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2011/09/02

【143】子どもたちへの甲状腺被ばく検査は正しく行われたのか?

 福島原発事故の後、3月24日から30日にかけて原子力災害対策本部により、子どもの甲状腺被ばく調査が行われました。その結果は福島の子ども946人「問題なし」と報道されました。

 その後、4.5か月も経過した8月17日になってようやく原子力災害対策本部は検査を受けた子どもの保護者らに結果を説明しました。子どもの健康にかかわる重大な問題の説明に何故このように時間がかかるのでしょうか。しかも、この間に原子力安全委員会のHPに掲載されていた検査結果データが「個人が特定される可能性がある」という理由でデータ全体が削除されるという問題まで起こっています(8月11日NHK報道)。

 私たちは「問題なるレベルではない」とされる政府の検査結果に重大な疑問を抱いています。以下その疑問についてあげます。政府はこれらの疑問に答えるとともに、第三者が検証できるよう、個人が特定されない形での全てのデータの開示を求めます。

  

3月末に行われた児童の甲状腺検査について 

2011.8.29 福島老朽原発を考える会(フクロウの会)

※本記事は8月29日発行のフクロウの会のチラシの内容です。チラシはこちらからご覧ください。以下、テキストのみを貼り付けます。

  

 3月24日から3月30日にかけて、原子力安全委員会の依頼をうけた原子力災害現地対策本部は、いわき市、川俣町、飯舘村の1,080名の児童の甲状腺検査を実施しました。その概要は5月12日原子力安全委員会のウェブサイトに発表されましたが(1)、検査を受けた児童と保護者への説明は大幅に遅れ8月となりました。朝日新聞は8月18日、一面トップで「45%が甲状腺被曝」と伝えましたが、いずれも「健康に影響がないレベル」と説明されました(2)。検査のやり方には疑問が残りました。

 
  

 そもそも甲状腺のスクリーニング検査は、放射線ヨウ素を吸入摂取した直後に行われることになっていました。原子力安全委員会が定めた「防災指針」には、「安定ヨウ素剤」を投与すべきか緊急判断のことが書いてあります(3)。

  

 福島第一原発は、3月12日に1号機が水素爆発、14日には3号機も水素爆発、2号機も重大損傷、15日には4号機の水素爆発と、立て続けに放射能を放出しました。文部科学省は緊急にモニタリングを行い、15日に浪江町の原発から20km地点で空間線量率330μSv/hを記録し、16~17日には、浪江町30km地点で170μSv/h、飯舘村で95μSv/h、福島市(県測定)で24μSv/hを観測しています(11)。
  

 住民の証言では飯舘村では「放射能雲」が14日ぐらいから立ち込めていたそうです。放射性ヨウ素を大量に吸い込む恐れが発生したのですから、甲状腺検査はその直後に行われなければならなかったのです。文科省委託事業である緊急被ばく医療のマニュアルremnetには、吸入5時間後の検査を想定してスクリーニングレベルが示されています(4)。

  

 しかし飯舘村での検査は、吸入摂取日を3月14日としますと16日後の30日に行われました(29日下見か)。広島大学の田代聡教授が、4月17日の日本小児科学会緊急フォーラムで報告しました(5)。
 
  

 田代教授によれば、検査は県や村の全面協力で行われ、スクリーニングレベルを「0.2μSv/h」としたそうです。また野外では空間線量率が10μSv/hを超えている飯舘村で、バックグラウンドが低い場所を見つけるのには苦労し、村会議場の議長席裏に「0.2μSv/h」レベルの場所を見つけたそうです。
私たちが検査データの一端を知ることができたのは、8月18日の朝日新聞記事です。「全体の55%の子は検出限界も含み測定値が「0」だった。「0」超では、0.01マイクロシーベルトが26%いた。0.02マイクロシーベルトが11%で、最高は0.1マイクロシーベルトだった。」(2)
  

 朝日新聞の記事は3か所の検査をまとめたものです。この記事を読みますと疑問がわいてきます。
  

(疑問1)バックグラウンドが「0.2μSv/h」近くもあるところで、0.01μSv/hという値が、果たして有効な値として検出できるのだろうか?
  

