BWR原発の減肉問題 4
■BWR要請書提出の報道
美浜事故に際してBWR関係団体の要請書を送付したのは9月23日でした。届いた24日に石巻と東京で記者会見を行い、宮城では新聞、テレビで報道されました。
読売新聞は9月25日付宮城版で、「東北電力の女川原子力発電所2号機(女川町など)で一部の配管の厚さ(肉厚)がほぼ半分にまで薄くなる「減肉現象」が確認されたいた問題を巡り、「原子力発電を考える石巻市民の会」など原発立地地域と電力消費地の十六市民団体が二十四日、女川原発2号機の減肉現象の徹底した調査などを求める要請書を経済産業省原子力安全・保安院に提出した。減肉現象が原因で起きたとみられる、関西電力美浜原発3号機の配管破損事故について、総合資源エネルギー調査会(経産省の諮問機関)の事故調査委員会は二十七日に中間とりまとめを行う予定。市民団体側は「事故調は沸騰水型原発での減肉の管理指針が妥当かとうかも検討課題だったのに、女川原発2号機の減肉現象を全く議論していない。現段階では中間とりまとめを行うのは拙速すぎる」としている。」としています。
また、河北新報は、「原発配管問題「情報公開を」-石巻など市民団体 保安院に要請書」との見出しで、「宮城や福島など沸騰水型軽水炉原発の立地、消費地の十六の市民団体は二十四日、経済産業省原子力安全・保安院などに対して「配管の激しい減肉現象が明らかになった東北電力女川原発(宮城県女川町、牡鹿町)など、沸騰水型原発の実態把握が不十分だ」として、徹底調査と情報公開を求める要請書を提出した。関西電力美浜原発(福井県、加圧水型炉)で起きた蒸気噴出事故の調査委員会は、二十七日に中間報告を取りまとめる予定にしている。市民団体は調査委に対し「沸騰水型使用の電力各社に、減肉率の最も高い事例のデータを提出させた上で、管理指針の分析に当たるべきだ」と求めている。原子力発電を考える石巻市民の会の日下郁郎事務局長は「女川2号機で(減肉の)対策材である低合金鋼に激しい減肉が発生したことは深刻な事態で、現在の管理指針の妥当性が疑われる」と指摘している。」と報じています。
■替えても替えても減肉
-女川原発1・2号機で起きていた驚くべき事態
女川原発2号機の減肉事例については、その後29日に東北電力からの発表があったのですが、それが驚くべきものでした。
女川原子力発電所1・2号機 高圧給水加熱器 ベント管の減肉事象について/東北電力
29日以前に明らかになっていたのは、女川原発1号機で89年に見つかっていた炭素鋼の減肉事例と女川原発2号機で96年と98年に見つかっていた低合金鋼の減肉事例だけでした。
今回、女川原発1号機についてはその後、炭素鋼を低合金鋼に変えた後も、同様に肉厚の半分に至る減肉(2~4年で3㎜)が見つかり、さらに、そこをステンレス鋼にに替えた後もわずか1年で4㎜を超える減肉が発生していたことが明らかになりました。女川原発2号機についても、98年にステンレス鋼に交換した後も4年余りの期間に8㎜もの減肉が発生していたというのです。
東北電力の報告から肉厚が最小となっている主なものを拾い出すと以下のようになります。
女川原発1号機
●炭素鋼
・84年 6.0mm(建設時)
・89年 3.5㎜→低合金鋼に交換
●低合金鋼
・90年 6.0㎜(交換時)
・93年 3.5㎜
・95年 3.0㎜→ステンレス鋼に交換
●ステンレス鋼
・97年 30.6㎜(交換時)
・98年 27.3㎜
・02年 25.7㎜
女川原発2号機
●低合金鋼
・95年 6.6㎜(建設時)
・96年 3.2㎜
・98年 3.0㎜→ステンレス鋼に交換
●ステンレス鋼
・98年 30.3㎜(交換時)
・99年 26.7㎜
・03年 22.3㎜
これぞ「いたちごっこ」という感じですが、減肉の対策材である低合金鋼はおろか、減肉とは無縁のはずのステンレス鋼においても激しい減肉があったというのは驚きです。配管を次々と交換した東北電力の対応は全く功を奏していません。
東北電力は原因を「給水加熱器内のベント管に巻き込まれた凝縮水がオリフィスに到達し、蒸気流とともに水滴としてオリフィス出口へ音速に近い速度で噴出され、その延長部分の限定された出口配管部分が浸食されたため」としています。一般に炭素鋼の減肉の原因とされる浸食と腐食(エロージョンコロージョン)ではなく、音速に近い水滴の噴出による浸食(エロージョン)によるものとの見解です。新聞は以下のように伝えています。
減肉の原因は浸食/女川原発1、2号機/朝日新聞宮城版
女川原発の配管減肉、原因は水の浸食-腐食対策、有効でなく 東北電力/毎日新聞宮城版
■保安院は何をしているのか?
