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2010/04/24

【論説】福島第一原発3号機でプルサーマルが許されない5つの理由

2010年4月24日 福島老朽原発を考える会

■はじめに

 佐藤雄平福島県知事は2月16日の県議会本会議で、耐震安全性、老朽化対策、MOX燃料の健全性の確認を条件に、福島プルサーマルを容認することを表明しました。東京電力は、福島第一原発3号機に10年以上貯蔵されていたMOX燃料の外観検査に入りました。早ければこの6月からの定期検査で装荷されるという報道もあります。しかしこのパンフレットで明らかにするように、プルサーマルを復活させる理由は全くありません。

 福島県がこだわっていた使用済MOX燃料の処理の問題は3条件には含まれていません。玄海プルサーマル実施を知事が評価してのことと伝えられていますが、全く見当違いです。この問題が解決に向かうどころかますます状況が悪くなっていることは、六ヶ所再処理工場の現状からも明らかです。耐震安全性、老朽化対策、MOX燃料の3条件を含め、以下のように福島プルサーマルの実施が許されない理由を挙げることができます。

 ■許されない理由その1…老朽化を考慮した耐震安全性は未確認
 ■許されない理由その2…装荷10年以上の遅れは安全審査の想定外
 ■許されない理由その3…燃料から放射能が漏れても止めない姿勢に問題
 ■許されない理由その4…使用済MOX燃料は永久に福島に留め置かれる
 ■許されない理由その5…MOX燃料の品質保証問題は未解決

 パンフレットでは冒頭に、プルサーマルとは何か?プルサーマルの何が問題なのか?基本的なところをまとめた項を設けました。

 プルサーマルとは何か?何が問題なのか?

 さらに、福島でのプルサーマルが10年以上止まっていた背景、及び使用済MOX燃料問題の背景にある六ヶ所再処理工場の現状について理解を進めるために、以下の付録をつけています。合わせてご一読ください。

 <付録1>福島プルサーマルが10年以上止まっているのはなぜか?
 <付録2>六ヶ所再処理工場の現状

 このパンフレットが、福島プルサーマルを止めるための一助となれば幸いです。

■プルサーマルとは何か?何が問題なのか?

■プルサーマルとは?

 通常の原発は、ウラン燃料を燃焼させていますが、燃料の中ではプルトニウムという物質が発生し、使用済核燃料の中に残ります。このプルトニウムを取り出して再び燃料として使用するのが「プルトニウム利用計画」です。中でもプルトニウム燃料を通常の原発で使用することを「プルサーマル」と称しています。また、プルサーマルに用いられる燃料は「MOX(モックス)燃料」と呼ばれています。
 プルサーマルは、プルトニウム利用計画の中ではつなぎ役にすぎないはずのものでした。本命は、はじめからプルトニウム燃料を使い、炉の中でプルトニウムを増殖させる「高速増殖炉」という特殊な原発でした。しかし、その開発が遅れに遅れた上に、原型炉「もんじゅ」の事故で、その開発が失敗であることが明らかになりました。そこでつなぎ役のプルサーマルが主役に踊り出たのです。しかし、以下のようにさまざまな問題点があります。

■安全性が未確認のままでの見切り発車

 通常の原発はウランを燃料にすることを前提に作られています。そこに無理やりにプルトニウム燃料を入れて使うのがプルサーマルです。ウランとプルトニウムの特性の違いから、安全上のさまざまな問題が出てくることは、東京電力も認めています。異常が起きたときにそれを止めるための制御棒がはたらきにくくなったり、異常をさらに加速する「暴走」を起こしやすくなったりする、といった問題です。さらに、毒性が強いことから、放射能が放出するような事故の際には、被害はウラン燃料の何倍にもなります。
 国や電力会社はプルサーマルについて、ヨーロッパで十分な実績があるものであり、さらに国内での実験によって安全性が確認されていると宣伝しています。しかしその実験は、たった2体のしかも濃度が低いプルトニウム燃料を小型炉に入れただけのものです。240体の、濃度が高いプルトニウム燃料を入れる本格利用とはあまりに条件が違いすぎます。ヨーロッパの実績についても、東京電力の原発と同じ型であるBWR(沸騰水型原子炉)では、現在ドイツの2機の原発で使われているにすぎません。ヨーロッパでは再処理をやめプルトニウム利用から撤退しようという動きが続いています。

■深刻な放射能汚染をひきおこす再処理が不可分

 使用済核燃料からプルトニウムを抽出する工程は「再処理」と呼ばれ、再処理工場と呼ばれる化学工場で行われています。プルサーマルを行うために再処理は不可分のものですが、その再処理工場では原発事故に匹敵する深刻な放射能汚染を日常的に引き起こします。英仏の再処理工場周辺では、小児白血病が増加しています。日本では青森県六ヶ所村に再処理工場が建設中ですが、試運転の段階で死の灰をガラスで固める工程に深刻な欠陥が見つかっています。

■使用済MOX燃料の行き場がない

 プルサーマルが進むと、使用済MOX燃料が生まれます。使用済MOX燃料は、通常の使用済核燃料とは性質が異なり、建設中の六ヶ所再処理工場を含めて、今ある再処理工場では処理ができません。冷却に500年もかかるので直接処分することもできません。一旦使用済MOX燃料ができてしまうと、永久に原発に留め置かれることになります。

■コストはウラン燃料の10倍以上

 これまで、日本の原発で出た使用済核燃料は、英仏の再処理工場に送られていました。福島第一原発3号機のMOX燃料は、イギリスの再処理工場で取り出されたプルトニウムを、ベルギーの工場でMOX燃料に加工したものをフランスから船で輸送したものです。MOX燃料製造には輸送費を含めて莫大な費用がかかっており、貿易統計から、輸入ウラン燃料の10倍以上のコストがかかることが明らかになっています。
 今後、六ヶ所再処理工場でとりだされたプルトニウムでつくるMOX燃料についても、再処理工場の建設と運転に莫大な費用がかかることから、やはりウラン燃料の10倍近いコストが見込まれています。コスト的にも割に合わないのです。

■資源の節約になるのか?

