年2月4日
…定格出力運転中にタービン建屋地下2階復水器近くの小口径配管(外径約6cm、低合金鋼)からモヤ状に蒸気が漏えいしていることを発見。原子炉を停止して調査したところ、当該配管に直径約1㎜程度のピンホール2箇所を確認。当該部が部分的に減肉していることを確認した。
http://www.tepco.co.jp/kk-np/nuclear/pdf/17021101.pdf
http://www.tepco.co.jp/kk-np/nuclear/pdf/17020701.pdf

■浜岡原発3号機-2005年2月17日
…第13回定期検査中に原子炉給水ポンプ駆動タービングランド蒸気排気管エルボ部に小さな孔(2㎜×6mm)が1箇所あること及び孔の周辺が減肉していることを確認。
http://www.chuden.co.jp/torikumi/atom/hamaoka/joukyo/detail/129/data/tenken0216-2.pdf

① 減肉が起こりやすいエルボ(曲がり)部の代わりに直管部を測定していた
 4例のうち東電の2例については、東電から直接話を聞きました。説明を聞いて驚いたのが、減肉が発生したエルボ部の代わりに減肉がより起こりにくいはずの直管部を測定していたという事実です。BWRでは、代表部位を選定することにより、大幅な点検省略が行なわれているのですが、その代表部位の選定方法や測定方法にも大きな問題があったのです。

◇福島第一原発4号機の場合
…貫通孔は、外径約2cmの小口径配管のエルボ(曲がり)部に2箇所あったのですが、東電によると、ここは代表部位が別に選定されていたため、これまで点検が行われたことはありませんでした。しかも選定されたのがより減肉しにくいはずの直管部でした。理由は、小口径配管のエルボ部は形状が複雑なのと表面がごつごつしているために、超音波探傷試験では正確に測る事はできないからとのことです。
…東電の説明は2つの点でこれまで信じ込まされてきたものを裏切るものでした。
1つは、超音波探傷試験は、配管の肉厚については、ひび割れと違って正確に測ることができるはずだという点です。しかし実際には小口径配管のエルボ部では難しいとのことです。
もう1つは、代表部位は、もっとも減肉しやすい厳しい部位が選定されているはずだという点です。しかし代表部位は、最も厳しい所を選定しているわけではありませんでした。東電によると、小口径配管の場合は、エルボ部の代表部位として直管部が選ばれており、ほとんどがそうであるとのことです。他の電力でも同様なことが行なわれているのではないでしょうか。
…東電が今後の対策として挙げたのは、「代表部位には直管部だけでなく曲がり部からも選定し当社減肉管理指針へ反映する」こと、そのために「超音波探傷試験(UT)ではなく放射線探傷試験(RT)を用いる」ことの2点でした。1点目は何をいまさらという感じです。2点目について、保安院は、放射性探傷試験で果たして信頼性のある結果が得られるのか疑問を呈しています。東電もこの点は心配していました。

◇柏崎刈羽原発1号機の場合
…蒸気漏れ箇所は小口径配管のエルボ部に続く直管部でした。東電はこのエルボを代表部位に選定し、第10回定期検査で点検し、2㎜の減肉を見つけ余寿命35年と評価していました。しかしこのときに、今回穴の空いた2箇所の減肉を発見することはできませんでした。
…この小口径配管のエルボ部はやはり超音波探傷検査が不可能であるため、第10回定期検査で実際に点検したのは、エルボ部に続く直管部でした。となると、今回穴が開いた箇所は点検されていてもおかしくなかったのですが、実際に点検した範囲はエルボ部が終わってさらに45㎜先からでした。そして、今回の水漏れは検査からはずれたその45㎜の間で発生したのです。なんとも間抜けな検査です。後にエルボ部でも減肉が確認されました。
…この検査について、東電に点検箇所を示すスケルトン図を見せてもらったのですが、図面上ではエルボ部に印があり、エルボ部を検査したことになっていました。実際にはエルボ部ではなく、その先の直管部を測定していたのにです。これも大きな問題ではないでしょうか。

 2月15日に行なわれた保安院交渉で、保安院にこのことをを知っていたのかと聞きました。保安院は「最近、現地の保安検査官事務所で確認した。今も調査中だ」、「直管部を測ってエルボ部の測定値としていることは認められない。そういう代表はない。きちんと是正させる」と述べました。今回の水漏れ事例がなければ、エルボ部の代わりに直管部を測定するなどという、おかしな測定が行なわれていることもわからなかったということです。私たちはこれまで、保安院に対し減肉の実態の把握をまず行なうよう繰り返し要求し、保安院はその度に拒否し続けてきました。その結果が水漏れの頻発という今回の事態です。保安院は最近、減肉配管管理の暫定指針を通達という形で出しましたが、減肉管理の実態も分からず、代表部位を選定することすらできないのが実状ではないでしょうか。直管部のデータをエルボ部のデータといっているようでは、データそのものに信憑性がありません。このような状況でつくった暫定指針など、絵に描いた餅ではないでしょうか。最後に 「東電以外の電力会社が、同じように直管部を測ってエルボ部の測定値にしていたということはないのか。それは調べているのか」と聞いたのですが、保安院の4名は顔を見合わせて「いいえ」とつぶやくだけでした。

② 女川原発の急激な減肉事例の普遍性
 4件の事例のうち、浜岡原発3号機を除く3例は、炭素鋼ではなく、減肉がおこりにくい「対策材」とされる「低合金鋼」で発生しています。浜岡の事例もそうかもしれません。同様の事例が、女川原発1・2号機で発生していたことは、昨年9月の段階で明らかになっていました。そこでは、従来の炭素鋼におけるエロージョン/コロージョンではなく、高速の凝縮水によるエロージョン(浸食)が問題になっています。低合金鋼でもステンレス鋼でも削られてしまう減肉です。ステンレス鋼での減肉はPWRの美浜原発でも発生しています。昨年9月の段階で私たちは保安院に対し、この女川の事例について、事故調査委員会でも詳細に検討するように申し入れました。しかし当初保安院は、これを特殊な事例として別扱いにしようとしていました。今回頻発している穴あき、水漏れ事例は、逆に、女川の事例が、BWRあるいはPWRも含めた原発に普遍的に発生しうる現象であることを示しています。

■女川原発1・2号機-2004年9月公表
 女川原発1・2号機の高圧給水加熱器ベント管で過去に激しい減肉を確認していた。当該箇所を低合金鋼に取り替え、さらにその後、低合金鋼での減肉が判明したため、厚肉タイプのステンレス鋼を使用。しかしながら、ステンレス鋼に取り替えた後も減肉が進展した。
http://www.tohoku-epco.co.jp/whats/news/2004/40929b1.htm

