経済との天秤で20ミリが強要されてはたまらない
- 福島原発震災連続集会での川原田昌浩さんのお話
5月21日、フクロウの会、プルトニウムなんて要らないよ!東京の共催で福島原発震災連続集会(2回目)が行われました。
今回の集会ではメインゲストに子どもたちを放射能から守る福島ネットの川原田昌浩さんをお招きして、福島での子どもたちを放射能から守るための取り組みについてじっくりとお話を聞きました。
川原田さんは"子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク”の立ち上げ時からかかわり、現在は除染チームの世話役として活躍されています。
今回のお話は原発震災発生から、放射能汚染の中で福島市周辺ではどのような状況になっているのか、大変生々しいものでした。また今後の課題も示されています。
貴重なお話でしたので、内容を紹介いたします(文責:フクロウの会)
右から2番目が川原田さん(全体討議での様子)
============== 以下 川原田昌浩 さんのお話 ==================
放射能大量放出時、雨の中で給水の列に並んでいた
福島原発事故発生直後、3月15日と16日に放射能の大量放出がありました。それにより福島市周辺は一時的に線量が急激に高くなりました。毎時20から30μSvにもなったのです。更にその週末には雨が降りました。
事前に知識を持っていた人以外はほとんど放射能のことに無頓着でした。当時は震災直後でガソリンや水が無く、冷たい雨に当たりながら何時間も給水を待っていたのです。子ども連れの人もいました。今から考えると恐ろしいことです。
その後、半減期の短いヨウ素の分が減り、毎時1.5μSv程度になりそのままずっとその状態です。
経済との天秤で福島県民に20ミリシーベルトが強要されているのではないか
今日は菅総理と温家宝首相、李明博大統領が福島の避難所を訪問するそうです。
地元では、何故この時期に3人がそろって福島を訪れるのか、その話で持ち切りです。
今回の原発事故を契機として、再び世界恐慌になることを恐れているのではないか、福島発の世界恐慌が来ることを恐れているのではないかという見方が出ています。避難先を訪問することで福島は安全だということをアピールするためにわざわざこんなことをしたのではないかと、福島市民は皆、疑いの目で見ています。
国際経済との天秤の中で福島県民に対して20ミリシーベルトが強要されているのではないか、というように感じています。
今、人間が何を大切にするかが問われているのではないでしょうか。ヒバク地となった福島の住民として奮い立っていかなければならないと感じています。経済の影で押しつぶされる命があってはいけないと感じています。
子どもを放射能から守る - 最初は5人くらいから
子どもを放射能から守るための動きは最初は3人から5人くらいでした。ネットの力は大きいと思います。しかし多くの人がどうして声を上げないのでしょうか?福島県が雇った放射線リスクアドバイザーが市民運動の声の高まりに機を合わせるように安全だという情報を流しました。8割から9割の大半の人々はマスコミや政府、県の言うことを信じています。
そのような人々は、不安を表明する人がいると、その人に対して嫌悪感を示すのです。年配者はそんな恐ろしいことを言うな、と言うのです。そのような中でずっと声を上げられない人たちがいたのです。そうした人たちの声が今集まってきました。
5月2日の参議院会館での文科省、原子力安全委員会との交渉には10名人が手を上げて東京へ来ましたが、手を上げずにそっと東京に来た人もいます。
この交渉で文科省と原子力安全委員会が言っていることに亀裂が入りました。マスコミも関心を持ち始め、徐々に好転し始めています。
ようやく不安の声があがるようになって来ました。NHKのETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図~福島原発事故から2か月~」の報道後、そのような人は爆発的に増えました。
しかし一方で、大半の市町村の首長は文科省の言うことに従って、私たちの言うことに対しては聞く耳をもちません。学校の先生はまちまちです。お役人的に上から言われることを粛々とやる先生。やっぱり危ない、外へ出るなという先生。その中でも、少し声を出す先生が出て来ました。
それでも、親の同意書をとって外で体育や部活を行っています。野球部はマスクをして外で野球の練習をする、という漫画みたいな光景もあります。
ようやく動き出した学校校庭の除染
学校校庭の除染について、福島市もようやく動き出しました。表土を除去することで大分線量は下がります。しかし汚染は一様ではありません。ホットスポットができています。
県の調査は、グランドの真ん中で1mの高さのところ1か所のみの測定です。本当に自分達の手で測ると恐ろしいことが分かってきます。
乳幼児を考慮して、地面に近い高さで測ると、毎時300μSv出るところもあります。福島市内でも10μSvでるところはざらにあります。家から学校までの通学路でも高線量のところがあります。ところが、今では、表土除去が文科省のお墨付きになっているところがあります。つまり校庭の表土除去をして、校庭の線量が下がっているから安全だと言うのです。
今日も福島は29℃ぐらいになるようです。風が吹けば土ほこりが舞い上がり夏は非常に熱くなります。二本松市では学校の全室にクーラを入れることが決定されました。しかし他は未だです。
子どもたちは放射能のことは分かりません。子どもは天真爛漫です。だから親は悩んでます。びくびくしています。しかしそのようなそぶりを見せると、職場を暗くするなという声ががります。
福島市内ではマスクをしている人は2-3割です。20代から30代の女性は比較的意識が高いです。それ以外の人たちは心配している素振りを表に出せないのが実態です。放射能の話題はタブーとなっているのです。メディアが取り上げれば意識が変わるのではないかと思っています。
子ども福島ネット内での意見対立 - 最終的には20ミリ基準の問題に帰着
不安の声を上げた親たちが中心となって「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」を立ち上げました。そのメーリングリストの中では避難をめぐっていろいろな意見が飛び交っています。それぞれいろいろな事情を抱えています。
避難できない事情と避難した方が良い、そのはざまで揺れています。
福島で生きて行くことを決意した人は「避難」という言葉に嫌悪感さえあるのです。
そういう中でネットワークの中ではお互いの決定は尊重しよう、という考え方に落ち着きました。しかし、結局は避難できるできないはお金の問題とかかわっています。市民の間にわだかまりがあります。
最終は文科省が決定した20ミリの基準の問題に帰着します。
20ミリという放射線管理区域以上の線量にあたるところに子どもを置いて良いのかどうか。これは法的問題です。
20ミリの基準を撤回させることにより、こうした問題を解決してゆく突破口にしたいと考えています。
行政を待っていられない - 動き出したおじいちゃん、おばあちゃん
子どもたちの環境を少しでも良くしたいという思いから除染のボランティア活動を行いました。子ども福島ネットの除染班5-6人と地域のおじいちゃん、おばあちゃん合わせて20人が集まり、10μSvも出ているところの除染作業を行いました。
おじいちゃん、おばあちゃん達の作業はていねいです。おばあちゃんは素手で土をかき集めていました。その結果0.6~0.1μまでに下がったのです。更にその上に覆土することで平常時まで戻りました。皆大変な満足感がありました。
少しでも安全なところを作るということが必要だと思います。正しいやり方をすれば低くなることが分かりました。全国からボランティアを募ったらどうかという考えもあります。
しかしこれには課題もあります。なによりも大きな問題は、このボランティア作業は危険を伴うということです。
行政を待っていたら20年―30年かかってしまいます。皆さんの協力で何とかできればと思っています。
あとは測定器の問題です。(空間線量を測る)γ線測定では不十分で、(β線を測る)CPM、CPS計測可能なものが必要です。
避難のサポートも重要です。長期的にやって行く必要があるでしょう。NPO法人にする必要があるかもしれません。
また除染を正しく行うためには除染マニュアルを作成することも必要と考えています。

お話をされる川原田さん
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