 電力会社は、プルサーマルは資源の節約になると盛んに宣伝しています。しかしプルサーマルを行う原子炉はごく僅かであり、節約されるウランは、可採年数で数か月分にすぎません。

■プルサーマルを強行する本当の動機

 このようにいいことが何もないプルサーマルをなぜ推進するのでしょうか。使用済核燃料は、原発内のプールに保管されていますが、これが限界に近づいています。六ヶ所再処理工場のプールも既に満杯です。そこで使用済核燃料の保管所として、中間貯蔵施設を各地に作ろうとしています。しかし行き場がなく居座る核のゴミを受け入れるところはなかなかないでしょう。「ゴミ」を「資源」と呼ぶことでゴミの置き場を確保しようと躍起になっているのです。使用済核燃料を「資源」と言張るために無理にでもプルサーマルを行わざるをえない。これが本当のところではないのでしょうか。原発が生み出し続ける放射性廃棄物の処理処分をどうするかという大問題から目をそらし、先送りにするものでしかありません。

■許されない理由1…老朽化を想定した耐震安全性は未確認

■7ヶ月も隠していた…東京電力が提出した3号機の耐震安全評価にミス

 原発の耐震安全審査指針の改訂に伴い、現在各地の原発において、新指針に基づく新しい基準地震動による耐震安全評価(バックチェックという)が行われています。その後、中越沖地震により想定外の揺れが発生したことから、国はこの地震から反映すべき事項についてバックチェックに取り入れるよう電力会社に要求しています。
 福島第一原発3号機のバックチェックについては、東電から国に対して昨年、中間報告が出ていますが、今年4月19日、東電は福島第一原発・福島第二原発の耐震安全性評価に誤りがあったことを公表しました。東電は誤りがあったことを9月には気づいていましたが、7ヶ月間も隠していました。この7ヶ月間は、福島県エネルギー政策検討会などで、福島第一原発3号機のプルサーマルについての議論がまさに行われていた時期です。東電の安全評価能力が疑われるとともに、2002年の東電事件(東電トラブル隠し)のときにあれだけ問題になった東電の隠蔽体質が一向に改まっていないことが明らかになりました。

■3号機の新指針による耐震安全評価について国の評価は行われていない

 中間報告を受けた国の側は、福島第一原発について国は5号機だけ検討しており、3号機については検討していません。国は5号機の中間報告について、審査の結果、妥当であるとの判断を下しています。国は5号機を「代表号機」を称しており、5号機が問題なければ3号機も問題ないとの姿勢をとっています。これに対して福島県は3号機についても検討するよう要求しています。

■浜岡原発では数百メートルの違いで揺れが2倍に

 福島県の要求はもっともなことです。3号機と5号機では建物のつくりが全く同じではありませんから、同じ地震動に対しても揺れ方が異なるはずです。「代表号機」というのは、号機毎の個性を無視した乱暴なやり方です。
 基準地震動は共通のものを使うとしていますが、浜岡原発では、昨年8月の駿河湾の地震の際に、5号機だけが特異に揺れ、1~4号機の2倍近くになるということがありました。4号機と5号機は数百メートルしか離れていません。中部電力はこれを説明するために、5号機の地下に、チャネル堆積物(昔の川が砂を運んでできた堆積層)がレンズ状に広がっており、これが地震動を増幅させたと説明しています。同様なものが福島第一原発の直下に存在する可能性は否定できません。中越沖地震だけでなく、駿河湾の地震についても反映すべき事項があります。

 いずれにしろ、新指針に基づく耐震安全性について、5号機ではなく3号機について国による審査を受けていない現状では、福島県の3条件を満たすことはなく、プルサーマルの実施は許されません。4月14日には、「国は3号機の耐震安全性評価をほかのプラントに先駆け、早期に実施する方向で最終調整に入った。増子経済産業副大臣は、『省内で前向きに、できるだけ早く評価作業に着手できるよう詰めの協議を進めている』としている。」との報道(福島民報)がありました。

■福島第一原発3号機は高経年化技術評価が義務付けられた老朽炉

 MOX燃料の装荷が当初予定されていた1999年当時、福島第一原発3号機は運転開始24年目の壮年期にありました。その後10年以上経ち、原発は運転開始30年を超え、いまや老朽炉の仲間入りを果たしました。老朽炉になると、運転開始30年後から10年後ごとに高経年化技術評価を実施することが義務付けられます。高経年化技術評価は、機器の材質や環境条件を考慮し、発生しうる経年変化事象に対する保安対策について検討するもので、その一環として高経年化を考慮した耐震安全性評価も行われています。単なる耐震安全評価だけではなく、腐食による減肉やひび割れといった老朽化していることを前提とした耐震安全評価が必要となるのです。次ページの資料は福島県がプルサーマルの検討のために2月に開催した県のエネルギー政策検討会で配布されたものです。福島第一原発3号機の場合、運転開始が1976年でその30年後の2006年に東電より高経年化技術評価報告書(以下「高経年化報告書」という)が提出され、国による評価を受けています。