③ なぜ今になって頻発するのか?
 最後に、なぜ今になって穴あき、水漏れが頻発しているのか?という問題です。東電は、立て続けに起きたのは偶然であり、これまでこのような事例はなかったと言っています。しかし、今になって急に頻発しているのはやはり変です。一つ思い当たるのが、水漏れは、原発を止めた場合にはじめて報告義務が生じるという点です。少々の水漏れがあっても、原発を止めずに次の定期検査まで引っ張ることができれば、報告せずに済ませてしまうことができます。水漏れはこれまでも頻発していたが、そのようにして報告せずに済ませてきたという可能性はないのでしょうか。いずれにしろ、保安院は、改めて減肉と減肉管理の実態について、徹底した把握につとめ、それを速やかに公開すべきです。

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December 23, 2004

BWR原発の減肉問題 8

福島第一原発5号機配管減肉問題と保安院の姿勢

参考http://www.pref.fukushima.jp/nuclear/press/041008.html

■余寿命0.8年の減肉配管を取替えない東電を容認
 東京電力福島第一原発5号機の給水加熱器ベント系配管の減肉について、東電が昨年5月の定期検査時に、余寿命を0.8年と評価しておきながら、今年11月開始の次回の定期検査時まで運転を継続しても問題はないと判断し、配管を取替えずに運転を続けていた件について、原子力安全・保安院は、美浜原発3号機事故の調査の過程で今年9月14日に事実を掴んでいながら、東電の判断を妥当と認め、運転継続を了承していました。さらに10月5日に独自に事実を掴んだ福島県環境生活部からの問い合わせに対しても、10月7日付文書により、「当院の判断は妥当である」との見解を示していました。しかし福島県は、県原子力行政連絡調整会議専門委員及び学識経験者からも意見を聞いた上で、10月8日東電に対し毅然と「県民の安全・安心の一体的確保の観点から、当該配管の速やかな取替え」を行うよう申入れ、これにより東電は運転停止を決め、配管の取替えを実施しました。

■東電、保安院、福島県…三者の攻防
 この間に東電は、次回定期検査の今年11月までに、当該配管の肉厚が技術基準が要求する必要最小肉厚を下回る可能性を認める一方で、減肉は局部的であり、運転圧力による再評価から、仮に必要最小肉厚を下回っていても安全上は問題ないと主張していました。一方保安院は、東電が評価に用いた減肉率は保安院の分析と照らして過大評価の可能性があるとし「次回定期検査が行われる11月時点で技術基準を下回るとは評価していない」との見解を示していました。保安院は、東電が評価した減肉率0.6ミリ/年に対し、保安院のPWRの分析値である0.2~0.3ミリ/年を対峙し、BWRはさらにこれより低いはずだという論理でこの見解を導いています。
 これに対し福島県は、東電に対しては、必要最小肉厚を下回る可能性が否定できない以上は、直ちに停止して取替えを行うべきと主張し、保安院に対しては、東電の減肉率が過大評価だとする見解を、反例を挙げながら正面から批判しました。県は、減肉率の高い事例が福島第一、第二原発において、他にも複数確認されている点を指摘し、さらに、保安院がBWRの減肉率がPWRよりも低いことを「水質の違い」から導いている事について、当該部位は水質が問題にならない二相流であると指摘しています。保安院の論理の立て方は、はじめから的外れなものでした。

■保安院のデータ収集に問題
 保安院の分析値は、美浜原発3号機事故直後の8月11日付保安院の報告徴収に対する調査報告に、電力会社が各原発につき1例ずつ添付したものについて単純に平均をとったものにすぎません。報告徴収は、点検リスト漏れの有無を報告することが目的であり、減肉の実態を把握するものではありませんでした。保安院は9月13日に行われた交渉で、点検例の添付の指示は口頭で行ったもので、「このときは、そのデータを使って減肉率の評価をしようなどというつもりはまったくなかった」、「たまたま出てきたデータが管理指針の範囲内におさまっていただけ」と説明しています。
 どの事例を添付するかは電力会社の側に任されていました。電力会社が添付したのは、減肉率が低く余寿命の長い、電力会社にとって無難な事例ばかりでした。このことは、保安院の分析値よりも減肉率が一桁高い女川原発の事例や、福島県が指摘した減肉率の高い事例などが、報告徴収の後に次々と明らかになったことが示しています。柏崎刈羽原発でも減肉率の高い事例が明らかになっています。また、部位が異なり温度や流速条件もバラついている限られた数値について、単純に平均をとることについても疑問があります。
 このように、保安院の減肉率分析は、データ収集方法に問題がありました。元データは減肉の実態を反映しておらず、分析値の絶対値を福島第一原発5号機の個別の実測値と比較することなど、まったく意味がないことでした。

■保安院の分析の意図
 保安院の分析値を出した意図は何であったか。電力会社が任意に提出した減肉事例の平均値は、PWRが21部位で0.26×10-4㎜/時(0.23㎜/年)、BWRが27部位で0.13×10-4㎜/時(0.11㎜/年)でした。このような分析によって保安院が得ようとした結論は、保安院が美浜事故調査委員会に諮った「中間とりまとめ」の最終案の前の案(9月6日付)に記されています。それは「BWRはPWRよりも減肉率が下回っている。これは主として水質管理の違いが影響している」の後に続く「BWRについては、全体として少ない減肉傾向にあり、現在の管理手法で特に問題となるものではない」との文言です。BWRの減肉率がPWRよりも低いことを示して、BWRを減肉管理の検討の対象からはずそうとしたのです。
 保安院の分析値は、分析の意図に照らしてみても、これを福島第一原発5号機の当該減肉事例と比較することは、全く意味がないことは明らかです。
 ところで保安院の分析はなにがしかの意味はあったのでしょうか。PWRとBWRの減肉傾向の違いだけを見るのであれば、単純に平均をとるやり方もあるのかもしれません。しかし今回の場合は、調査対象が余りにも少なすぎます。配管は部位により、温度、流速などの条件が異なり、それが減肉に影響するのですが、各部位につきほぼ1例ずつしかなく、これでは平均をとったうちにも入りません。
 それにPWRとBWRでは、減肉の管理方法が異なり、その点を無視しているのも問題です。BWRでは、減肉の管理対象はPWRよりも広い一方で、実際に点検を行っている箇所は極端に少なくなっています。そこには、BWRでは、代表部位の点検結果からの類推により点検を省略する行為が日常的に行われているという事情があります。減肉管理はBWRのほうが緩いのです。
 BWRの方が減肉しにくいから管理が緩くなっているのかもしれません。逆に、管理の緩いBWR各社が、美浜原発3号機事故をきっかけに管理が厳しくなるのを恐れ、保安院に提出した減肉事例が結果的にPWR各社よりも減肉率の小さいものになったとも考えられます。確かなことは、保安院の今の分析では確かな結論は得られないということです。この点をはっきりさせるためには、厳しい減肉事例を含めて、もっと網羅的な調査が必要です。しかし保安院はこれをいくら要求しても拒み続けています。
 女川原発などで、減肉率が高い別の事例が明らかになる中で「BWRについては、全体として少ない減肉傾向にあり、現在の管理手法で特に問題となるものではない」との文言は、9月27日付「中間とりまとめ」の正文からは削除されました。BWRの管理方針も検討の対象となり、これを見直しの対象から外そうという保安院の目論見は失敗しました。

