September 2024
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          

« 2010年6月 | トップページ | 2010年8月 »

2010/07/31

【東電交渉】使用済プールの水漏れ対策に明確な基準なし

30日行われた市民と東電との交渉の場で以下のことが明らかになりました。

<使用済燃料プール関係>
・水漏れの検知装置は1日1回の巡回確認、漏れが見つかったら、放射能の分析(漏れか結露水か)を行ったり、巡回を増やすなりするが、対応について明確な基準はないとのことでした。行き当たりばったりということでしょうか。
・地下埋設配管…液体放射性廃棄物処理系などであり、トレンチか二重配管になっているとのことです。
・1号機と2号機の過去の水漏れ(水進入)はいずれもライナー(容器)とコンクリートの両方に割れや穴があったことを認めました。

<高経年化を考慮した耐震安全評価は厳しい部位を避けている>
・復水器の胴部(腐食)や一次計装配管(き裂)など最も厳しい箇所を避けていることについて、東電は「これまで有意な欠陥が見つかっていないから」と、高経年化技術評価そのものを否定するような回答しかありませんでした。検査の頻度も明らかにしませんでした。

<「主要な施設」から再循環系配管を外したのは東電>
・今回の評価対象になっているバックチェック中間報告について、主要な施設から肝心の再循環系配管が抜けていることについて、入れなかったのは東電の判断であるとしました。主蒸気系配管や残留熱除去系配管で代表しているとの理由でしたが、これらよりも厳しい値が出る可能性があり、理由になっていません。


2010/07/26

【疑問】福島県原子力安全対策課へ-プルサーマル3条件についての疑問

7月26日に福島県原子力安全対策課に対し以下の文書を送りました。

↓PDFファイルはこちらから
「pulu-3joken-gimon.pdf」をダウンロード

****************************

2010年7月26日
福島県原子力安全対策課御中

プルサーマル3条件についての疑問

福島老朽原発を考える会
東京都新宿区神楽坂2-19-405
TEL/FAX 03-5225-7213

 突然に失礼いたします。プルサーマル3条件について、国の審議結果の検討に際して、以下の種々の疑問点について考慮してくださるようお願いします。また、検討を公開の場で行うこと、県民の意見を聞く場を設けることをあらためて要請いたします。

1.高経年化を想定した新指針に基づく耐震安全性の確認を行っていない

 福島第一原発3号機は運転開始から30年を超えており、高経年化を想定した耐震安全確認が必要です。しかしこれが十分に行われていません。
 3号機では運転開始30年の2006年に東電より高経年化技術評価報告書が提出され、国による評価を受けています。高経年化報告書にある耐震安全評価では、ひび割れや減肉などの経年変化事象について、これが顕在化した場合に、対象となる機器について構造・強度評価上有意であるかどうかを検討し、経年変化事象を考慮した上で、旧指針による基準地震動S1、S2について評価を行っています。評価結果を見ると次のようにギリギリのものがあります。

   復水器の胴部に腐食があるとした耐震安全性評価
    発生応力220 許容応力223 設計比99% 余裕1%
   計装配管に粒界応力腐食割れによる貫通亀裂があるとした耐震安全性評価
    発生応力83 き裂安定限界応力96 設計比86% 余裕14%

 福島第一原発の基準地震動は、新指針により、S2(270ガルおよび370ガル)からSs(450ガルおよび600ガル)に大幅に引き上げられようとしています。上記で挙げたものについては許容値を超える可能性が高いと思われます。
 しかし新指針に対応する新しい基準地震動に対して、高経年化を考慮した耐震安全評価は行われていません。耐震安全性と高経年化対策がそれぞれ3条件の中で挙げられているのに、高経年化を想定した耐震安全性の確認がごっそりと抜けているのは全くおかしなことです。
 東電は、バックチェックの中間報告で評価対象となった「主要な施設」について、高経年化を考慮した新指針の基準地震動での評価を一部行い、県安全確認技術連絡会で説明しました。しかし「主要な施設」には今回の東電の説明には、先にあげた復水器の胴部(腐食)や一次計装配管(き裂)の評価はありませんでした。最も厳しい箇所を避けているのです。
 高経年化を考慮した耐震安全性の確認を、バックチェックの中間報告であげた「主要な施設」の範囲に限って行う合理的な根拠はありません。例えば、主蒸気管については、減肉が想定されるとしながら、減肉が起こりにくいという理由で耐震評価の対象外としています。これはそもそも主蒸気系配管を選定することがおかしいことを意味しているのではないでしょうか。減肉については、最近でも福島第一6号機で配管の貫通に至る減肉が見つかったばかりです。想定外の特殊事情で逃げずに、このような減肉貫通が起こりうることを前提すべきだと考えます。
 また、2006年の3号機高経年化技術評価における耐震安全性において、再循環系配管のき裂を想定した評価については、き裂の監視を行うこと(維持基準)を前提に評価の対象外していますが、現状の維持基準は旧指針のS2を前提としていることから、これについても新指針に基づいた再評価が必要ではないでしょうか。維持基準については、福島第二原発で一周におよぶき裂を検査で見逃すなど、検査精度の問題もあります。この点について、再度の検証が必要ではないでしょうか。

2.使用済MOX燃料を貯蔵するプールの漏えいによる環境汚染の可能性

 使用済MOX燃料が処理される第二再処理工場は、どんなにうまくいっても操業は約40年先であり、六ヶ所再処理工場がガラス固化で行き詰っている状況からも、実際にはさらに先になることは明らかです。福島第一原発3号機でプルサーマルを実施した場合、生じる使用済MOX燃料の貯蔵が超長期にわたるのは必至です。
 東京電力は市民との交渉において、福島第一原発3号機の使用済MOX燃料の行方について、「むつ」に建設中の中間貯蔵施設には持っていかない、福島第一原発の共用プールには持っていけるよう許可を取っている、敷地内の乾式貯蔵については将来の選択肢としてある、共用プールも乾式貯蔵も敷地内なので搬出にはあたらない、と回答しました。東京電力の回答は、使用済MOX燃料は、処理する再処理工場建設の目途が全くない状況では、使用済MOX燃料はとりあえず福島第一原発3号機のプールに入れられ、その後共用プールへ移され、その後原発が全て廃炉になった後も敷地内のどこかに半永久的に留め置かれることを意味します。
 米国では、微量のプール水が気づかれないまま長期間に渡って漏えいし、結果的に大量の漏えい水が土壌や地下水・飲料水を汚染し、周辺の川の汚染も問題になる事態が発生しています。漏えいは、①微量ずつ、②気づかぬまま、③長期間にわたり…結果的に④大量の漏えい水が環境を汚染するという特徴があります。
 2005年9月にはインディアン・ポイント原発で、使用済燃料プール水漏えい事故が発生しました。セーラム原発では2002年9月に、プールのライナーの背後にある漏えい検知溝がホウ酸等で詰まり、コンクリートを通じて5年間も漏れ続けました。トリチウム等の放射能を含む漏えい水は地下水を汚染し、飲み水や周囲の川を汚染しています。米国では、使用済燃料プールや地下に埋設された配管からの漏えいが既に27件も起きており、原発の老朽化による新たな危険としてとらえられています。プール水漏えい事故は社会的に大きな影響を与えています。今年1月に発覚したバーモンド・ヤンキー原発での漏えい事故によって、バーモンド州議会上院は、今年2月に原発の寿命延長を拒否する決議を採択しています。
 日本でも発生しています。2003年3月に伊方原発3号機、2005年4月に福島第一原発2号機、2007年3月に美浜原発1号機で、プールのライナー溶接部で応力腐食割れによる穴があき、漏えい事故が発生しています。伊方原発3号機の場合、四国電力は7~8年間、腐食の進行に気付きませんでした。リラッキング工事でたまたま見つかったのです。
 福島第一原発2号機の場合、原子炉建屋内にある気水分離器等貯蔵プールで漏えいが見つかり、東電は、見つかってから1年以上経って貫通欠陥を修理しています。広大な福島第一原発共用プールであれば、漏えい箇所を特定するだけでも至難の業となるでしょう。そのことは、2001年に発覚した六ヶ所再処理工場での使用済み燃料プール漏えい事故からも明らかです。その上、水を抜くことが出来ないことから、修理も困難となります。
 福島第一原発2号機の場合、東京電力が漏えいを見つけたのが定期検査中であったにもかかわらず、すぐには対処せず、漏えいの確認を1日1回から1日3回にしただけで、次の定期検査までそのまま運転を続けました。少量の漏えいが起きてもプールの水位が一定程度保たれていればよいという姿勢です。しかし米国インディアン・ポイント原発でのプール水の漏えい量は、最大9.8リットル/日程度でした。少ない漏えいが5年間続き、環境汚染にいたったのです。また、セーラム原発のように、検知溝が詰まった場合など、全く手に負えません。
 使用済燃料プールや共用プールは、原子炉と同様に1年毎の定期検査、30年以降は10年毎の定期安全レビューや高経年化技術評価により安全確認がされます。しかし高経年化技術評価でも60年の運転しか想定していません。使用済MOX燃料の貯蔵が60年を超える可能性は十分にありますが、その場合の安全性は保証されていません。