■耐震安全評価では復水器など許容値ギリギリのものがある

 高経年化報告書にある耐震安全評価では、ひび割れや減肉などの経年変化事象について、これが顕在化した場合に、対象となる機器について構造・強度評価上有意であるかどうかを検討し、抽出された機器について、経年変化事象を考慮した上で、旧指針による基準地震動S1、S2について評価を行います。たとえば、配管が50%厚さまで減肉した場合を想定してS1、S2を入れてみるという具合です。評価結果を見ると次のようにギリギリのものがあります。

 □復水器の胴部に腐食があるとした耐震安全性評価
 Bクラス 発生応力220 許容応力223 設計比99% 余裕1%

 □計装配管に粒界応力腐食割れによる貫通亀裂があるとした耐震安全性評価
 Asクラス 発生応力83 き裂安定限界応力96 設計比86% 余裕14%

■老朽化を考慮した耐震安全評価も行われていない

 今のところ、福島第一原発について基準地震動は、S2(270ガルおよび370ガル)からSs(450ガルおよび600ガル)に大幅に引き上げられようとしています。上記で挙げたものについては許容値を超える可能性が高いと思われます。

旧指針による基準地震動
S2…270ガル
S2(直下地震)…370ガル

新指針による基準地震動
Ss-1H…450ガル
Ss-2H…600ガル
Ss-3H…450ガル

 しかし新指針に対応する新しい基準地震動に対して、高経年化を考慮した耐震安全評価も行われていません。東京電力は4月8日の市民との交渉で、高経年化の考慮は、バックチェック終了後直ちに行うと述べました。しかしこれが終了する目途は全く立っていません。老朽化の観点からもプルサーマルを実施すべきではありません。

■許されない理由2…装荷10年以上の遅れは安全審査の想定外

 今回、佐藤雄平知事がプルサーマル実施の3条件の一つにあげた「貯蔵MOX燃料の健全性の確認」について、東京電力はファイバースコープによる外観検査を実施しました。東京電力は、これにより、燃料棒にひび、さび、異物等などは発見されなかったとしています。

 外観検査で問題がなかったとしても、10年以上貯蔵されたMOX燃料を使うべきではありません。それは、MOX燃料の「装荷遅れ」によりプルトニウム組成が変化し、その場合の安全性が安全審査において確認されていないからです。

 ベルギーで製造された福島第一原発3号機用の最初のMOX燃料32体が原発サイトに到着したのは1999年9月27日でした。燃料はすぐに原子炉に装荷されるはずでしたが、3日後のJCO臨界被曝事故、関西電力のMOX燃料検査不正事件、MOX燃料使用差止裁判を経て、2000年に当時の佐藤栄佐久知事によるプルサーマル凍結宣言、その後、2004年の東電不正事件(トラブル隠し)により福島県がプルサーマルの事前了解を白紙撤回、さらに福島県のエネルギー政策検討会が国の核燃料サイクル政策を批判するなどの動きがあり、MOX燃料は結局10年以上使われることなく、3号機の使用済燃料プールに貯蔵され続けることになりました。<付録1参照>

■安全審査においては5年までの「装荷遅れ」しか検討していなかった

 福島第一原発3号機でのMOX燃料使用に伴う安全審査は、1999年3月に、原子力安全委員会が設置した原子炉安全専門審査会第96部会というところで行われました。安全審査では、燃料について、各種プルトニウムの組成比やプルトニウムの富化度、ウランの濃縮度等について「標準組成」を定め、これを前提に種々の安全評価が行われています(右表…安全審査の資料にある「Pu組成」)。

 表では、「再処理後時間」が2年となっています。この2年は燃料加工と輸送にかかる時間を考慮したもので、その後の装荷遅れを想定したものではありません。「装荷遅れ」については、第96部会第1回会合の「東京電力株式会社福島第一原子力発電所3号炉MOX燃料の核設計について(原子力発電安全企画審査課)」(以下「核設計について」という)の資料の中で検討されています。5.Pu組成の反応度係数及び動特性パラメータへの影響 の中に、「装荷時期の遅れ」という項目があり、以下の記述があります。

「MOX燃料製造後、装荷時期が想定よりも遅れた場合、241Puが241Amに壊変し(半減期;約14.4年)Pu組成が時間と共に変化するため、核特性が若干変化する。MOX燃料を装荷した炉心に対して、5年までの装荷遅れについて影響評価を以下に示す。」(「核設計について」P29)

 ここから、安全審査において、装荷の遅れによる影響として「核特性の変化」が安全上問題になっていたこと、そして5年までの装荷遅れについて検討していたことがわかります。「核特性の変化」として具体的に問題にしているのが、減速材ボイド係数の変化とドッブラ係数の変化です。

 減速材ボイド係数は、原子炉内の冷却水が沸騰して生じる泡(ボイド)が、原子炉内での核分裂反応の度合い(反応度)に与える影響を示すもの、ドップラ係数は、温度が核分裂反応の度合い(反応度)に与える影響を示すものです。福島第一原発を含め、軽水炉ではいずれの係数も負の値となっており、出力が上昇して、沸騰による泡が増えたり、温度が上がったりすると、核分裂反応は逆に抑えられ、出力を下げる方向にはたらくようになっています。しかし、これらの係数が、負であればどんな値でもよいという訳ではありません。装荷の遅れにより係数が変化し、安全解析の入力条件から逸脱するようなことがあってはなりません。それを5年までの装荷遅れについて確認していたのです。