■誤りを認めた後の強弁
 11月9日に行われた保安院交渉において、保安院は、東電の減肉率評価が過大評価であるとの見解に誤りがあることを実質的に認めました。10月7日付見解を書き上げた当の本人が「ここまで減肉率(保安院の分析値)について強調するということは、ちょっと強調しすぎたかなあと。0.2(ミリ/年)、0.3(ミリ/年)という数字を金科玉条のように認識しているわけではありません。」と反省の姿勢を示したのです。保安院が東電の運転継続を容認した前提は失われました。保安院は東電を批判し、運転継続を容認した自らの判断を反省しなければなりません。
 ところが、11月16日に保安院院長は、福島県原子力災害センター内で行われた記者会見において、「保安院の判断に問題がなかったと強調。今後も安全性評価の考え方は変えないとの認識を示し」、「『科学的、合理的判断をいかに説明し(福島県に)理解してもらうかが大事だ』と指摘した」(11月17日付河北新報)。「『科学的合理性があり、基本的な考え方は変わらない』と強調し」、「『いくら合理的な判断でも、地元に理解されなければ意味がない。説明責任を果たすよう努力したい』と述べ」た(11月17日付読売新聞福島県版)といいます。これは、11月9日の国会議員を前にした交渉の回答を否定したものであり、まるで福島県の理解が悪いかのような強弁です。

■技術基準適合義務に実質的に違反
 電気事業法は、事業者に対し、原発の運転にあたっては、技術基準に適合することを要求し、これに違反した場合には、技術基準適合義務違反であるとしています。保安院は、9月13日の交渉において、必要肉厚を下回った状態での運転は「違法運転」であると認めています。東電は今年10月の段階で、必要最小肉厚を下回っていることが十分に予測された状態で運転を継続しましたが、これは、実質的に技術基準適合義務に違反していたといえるのではないでしょうか。問題の配管は、停止後の調査により、必要肉厚を下回ってはいなかったことが確認されましたが、問題の本質を変えるものではありません。
 保安院としては立場上、技術基準を下回っている可能性が否定できない状態での運転を容認することはできず、しかし9月14日に一旦運転を容認してしまっていたため、技術基準を下回っている可能性の方を強引に否定したのではないでしょうか。美浜原発3号機事故に際して、追加点検で美浜2号機で余寿命1年未満の配管を使用していたことが見つかった件について、問題があると指摘していた経緯もありました。

■東電を批判しない保安院の姿勢
 かといって、保安院が本気で、東電に法令を順守させようとしたという訳ではありません。そもそも東電の姿勢は、保安院の減肉率についての見解の当否を全く別にしても大問題ではないでしょうか。技術基準適合義務に対し、違反を承知の確信犯的な運転を行っておきながら、東電勝俣社長は11月10日の新原子力長期計画策定会議においても「全く問題ない。県に対して説明不足だった」と豪語しています。原発の運転に際し法令を順守しようという姿勢などまるでなく、東電トラブル隠し問題などどこ吹く風です。なぜ保安院はこれを批判しないのでしょうか。
 保安院は、美浜原発3号機事故後の保安検査において、関西電力のみならず、北海道電力、日本原電及び九州電力のPWR各社が、余寿命1年未満の配管について、再評価をした上で運転を続けていた事実を確認し、これを「不適切な判定基準の適用事例」としています。これとまったく同じことを東電が行なっているのに、こちらに対しては、咎めることなく運転を容認しています。前者が咎めを受けて、後者が咎めを受けないのは全くおかしなことです。
 また、東電が行った局所的な減肉の評価についても、美浜3号機事故調査委員会において保安院が作成した「中間とりまとめ」に「検討することが望まれる」とあるように、今後の課題とされているだけで、現在は「配管全周が、測定された最小肉厚まで減肉していると想定」して判定が行われており、東電もそのように判定しなければならないはずです。東電が局部減肉の評価を行い、これを運転継続の根拠に挙げている点についても、保安院は批判すべき立場にあります。
 保安院は東電を批判することはなく、それどころか、東電と口をそろえて福島県に対峙しています。保安院は東電と同じ立場にあるようです。これは技術基準が「性能規格化」によって、法令としては抜け殻のようになろうとしている今、大変危険なことではないでしょうか。

■保安院は見解を撤回せよ
 保安院は9月14日に、福島第一原発5号機の余寿命1年未満の配管が取替えずに運転をしている事実を掴んだ時点で、東電に対し、直ちに取替えるよう勧告すべきでした。10月5日に福島県から見解を問われた際にも、お粗末な理屈で取り繕うのではなく、9月14日の判断が誤りであったと認め、東電の姿勢を批判すべきでした。保安院は、今からでも9月14日の判断の誤りを認め、11月16日の院長会見および10月7日見解を撤回すべきです。

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November 13, 2004

BWR原発の減肉問題 7

 2次系配管が減肉で破断した美浜3号機事故以降、東電交渉では東電の配管減肉管理を問題にして議論してきました。1次系しかないBWRの場合、PWRよりも厳格な管理が求められるはずなのですが、実態は、ずさんな管理が問題になっているPWRよりもさらにずさんであることが明らかになっています。原発の配管減肉管理については、①炭素鋼に焦点をあてた管理しかしていない、②オリフィスやエルボなど偏流が発生する部位しか問題にしていないが現に直管でも減肉が見つかっている、③極々限られた点検箇所についても点検頻度は少なく、想定されている減肉率よりも高い減肉や加速するような減肉があれば次の点検までに破断してしまう恐れがある、などの問題が既にあるのですが、ここでは点検箇所数について分析してみたいと思います。

 BWRの場合、PWRと比べて点検対象箇所が多い割には、実際に点検した箇所数は少なく、東電もその例外ではありません。福島第二1号機では2787箇所中272箇所。最も古い福島第一1号機でも1080箇所中303箇所にすぎません。さらに、残りすべてを点検するわけではなく、将来も点検されることのない部位が多数存在します。今回11月5日に行われた東電交渉では、その数値が明らかになりました。
 