3.安全上最も重要な施設であるはずの再循環系配管の耐震安全評価がない

 耐震安全性の問題で、原子力安全・保安院が審議したのは、3号機のバックチェックの中間報告ですが、中間報告では「主要な施設」(原子炉建屋、炉心支持構造物、制御棒(挿入性)、残留熱除去系ポンプ、残留熱除去系配管、原子炉圧力容器、主蒸気系配管及び原子炉格納容器)の耐震安全性評価しか行われていません。例えば、再循環系配管は「主要な設備」に含まれていませんが、再循環系配管は、もし破断するようなことがあれば、冷却水が漏れ出し、放射能閉じ込め機能が大きく損なわれ、そればかりか、燃料が空焚きになり、溶融する恐れも出てきます。圧力バウンダリを形成する安全上非常に重要な施設です。しかも耐震安全評価が他と比較しても厳しい条件にある可能性があります。浜岡原発4号機のバックチェック最終報告によると、再循環系配管の耐震安全評価は、主蒸気系や余熱除去系などよりも厳しく、安全余裕が小さい結果が示されています。この配管の耐震安全性を確認しなければ「主要な施設」の耐震安全性を評価したことにはならないと考えますがいかがでしょうか。
 この点について、原子力安全・保安院に対し、ホームページを通じて質問しました。その結果、以下の回答がありました。

【質問】
 貴院文書「耐震設計審査指針の改訂に伴う東京電力株式会社福島第一原子力発電所3号機耐震安全性に係る評価について(主要な施設の耐震安全性評価)」において、評価対象としている「主要な施設」に再循環系配管が含まれないのはなぜでしょうか。破断すれば放射能の閉じ込め機能を損なうおそれがあり、圧力バウンダリを形成する安全上重要な配管であること、この配管の分岐部等では、耐震評価で厳しい値が出る可能性のあることから、これの評価結果を明らかにしなければ、主要な施設の耐震安全評価を行ったことにはならないと思うのですがいかがでしょうか。実際にこの部位が残留熱除去系配管より条件が厳しい可能性があるのか確認されたのでしょうか。至急お願いいたします。

【回答】
 東京電力株式会社から提出された福島第一原子力発電所「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」の改訂に伴う耐震安全性評価結果 中間報告書(改訂版)(以下「中間報告書」という。)によれば、耐震安全性評価は、新耐震指針に照らして策定した基準地震動Ssに対し、耐震安全上重要な施設の安全機能保持の観点から行うとしており、評価対象施設は、新耐震指針によるSクラスの施設のうち、原子炉を「止める」、「冷やす」、放射性物質を「閉じ込める」に係る安全上重要な機能を有する主要な施設を対象とするとしています。具体的には原子炉建屋、炉心支持構造物、制御棒(挿入性)、残留熱除去系ポンプ、残留熱除去系配管、原子炉圧力容器、主蒸気系配管及び原子炉格納容器を対象としています。中間報告書で評価の対象としていない耐震安全上重要な施設については、今後東京電力から提出される本報告において評価が行われます。原子力安全・保安院としては、新耐震指針に照らした耐震安全性評価について、専門家の意見を聴きながら、厳正に評価を行います。

 質問に対する直接的な回答を避けていますが、端的には「最終報告で確認するからよい」というものになっています。であるならば、福島県がプルサーマルの3条件に挙げた耐震安全性については、中間報告ではなく、最終報告について検討、評価する必要があるのではないでしょうか。

4.駿河湾の地震による知見が反映されていない

 2006年に耐震指針が改訂されてから4年近く経ちますが、国のバックチェック評価作業は全体として非常に時間がかかっています。その一つの要因は、2006年に発生した中越沖地震で柏崎刈羽原発が被災し、想定を大きく超える揺れが観測されたことから、改定指針の事実上の見直しが余儀なくされたことにあります。2008年9月に保安院の指示文書「新潟県中越沖地震を踏まえた原子力発電所等の耐震安全性評価に反映すべき事項について」がその一つです。各電力会社はバックチェックに際して、改訂指針に加えて、こうした新しい知見を考慮することが要求されています。
 その後、2009年8月には、駿河湾の地震が発生し、浜岡原発が被災しました。揺れや被害の程度は中越沖地震よりも小さかったのですが、3・4号機に比べて5号機の揺れが特異に大きく、2倍以上も揺れました。原因については調査中ですが、中部電力は、原発直下に地震を増幅させるレンズ状の堆積物が存在し、これが影響したと考えています。中越沖地震とは異なるメカニズムで生じたというのです。もし同じ構造が福島第一原発の直下にあれば、地震波の到来方向によっては特異に大きな揺れが生じることになります。
 東電は、福島第一原発の地下は成層構造(平らな地層が積み重なっている)をしているから問題はないと説明しています。しかし、中部電力も浜岡原発の地下は成層構造であり、そこにレンズ状の堆積物があると説明しているのです。駿河湾の地震を踏まえた反映事項はまだまとまっていません。3条件についての国の審査では、建屋や機器など構造物の耐震安全性について審議しただけで、上記の増幅に係る基準地震動の設定については、審議されていません。

以上

2010/07/25

【集会案内】ケビン・キャンプス氏東京講演会10日夜

米国の著名な反原発団体 Beyond Nuclear(「核を超えて」)から、ケビン・キャンプス氏が急きょ来日されます。

ケビン氏は、核廃棄物問題や原発の安全性問題について活動されています。Beyond Nuclear は2009 年秋にLifetime Achievement Awardを受賞し、全米でその活動が認められました。今回、福島・福井・大阪・佐賀・東京で講演会や交流会をもつことになりました。

首都圏のみなさま!!!!

8月10日夜に行われる東京講演会へ是非。ご家族ご友人お誘い合わせの上、ふるってのご参加をよろしくよろしくお願いいたします。

各所に転送・転載してください。よろしくお願いいたします。

↓案内チラシはこちらから↓
「kevin-tokyo-0810.pdf」をダウンロード

**************************

「まずは漏らし、あとで措置」
米国で頻発する使用済燃料プール等からの放射能汚染水の漏洩
オバマ政権の原発新規立地に反対する米国の運動

■ケビン・キャンプス氏東京講演会
日 時 8月10日(火)18:30~21:00
会 場 文京シビックセンター(地下鉄後楽園・春日駅/JR水道橋駅)
     26階スカイホール
テーマ プルサーマル・使用済燃料プール漏えい問題
    /原発輸出・オバマ政権債務保証問題
参加費 800円(大学生以下500円)
主 催 福島老朽原発を考える会/原子力資料情報室
http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/

日本政府と電力各社は、プルサーマルを強行に推し進めています。プルサーマルで生み出される使用済MOXは持って行き場もなく、原発の使用済燃料プールで超長期に保管されることになります。しかし、米国では、原発の老朽化に伴って、プール等から放射能汚染水が、気づかれることなく漏えいし、周囲の環境を汚染する事故が多発しています。「まず漏らし、あとで措置」という電力会社とNRCの経済性最優先の姿勢に批判が強まっていま。使用済燃料プールでの超長期の保管がいかに危険なことであるのか、米国での実態を紹介していただきます。