要請書を提出した3日後の9月27日に、保安院が事務局を務める美浜事故の事故調が開かれました。そこで保安院作成の「中間とりまとめ」が確認されたのですが、結局女川の件は全く議論されませんでした。それどころか保安院は、原因の違いを理由に女川の件を美浜の件とあくまで切り離そうとしています。中間とりまとめでは、「BWRについては…現在の管理手法で特に問題となるものではないと考える」との文言が削除されたのですが、その理由は女川の件があったことしか考えられません。保安院の対応はこの点だけを捉えても矛盾しています。
女川の事例は減肉事例であり、減肉の管理指針の分析には当然含めるべきものです。原因が異なる新しい事例であるのならばなおさら、現在の管理手法では全く不十分であるということになるので、事故調においても当然議論すべきでしょう。また、女川と同様な事例が他の原発にもないのかについては直ちに調査し、結果を明らかにすべきです。
また、東北電力が、女川原発1号機の最初の減肉だけを公開し、残りの情報を隠していたことも問題ですし、保安院が美浜事故後の調査においても、この件を把握できなかったことも問題です。東電不正事件であれだけ問題になったにも関らず、情報隠蔽の体質は一向に変わっていません。
■「局部減肉に別の評価」の布石
中間とりまとめでは、削除された文言がある一方で、加わった記述もあります。なお書きでくわわった局部減肉についての記述です。保安院が書いて小林委員と調整したようです。
「なお、「5.1 PWR配管に係る減肉」及び「5.2 BWR配管に係る減肉」に示された減肉の管理手法においては、1断面当たり8点又は4点の測定ポイントについて測定を行い、一定の判断基準肉厚以下になった場合には、詳細測定を行い、測定された最小肉厚を技術基準から計算される必要肉厚と対比して判定が行われている。この管理手法では、「配管全周が、測定された最小肉厚まで減肉していると想定」して判定が行われている。
配管の減肉に関するこうした管理手法は、測定において最小肉厚部位を検知している限り十分に保守的なものであるが、実際の配管の減肉現象においては、局部的に減肉の進展度合いの異なる局部減肉が多く見られる。
したがって、上記のように、中立機関において新しい民間指針を検討するに際しては、このような局部的な減肉の発生しやすい部位を摘出するとともに、その測定方法及び詳細測定においてこれが確認された場合の健全性評価方法等についても併せて検討することが望まれる。」
これは、局所減肉の存在を認めた上で、だからより厳しく検査、評価しよう…というのではなく、逆に、現在の測定で局所減肉が見つけられることを前提に、局所減肉であっても全周が減肉したとする評価方法が保守的過ぎるので、別に健全性評価を行おう…という後ろ向きなもののようです。
東電不正事件を逆手にとって、ひび割れ放置運転を容認する維持基準を導入したステンレス鋼の応力腐食割れと同じやり方で、減肉についても局部減肉を別扱いし、別の評価方法を導入することによって、交換せずに済ませようとしているのではないでしょうか。指針を上回る減肉事例が出てきたときのために布石を打とうとしているようにも見えます。監視の目を強めなくては…。
(10月2日記)
| 固定リンク