 減速材ボイド係数を例にとると、評価結果は以下のグラフで示されています。

 減速材ボイド係数は、装荷遅れ時間が増すほど、負の方向に絶対値が大きくなっていきます。グラフは5年で終わっていますが、これが10年、15年と延びるとさらに絶対値が大きくなっていくでしょう。しかしそこまでの評価は行っていません。

 しかし現にあるMOX燃料は10年以上装荷が遅れています。もはや標準組成ではありません。これだけで十分、この燃料を使ってはならない理由になります。問題の燃料は、国の安全審査を受けていないに等しいのです。

■10年以上の装荷遅れでは安全解析の条件を逸脱することは明らか

 5年までの装荷遅れの評価結果をもう少しみてみましょう。グラフをみると係数の変化は、減速ボイド係数について5年でマイナス0.5%程度、ドップラ係数についてプラス0.1%程度です。これに対し、安全解析の入力条件では、減速ボイド係数についてはマイナス2%まで、ドップラ係数についてプラス1%までの影響を考慮しています。5年につき0.5%や0.1%程度の変化であれば、さらに10年、15年遅れても安全解析で考慮された範囲内に収まり、問題なさそうにもみえます。そのような反論がすぐに返ってきそうです。しかし「核設計について」をもう少し丁寧に読むとそうではないことがわかります。

 「核設計について」によると、減速材ボイド係数やドップラ係数といった反応度係数に影響を与えるものとして、装荷時期の遅れの他に「初期Pu組成」があります。

 MOX燃料では、原料のPu組成に応じ「反応度補償設計」というものが行われます。プルトニウムには核分裂するものとしないものがありますが、MOX燃料に含まれるプルトニウムのうちで核分裂するプルトニウムの割合は、再処理を行う前の燃料の燃やし方によって変わります。はじめのウラン濃縮度が低く、取り出すまでの燃焼度が高い場合には、核分裂するプルトニウムの割合は低くなり、逆にはじめのウラン濃縮度が高く、取り出すまでの燃焼度が低い場合には核分裂するプルトニウムの割合は高くなります。前者を「低組成」、後者を「高組成」とよびます。もう一度7ページの表をみると、標準組成の左右に低組成と高組成の欄があります。そして、低組成や高組成の場合でも、標準組成と同等の条件にするために、プルトニウムの富化度を調整します。すなわち、低組成の場合には、プルトニウム富化度を上げ、高組成の場合には下げるのです。これが「反応度補償設計」です。そしてこうした初期のプルトニウム組成の違いや反応度補償設計により、減速材ボイド係数やドップラ係数にばらつきが生じるのです。

 「核設計について」では、再処理される前の燃料のさまざまな条件14例について、減速材ボイド係数やドップラ係数に与える影響を評価しています。14例の具体的な条件は資料が白抜きとなっていて不明ですが、沸騰水型原子炉(BWR)以外の炉型からの燃料を再処理した場合についても評価を行っています。減速材ボイド係数について、結果は次のとおりです。

 「×」印が14例を示し、点線が安全解析の入力条件で考慮した範囲を示しています。いずれも考慮した範囲におさまっています。さらに、初期Pu組成と5年までの装荷遅れの両方を加味した場合の評価結果は以下のとおりです。

 これも点線で示された安全解析の入力条件で考慮した範囲に収まっています。しかし5年までの装荷遅れを加味しないものと加味したものを比較すると、加味しないものでは点線から離れて比較的余裕があったものが、装荷遅れを加味することにより点線ぎりぎりとなるものがあります。以下の図のように、このまま10年の装荷遅れまで延長した場合、特に厳しいものについては、安全解析の入力条件で考慮した範囲を超えてしまうことがわかります。

 すなわち、5年を超える装荷遅れは、解析条件ぎりぎりのものを突破させる影響があり、「僅か」で済ませることはできないのです。

 東京電力は市民との交渉の場で、今回使用予定のMOX燃料が、製造から11年4ヶ月、再処理から14年近く経過していることを明らかにしました。さらに安全審査では、5年遅れしか想定していないことを認めたうえで、今回予定の燃料がわずか32体だから影響は小さいと反論しています。しかし、どの程度の影響になるのか、きちんとした評価はまだこれからだといいます。

 また、32体の後に装荷する第二バッチ分についても、フランスのメロックス工場において事実上完成していて、その後10年近く経っていることを認めています。

 いずれにしろ安全審査で確認されていない状況に変わりはありません。東電が国から得た許可は、32体ではなく、全体の1/3にあたる240体の装荷についてです。ですから、安全審査も240体の装荷遅れを問題にしているのです。32体だからよいというのは理由になりません。燃料の組成が安全審査の事故解析の前提となる標準組成から外れている以上、安全審査とそれにもとづく国の許可は無効になったとすべきです。

■許されない理由3…燃料から放射能が漏れても止めない姿勢に問題

■燃料から放射能が漏れても止めない運転

 放射能が漏えいしても原子炉を止めない運転が横行しています。昨年、中越沖地震被災後、柏崎刈羽原発の中で最初に運転再開した7号機で、燃料から放射能が漏えいし、放射能モニタの値が上昇しました。しかし東京電力は原子炉を停止せず、出力を60%に落とした状態で制御棒を抜いたり差したりして放射能漏れを起こしている燃料集合体を特定、これで止めるのかと思いきや、漏えいが疑われる燃料集合体と周辺の燃料集合体で制御棒を全挿入した上で、他の制御用の制御棒を通常よりも抜くことにより、放射能が漏れたまま、定格出力で運転を続けたのです。