さらに、ケビン氏はオバマ政権が進める原発新規立地推進に反対する活動のリーダーでもあります。経済危機の中で、銀行等は原発への投資を控えています。そのため、オバマ政権は電力会社に債務保証を行い、新規立地を後押ししようとしています。米国では大衆的な運動で、昨年2月にも、500億ドル(約5兆円)の債務保証案を阻止しました。日本政府は、米国やベトナムなどへの原発輸出を推進しようとしています。米国内での新規立地反対の運動と日本からの原発輸出反対の声を連携させていきましょう。

2010/07/20

【事故7】福島第一2号外部電源全喪失事故の真の原因を 隠蔽する動きに対する抗議文

東京電力株式会社社長 清水 正孝 様

福島第一・2号「外部電源全喪失事故」の真の原因を
隠蔽する動きに対する抗議文

2010年7月20日 
東京電力と共に脱原発をめざす会 
代表世話人 東井 怜

 去る6月17日、福島第一原発2号機で「外部電源全喪失事故」があり、貴社は7月6日に事故原因の調査結果と対策について発表しました。外部電源「全」喪失事故とは、非常に稀な事故であり、対応を誤れば炉心溶融の大事故につながりかねない深刻な事故です。
ところが貴社は法令に規定される報告事故ではないとして、今回の調査報告で了とし、無謀にも16日深夜再起動してしまいました。これに対し保安院の対応も他の事故と比べ全く異例であり、規制は機能していません。情報公開とはほど遠いものです。

 

当会では6日の発表を受けて、9日に本社で緊急に説明を求めました。原因と対策と称するその内容はとても納得のいくものではありませんでしたが、その根本原因は外部電源切り替えができなかった点にあることが認められました。すなわち所内側遮断機「OFF」になってから外部電源を「ON」にする制御シーケンス上の「AND」条件が成立しなかったという説明でした。これはシステム設計上の問題であって、インターロックの内包する欠陥という普遍性をもつ、たいへん深刻なものです。他のプラントはもとより、国内、海外にも水平展開すべき重大事故であったのです。問題の深刻さを技術者なら当然認識しているに違いありません。

 しかしこうした深遠なる事実を前に、貴社はおよそ誠実とはほど遠い態度で、時系列、パラメータ推移等具体的な証拠を何ら示すことなく、「推定」や「可能性」を前面にあえて解りにくいプレス文を公表し、事故原因を人為ミスとして真の原因を隠蔽してしまいました。

 2号機は、92年に全給水喪失によりECCS作動事故を起こした炉です。その折、81年にも同様の事態に陥りECCSが作動したこと、じつは2回目のECCS作動事故であることを公表し、隠蔽していたことを謝罪したものです。今回は隔離時冷却系で急速注水していますから、3回目の高温の原子炉への冷水であり、加圧熱衝撃による過大熱応力後遺症が危惧されます。ECCSではないと弁明したところで、後遺症が消滅するというものではありません。

 透明性、安全最優先、…と言いつつこのような2号機を早々に再起動する、あるいは誰もが否定できない根本原因にフタをするという、貴社の体質と救いようのないシステムには、原子力発電所という複雑なシステムを制御する資格などありません。ここに強く抗議するとともに、以下要求いたします。

一、「外部電源全喪失事故」の真の原因を究明すること
一、そのために、利害関係者を含まない、第三者による事故調査委員会を立ち上げ、その調査に対しては全面的に協力すること
一、過去に2回もECCS作動事故を経験し、今回で3回目の急速冷水注水による加圧熱衝撃を受けた2号機の再起動を即刻断念し、廃炉とすること
一、第一・第二原発のすべてのプラントについて、次回定検を待たず直ちに停止すること
一、制御システムの欠陥に対する抜本的な対策を講じるまで、いずれも再起動しないこと

以上

2010/07/18

【集会案内】福島を核のごみ捨て場にするな!やめよう!プルサーマル市民集会

いわきの佐藤和良さんより

運転開始34年の老朽原子炉である福島第一原発3号機でのプルサーマル計画が「ブルドーザーのように」進められ、8月中旬から下旬にかけてMOX燃料の原子炉装荷が目論まれています。8.1市民集会に一人でも多くのご参加を訴えます。

*福島を核のごみ捨て場にするな!やめよう!プルサーマル市民集会

 ・日時:8月1日(日)13:30~16:30
 ・会場:いわき市文化センター 中会議室(2階)
 ・講演:広瀬隆さんー原発の耐震安全性と使用済み燃料のゆくえ
 ・報告:阪上武さんー福島県の受け入れ3条件確認の問題点
 ・資料代:500円
 ・主催:脱原発福島ネットワーク

*どうか、ご協力、ご支援の程、よろしくお願い申し上げます。
チラシはこちらから入手できます。
http://nonukesfukushima.web.fc2.com/2010_08_01.htm

いま福島原発では、外部の電源が同時に遮断した電源喪失事故や原子炉の中に重りを落とし制御棒を傷つける事故などが相次ぎ、安全上問題となっています。そんな中で、東京電力と経済産業省は、運転開始34年の老朽原子炉である福島第一原発3号機で、プルトニウム・ウラン混合酸化物燃料(MOX燃料)を燃やすプルサーマル計画を「ブルドーザーのように」進めており、9月23日までの定期点検中、8月中旬から下旬にかけてMOX燃料を原子炉に入れる準備をしています。

福島県のプルサーマル受け入れ3条件の耐震安全性、高経年化対策、長期保管MOX燃料の健全性について、東京電力は「安全確保上支障がない」と報告、経済産業省 原子力安全・保安院も「おおむね妥当」と判断しており、県も県原子力発電所安全確保技術連絡会の審議などで、「東電の説明には具体的な根拠があり問題点は確認されなかった」として、8月中旬までに受け入れ表明の見通しと報じられています。

わたしたちは、6月22日、市民のプルサーマル反対署名6,941筆を提出して、「安全審査想定外の長期保管MOX燃料を使い、原発敷地内に使用済MOX燃料を貯蔵するプルサーマルを進めないこと」を福島県議会に請願しましたが、6月30日、請願は賛成少数で不採択となりました。 あまりにも拙速な採決は安全・安心を願う県民の心を踏みにじりました。

プルサーマルが始まると、使用済みMOX燃料は「燃料プールでの保管を基本に考えている」(第一原発所長)※とされ、行き場のない使用済みMOX燃料が福島に残り続けます。 燃料プールは漏水事故も起きており放射能汚染も懸念され、福島県のプルサーマル受け
入れは将来に禍根を残します。

福島を核のごみ捨て場にしてはなりません。警鐘を乱打する広瀬隆さんを講師に市民集会を開催します。いまこそ、プルサーマル反対の声を!

2010/07/16

【東電交渉】30日東電本社交渉に向けての質問事項(福島MOX関連)

<福島MOX3条件関連>

耐震安全評価について

1.3号機の主要な施設の耐震安全性評価において、「主要な施設」の中に再循環系配管が含まれないのはなぜでしょうか。圧力バウンダリを形成する安全上重要な施設であること、耐震安全評価が他と比較しても厳しい条件にある可能性があることから、この配管の耐震安全性を確認しなければ「主要な施設」の耐震安全性を評価したことにはならないと考えますがいかがでしょうか。

2.実際のところ再循環系配管の評価は行ったのでしょうか。評価結果をお示しください。

高経年化対策について

1.高経年化を想定した新指針に基づく耐震安全評価について、一次計装配管(き裂)や復水器の胴部(腐食)など、前回の高経年化技術評価において非常に厳しい値が出た箇所について、優先的に評価を行い、対応策を示すべきだと考えますが如何でしょうか。一次計装配管や復水器胴部の評価結果を教えてください。

2.3号機2006年の高経年化技術評価における耐震安全性において、再循環系配管のき裂を想定した評価については、き裂の監視を行うこと(維持基準)を前提に除外していますが、現状の維持基準は旧指針のS2を前提としていることから、新指針について再評価が必要だと考えますが如何でしょうか。