号機     点検対象 点検済 未点検 予定有 予定無
福島第一1  1080  303   777  228   549
福島第一2  2157  465  1692  342  1350
福島第一3  2315  333  1982  444  1538
福島第一4  1858  183  1675    0  1675
福島第一5  2328  627  1701  224  1477
福島第一6  2725  597  2128  219  1909
福島第二1  2787  272  2515  941  1574
福島第二2  3133  233  2900  238  2662
福島第二3  3117  375  2742  893  1849
福島第二4  2627  146  2481  241  2240
柏崎刈羽1  2758  463  2295  213  2082
柏崎刈羽2  3047  290  2757  437  2320
柏崎刈羽3  2667  145  2522  388  2134
柏崎刈羽4  1986  123  1863  601  1262
柏崎刈羽5  2596  139  2457  932  1525
柏崎刈羽6  2957   66  2891  560  2331
柏崎刈羽7  3257  108  3149  107  3042

(点検対象=点検済+未点検 未点検=予定有+予定無)

 福島第二1号機の例では、まだ点検を行っていない2515箇所のうち今後点検の予定があるのが941箇所。残りの1574箇所は将来も点検されないということになります。この数値は新しい炉ほど多く、最新の柏崎刈羽7号機では3257箇所の点検対象のうち、実に3042箇所が過去も将来も点検されないという状況です。
 点検対象部位でありながら過去も将来も点検しなくてもよい部位について東電は、代表部位の点検結果にて評価を実施していると説明しています。例えば、A系とB系の2系統ある配管については、どちらか一方だけを点検すれば
よいといった扱いです。新しい炉ほど検査しなくもよい部位が増えるのは、他の原発からの類推まで行っているからです。
 しかし、このようなやりかたでは配管の減肉管理が十分にはできません。関西電力大飯1号機では、4つある系統の類似部位のうち、A~Cの3系統で減肉が見つかり、D系統はほとんど減肉がみられないという減肉事例がありました。もしD系統が代表部位であり、そのためにA~C系統の点検が行われなかったとしたら、必要最小肉厚を割り込むような危険な減肉を発見することはできなかったでしょう。
 また原子力安全・保安院は、美浜原発3号機の事故後に、関西電力が未点検箇所のうち11箇所について、類似箇所の点検結果からの推定によって管理していると主張したことについて「関西電力㈱が、同一仕様プラントの測定結果からの推定によって管理していると主張する11箇所は、…適切な管理が行われていなかったと判断した。」と批判しています。この批判はそのまま東電に当てはまるものです。代表部位の点検結果によって評価が可能であるとするようなやり方は厳しく批判されなければなりません。

 話はまだ終わりません。東電が保安院に提出した「調査報告」の一覧には、各系統ごとに、点検済みと未点検の箇所数があるのですが、これと今回明らかになった数値を比べると、代表部位がないにもかかわらず、将来にわたり点検しない扱いになっている部位があるのです。
 それは福島第一4号機なのですが、「調査報告」によると、この炉の抽気系32箇所とドレン系の432箇所については、点検済が0でありすべてが未点検となっています。ところが、今回明らかになった数値をみると、4号機はすべての未点検部位について、将来点検予定はないことなっています。この系統は代表として点検された部位すら存在せず、なのに、ただの1箇所も点検されないまま将来も運転が続くことになります。
 この点について、東電は「代表部位であった箇所の配管を対策材に交換したために、炭素鋼の管理からはずれ、数字上0になったのではないか」と説明しています。であれば、別に代表部位を設定し直さなければならないはずなのですが、それが行われていないのです。

 東電交渉後の11月9日には保安院交渉があったのですが、そこでわかったのは、以上のような問題だらけのBWRの減肉管理について、保安院は一切把握していないことです。東電が明らかにした数値を出しながら説明すると彼らはそれを必死にメモしていました。

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October 09, 2004

BWR原発の減肉問題 6

 福島第一原発5号機の配管が、必要最小肉厚を切っている可能性があるのに、運転が継続している問題については、以下の記事が流れています。

配管の厚さ基準以下か 福島第一原発5号機/河北新報

福島第1原発5号機の配管、基準値超え「減肉」か--県、東電に説明求める/福島毎日

 福島県の問い合わせに対して、保安院が見解をHPで流しています。

保安院「福島第一原子力発電所5号機の配管減肉管理について」

福島第1原発5号機、安全上問題なし 配管減肉の可能性 保安院、県に回答/福島毎日

 原発の運転にあたり、法令を遵守させるという保安院の最低限の職務をも放棄し、技術基準適合義務に違反している疑いがありながら、運転の継続を容認するひどい内容です。法律など守らなくても安全だ、という信じがたい見解です。

■東電が福島第一原発5号機の配管で大幅な減肉を確認したのは昨年5月でした。この時点で配管の余寿命は0.8年しかなく、定検を終えて発電を開始した9月から10ヶ月後の今年7月には、必要最小肉厚を切る計算になります。ところが東電は次回定期検査の今年11月まで使用しても問題ないと判断し、保安院もこれを容認しているのです。

■保安院は容認の理由にまず、①減肉が局部的であること、②昨年の定期検査時の最小肉厚部においても技術基準に対して一定の余裕があること、③今回東電が用いた減肉率が過大に評価されている可能性があること、の三点を挙げています。しかし以下のように理由にはなりません。

 局部減肉の評価方法は、保安院の美浜事故調の中間とりまとめに「検討することが望まれる」とあるように、今後の課題とされているだけで、現在は「配管全周が、測定された最小肉厚まで減肉していると想定」して判定が行われています。

 また、問題の配管は、1995年に最小で7.1ミリだった肉厚が、昨年の定検で最小4.3ミリとなっていました。技術基準による必要最小肉厚は3.8ミリであり、余裕などありません。安全側に立つのであれば、現在はもう必要肉厚を切っているとの前提で対処すべきです。

 保安院は、東電が余寿命の計算に用いた減肉率0.6ミリ/年が、保安院がPWRで解析した0.2~0.3ミリ/年よりも高いことから、東電の用いた減肉率が過大に評価されている可能性があると指摘しています。
 保安院が減肉率の解析に用いたデータが、美浜3号機を除くと、保安院が各原発につき1例ずつ、電力会社に任意に提出させたもので、減肉率が高いものではなく、逆に、電力会社が減肉率の低い無難な事例を出したとみるべきでしょう。保安院が解析に用いたデータが、減肉の実態を反映しておらず、保安院が解析して得た減肉率が、過小に評価されているのではないでしょうか。
 それに、保安院が解析用いた減肉事例は、今回問題となっている箇所とは流速や温度の条件が異なります。

■保安院は、続けて驚くべき理由を挙げます。
「加えて、現在適用している配管肉厚に関する技術基準には、元々十分な安全裕度が盛り込まれているため、前回の定期検査の時点で一定の裕度を持って技術基準を満たしていた配管については、その後の運転期間中に減肉が進み、仮に技術基準上の最小許容肉厚に達したとしても、これがただちに安全上の問題に結びつくことはない。」