 この検査では、
(検出値)=(計測値)-(バックグラウンド値) です。
測定誤差は右辺の2つの足し算になりますから、とても大きなものになります。0.01μSv/hなどは検出限界以下になってしまうでしょう。それとも、検出限界を下げるために、測定時間を既定の何十倍にもしたのでしょうか?

  

(疑問2)スクリーニングレベル「0.2μSv/h」は、吸入直後の甲状腺残留量が最大の時に当てはまるもので、12~16日間もたって甲状腺残留量が減衰してしまった時点では、当てはまらないのではないか?
  

 被ばく医療マニュアルremnetによれば(6)DBM型シンチレーション・サーベイメーターでは、換算係数は32kBq/(μSv/h)ですからメーターの針が「0.2μSv/h」を差す時には、甲状腺残留量は32×0.2=6.4kBq=6,400Bqです。
  

 次ページの表4-7で1歳児の欄を見てください、防護の基準は「1歳児の甲状腺等価線量が100mSv」と規定されているからです(4)。12日後には1/3の2,000Bqに減衰し、16日後には1/5の1,300 Bqに減衰します。減衰したのに12日目に針が「0.2μSv/h」を差すということは基準値の3倍あるということであり、減衰したのに16日目に針が「0.2μSv/h」を差すということは基準値の5倍あるということになります(※)。
  

 したがって最高値と説明された児童の「0.1μSv/h」も、基準値の半分ではなく基準値を超えた可能性があります。
  

 いずれにしても第三者の専門家による、検査方法と測定データの科学的検証が必要です。子どもたちのプライバシーを守りつつ行われなくてはなりません。もし子どもたちに健康障害が起きた場合、検査データは医療保障を受ける重要な裏づけとなります(「負げねど飯舘」の要請書(7)参照)。私たちフクロウの会は、子ども達の健康と将来を危惧する福島県内の保護者の方々と共に、早急な検証の場を求めます。

  

(※)原子力安全委員会は、「3月12日から測定の前日まで放射性ヨウ素入り空気を吸い続けたとして基準値を決めた」、という説明書を一部国会議員に渡したそうです。しかしこれは、放射能汚染状況の実態から外れた仮定です。説明は安全委員会のウェブサイトに掲示してないようです。掲示されたら、あらためて吟味いたします。
    
  

※資料とその短縮アドレス
(1)原子力安全委5/12:福島県における小児甲状腺被ばく調査結果についてhttp://p.tl/GCd5
(2)朝日8/18朝刊:福島の子ども、半数近くが甲状腺被曝 http://p.tl/NlWA
(3)安全委員会:原子力施設等の防災対策について(H20.10月改訂)http://p.tl/pZ7C
(4)remnet 初期被ばく医療の放射線測定におけるスクリーニングレベル http://p.tl/CK72
(5)広島大田代教授小児科学会:福島県における小児甲状腺被ばく調査(5分V)http://p.tl/xU20
(6)remnet 頸部甲状腺に沈着した放射性ヨウ素の測定 http://p.tl/9-Mh
(7)「放射線被曝による損害」の適切な判定指針の策定に関する要望書 http://p.tl/hWyV
(8)福島放送3/25:最高0.24μSv/h子供の甲状腺被ばく調査「問題なし」http://p.tl/JMIW 
(9)朝日3/25:子供の甲状腺被曝「問題ないレベル」福島・川俣で調査 http://p.tl/fMAV
(10)朝日4/2:甲状腺被曝検査、福島の子ども946人「問題なし」http://p.tl/UhEM
(11)福島第一原子力発電所の20Km以遠のモニタリング結果 http://p.tl/uWBw

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コメント

本当の意味の検査は出来ていないのでしょうか  南相馬市では まだ 子供たちの ホールボディーが 始まったばかりで 6ケ月もたっても 甲状腺の検査も 尿検査すら 始まっていません。地区によっては 線量の高いのに。。。 不安です それなのに 避難準備区域の解除は 納得いきません

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