使用済み燃料プール(共用プールを含む)の高経年化対策について

1.使用済MOX燃料の貯蔵が60年を超える場合、燃料プールの安全性はどのように担保されるのでしょうか。

2.使用済燃料プールや共用プールの水漏れの検知方法についてご説明ください。

3.2005年に1号機のタービン建屋地下一階で湧き水が発生しトリチウムが検出した問題について、ポンプ容器やコンクリートの点検状況等含めてご説明ください。また、湧き水の水圧を低減する為の地下水の汲み上げというのは、プールを使い続ける限り行い続けなければならないということでしょうか。

4.2005年4月以降の2号機気水分離器等貯蔵プールからの漏えいについて、漏えいの原因を含め、簡単にご説明ください。漏れを発見しても直ちに止めることはないようですが、そのあたりの判断基準を教えてください。

5.米国では、プールだけでなく、地下に埋設された配管からの漏えいが問題になっていますが、第一原発では建屋、共用プールを含めて、地下に埋設された配管はありますか。これの漏えい防止対策はどのようになっていますか。

2010/07/15

【事故6】2号機原子炉外部電源全喪失事故に関するレポート(東電共の会)

2号機原子炉外部電源全喪失事故に関するレポート
6.17/7.9東電本社ヒアリングをもとに

2010.7.15 東京電力と共に脱原発をめざす会 

1.事故の概要

・今回の原子炉「自動停止」は、10.06.17(14:52頃)発電機界磁遮断器「トリップ警報」に始まり、「発電機」「タービン」「原子炉」の順に自動停止した。
・しかし、その後外部電源に切り替わらなかったため、外部電源全喪失の事態となった。
・これを受けて、ただちに非常用ディーゼル2基が自動起動し、非常用交流電源は回復した。
・運転員は原子炉トリップによる原子炉水位の低下に備えて、タービン駆動による隔離時冷却系を手動起動した。水位は14:53頃-800mmに達し、そのまま横ばいで推移し14:58には水位回復した。

2.外部電源の遮断に至る

・当初の東京電力の発表では、原因を発電機界磁遮断器の故障とした。
・ところがその後、所内電源(常用系交流電源)A・B2系統の所内側遮断器がともに何らかの原因で同時に遮断されたことが判明した。
・内部電源が絶たれたさいには、B系が2号機送電線より、もしくはA系が1号機より、外部交流電源の供給を受けることになっている。1号機は定期検査中であったため、A系も1号機送電線により、2号機と同じ大熊変電所から送電されるはずであった。ところがこの2系統の外部電源もともに遮断されており、こうして外部電源「全」喪失に至った。
・すなわち2号機の所内電源は常用系交流電源・非常用系交流電源ともに遮断され、制御室も一瞬停電となった。

3.事故の経緯と東電による調査結果

a.内部電源A・B系遮断器が同時に作動した原因

・東京電力では「系統安定化装置」系の電源切替用「補助リレー」の「誤動作」により起きたと「推定」している。
・「系統安定化装置」とは、発電の需要と供給の安定化を図るもので供給オーバー時に原発を停止させるための装置(自動選定か否か不明)である。
・「補助リレー」の作動により、所内電源側遮断器は「切断OFF」、外部電源側遮断器が「入るON(接続)」にならなければならない。すなわち、所内電源A系・B系をともに遮断した上で、外部電源に切り替わる。
・この「系統安定化装置」からの信号により、電源切替用「補助リレー」は、A系・B系ともに作動するようになっている。
・したがってA系・B系のいずれかが作動した場合にも、所内電源はA系・B系がともに遮断される回路となっている。(多重化したシステムが破られる)
・ただし現在は系統安定のため「補助リレー」は使用されておらず、電源は切られコイルも外してあった(但し回路はそのまま生きていた)。

b.「補助リレー」の「誤動作」

・「誤動作」の原因は、B系「補助リレー」の脇で作業していた作業員の接触等の衝撃で、「補助リレー」の回路が接触して「誤動作(2:52)」したものと東京電力は『推定』。
・『補助リレーの動作時間が極めて瞬間的であると、所内側遮断器のみが「切」状態になり、外部電源側の遮断器は「入」状態にならず、発電機からの受電が外部電源からの受電に切り替わらない可能性があること』が、判明したとしている。
・さらに「補助リレー」の打振試験で、極めて瞬間的(3~7ミリ秒)に動作することが確認されたとしている。
・ただし協力会社作業員は接触、衝撃を否定している。
・B系「補助リレー」が誤動作した証拠、記録等のデータ確認不明。「系統安定化装置」のデータ確認の有無不明。★
・A系「補助リレー」は別のところにあり、当時作業はしていなかった。

c.所内遮断器A・B「切」でも外部電源2系統のいずれも「入らず」、外部電源全喪失に。

・所内遮断器A・B「切」でも発電機の「界磁遮断器」は、まだ「切」になっていないため、ダブル接電となるのを避けて接続できないようになっている(インターロック)。200ミリ秒程度のタイムラグがある。  
・外部電源がONにならないため、常用系交流電源2系統、非常用系交流電源ともに停止。外部電源全喪失状態となる。

d.外部電源全喪失に続く事態

(1)原子炉トリップ★
・「常用系電源2系統が停止」したことにより、「励磁制御装置」の冷却ファン停止。
・冷却ファン停止のため、発電機「界磁遮断器」が作動して「切」状態となり、発電機「自動停止」。
・発電機「自動停止」によりタービンが「自動停止」、続いて原子炉「自動停止」。この間3~4秒。

(2)原子炉内水位の低下★
・「常用系電源2系統が停止」したことにより、原子炉へ冷却水を戻す「給水ポンプ停止」、冷却水が戻らないため原子炉水位が低下。逃し安全弁も作動(複数回開閉)。
・原子炉水位低下(2:53、-800mm)により、代替ポンプの「原子炉隔離時冷却系」ポンプを「手動起動」して、「復水貯蔵タンク」より給水開始。自動起動のレベルには至っていないが、水位低下は予見されたので手動で起動した。【注:通常ECCS系および隔離時冷却系は、基準の水位レベルにより自動起動する設定】
・水位は2:58まで5分間ほど-800mmの横ばい状態であったが、以後水位回復。
・3:40には「原子炉隔離時冷却系」の自動停止レベル(水位「高」=L8)に達したため注水はストップされた。「原子炉隔離時冷却系」の流量は毎時95~100m3。

(3)非常用ディーゼル発電の起動★
・「常用系電源2系統が停止した」ことにより、常用系交流電源から受電している「非常用交流電源」も停止したため、「非常用ディーゼル発電設備」が直ちに「自動起動」した。基準内(=10秒以内)の起動であった。一部に十数分後という報道があったが、間違い。
・その後( : )「非常用交流電源」により代替の復水ポンプが起動し給水開始? 
・外部電源の復帰はA系統母線が3:25、B系統母線は3:55であった。

4.東電説明の問題点、疑問点

a.「作業員による接触」を原因と「推定」しているが、消去法によるもので、原因は未解明。
→◆Q1

・B系「補助リレー」の誤動作という証拠、記録などは示されていない。
・「作業員接触」を原因とするならば、非常にお粗末な装置ということになる。東電発表の「4.対策」によれば、「ケースに収納されておらず」と剥き出し状態を窺わせる。東電の示した写真によれば「補助リレー」の回路は箱に覆われており、回路は透明カバーがあると説明した。
・カバーがなければ問題、あっても作業員の接触程度で「原子炉停止」してしまう装置を放置していたことになる。原子炉停止は数億円の損失となる。「原子炉停止」を何だと思っているのか(燃料漏洩では停止させず運転継続している)。
・作業員の接触程度で「誤動作」するデリケートな装置が、84年に設置して以来、今日まで同様の「誤動作」をしなかったとは信じられない(この「誤動作」は電源ON,OFFは関係ない)。何故、今まで「誤動作」(地震、定期検診・点検等)が起きなかったのか? 
・前例がないことの方が不思議だといえる。と考えると今回の原因は、「補助リレー」の「誤動作」との調査結果には懐疑的になる。他の可能性についての検討過程と結果を公表するべき。

b.所内遮断器A・B「切」でも外部電源「入らず」は、制御システム設計の問題ではないのか。→◆Q2

・発電機系の故障で発電機停止となった場合、外部電源側遮断器「入る」になるはず。今回タイムラグと言っても「発電機停止時点」で別途、外部電源側遮断器「入る」のパス(信号)があっても良いのではないのか。今回は、この欠陥が大きな問題なのではないのか。
・「系統安定化装置」系の電源切替用「補助リレー」の正常作動ステップを聞いておく必要がある。
・発信パスが違うとはいえ「発電機停止時」に同じ対応をしないのは、制御システムの設計ミス。
・今回の事故(非常に稀)に非常用ディーゼル発電設備の故障(東電によれば非常に簡単に起きる)が重なっていたらどうなっていたのか。
・この制御システムの設計欠陥は他号機も一緒のはず。
・「対策」として「近づかない」「注意喚起の表示」でよいのか。意図的に人為ミスとしようとしているが、制御システムの問題でありシステム変更の対策が必要。