 電気事業法は、技術基準に適合することを要求し、配管の肉厚が技術基準で示される必要最小肉厚を上回る状態を維持することを求めています。これは自主点検の部位についても適用されます。これに違反した場合は、保安院は技術基準適合命令を発し、それにも従わない場合には罰せられます。保安院はこの法律を遵守させ、技術基準に適合するように事業者を監督する立場にあるはずです。技術基準には余裕があるから必要肉厚を切っても大丈夫だというのは、こうした立場を捨てるものです。一体何のための技術基準か、何のための安全余裕か、何のための電気事業法か、保安院の存在意義すら疑いたくなります。

 保安院は、問題の部位が美浜3号機事故と同様な事故が起こらない部位であることも理由に挙げていますが、美浜事故と同じ事故だけを問題にするのは、配管破断の影響をあまりに矮小化しすぎではないでしょうか。

 見解は、東電が「配管内の圧力などを計算すると、実際には肉厚0.3ミリでも耐えられ、余寿命も6年あると解釈して交換期を11月からの定検時に決めた」ことを事実上容認するものであり、となると保安院が、関電が独自の解釈をして寿命を長く計算していたことを批判したのとは異なる対応を取っていることになります。

■保安院によると、今回の経緯は以下のようでした。
・本年8月…保安院は美浜3号機事故を踏まえ、減肉管理が行われていない部位の有無を至急調査。
・本年9月…保安院は全国の保安検査官に対し、過去の減肉管理状況を保安検査の一環として確認するよう指示。
・本年9月14日…福島第一保安検査官事務所において、保安検査実施中に前記のような点検記録があることを確認。保安検査官が東京電力の説明を聴取し、本院原子力発電検査課とも協議した結果、次回定期検査まで運転を継続しても安全上の問題は生じないと判断。
・本年10月5日…福島県からの求めに応じて東電が過去の配管肉厚点検記録を同県に説明した中に上記の測定結果が含まれていた。
・本年10月6日…福島県は当院福島第一保安検査官事務所長あてにFAXを送付し、本件に関する当院の見解を求めてきた。

 もし福島県が動かず、11月の定検まで配管がもてば、この件は誰にも明かされることなく済んでいたでしょう。9月に容認したのはそうした動きを想定していたのではないでしょうか。福島県の指摘を受けたからには、直ちに止めて検査をさせるべきだったのですが、一旦容認していた経緯があったことから、メンツを優先し、開き直ってとんでもない見解を出してきたのではないでしょうか。

 福島県は、保安院の見解に疑いを呈し、東電に対して運転の停止を要求しています。

「速やかに配管交換を」/県、事実上の運転停止要請/福島第一原発5号機の減肉/福島民報

福島第1原発:5号機の配管が減肉、県「運転停止を」--東電に/毎日新聞

配管早急に交換を 東電に県要求 福島第一原発5号機/河北新報

 保安院は、今からでも見解を撤回し、直ちに福島第一原発5号機を停止し、問題部位の検査をさせるべきです。福島県にも強い姿勢で事に当たってもらいたいと思います。また、9月に減肉の過去の管理状況を調査した結果についても包み隠さずに明らかにすべきです。

(10月9日記)

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October 06, 2004

BWR原発の減肉問題 5

福島第一原発で、配管の肉厚が必要肉厚を切っている疑いがある状態で、交換せずに運転されているとの記事が流れています。

共同通信2004.10.06

・もし必要肉厚を切っていれば、技術基準適合義務違反になるのではないでしょうか。即刻止めて点検すべきです。

・東電は減肉が局部的なので問題がないという見解のようです。これは保安院が、美浜3号機事故の中間とりまとめで示唆している緩和策の先取りにも見えます。中間とりまとめには局部減肉を全周の減肉と区別し、健全性評価を行えば交換せずにすむ評価方法の検討が望まれるとあります。東電不正事件を逆手にとって、ひび割れを放置しての運転を容認したのと同じ構図です。事故のどさくさに緩和策の導入を目論む保安院も保安院ですが、「検討が望まれる」というだけのものに飛びつく東電も東電です。

・BWRでも配管の減肉は深刻な問題であり、また美浜事故後の保安院の調査が全く不十分であることが、女川の事例に続き、この福島の事例でますます明らかになったのではないでしょうか。保安院が事故後の報告徴収で電力会社に「任意に」提出させた減肉事例は、減肉の程度が低い、都合のいいものだけであったことが明確になりました。このようなデータによって減肉管理の妥当性など確認の使用がありません。減肉管理の議論に欠かせないはずの減肉の実態の把握が全く不十分です。保安院は、各電力から減肉率が最大の事例を報告させ、そのデータをもって減肉管理の分析を改めて行うべきです。

(10月6日記)

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October 03, 2004

BWR原発の減肉問題 4

■BWR要請書提出の報道
 美浜事故に際してBWR関係団体の要請書を送付したのは9月23日でした。届いた24日に石巻と東京で記者会見を行い、宮城では新聞、テレビで報道されました。

 読売新聞は9月25日付宮城版で、「東北電力の女川原子力発電所2号機(女川町など)で一部の配管の厚さ(肉厚)がほぼ半分にまで薄くなる「減肉現象」が確認されたいた問題を巡り、「原子力発電を考える石巻市民の会」など原発立地地域と電力消費地の十六市民団体が二十四日、女川原発2号機の減肉現象の徹底した調査などを求める要請書を経済産業省原子力安全・保安院に提出した。減肉現象が原因で起きたとみられる、関西電力美浜原発3号機の配管破損事故について、総合資源エネルギー調査会(経産省の諮問機関)の事故調査委員会は二十七日に中間とりまとめを行う予定。市民団体側は「事故調は沸騰水型原発での減肉の管理指針が妥当かとうかも検討課題だったのに、女川原発2号機の減肉現象を全く議論していない。現段階では中間とりまとめを行うのは拙速すぎる」としている。」としています。
 また、河北新報は、「原発配管問題「情報公開を」-石巻など市民団体 保安院に要請書」との見出しで、「宮城や福島など沸騰水型軽水炉原発の立地、消費地の十六の市民団体は二十四日、経済産業省原子力安全・保安院などに対して「配管の激しい減肉現象が明らかになった東北電力女川原発(宮城県女川町、牡鹿町)など、沸騰水型原発の実態把握が不十分だ」として、徹底調査と情報公開を求める要請書を提出した。関西電力美浜原発(福井県、加圧水型炉)で起きた蒸気噴出事故の調査委員会は、二十七日に中間報告を取りまとめる予定にしている。市民団体は調査委に対し「沸騰水型使用の電力各社に、減肉率の最も高い事例のデータを提出させた上で、管理指針の分析に当たるべきだ」と求めている。原子力発電を考える石巻市民の会の日下郁郎事務局長は「女川2号機で(減肉の)対策材である低合金鋼に激しい減肉が発生したことは深刻な事態で、現在の管理指針の妥当性が疑われる」と指摘している。」と報じています。