 原子力安全・保安院は東京電力のこのようなやり方を認める評価を出しましたが、新潟県が反発し、東京電力は定期検査前の炉の停止を余儀なくされました。

■高燃焼度燃料で多発する燃料からの放射能漏れ

 燃料からの放射能漏えいは多発しています。炉内の異物によるものとされていますが、原因ははっきりしていません。柏崎刈羽原発の場合、地震が影響している可能性もあります。PWR(加圧水型原子炉)では、ここ数年だけでも、2008年に大飯4号機で1体、2009年に大飯2号機で2体(4本の燃料棒)、昨年11月に伊方3号機、今年3月に大飯1号機と、立て続けに高燃焼度燃料からの放射能漏れが発生しています。
 驚いたことに伊方3号機では、高燃焼度ウラン燃料で漏えいが発生し原因も判明していないのに、製造時期が違うというだけで、同種の燃料をそのまま使用した上でプルサーマルの実施に踏み切っています。
 福島第一原発を含むBWR(沸騰水型原子炉)でもウラン燃料の高燃焼度化が進む中で、柏崎刈羽原発の他に、女川原発、浜岡原発、志賀原発などで放射能漏えい事故が発生しています。福島第一3号機でも発生しています。

高燃焼度燃料における燃料漏えいの発生状況(BWR H21.9末現在)新潟県資料より算出
   プラント    装荷燃料本数    漏えい燃料    100万本あたり
    福島第一3号機    87,656    1    11
    福島第一4号機    79,302    2    25
    福島第一6号機    126,672    1    8
    福島第二2号機    121,744    2    16
    福島第二4号機    129,368    1    8
    柏崎刈羽1号機    102,130    2    19
    柏崎刈羽2号機    137,680    1    7
    柏崎刈羽6号機    166,226    3    18
    柏崎刈羽7号機    147,364    5    34
    女川3号機    73,808    2    27
    志賀2号機    64,528    1    15
    浜岡1号機    32,160    1    31

■MOX燃料でも燃料破損が多発

 東北電力が宮城県に提出した資料「MOX燃料の破損実績について」によると、MOX燃料集合体の使用実績6,350体(2008年12月末時点)に対し、世界で少なくとも16件のMOX燃料の破損事例が報告されており、正確な数値は判断しにくいのですが、おおよそ35本の燃料破損が確認できます。

 6,350体の集合体が何本の燃料棒に相当するのかも正確にはわかりませんが、PWR(多くて264本程度)に一部BWR(多くて60本程度)も含まれていることから、1体中およそ200体とすると、破損の発生は、100万本中28本程度と非常に高い数値となります。

■MOX燃料から放射能が漏えいしても止める気はないのか?

 PWRの場合は、放射能モニタから漏えいが疑われた場合には、直ちに原子炉を止め、漏えい燃料集合体を水につけるシッピング検査というものを行い、漏えい燃料の特定、交換を行います。BWRでは、次の定期検査まで漏えいさせながらの運転がこれまでに12例もあり、福島第一原発3号機でもありました。

 このような運転方法は、MOX燃料装荷が予定されていた1999年にはほとんどありませんでした。プルサーマル実施中に燃料からの放射能漏えいが起きたらいったいどうするのでしょうか。

燃料漏えいにおける出力抑制運転実施実績(全BWR計12回)東京電力による
    プラント    実施時期    実施期間    漏えい体数
    柏崎刈羽2号機    H8.12.15    約8ヶ月    1
    柏崎刈羽6号機    H12.5.29    約9ヶ月    1→2※
    福島第一6号機    H13.5.16    約3ヶ月    1
    柏崎刈羽7号機    H14.4.9    約9ヶ月    2
    柏崎刈羽1号機    H17.6.13    約2ヶ月    1
    福島第一4号機    H18.10.2    約4ヶ月    1
    柏崎刈羽7号機    H18.8.23    約1ヶ月    1
    福島第一4号機    H20.3.28    約9.5ヶ月    1
    福島第一3号機    H19.8.31    約1ヶ月    1
    女川3号機    H17.8.16    約1ヶ月    1
    女川3号機    H19.5.10    約1ヶ月    1
    志賀2号機    H21.7.10    約3ヶ月    1
※実施9ヶ月後に2体目が漏えい24時間後に停止

 4月8日に東京電力本社で行われた市民との交渉の席で、東京電力は、プルサーマル実施中に燃料漏えいが疑われても、止めずに運転を続ける可能性を否定しませんでした。老朽化や耐震安全性に考慮するというのはポーズで、老体に鞭打ち、放射能が多少漏れようが止めずに運転を続けるというのが実態です。

■許されない理由4…使用済MOX燃料は永久に福島に留め置かれる

■「中間とりまとめ」の提起はなんら解決していない

 これまで福島県は、使用済MOX燃料の扱いの明確化にこだわってきました。プルサーマル白紙撤回を決めた2002年の県エネルギー政策検討会の中間とりまとめでは、「現在、使用済MOX燃料については、原子力発電所や中間貯蔵施設において貯蔵するとされているが、第二再処理工場の実現可能性が極めて低い中で、使用済MOX燃料の処理をどうするのか明確でない。」と指摘していました。これは今の事態を見事に予見しています。