5.情報公開を求める★

・時系列と計器類チャートの公表
・作業フローの公表
・他号機の状態の公表

6.事故報告について

・今回の事故はおそらくわが国初の「外部電源全喪失事故」であり、『原子炉等規制法第62条の3の規定に基づき原子力事業者から規制行政庁に報告され、』『規制行政庁は同法第72条の3第2項の規定に基づき安全委原子力安全委員会に報告する』事故に該当することは間違いない。
・しかし東電も保安院も『法令に基づく報告対象ではない』としている。
・原因究明は、全く不十分である。中間報告でしかない。
・なんらかの文書があるのか、保安院に提出したのか、明らかにしていない。
・およそ事故経緯を物語る時系列も無ければパラメータの推移を示すチャートも、一切公開されていない。

a.事故報告書とは言えない→◆Q3

・東電は発生直後の6/17のプレスリリースの時点では「重要事象」として認識していた。『本事象は公表区分I(法律に基づく重要な事象など)としてお知らせするものです。』とある。
・ところが7月6日のプレスリリースにおいては、保安院に報告したと明記されていないし、およそ事故調査報告といえるような内容ではない。事故調査報告はあるのか、ないのか。
・いっぽう保安院は、「原子炉の自動停止の原因及び対策について、本日、報告を受けました。」とし、その報告をもって「妥当とする」とした。保安院に提出した報告とは何か。
・事故報告書、及び保安院に提出した事故報告書を開示されたい。

b.明らかに『法令に基づく報告対象』である→◆Q4

・「原子炉停止」において、停止目的をもって意識的に正常な工程により「停止」した場合は「日常運転」という。しかし、停止目的、意思もなく自動的に「原子炉停止」した場合は、「非日常運転」であり何か「異常が起きた」ということであり、原因には「故障」「事故」が想定される。
・つまり「原子炉自動停止」には報告義務が生じる。まして今回の「停止原因」は、「常用系電源」「非常用交流電源」A・B2系統の共倒れ電源喪失。辛うじて「非常用ディーゼル発電」の自動起動で電源を確保した「非常事態」であった。「報告の必要なし」とは如何なる解釈なのか。
・「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」第19条の17「事故故障等の報告」2項「原子炉の運転中において、原子炉施設の故障により、原子炉の運転が停止したとき」とある。
・「事故故障等の報告」の「等」は、トラブルを含む重要事項については報告をせよとの解釈が妥当。今回の電源喪失という「非常事態」による「原子炉自動停止」は、「原子炉施設の事故故障等」によるものである。
・「規則」の第二条ニ項に記載の「原子炉施設」の中の「安全保護回路」に属す。そうでなくても最後の「その他原子炉の付属施設」には属すと考える。「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」によれば、「原子炉及びその付属施設」=「原子炉施設」という定義である。
・新しい「原子力実務六法」「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」(以下、「規則」)
によれば、今回の「事象(←東電の表現)」は十日以内に所轄大臣へ報告しなければならない対象であると解釈せざるをえない。
・なぜ、東電はそれを否定するのか。明確な回答を求める。

c.事故の原因と対策はいずれも未完である。中間報告でしかない。→◆Q5

・電気事業法、実用発電用原子炉技術基準を定める省令第24条の2「原子炉制御室等」2項では、「原子炉制御室には、・・・原子炉を安全に運転するための主要な装置を集中し、かつ、誤操作することなく適切に運転操作することができるように施設しなければならない。」とある。制御室は原子力施設であり、そこには重要な装置があり、そこでの「誤作動」「誤操作」は許されない。今回の発電機界磁遮断機「トリップ警報」は、「誤作動」なのか「誤操作」か、「故障」なのか「事故」なのか、原因究明は未了である。
・少なくとも外部電源に切替ができず、「不必要に」全電源喪失に至ったことは、制御システムの欠陥ではないか。「原子炉施設の事故故障等」による「原子炉自動停止」である。
・「作業員の接触」という推論を是としても、「作業員の誤操作」ということ。「誤操作」しないように施設しなければならない。
・真の原因は制御システムの欠陥であり、真の対策はその欠陥の是正ではないのか。
・他のプラント、他社のプラント、海外にも水平展開すべきと考える。原子力の安全を保障するべく東電の責任を全うされよ。

2010/07/13

【事故5】7月9日東電本社における聞き取りから(東電共の会)

福島第一・2号「外部電源全喪失事故」が提起した深刻な欠陥
~7月9日東電本社における聞き取りから~

2010.7.12 
東京電力と共に脱原発をめざす会 

当会では、6日の東電の発表を受けて、9日に本社で説明を受けました。原因と対策と称するその内容は、たいへん深刻なものであり、またその対策はとても納得のいくものではありませんでした。

○原因究明が全くできていない。すべて推定にすぎない。
○時系列、チャート等具体的な証拠がなにも示されていない。
○真の原因は、外部電源切り替えができなかったこと
○外部電源のシステムエラーであるが、インターロックの内包する欠陥という普遍性をもつ
○他のプラントはもとより、全国、海外にも水平展開すべき重大事故。

このまま起動準備に入るとは、あまりにも無謀です。
しかし報道もおよそ満足ではなく、県民に事実が知らされていません。
何より保安院の規制が機能していません。(他の事故と比べ全く異例の対応)

■以下に、9日東電本社における質疑で明らかになった問題点を列挙します。

1)発端は人為ミスというが、到底原因とはいえない。

系統安定化装置は1年半以上前までに撤去しており、補助リレーの電源はoff,コイルもはずしてあった。作業員が触れたくらいで補助リレーが作動するとは考えられない。(作業員は接触を否定しているという、記憶に無いほどの接触)
打振試験で作動したというが、よほど強い打振をしなければ作動しないはず。再現できたのか。
作動できたのであれば、地震動程度でも作動してしまう恐れがある。

2)制御システムの抱える欠陥が根本原因

所内側遮断機は多重化しているにもかかわらず、同時に動作する必要性のある場合であった。
所内側遮断機OFFにより外部電源がONになるまでにタイムラグがある。そのため外部電源が入らなかった(インターロックの内包する欠陥)
この問題意識はとうぜん社内でも認識しているとのこと。しかしオモテに出していない。

3)福島原発は全機停止して、早急に水平展開すべき

福島原発は、第一、第二ともすべて系統安定化装置を撤去しており、今回とまったく同じ不安を抱える。即刻全機停止して対応すべきではないか。
また、同装置以外にもインターロックにおける同様の欠陥はないか。

4)法令に基づく事故報告としての扱いがなされていない

新しい原子力実務六法「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則によれば、今回の「事象」は10日以内に所轄大臣へ報告しなければならない。
なぜ東電がそれを否定するのかについて、明確な回答はなかった。
保安院としてもどう考えているのか。

5)自動停止と隔離時冷却系の注水による後遺症/2号機は3回目の冷水

2:52~3:40まで約48分間、冷水を注水。(流量は95~100トン/時)
しかし落雷による自動停止と同等の扱いで、再起動しようとしている

2010/07/12

【県技連】課題山積なのに…東電からの聞き取りこれで終わり???