■替えても替えても減肉
-女川原発1・2号機で起きていた驚くべき事態

 女川原発2号機の減肉事例については、その後29日に東北電力からの発表があったのですが、それが驚くべきものでした。

 女川原子力発電所1・2号機 高圧給水加熱器 ベント管の減肉事象について/東北電力

 29日以前に明らかになっていたのは、女川原発1号機で89年に見つかっていた炭素鋼の減肉事例と女川原発2号機で96年と98年に見つかっていた低合金鋼の減肉事例だけでした。
 今回、女川原発1号機についてはその後、炭素鋼を低合金鋼に変えた後も、同様に肉厚の半分に至る減肉(2~4年で3㎜)が見つかり、さらに、そこをステンレス鋼にに替えた後もわずか1年で4㎜を超える減肉が発生していたことが明らかになりました。女川原発2号機についても、98年にステンレス鋼に交換した後も4年余りの期間に8㎜もの減肉が発生していたというのです。
 東北電力の報告から肉厚が最小となっている主なものを拾い出すと以下のようになります。

女川原発1号機
●炭素鋼
・84年 6.0mm(建設時)
・89年 3.5㎜→低合金鋼に交換
●低合金鋼
・90年 6.0㎜(交換時)
・93年 3.5㎜
・95年 3.0㎜→ステンレス鋼に交換
●ステンレス鋼
・97年 30.6㎜(交換時)
・98年 27.3㎜
・02年 25.7㎜

女川原発2号機
●低合金鋼
・95年 6.6㎜(建設時)
・96年 3.2㎜
・98年 3.0㎜→ステンレス鋼に交換
●ステンレス鋼
・98年 30.3㎜(交換時)
・99年 26.7㎜
・03年 22.3㎜

 これぞ「いたちごっこ」という感じですが、減肉の対策材である低合金鋼はおろか、減肉とは無縁のはずのステンレス鋼においても激しい減肉があったというのは驚きです。配管を次々と交換した東北電力の対応は全く功を奏していません。
 東北電力は原因を「給水加熱器内のベント管に巻き込まれた凝縮水がオリフィスに到達し、蒸気流とともに水滴としてオリフィス出口へ音速に近い速度で噴出され、その延長部分の限定された出口配管部分が浸食されたため」としています。一般に炭素鋼の減肉の原因とされる浸食と腐食(エロージョンコロージョン)ではなく、音速に近い水滴の噴出による浸食(エロージョン)によるものとの見解です。新聞は以下のように伝えています。

 減肉の原因は浸食/女川原発1、2号機/朝日新聞宮城版
 
 女川原発の配管減肉、原因は水の浸食-腐食対策、有効でなく 東北電力/毎日新聞宮城版

■保安院は何をしているのか?
 要請書を提出した3日後の9月27日に、保安院が事務局を務める美浜事故の事故調が開かれました。そこで保安院作成の「中間とりまとめ」が確認されたのですが、結局女川の件は全く議論されませんでした。それどころか保安院は、原因の違いを理由に女川の件を美浜の件とあくまで切り離そうとしています。中間とりまとめでは、「BWRについては…現在の管理手法で特に問題となるものではないと考える」との文言が削除されたのですが、その理由は女川の件があったことしか考えられません。保安院の対応はこの点だけを捉えても矛盾しています。
 女川の事例は減肉事例であり、減肉の管理指針の分析には当然含めるべきものです。原因が異なる新しい事例であるのならばなおさら、現在の管理手法では全く不十分であるということになるので、事故調においても当然議論すべきでしょう。また、女川と同様な事例が他の原発にもないのかについては直ちに調査し、結果を明らかにすべきです。
 また、東北電力が、女川原発1号機の最初の減肉だけを公開し、残りの情報を隠していたことも問題ですし、保安院が美浜事故後の調査においても、この件を把握できなかったことも問題です。東電不正事件であれだけ問題になったにも関らず、情報隠蔽の体質は一向に変わっていません。

■「局部減肉に別の評価」の布石
 中間とりまとめでは、削除された文言がある一方で、加わった記述もあります。なお書きでくわわった局部減肉についての記述です。保安院が書いて小林委員と調整したようです。

「なお、「5.1 PWR配管に係る減肉」及び「5.2 BWR配管に係る減肉」に示された減肉の管理手法においては、1断面当たり8点又は4点の測定ポイントについて測定を行い、一定の判断基準肉厚以下になった場合には、詳細測定を行い、測定された最小肉厚を技術基準から計算される必要肉厚と対比して判定が行われている。この管理手法では、「配管全周が、測定された最小肉厚まで減肉していると想定」して判定が行われている。
 配管の減肉に関するこうした管理手法は、測定において最小肉厚部位を検知している限り十分に保守的なものであるが、実際の配管の減肉現象においては、局部的に減肉の進展度合いの異なる局部減肉が多く見られる。
 したがって、上記のように、中立機関において新しい民間指針を検討するに際しては、このような局部的な減肉の発生しやすい部位を摘出するとともに、その測定方法及び詳細測定においてこれが確認された場合の健全性評価方法等についても併せて検討することが望まれる。」

 これは、局所減肉の存在を認めた上で、だからより厳しく検査、評価しよう…というのではなく、逆に、現在の測定で局所減肉が見つけられることを前提に、局所減肉であっても全周が減肉したとする評価方法が保守的過ぎるので、別に健全性評価を行おう…という後ろ向きなもののようです。
 東電不正事件を逆手にとって、ひび割れ放置運転を容認する維持基準を導入したステンレス鋼の応力腐食割れと同じやり方で、減肉についても局部減肉を別扱いし、別の評価方法を導入することによって、交換せずに済ませようとしているのではないでしょうか。指針を上回る減肉事例が出てきたときのために布石を打とうとしているようにも見えます。監視の目を強めなくては…。

(10月2日記)

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September 20, 2004

BWR原発の減肉問題 3

■減肉率の分析
 測定された肉厚から実際に減肉が進む速さはどの程度なのか、それが「管理指針」で想定されている初期設定値に比べてどうかというのは、管理指針の妥当性を確認するために重要な話で、保安院も第3回事故調資料3-1-3でそのような考察を行っています。いくつか数字を挙げて比較してみます。単位はいずれも1時間につき1万分の何ミリ、というものです。

① 管理指針の初期設定値
   …0.30~1.15
② 保安院の分析によるPWRの減肉率平均値
   …0.26(0.04~0.43)美浜3は別
③ 保安院の分析によるBWRの減肉率平均値
   …0.13(0.01~0.40)