 六ヶ所再処理工場は、ガラス固化の工程で根本的な欠陥が露呈し、絶望的な状況にあります<付録3参照>。MOX燃料はおろか、ウラン燃料の使用済燃料の行き場もなく、六ヶ所再処理工場のプールは既に満杯、福島第一原発の共用貯蔵プールが溢れるのも時間の問題です。「2010年頃」から開始するはずの第二再処理工場の検討も始まらず、使用済MOX燃料の扱いが不透明な状況に変わりはありません。

 使用済MOX燃料は、建設中の六ヶ所再処理工場を含めて、今ある再処理工場では処理ができません。直接処分をしようにもできません。必要な冷却期間が、通常の使用済核燃料であれば50年のところを、使用済MOX燃料では500年もかかってしまうからです。

 しかし今回、玄海プルサーマル開始を知事が評価する中で、この問題はプルサーマル容認の条件から外されてしまいました。県も玄海原発と佐賀県庁を視察してMOX燃料とウラン燃料の同等性を確認したといいます。しかし地元佐賀では、MOX燃料特有の品質問題とギャップ再開による燃料破損の恐れとやはり使用済MOX燃料の処理ができないことから、住民が裁判に踏み切ろうとしています。知事も県も住民の声を真摯に聞くべきです。

■許されない理由5…MOX燃料の品質保証問題は未解決

■品質保証データを最後まで隠した

 2000年8月から2001年3月にかけて福島地裁で行われた福島MOX燃料使用差止裁判では、燃料の寸法が問題になりました。これは、BNFL社において、寸法検査で不正があったためですが、市民側が裁判に踏み切ったのは、これが単に検査員のモラルといった問題ではなく、MOX燃料には製造特有の問題があり寸法の管理が難しいこと、寸法がわずかでも狂えば原子炉の安全性に影響を及ぼすこと、さらに東電の燃料を製造したベルゴ社の検査がずさんで、もとの検査データに辿って信頼性を検証する必要性があったことからです。しかし、ベルゴ社は必要なデータを公開せず、顧客である東電も要求しませんでした。

 データ不開示の姿勢に対しては、裁判所も判決で批判しています。裁判所はまず、「原子力の安全性の確保は多数の公衆の生命身体の安全性にかかわるものであるから、原子力発電所で使用される原子燃料の品質が問題とされたような場合には、可能な限り具体的なデータを明らかにして各方面における検証を可能とするように務めることが原子力分野で事業を実施する企業の責務というべきであ」る。とした後、ベルゴ社に対し、「本件抜取検査データを企業秘密に属するとしてその一般公開を拒絶しているのであるが、ペレット外径寸法の検査データが重大な製造ノウハウにかかわるものとはおよそ考えがたく、現に競争相手企業であるBNFL社がこれらのデータを一般公開していることに鑑みれば、ベルゴニュークリア社の上記のような姿勢は非難されてもやむを得ないものがある。」東電に対し「発注者の立場で、ベルゴニュークリア社に対し、重ねて特段の要請を行い、同社の頑なな対応に翻意を促し、本件抜取検査データを公開すべく努めた形跡が窺えないことは、原子力発電所という潜在的に危険な施設を設置稼動する立場にあるものとして、必ずしも充分な対応とはいい難い。」としています。

 データ開示の焦点は、1ミクロン刻みの抜取検査データにありました。市民側の再三の要請により東電が公表したデータは4ミクロン刻みに加工されたものでした。上図がその一例です。東京電力の資料です。
 一方、関西電力用MOX燃料で関西の市民団体が不正を暴くもとになった検査データは、右図のように1ミクロン刻みとなっています。抜取検査データは全数計測データの分布から大きくずれた異常な形をしており、ここから不正が明らかになりました。このグラフを東京電力が公開したときに施したのと同じ加工をすると次のページの図のように特に異常は感じられないものとなります。(「美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会」作成)東電は不正があってもわからないようにデータを加工して公表したのです。

 裁判所の判決に従っても、1ミクロン刻みの元データが開示され、「各方面における検証」がされることによってはじめて、不正の有無の判断が行なわれることになります。当時、福島民友紙社説も「問題なのは『信頼性を推認できる』はずの検査データそのものの公開を、東電側が法廷でも拒み通したことである。疑問は重く残る。」「東電は地裁の決定に際して『今後も(地元の)理解活動に全力を尽くす』とコメントした。注釈すればその『理解活動』の第一歩は、情報の公開でなければならない。」と論調していました。

■<付録1>福島プルサーマルが10年以上止まっているのはなぜか?

 福島第一原発3号機のプルサーマルについて、東京電力が福島県に説明したのが1997年、県や地元自治体は1998年には一旦事前了解をしていました。ベルギーで製造されたMOX燃料がフランス経由で日本に到着したのが1999年9月、しかしそれから10年以上経ってもプルサーマルは実施されません。その背景には、国や東京電力に翻弄されてきた福島県の国の核燃料サイクル政策に抱く疑念と住民の反対運動の歴史があります。

 1997年 3月     東京電力が福島県知事にプルサーマル計画を説明
 1998年11月     福島県、大熊町、双葉町が、東京電力へ事前了解を通知
 1998年11月     東京電力がプルサーマル計画の原子炉設置変更許可申請
 1999年 7月     MOX燃料輸送船フランス出航
 1999年 8月     東京電力がMOX燃料の輸入燃料体検査を国に申請
 1999年 9月     MOX燃料(32体)福島第一原発3号機に搬入
 1999年 8月     国が東京電力にMOX燃料輸入燃料体検査合格証を交付
 1999年 9月     関西電力高浜3号機用のMOX燃料の検査データねつ造判明
 1999年12月     関西電力高浜4号機用のMOX燃料の検査データねつ造判明
 2000年 8月     市民団体が福島地裁にMOX燃料使用差止仮処分申請
 2001年 3月     福島地裁はMOX燃料使用差止仮処分申請を却下
 2001年 5月     福島県エネルギー政策検討会設置
 2001年 5月     新潟県刈羽村で住民投票実施、反対多数
 2002年 8月     国、東京電力が原子力発電所自主点検記録不正問題を公表
 2002年 9月     新潟県、柏崎市、刈羽村が事前了解取り消し、福島県も白紙撤回