12日、福島県技術連絡会が福島第一原発のある大熊町で開かれました。

今日のテーマはプルサーマル3条件のうち、耐震安全性の後半(建屋、機器の耐震安全性)と高経年化対策でした。

基礎ボルトの耐震評価…設計時に考慮していた安全余裕を今は考慮せず

耐震安全性で主要に問題になったのが、原子炉圧力容器の基礎ボルトの耐震評価において、地震による発生応力が、新指針による新基準地震動Ssによる値よりも、設計時の評価値(旧指針よりもさらに前の基準による)のほうが3倍以上も大きいという逆転現象についてでした。

東電は明確に説明できず、30年以上前の設計時には余裕を見込んでいたが、今は見込んでいないというだけでした。委員や県から、今は余裕を見込んでいないことの妥当性について質問がありましたが、やはり明確な返答はありませんでした。

中性子脆化…試験片が尽きて使いまわし・合わない評価式は改良中

高経年化対策については、中性子脆化の問題に時間を割きました。試験片が尽きてしまい、使い回しをする説明や、評価式が現実に合わず、今新しい評価式を作成中だという説明が続きました。

高経年化を考慮した耐震安全性…最も厳しい部位を避けて評価

宿題となっていた高経年化を考慮した新指針に基づく耐震安全評価について東電は、評価対象をバックチェックの中間報告の対象となっている代表部位に絞って考察した上で、必要性はないとの報告をしました。

バックチェック中間報告の代表部位には、配管で厳しい値がでる可能性がある再循環系配管がありませんし、高経年化対策報告書でもっとも厳しい(設計比99%すなわち余裕1%)復水器胴体部もありません。代表部位だけで済ませてしまうところが大問題です。

使用済燃料プールの健全性は消化不良

終わりの方に、県原子力安全対策課から、プールの健全性について質問がありました。使用済燃料プールではないが、2号機のDSピット(気水分離機等貯蔵プール)で水漏れがあった、これは溶接の初期不良が問題とされているが、長期管理によりそういったものが顕在化する可能性があり、監視を強化して欲しい、漏えい監視については、量だけではなく、放射性物質についても監視することについて説明して欲しい…と。

東電は質問の意図がわからない感じで、漏えい監視用のガラス窓に水が溜まり、漏えいが懸念されたら詳細なパトロールを行うなどの説明をしただけでした。課長は明日の現場検証のときにまた質問するとして終わりました。

東電からの聞き取りはこれで終わり??

きょうの議論はどちらもまだ続く雰囲気だったのでしたが、最後に県生活環境部次長から、これで3条件についての東電からの聞き取りを行ったのでとりまとめを行い、明日の現場検証の後に公表し、記者会見を行うと述べました。東電からの聞き取りは終えたということでしょう。8月装荷に向けて着実に事が進んでしまっている感じです。

電源喪失事故は全く触れず

会合の最後の最後に東電が一言話したいといって、今日定期検査中の福島第二原発1号機で、原子炉圧力容器のシュラウドの外側にS字形の1センチほどの異物が見つかったと報告していました。重り落下に続くトラブルです。第一原発2号機の電源喪失事故については、全く話題になりませんでした。

2010/07/11

【署名】福島第一原発3号機でのプルサーマル反対署名…7月31日集約

いわきのAさんより

 佐藤雄平福島県知事は、2010年2月16日、東京電力が福島第一原発3号機で計画するプルサーマルに対し、3号機の耐震安全性、運転開始後34年過ぎた老朽化(高経年化)対策、搬入から10年過ぎたモックス(MOX)燃料の健全性の3つの条件を確認できたなら、プルサーマル計画を受け入れると表明しました。 

 東電は、9月23日まで実施中の定検(定期事業者検査)中にモックス燃料を原子炉内に入れ(装荷)、プルサーマルを始めたい意向です。そのため、東電は5月にこの3条件の確認結果を県と原子力安全・保安院に提出しました。そして、保安院と県は、現在、東電の確認結果の検証作業を猛スピードで進めています。

 それに対し、脱原発福島ネットワークは、4月25日から「老朽炉で安全審査の想定外の燃料を使わないで! 福島第一原発3号機でのプルサーマルに反対する署名」への賛同を全国に呼びかけました。そして、第一次集約分の6,941筆の署名を添えて、福島県議会6月定例会に「老朽炉で安全審査の想定外の燃料を使わないで! 福島第一原発3号機でのプルサーマルに反対する」請願を提出しました。しかし、この請願は6月30日に不採択とされました。

 福島県議会はプルサーマル中止請願を不採択
 http://nonukesfuk.exblog.jp/14691673/

 このまま東電の目論見通りに事態が進行するなら、8月中にMOX燃料の装荷 (装荷時期によっては臨界も) が行われる情勢となってきました。

 「老朽炉で安全審査の想定外の燃料を使わないで! 福島第一原発3号機でのプルサーマルに反対する署名」 は、現在も全国各地から多数届いています。そこで、脱原発福島ネットワークでは、7月31日(土)をこの署名の最終集約日(必着)とし、皆さまからの貴重な署名を8月上旬に福島県に届けることと致しました。

 署名期間が短かかったためか、未だに署名用紙が届いていない、または署名の集約時期を知らないなどの事情により、署名が戻って来ていない方が多数見受けられます。そこで、皆さまにお願いがあります。

1.このメールを心当たりのある方に転送していただけませんか。

2.この署名を知らなかった方は、下のサイトから署名用紙をダウンロードの上、署名済み用紙を下の集約先まで送ってくださいませんでしょうか。

3.まだ、この署名用紙が手元にある方は、至急、下の集約先まで署名を送ってくださいませんでしょうか。(ひとりだけの署名も歓迎です)

署名用紙は、下記サイトからダウンロードできます。
http://nonukesfukushima.web.fc2.com/2010_08.htm

署名の集約先
 〒971-8144
 福島県いわき市鹿島町久保於振1-2
 脱原発福島ネットワーク  宛

7月31日必着です。
よろしくお願い申し上げます。

2010/07/07

【県技連】7日の傍聴報告…放射能漏えい運転を正当化/プール問題は次回

7日の福島県技術連絡会について、傍聴に行かれた福島の方から報告が寄せられました。福島のみなさんありがとうございます。

議題は2つ

(1)長期保管MOX燃料の健全性について
(2)3号機の耐震安全性について

原子力安全対策課と東電の質疑は以下のとおりでした。

(1)長期保管MOX燃料の健全性について

<質問>
 使用済みMOX燃料の崩壊熱が20%程度大きくなるということだが、それに伴って、使用済み燃料プールおよび共用プールでの保管やプール間の移送に何らかの制限を受けることになるか?燃焼度はどのくらいのものを想定して考えているのか?

<回答>
 燃焼度は標準的なものとして考えている。使用済みMOX燃料は、使用済み燃料プールと共用プールで保管することに なる。移動には専用輸送容器が必要だが、技術的には問題はない。ウラン燃料と比べて若干崩壊熱が高いため、若干長く保管冷却が必要。19ヶ 月以上冷却後に移動となる。実際には長く保管していたものから順次共用プールへ移動する、ということになる。

<質問>
  MOX燃料および使用済みMOX燃料の取扱いによる作業エリア内線量への影響は?
新燃料の表面線量は?

<回答>
 作業エリア内線量は、水中での取り扱いなので、問題にならない。新燃料の表面線量はアルファ線などが数十パーセント、若干高くなる。

<課長コメント>
 プール保管の問題については、また次回とりあげます。

(2)3号機の耐震安全性について

<質問>
 浜岡の例では、浅い所の地下構造の違い、粗密、が影響していたということだ。これは福島においても調べられているのか?

<回答>
 ボーリングした範囲では、地下構造は単純な構造だった。複雑ではない。

<質問>
 海底断層は正断層だということだが、歴史的に逆断層による地震は起こっていないのか?