 保安院は、各電力の調査報告に添付された減肉事例のデータから、各電力からのデータから算出した減肉率を羅列し、上記の平均値を出したうえで、「BWRの減肉については、全体としてPWRより少ない傾向にあり、現在の管理手法で特に問題となるものではないと考える。」(事故調資料3-1-3)としています。
 ところが、女川原発2号機の事例について、減肉率を算出してみると保安院の分析とは全く異なる数値が出てきます。

④ 女川原発2号機の減肉①
    公称肉厚→第1回定検時の減肉率…3.6
⑤ 女川原発2号機の減肉③
    公称肉厚→第1回定検時の減肉率…2.0
⑥ 女川原発2号機の減肉③
    第1回→第2回定検時の減肉率…1.0

 管理指針の初期設定値の最大値を大きく超えるものもあります。さらに「原子力発電情報公開ライブラリー」にある別の東電の減肉事例について、減肉率を算出してみると

⑦ 福島1-1 87年原子炉給水ポンプ
    流量計下流部減肉の減肉率…0.58

となり、保安院が分析した0.12とは大きく異なっています。(④⑤については「負の公差」12.5%を見積もっても減肉率は2.7及び1.1と高い値になります。)

■たまたま出てきたデータが範囲内に収まっていただけ
 なぜ保安院の分析が現実を反映していないのか?問題は保安院のデータの集め方にあります。データは美浜3号機を除き、8月11日付けで保安院が出した報告徴収に対し各電力が提出した調査報告に、各号機につき1例ずつ添付されていたものです。
 この報告徴収は、点検リスト漏れの有無を報告することが目的であり、減肉の実態を把握するものではありませんでした。交渉で保安院は、点検例の添付の指示は口頭で行ったもので、「このときは、そのデータを使って減肉率の評価をしようなどというつもりはまったくなかった」と説明しています。
 どの事例にするのかは電力会社に任されていました。東電は「東電の自主的な判断で、手近にある最近の測定事例から選んだ。」と言っています。高い減肉率の例がないとの保証はなく、むしろ点検の典型例を付けよ、と言われた電力会社が、高い減肉率の例を避けて無難な例を出したとみるべきでしょう。このようなやり方で集めたデータが、管理指針の範囲内に収まっているのははじめから決まっているようなものです。出来レースと言われても仕方ありません。交渉で保安院が告白したように「たまたま出てきたデータが管理指針の範囲内におさまっていただけ」だったのです。交渉の場で福島瑞穂議員が何度も強調していたように、最も高い減肉率の例を出させないと管理指針の妥当性など確認できないでしょう。保安院交渉については美浜の会HPの以下の記事をご覧下さい。
http://www.jca.apc.org/mihama/mihama3/hoanin_kosho040913.htm

■第5回事故調で削除された文言
 先に紹介した第3回事故調資料3-1-3の「BWRの減肉については、全体としてPWRより少ない傾向にあり、現在の管理手法で特に問題となるものではないと考える。」との文言ですが、第4回の「中間とりまとめに記載する
事項について」では、ほぼそのままだったのですが、9月17日の第5回で提示された中間とりまとめ案では、「…調査した結果、BWRの減肉率はPWRを下回っている。」と保安院の分析結果を述べるにとどまり、「現在の管理手法で問題となるものではない」との文言が削除されました。
 これは、女川原発2号機の事実によるものとしか考えられません。地元の運動と、地元の運動と結びついて行われた保安院交渉の成果だと思います。
 しかし一方で、中間とりまとめはおろか、事故調のどの資料をめくっても女川の事例は出てこず、事故調で女川の事例が議論されることはありませんでした。保安院交渉で保安院は、「女川の事例はエロージョン・コロージョンでは
ないかもしれない」などと言い出し、女川の件と美浜3号の件を切り離そうと必至になっています。

 浜岡原発では老朽化した1・2号機について、中部電力がシュラウド交換のための長期停止を決め、これに対し、延命措置をやめ、そのまま停止措置をとるようにとの声が上がっています。保安院に対しては、女川の事例と向き合
い、減肉の最悪事例と向き合い、つまりは老朽炉の停止問題と正面から向き合うよう求めていきたいと思います。

(2000年9月19日記)

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BWR原発の減肉問題 2

女川2号機で見つかっていた対策材の減肉について、2つの疑問から考察を継続します。

■東北電力はなぜこの箇所を調べたのか?
 減肉対策材である「低合金鋼」はPWR管理指針の適用外となっています。BWR各社はPWR管理指針に準じた管理方針を各社が独自に決めているのですが、東北電力が保安院に提出した調査結果によると、東北電力においては低合金鋼も管理の対象に含めています。それでも「減肉が起こりにくい」という扱いで、サンプリングした上で最大10定検毎に測定すればよいことになっています。となると、東北電力が女川原発2号機の第1回定期検査において、この箇所を点検の対象からはずした可能性は多いにあったということになります。なぜ第1回定検にこの箇所を調べることができたのでしょうか?偶然だったのでしょうか?

 女川の件が発覚した直後の9月9日に東電本社交渉があり、その場で「原子力発電情報公開ライブラリー」という公開データベースの中に、過去の減肉事例があることを教えてもらいました。さっそく調べてみると、2号機ではなく女川原発1号機において、以下のような事例が見つかりました。
原子力発電情報公開ライブラリーhttp://www.nucia.jp/

・女川発電所1号機1989年5月22日
・第5回定期検査中、高圧第1給水加熱器Aのベントオリフィス管オリフィス下流部(公称肉厚;6.0㎜)に減肉箇所(測定肉厚;最小3.5㎜)が認められた。そのため,同一設計条件となっている高圧第1給水加熱器Bのベントオリフィス管オリフィス下流部の肉厚測定を追加実施したところ,同様に減肉箇所(測定肉厚;最小3.5㎜)が認められた。
・減肉の認められたベントオリフィス管を外して半割りにし、外観調査を実施したところエロージョン・コロージョンによると見られる減肉が認められた。
・高圧第1給水加熱器内の湿り蒸気が不凝縮性ガスとともにベントオリフィス管に至り、オリフィス前後の圧力差で高速の流体となりオリフィス下流部の管壁に衝突しエロージョン・コロージョンが発生し減肉したものと推定される。
・今定期検査における対策…高圧第1給水加熱器A、Bのベントオリフィス管を同一材質の新管に取替えた。
・恒久対策…次回定期検査時に高圧第1給水加熱器A、Bのベントオリフィス管を耐食性のある低合金鋼の新管に取替る。

 「高圧給水加熱器のベントオリフィス管オリフィス下流部」は、女川原発2号機で問題にしているのと全く同じ箇所です。そこで石巻市民の会の日下さんが東北電力に確認したところ、東北電力はやはり上記の女川原発1号機の事例があったために、女川原発2号機でも同一箇所を測定したということです。もしこの事例がなかったら、おそらくは点検することなく運転を継続していたのではないでしょうか。