■関西電力BNFL社製MOX燃料データねつ造事件

 関西電力高浜原発4号機用MOX燃料はイギリスのBNFL社で製造され、ベルギーのベルゴ社で製造された東京電力福島第一原発3号機用MOX燃料と2隻の船で互いに護衛しながら日本に運ばれてきました。福島第一原発に着いたのが1999年9月27日、高浜原発は10月1日でしたが、ちょうどその間の9月30日にJCOの臨界被曝事故が発生しました。
 輸送途中で4号機の次に予定していた高浜原発3号機用MOX燃料の製造データに不正があることが発覚しました。燃料の寸法検査で、検査員が別のデータをコピーしていました。検査データを取り寄せて分析した関西の市民グループは、既に運ばれている4号機のMOX燃料にもデータ不正の疑いがあるとして、使用差止裁判を起こしました。関西電力は不正を否定しましたが、判決の前日に一転して不正を認め、プルサーマルは中止となりました。

■福島第一原発3号機MOX燃料使用差止裁判

 福島第一原発3号機のプルサーマルについて、福島県、立地町は既に事前了解を済ませていましたが、JCO事故とBNFL不正事件を受けて、2000年の年明けに、佐藤栄佐久福島県知事がしばらく凍結すると宣言しました。福島県と首都圏の市民グループは、MOX燃料製造の困難さや、寸法検査のやり方に問題があること、合格率が高すぎることなどから、こちらにも不正の疑いがあるとして、2000年8月に、福島第一原発のMOX燃料使用差止を求めて福島地裁で裁判を起こしました。安全性についても争点になりました。東京電力はデータを出さないという姿勢を貫きました。2001年3月に出た判決で、裁判所は原告の訴えを退けましたが、データ開示については、東京電力の姿勢を批判しました。

■新潟県刈羽村の住民投票で柏崎刈羽原発3号機プルサーマルを拒否

 裁判の判決翌日に、新潟県にある東京電力柏崎刈羽原発3号機用MOX燃料が到着しました。原発は柏崎市と刈羽村に立地していますが、そのうち刈羽村で2001年5月に、プルサーマルの是非を問う住民投票が実施されました。結果、プルサーマル反対票が54%で多数を占め、プルサーマルは止まりました。

■福島県エネルギー政策検討会

 福島県は、2001年1月の東京電力によるプルサーマル推進報道や2月の福島県内の発電所を含む電源開発計画の一方的な見直しに翻弄されたとして、佐藤栄佐久知事が、プルサーマル見直しを表明、東京電力は3月に予定していた装荷を断念しました。県はその後もプルサーマル凍結の姿勢を貫き、国や事業者による「ブルドーザーが突進するような進め方」に左右されないようにと、県独自でエネルギー政策検討会を設置しました。検討会は、県民、学識経験者と意見交換しながら、2002年9月に「中間とりまとめ」を行いました。核燃料サイクルについて、現段階で必要不可欠なものといえるのか、使用済MOX燃料の処理はどうするのか、といった問題を立てながら国の政策に正面から疑問を呈しています。

■東電不正事件とプルサーマル白紙撤回

 刈羽村の住民投票から一年後、東京電力は刈羽村でプルサーマル巻き返しの動きを進めていました。そんな中、2002年8月29日に東電不正事件が発覚しました。原発のシュラウドという構造物などのひび割れを隠蔽して運転していたのです。これにより、新潟県、刈羽村、柏崎市は9月に正式にプルサーマルの事前了解の取消しを通告し、福島県でも県議会や県知事が、事前了解の白紙撤回を表明しました。その後、美浜原発の配管破断による死傷事故、中越沖地震による柏崎刈羽原発の被災などもあり、東京電力のプルサーマル計画は後景に追いやられたのです。

■プルサーマル復活の動き

 プルサーマル復活の動きが本格化したのは昨年の夏からです。エネルギー政策検討会幹事会が5回開かれたあと、今年2月になって検討会が始まりました。ところが、2月1日に開いた後再開2回目の10日には終了し、判断を知事に委ねてしまいました。知事は3条件を提示し、県は今後、3条件について徹底的に検討するとしています。

■<付録2>六ヶ所再処理工場の現状 破綻したガラス固化技術に固執し続ける原燃と国使用済MOX燃料の処理方策を検討できる状況にはない

■ガラス固化試験は長期中断、再開の見通しは全く立たず

 国は、2005年の原子力政策大綱にて、使用済MOX燃料の処理の方策は、六ヶ所再処理工場の運転実績、高速増殖炉及び再処理技術に関する研究開発の進捗状況等を踏まえて2010年頃から検討を開始するとしています。
 しかし、六ヶ所再処理工場は、アクティブ試験の最終段階のガラス固化試験で行き詰まっています。2007年11月上旬より実廃液を用いたガラス固化試験を開始しましたが、高レベル廃液中の白金族元素がすぐに炉底に堆積し、12月中旬には運転を続けられなくなり、長期中断に陥りました。それ以降も、まともに試験は行えておらず、ガラス固化建屋の試験進捗率は53%のまま1%も進んでいません。2008年12月にガラス溶融炉の撹拌棒折れ曲がりと天井耐火レンガの損壊事故が判明して以降は、1年4カ月以上、全く試験自体を行うことのできない状態に陥っており、現在も試験再開の見通しは全く立っていません。