また、燃料からの放射能リークが発生している件についての質問に対する東電の回答ですが…

<回答>
 偶発的な燃料からの放射性物質の漏洩に対する対策として以下を実施してきており、近年においては原子炉へ持ち込まれる異物は十分すくなくなっていると考えています。

1.異物混入防止対策
・原子炉本体に直接接続されている系統・機器の内部点検においてワイヤブラシの使用を原則禁止
・異物混入防止エリア設置(常設フェンスの設置)
・原子炉お呼び使用済み燃料プール周りの手すりを側板付きに変更
・異物混入防止選任監視員の設置

2.教育・周知
・ポスター・パネルの現場設置
・定期検査開始前の協力企業への周知

3.監視・対応力強化対策
・燃料健全性データの公開
・高感度オフガスモニタの設置
・出力抑制法による対応強化

専門委員からは、教育・周知によって、実際にはどのくらいの効果を得たのかという質問が出ていましたが、「だいぶ少なくなった」というような回答でした。稚拙な対策と成果の評価も十分していないことに驚きでしたが、もっと驚いたのは、3.の出力抑制法による対応強化について、漏洩疑いのある燃料体付近の制御棒挿入による運転続行について、東電が漏洩に対する対応力強化対策として堂々とあげているのに対し、会議で何の疑義も出てこなかったことです。

2010/07/06

【事故4】東電が原因を公表…作業員が電源装置に接触したせいに

東電から事故原因の発表がありました。

東電のプレス

調査結果として「作業員が送電線の系統安定化装置の補助リレーに接触した等、何らかの衝撃が補助リレーに加わり、瞬間的に誤動作した可能性が考えられる」としています。

多重化しているはずの系統が人為ミスによって同時に倒れるのも問題ですが、所内側しゃ断器A、B系が「切」状態となった後、外部電源からの受電に切り替わらず常用系電源2系統が停止する事象が発生するのも問題です。後者の原因については言及がなく、推定すらありません。

東電は、「原子炉にかかるものではなかったので、法律に基づく報告対象トラブルではありませんでした。」とも。しかし、電源喪失が、原子炉水位の低下と、実質的にECCSと同じ炉の急冷を行う事態を招いたわけですから、原子炉に関わるものではないと済ませるわけにはいかないでしょう。この点は福島県も問題しており、国に意見を伝えたとのことです。

国は「注意喚起」の文書を公表しています。

国の注意喚起

また、2号機のECCSを過去2回作動させた履歴があり、今回が3回目の冷水であること、第一原発の2~5号機は、ECCS配管が再循環系配管に直結されており、冷水による熱衝撃の問題があります。この点についても検証が必要です。

【緊急要請報告】使用済燃料プール水漏えいと2号機電源喪失事故問題で県へ申し入れ

使用済燃料プール水漏えいと2号機電源喪失事故問題で28団体の連名で福島県へ緊急の申し入れを行いました。

■県原子力安全対策課へ

・使用済燃料プール水漏えい問題と2号機電源喪失事故問題でこちらから申し入れを行い、米国の例などを説明しました。

・原子力安全対策課の課長は、原発による環境汚染を防ぐのが安全対策課の使命、プール水漏えいによる環境汚染の問題は、安全対策課の存在意義に関わる重要な問題だと回答しました。

・こちらから、プール水漏えい問題は、米国でも原発の高経年化問題の一つとされている。高経年化対策は、プルサーマル3条件の一つとなっている。今、県の技術連絡会でこの問題を検討してほしいと要請しました。

・2号機の電源喪失事故については、今日午後に東電と国が原因等について説明するようだと。県としては、電源喪失事故という事故にもかかわらず、原子炉に関わるものではないからという理由で、報告対象から外れているのはおかしいのではないかと思っており、それについて国に伝えたとのことです。

■大熊町役場へ

・役場までは、県庁から山を2つ越えて2時間の道のりでした。課長は不在で、県技術連絡会に名前のある若い人と年配の課長補佐2名が対応しました。米国の例など一通り説明しました。丁寧に対応していただきました。

以下が要請文です。

*************************

2010年7月6日
福島県知事 佐藤 雄平様

使用済MOX燃料は超長期にわたって原発プールで保管されます
米国では、使用済燃料プールのプール水漏えい事故が起きています
福島でも、プール水漏えいによる環境汚染の危険があります

将来にわたって福島の自然環境を守るため、 プール水漏えいの危険等について慎重に検討してください
2号機電源喪失事故の解明を優先してください

要望書

脱原発福島ネットワーク
福島老朽原発を考える会
他26団体

 福島第一原発3号機のプルサーマル実施は、「処分の方法」が具体的に示されない使用済燃料の発生を禁じている原子炉等規制法に違反します。そればかりでなく、使用済MOX燃料をプールにおいて超長期にわたり保管せざるをえないことから、プール水漏えいによる環境汚染が懸念されます。 現に米国では、原発のプール水漏えいによる環境汚染が社会問題になっています。微量のプール水が気づかれないまま長期間に渡って漏えいを続け、結果的に大量の漏えい水が、土壌や地下水・飲料水を汚染し、周辺の川の汚染も問題になっています。日本でも福島でもプール水漏えい事故は発生していますが、東京電力の管理方法では将来の環境汚染を防ぐことはできません。2005年には、福島第一原発2号機の気水分離器等貯蔵プールで漏えい事故も起きています。

 また、6月17日に発生した福島第一原発2号機の電源喪失事故についてはバックアップを含めて外部電源が全て同時に遮断するという、前代未聞の事故でしたが、詳細はまだ明らかになっていません。

 使用済燃料プールからの漏えい及び電源喪失事故について、以下を要望いたします。

要 望 事 項

一.使用済燃料プールからの漏えい等につき、以下の点を明らかにしてください。
(1)福島第一原発3号機のプルサーマルにより生じる使用済MOX燃料が貯蔵されるプールの耐用年数は一体何年でしょうか。

(2)「処分の方法」が具体的に示されず、使用済MOX燃料の貯蔵が超長期にわたる場合の貯蔵計画を明らかにしてください。

(3)米国で社会問題となっている原発のプール水漏えい事故による環境汚染について、国や東京電力から説明等を受けたことはありますか。また、どのように受け止めているのか、お考えをお聞かせください。

(4)使用済燃料プールから漏えいが生じないことについて、東京電力からプール管理方法等の説明を受けていますか。

一.この問題につき、県技術連絡会でも十分に審議し、県民に説明してください。

一.使用済MOX燃料の超長期にわたる貯蔵が避けられず、原発のプール水漏えいにより、将来、福島県の豊かな環境が汚染される恐れがあることから、福島第一原発3号機でのプルサーマル実施を中止してください。

一.外部電源が全て同時に遮断するという前代未聞の福島第一原発2号機電源喪失事故につき、現時点で明らかになっていることを東京電力に報告させ、県民に説明してください。3度目の原子炉の急冷による影響について評価させ、結果を公表してください。

一.2号機の事故の解明を優先し、プルサーマルに関する県の検討を中断してください。同型で同じ事故の危険をもつ3号機でのプルサーマル実施を止めてください。

要 望 理 由

使用済MOX燃料の貯蔵が超長期に及ぶのは必至

 使用済MOX燃料が処理される第二再処理工場は、どんなにうまくいっても操業は約40年先であり、現実には、六ヶ所再処理工場がガラス固化で行き詰っている状況からも、さらに先になることは明らかです。福島第一原発3号機でプルサーマルを実施した場合、生じる使用済MOX燃料の貯蔵が超長期にわたるのは必至です。
 東京電力は市民との交渉において、福島第一原発3号機の使用済MOX燃料の行方について、「むつ」に建設中の中間貯蔵施設には持っていかない、福島第一原発の共用プールには持っていけるよう許可を取っている、敷地内の乾式貯蔵については将来の選択肢としてある、共用プールも乾式貯蔵も敷地内なので搬出にはあたらない、と回答しました。東京電力の回答は、使用済MOX燃料は、処理する再処理工場建設の目途が全くない状況では、使用済MOX燃料はとりあえず福島第一原発3号機のプールに入れられ、その後共用プールへ移され、その後原発が全て廃炉になった後も敷地内のどこかに半永久的に留め置かれることを意味します。

米国では原発プール水漏えいによる環境汚染が社会問題に

 米国では、微量のプール水が気づかれないまま長期間に渡って漏えいし、結果的に大量の漏えい水が土壌や地下水・飲料水を汚染し、周辺の川の汚染も問題になる事態が発生しています。2005年9月にはインディアン・ポイント原発で、使用済燃料プール水漏えい事故が発生しました。セーラム原発では2002年9月に、プールのライナーの背後にある漏えい検知溝がホウ酸等で詰まり、コンクリートを通じて5年間も漏れ続けました。トリチウム等の放射能を含む漏えい水は地下水を汚染し、飲み水や周囲の川を汚染しています。米国では、使用済燃料プールや地下に埋設された配管からの漏えいが既に27件も起きており、原発の老朽化による新たな危険としてとらえられています。プール水漏えい事故は社会的に大きな影響を与えています。今年1月に発覚したバーモンド・ヤンキー原発での漏えい事故によって、バーモンド州議会上院は、今年2月に原発の寿命延長を拒否する決議を採択しています。