■東北電力はなぜ第1回定検時に配管を交換しなかったのか?
 女川原発2号機で見つかっていた4箇所の減肉のうち、第1回定検時にもっとも減肉率が高いのは、公称肉厚が6.6㎜、第1回の測定値が3.2㎜のケースです。運転開始時から定期検査までの時間がおよそ9500時間ですので、ここから計算すると減肉率は1時間あたり1万分の3.6㎜で、必要最小肉厚の0.34㎜に至る余寿命は0.9年となります。(美浜の会の小山さんによると、保安院の資料にある関電のケースでは、減肉率の計算に試運転を含んでいないということなので、保安院のやり方に合わせて試運転時間は除いています。)
 ということは、第1回定期検査の時点で、この配管は一年ともたず、次の定期検査までに必要肉厚を切ってしまう可能性が高いと判断できたことになります。ところが東北電力はこの配管を交換せずに運転を続け、第2回の定期検査でようやくステンレス鋼に交換します。日下さんが女川原子力保安検査官事務所に聞いたところでは、第1回の定期検査時は充填材(サーマナイト)を配管の回りにまきつけた、ということで、すぐに同じ配管と交換した1号機の対応すらしていません。「対策材に対する対策」までは全く考えておらずすぐに対処できなかった、ということかもしれませんが、必要最小肉厚を切る可能性を承知のうえで次回まで交換をしなかったのであれば、その判断に対する責任が追及されてしかるべきだと思います。
 関連して気になるのが「対策材における激しい減肉」という驚くべき事例にも関らず、当時保安院にも他電力にも知らされた形跡がないことです。交渉において保安院は「9月8日の報道ではじめて知った」と答えていますし、東電も「知らなかった」と言っています。この点は、原子力発電情報公開ライブラリーに掲載され、電力間で情報が共有されている女川原発1号機の同一箇所における減肉事例と大きく異なります。
 東北電力とメーカーは、「対策材」における減肉という起こってはならない現象に頭をかかえ、国にも知らせず、秘密裏に、危険を承知の運転をした後に、ステンレス鋼への交換という「対策の対策」を進めていたのではないでしょうか。もしそうであれば、危険を承知でひび割れを放置しての運転を続け「予防保全」という名目でシュラウドや配管を交換していた東電不正事件とやはり同じ構図であるといえるのではないしょうか。

(9月19日記)

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September 19, 2004

BWR原発の減肉問題 1

 保安院の事故調は、9月中に中間報告をまとめ、関電がルール(減肉の「管理指針」)を守らなかったことだけを問題にし、管理指針そのものは概ね妥当であるとの結論を盛り込もうとしています。「BWRの減肉については、全体としてPWRより少ない傾向にあり、現在の管理手法で特に問題となるものではないと考える。」(事故調資料「中間とりまとめに記載する事項について」)とあるように、BWRについては、PWRと比較しても問題はないとの姿勢です。しかし9月7日に発覚した女川原発の減肉事例は、管理指針及びこれを妥当とする保安院と事故調の見解を根底から覆すものとなっています。

■女川原発2号機で見つかっていた「対策材」の激しい減肉
 問題の減肉事例は「原子力発電を考える石巻市民の会」と「みやぎ脱原発風の会」が8月18日に東北電力に提出したによる公開質問書に対する9月7日の回答及びその後の記者の取材によりはじめて明らかになりました。
 女川原発2号機は95年7月に運転を開始しますが、13ヶ月後の第1回定期検査時(96年8~12月)に、給水加熱器ベント管のオリフィス下流の2つの配管で2箇所ずつ、計4箇所で減肉が見つかりました。中には、公称肉厚6.6㎜の配管が、3.2㎜の厚さにまで減っている箇所もありました。試運転を入れても2年弱で実に3.4㎜もの減肉が進んだことになります。これはPWR原発の管理指針にある初期設定減肉率の最大値(1ミリ/年)を大きく超えるものです。石巻市民の会の日下さんの電話に対し保安院は、「奇異な数字だ。加圧水型でも減肉率が1ミリ/年を超えるものはない」と答えたそうです。
 減肉の進行の異常な速さにも関らず、東北電力はそのまま運転を続け、第2回定期検査時(98年1~3月)にようやくステンレス鋼に交換しました。この時の測定値を第1回定期検査と比較した場合も、減肉率は最大で1ミリ/年近くありました。日下さんが女川保安検査官事務所に問い合わせて明らかになった4箇所の数値は以下のとおりです。

○高圧第1給水加熱器ベント系配管
 減肉①
 ・公称肉厚     6.6㎜ 
 ・必要最小肉厚   0.34mm
 ・第1回定検時肉厚 3.2㎜(公称→1回の減肉 3.4㎜)
 ・第2回定検時肉厚 3.0㎜(1回→2回の減肉 0.2㎜)
 減肉②
 ・公称肉厚     6.6㎜ 
 ・必要最小肉厚   0.34mm
 ・第1回定検時肉厚 4.6㎜(公称→1回の減肉 2.0㎜)
 ・第2回定検時肉厚 4.5㎜(1回→2回の減肉 0.1㎜)

○高圧第2給水加熱器ベント系配管
 減肉③
 ・公称肉厚     7.1㎜ 
 ・必要最小肉厚   0.79mm
 ・第1回定検時肉厚 5.2㎜(公称→1回の減肉 1.9㎜)
 ・第2回定検時肉厚 4.2㎜(1回→2回の減肉 1.0㎜)
 減肉④
 ・公称肉厚     7.1㎜ 
 ・必要最小肉厚   0.79mm
 ・第1回定検時肉厚 6.2㎜(公称→1回の減肉 0.9㎜)
 ・第2回定検時肉厚 5.9㎜(1回→2回の減肉 0.3㎜)

■2つの意味で管理指針の想定を超えるもの
 事例は減肉率が管理指針の初期設定値を超えています。それだけでなく、これが起こった箇所が「炭素鋼」ではなく、減肉が起こりにくい材料とされていた「低合金鋼」という材料でできた配管で起きた点も問題です。炭素鋼を低合金鋼にすることは、「恒久対策」とされていたもので、今でもそのような扱いになっています。だからこそ管理指針は炭素鋼だけを対象にしており、対策材である低合金鋼は指針の適用外になっているのです。この点からも、事例は管理指針の限界を示すものとなっています。
 対策材に交換したから大丈夫だ…。と思っていたら…。
 同じようなことが、東電事件後に問題となったステンレスのひび割れ(応力腐食割れ)問題の時にありました。応力腐食割れが起きにくいとされる対策材(L材)に交換して安心していたら、その対策材から次々とひび割れがみつかり、これをバレないように隠蔽して交換していたというのが事件の構図でした。同じことが減肉でも起きていたことになります。

(9月16日記)

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