BWR原発の減肉問題 3
■減肉率の分析
測定された肉厚から実際に減肉が進む速さはどの程度なのか、それが「管理指針」で想定されている初期設定値に比べてどうかというのは、管理指針の妥当性を確認するために重要な話で、保安院も第3回事故調資料3-1-3でそのような考察を行っています。いくつか数字を挙げて比較してみます。単位はいずれも1時間につき1万分の何ミリ、というものです。
① 管理指針の初期設定値
…0.30~1.15
② 保安院の分析によるPWRの減肉率平均値
…0.26(0.04~0.43)美浜3は別
③ 保安院の分析によるBWRの減肉率平均値
…0.13(0.01~0.40)
保安院は、各電力の調査報告に添付された減肉事例のデータから、各電力からのデータから算出した減肉率を羅列し、上記の平均値を出したうえで、「BWRの減肉については、全体としてPWRより少ない傾向にあり、現在の管理手法で特に問題となるものではないと考える。」(事故調資料3-1-3)としています。
ところが、女川原発2号機の事例について、減肉率を算出してみると保安院の分析とは全く異なる数値が出てきます。
④ 女川原発2号機の減肉①
公称肉厚→第1回定検時の減肉率…3.6
⑤ 女川原発2号機の減肉③
公称肉厚→第1回定検時の減肉率…2.0
⑥ 女川原発2号機の減肉③
第1回→第2回定検時の減肉率…1.0
管理指針の初期設定値の最大値を大きく超えるものもあります。さらに「原子力発電情報公開ライブラリー」にある別の東電の減肉事例について、減肉率を算出してみると
⑦ 福島1-1 87年原子炉給水ポンプ
流量計下流部減肉の減肉率…0.58
となり、保安院が分析した0.12とは大きく異なっています。(④⑤については「負の公差」12.5%を見積もっても減肉率は2.7及び1.1と高い値になります。)
■たまたま出てきたデータが範囲内に収まっていただけ
なぜ保安院の分析が現実を反映していないのか?問題は保安院のデータの集め方にあります。データは美浜3号機を除き、8月11日付けで保安院が出した報告徴収に対し各電力が提出した調査報告に、各号機につき1例ずつ添付されていたものです。
この報告徴収は、点検リスト漏れの有無を報告することが目的であり、減肉の実態を把握するものではありませんでした。交渉で保安院は、点検例の添付の指示は口頭で行ったもので、「このときは、そのデータを使って減肉率の評価をしようなどというつもりはまったくなかった」と説明しています。
どの事例にするのかは電力会社に任されていました。東電は「東電の自主的な判断で、手近にある最近の測定事例から選んだ。」と言っています。高い減肉率の例がないとの保証はなく、むしろ点検の典型例を付けよ、と言われた電力会社が、高い減肉率の例を避けて無難な例を出したとみるべきでしょう。このようなやり方で集めたデータが、管理指針の範囲内に収まっているのははじめから決まっているようなものです。出来レースと言われても仕方ありません。交渉で保安院が告白したように「たまたま出てきたデータが管理指針の範囲内におさまっていただけ」だったのです。交渉の場で福島瑞穂議員が何度も強調していたように、最も高い減肉率の例を出させないと管理指針の妥当性など確認できないでしょう。保安院交渉については美浜の会HPの以下の記事をご覧下さい。
http://www.jca.apc.org/mihama/mihama3/hoanin_kosho040913.htm
■第5回事故調で削除された文言
先に紹介した第3回事故調資料3-1-3の「BWRの減肉については、全体としてPWRより少ない傾向にあり、現在の管理手法で特に問題となるものではないと考える。」との文言ですが、第4回の「中間とりまとめに記載する
事項について」では、ほぼそのままだったのですが、9月17日の第5回で提示された中間とりまとめ案では、「…調査した結果、BWRの減肉率はPWRを下回っている。」と保安院の分析結果を述べるにとどまり、「現在の管理手法で問題となるものではない」との文言が削除されました。
これは、女川原発2号機の事実によるものとしか考えられません。地元の運動と、地元の運動と結びついて行われた保安院交渉の成果だと思います。
しかし一方で、中間とりまとめはおろか、事故調のどの資料をめくっても女川の事例は出てこず、事故調で女川の事例が議論されることはありませんでした。保安院交渉で保安院は、「女川の事例はエロージョン・コロージョンでは
ないかもしれない」などと言い出し、女川の件と美浜3号の件を切り離そうと必至になっています。
浜岡原発では老朽化した1・2号機について、中部電力がシュラウド交換のための長期停止を決め、これに対し、延命措置をやめ、そのまま停止措置をとるようにとの声が上がっています。保安院に対しては、女川の事例と向き合
い、減肉の最悪事例と向き合い、つまりは老朽炉の停止問題と正面から向き合うよう求めていきたいと思います。
(2000年9月19日記)
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