■原燃に課せられているハードル

 事故の復旧作業を開始すると、それが新たな事故や故障を招くという状態が続いてきました。現在、日本原燃は、ガラス溶融炉を加熱し、脱落して炉底の出口を塞いでいる耐火レンガを取り除く作業を行っており、その後炉内ガラスを抜き出し、炉底にこびり付いている白金族を除去しようとしていますが、いつ終えることができるか見通しは全く立っていません。
 原燃は、今のところ天井耐火レンガを修理しようとしていませんが、その状態で安全性が確保できるかどうかも問題となります。天井耐火レンガの損壊は、天井部の間接加熱装置の急激な温度降下が繰り返されたことによるものとされており、原燃は、現在脱落が確認されている1箇所以外の9箇所に既に亀裂が入っている可能性を認めています(図2)。このままの状態でガラス固化試験を再開すれば、さらなる脱落が起こりかねません。六ヶ所再処理工場のガラス溶融炉には、天井耐火レンガに貫通させる形で間接加熱装置を差し込んでいるという構造上の問題があり、間接加熱装置の温度変化によって近接する耐火レンガに高い応力がかかりやすくなっています。
 原燃は、昨年1月に固化セル(ガラス溶融炉の設置されている部屋)において約149リットルもの高レベル廃液の漏洩事故を起こしました。漏洩した廃液の大部分は蒸発し、固化セル内の多くの機器に付着しました。現在のところ11機器に廃液中の硝酸成分による腐食等の影響が出ていることが確認されています。現在正常に動作する機器でも、これから腐食が現れてくる可能性があり、今後も2回に渡って機器の点検を行うとしています。
原燃は試験再開前にこれらのハードルをクリアすることを課されています。
 また、原燃は、保安規定違反や高レベル廃液漏洩事故を繰り返しています。杜撰な組織体質による違反や事故が、復旧作業すらなかなか進ませない大きな要因となっています。
トラブルが続発したことで、昨年8月末に出した工事計画は既に4カ月遅れており、7月に試験を再開するという計画は全く無理な状況にあります。

■六ヶ所再処理工場のガラス溶融炉の原理的欠陥、白金族問題

 試験を再開したとしても、白金族問題を解決する見通しは全くありません。六ヶ所再処理工場のガラス溶融炉は、廃液とガラス原料を直接投入し、電流を流して加熱溶融する方式を採っており、廃液中の白金族が不可避的に炉底に堆積する原理的欠陥を抱えています。
 この欠陥による2度の長期中断の後、原燃は、運転方法を改善したとして、2008年10月上旬に試験を再開しました。その試験の途中から、初めて不溶解残渣廃液を含む廃液を投入し始めたところ、たちどころに白金族の堆積が進み、僅か5本のガラス固化体を作った段階で、炉底の洗浄・撹拌運転を行わざるを得ない状態に陥りました。不溶解残渣廃液とは、ガラス固化対象とされている3種類の高レベル廃液の一つで、使用済核燃料せん断片を溶解槽で溶解した際に溶解せずに残る粒子状のもので、その成分は白金族を中心とする金属とされています。再処理を行えば常に相当量が発生し、投入を避けることはできません。原燃は、その後、洗浄と撹拌を繰り返しましたが、堆積した白金族を取り除くことはできず、出口が塞がれて炉内のガラスを抜き出せなくなる状態にまで至りました。不溶解残渣廃液投入は、原燃のガラス固化技術の破綻を決定づけるものとなりました。原燃は未だ対策を出せていません。
 また、洗浄・撹拌等の運転を頻繁に行うことにより、アクティブ試験で作られたガラス固化体の数は予定の約2倍となっており、ガラス固化すると高レベル廃棄物の容積が直接処分と比べて半分程度になるという主張は成り立たなくなっています。さらに、廃液中の水溶性化合物がガラスに固められずに容器に入り込んだガラス固化体が多数作られています。水溶性化合物は水に接するとすぐに溶け出すため、これらのガラス固化体は地層処分にとても耐えられるものではありません。
 原燃は、ガラス固化という、高レベル廃棄物を処理する再処理工場の要の工程で完全に行き詰っているのです。しかし、原燃も国も現行ガラス溶融炉の原理的欠陥に対する根本的な総括を行おうとしていません。炉の方式を今から変更すると10年かかるからという理由で、現行溶融炉を使い続けようとしています。2012年度更新予定の改良型溶融炉も、現行方式のまま小手先の改良が施されるにすぎません。これの開発には、国家予算、電気料金からそれぞれ計70億円が投じられることになっており、昨年度から予算が付けられ始めています。全くの無駄遣いです。
 原燃は、7月にガラス固化試験を再開し、3、4カ月で試験を終わらせるとしていますが、およそ現実的な計画ではありません。

■使用済MOX燃料の処理方策の検討など到底できる状況にない

 使用済ウラン燃料の再処理もできないのに、一層面倒な使用済MOX燃料の処理方策の検討などできるはずがありません。使用済MOX燃料の再処理では、高レベル廃液中の白金族も格段に増えます。このような状況下でプルサーマルを許せば、使用済MOX燃料が福島に永久に留め置かれてしまうことになりかねません。

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