 日本でも福島でも発生している原発プール水漏えい事故  日本でも使用済燃料プール等からの漏えい事故が起きています。2003年3月に伊方原発3号機、2005年4月に福島第一原発2号機、2007年3月に美浜原発1号機で、プールのライナー溶接部で応力腐食割れによる穴があき、漏えい事故が発生しています。伊方原発3号機の場合、四国電力は7~8年間、腐食の進行に気付きませんでした。リラッキング工事でたまたま見つかったのです。福島第一原発2号機の場合、原子炉建屋内にある気水分離器等貯蔵プールで漏えいし、東京電力は、漏えいが見つかってから1年以上経って貫通欠陥を修理したとしています。広大な第一原発共用プールであれば、漏えい箇所を特定するだけでも至難の業となるでしょう。そのことは、2001年に発覚した六ヶ所再処理工場での使用済み燃料プール漏えい事故からも明らかです。その上、水を抜くことが出来ないことから、修理も困難となります。

東京電力による漏えい管理では不十分

 福島第一原発2号機の場合、東京電力が漏えいを見つけたのが定期検査中であったにもかかわらず、すぐには対処せず、漏えい水量の確認を1日1回から1日3回にしただけで、次の定期検査までそのまま運転を続けました。少量の漏えいが起きてもプールの水位が一定程度保たれていればよいという姿勢です。しかし米国インディアン・ポイント原発でのプール水の漏えい量は、最大9.8リットル/日程度でした。少ない漏えいが5年間続き、環境汚染にいたったのです。また、セーラム原発のように、検知溝が詰まった場合など、全く手に負えません。さらに、米国のように、土壌への漏えいを検知する「検知用井戸」もありません。

貯蔵が超長期にわたる場合にプールの安全性は保証されない

 使用済燃料プールや共用プールは、原子炉と同様に1年毎の定期検査、30年以降は10年毎の定期安全レビューや高経年化技術評価により安全確認がされます。しかし高経年化技術評価でも60年の運転しか想定していません。使用済MOX燃料の貯蔵が60年を超える可能性は十分にありますが、その場合の安全性は保証されません。

将来の福島県の環境を放射能で汚染しないで

 環境基本法の精神「将来にわたる環境の保全」は原子力にも適用されます。地下水や土壌が放射能で汚染すれば取り返しのつかないことになります。将来の福島県の環境を守るために、今なすべきことは、使用済MOX燃料を発生させるプルサーマルの実施を中止することです。

前代未聞の2号機電源喪失事故の解明を

 6月17日に福島第一原発2号機で発生した電源喪失事故は、当初東電が説明したような発電機のトラブルではなく、外部電源の喪失が発端の事故であったことが明らかになっています。外部電源は独立に2系統あり、さらにバックアップ用に2系統ありますが、その全てが同時に遮断したというのです。地震でもなければありえないことです。同じ原因が、同型炉の3号機にも内在している可能性があります。とてもプルサーマルどころではありません。

 福島第一原発2号機は、ECCSの作動が過去2回あります。今回はECCSが作動したわけではありませんが、原子炉に冷水を浴びせた点では同じです。3度の急冷による影響が懸念されます。

 この事故について、東京電力は初期のプレスリリースを行っただけで、その後何も明らかにしていません。プルサーマルの検討よりもこの事故の解明を優先すべきです。

2010/07/04

【県技連】7日福島市12日大熊町13日サイト視察の日程

7月1日、福島県は福島県原子力発電所安全確保技術連絡会の開催日程を明らかにしました。8月中旬から下旬にかけてのMOX燃料装荷強行へのシナリオです。(脱原発福島ネットワーク佐藤さんより)

7日福島市で12日大熊町で開催し、13日がサイト視察との日程。7、12日の両日で、MOX燃料の健全性、3号機の耐震安全性について10項目の論点を検証し疑問点がでなければ、検証は12日に終了する見込みで、13日はサイトで地震防災体制などを確認する、と報道されています。原子力安全・保安院の検証も7月中旬にも終わる見通しで、この後福島県は連絡会をあらためて開き結果報告を受け、7月末か8月上旬にも計画を受け入れる見通しとの観測記事が流されています。

福島県原子力発電所安全確保技術連絡会を次のとおり開催します。
http://www.pref.fukushima.jp/nuclear/info/girenn1007.html

日 時 平成22年7月7日(水) 13時30分~15時30分
場 所 ふくしま中町会館7階 大会議室 (福島市中町7-17)
議 題 (1) 福島第一原子力発電所3号機長期保管MOX燃料の健全性について
(2) 福島第一原子力発電所3号機の耐震安全性について (3) その他

2010/07/03

【集会報告】仙台にて…プルサーマル 今、現地で何が

仙台の集会は、仙台、石巻の他、福島、東京、静岡、名古屋、関西、佐賀から集まり、さながらプルサーマル全国集会でした。

福島の佐藤さんは、国がプルサーマルをそれこそ「ブルドーザーのように」強引に進めている現状と危機感を訴え、6日の県へ使用済燃料プール水漏えい問題を中心とした申し入れについて賛同の呼びかけていました。

大阪の小山さんは、設置変更許可申請書から輸入燃料体検査申請書への段階の違い、使用済MOX燃料の問題、特に米国で燃料プールからの漏えいによる環境汚染が社会問題になっている点について、共通の課題として行こうとの提起がありました。

佐賀の石丸さんは、裁判闘争への支援の呼びかけ、運動の一番後ろにくっついていた主婦が原告団長を決意する話は感動を呼んでいました。

多々良さんが3人の話をまとめたあと、プルサーマル公開討論会を実現させる宮城の会を発展的に解消し、仙台での新しいネットワーク「プ ルサーマルいらねット仙台」立ち上げ宣言をして終わりました。

プルサーマル 今、現地で何が…―玄海、高浜、福島そして女川―

今年3月、村井宮城県知事は、石巻市長、女川町長とともに、女川原発3号機でのプルサーマ ルの実施に同意しました。しかしそれは、この間の「対話フォーラム」などでの、プルサー マルには資源節約の有効性がないこと、使用済のMOX燃料の処分方法が未だ決められていないこと、いまよりさらに安全余裕がなくなり、しか も高くつくなど、多くの疑問・批判を無視しての暴挙でした。

このプルサーマルは、宮城県の女川だけの問題ではありません。隣の福島県で は、今年中にも長年放置されてきたMOX燃料の装荷の可能性があります。また、昨年国内ではじめてプル サーマルを実施した佐賀県の玄海では、あまりの国の無責任さに対し、裁判を準備しています。

そこで、その福島と玄海で中心的に活動されている佐藤さんと石丸さん、関西電力の高浜原発でのMOX燃料のデータ不正を暴きプルサーマルを中止させた美浜の会の小山さんをお招きして貴重なお話を伺います。この三人の方々と集 う機会を持つことが、今後プルサーマルとどう向き合っていくのかを考えるためにも大変意 味のあることと思い企画しました。

ぜひ御参加いただき、皆さまとともに仙台での今後の取り組みの出発点とし たいと思います。

日時:2010年7月3日(土)開場13時 開会13時30分
会場:仙台市中央市民センター(パルシティ仙台) 5F 第2セミナー室

プルサーマル全国各地からの報告
「緊迫する福島現地から」佐藤和良さん(脱原発福島ネットワーク)
「MOX燃料の問題を追って-使用済MOXの行き場」
小山英之さん(美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会)
「玄海プルサーマル裁判のアピール」石丸初美さん(玄海3号プルサーマル訴訟原告団長)

仙台
での新しいネットワーク「プルサーマルいらねット仙台」立ち上げ宣言

主催:プルサーマル公開討論会を実現させる宮城の会

« 2010年6月 | トップページ | 2010年8月 »