【168】「自主的」避難者への賠償を求めて―避難の権利集会in東京(続き)
福島市渡利地域の汚染の深刻な状況 ー 私たちは何をすべきか真剣な討論
前回の報告から引き続き「避難の権利集会in東京」の報告です。今回は集会の後半で、福島市渡利地域の深刻な汚染の状況、避難勧奨地点指定をめぐる国、福島市の対応の報告や全体を通しての討論の様子を報告します。
10月8日の渡利地区住民説明会のビデオを上映した後、フクロウの会代表の阪上武さんが、特定避難勧奨地点指定をめぐる福島市渡利地区の状況についてこれまでの経緯を報告。
阪上さんは、住民の自主的な測定によって、渡利が高線量であることは早くから分かっていたにもかかわらず、福島市が詳細調査を行ったのが6月、特定避難勧奨地点指定のため国によるの詳細調査はさらに遅く8月下旬で、しかも調査対象は6700世帯のうち1080世帯にすぎなかったことなど、行政側が実態の把握にあまりにも及び腰であることを指摘しました。
そして、こうした状況のなかで、フクロウの会とFoE Japanが住民の要請を受けて神戸大学の山内知也教授に依頼して行った土壌調査の結果、チェルノブイリの「特別規制ゾーン」に相当する深刻な土壌汚染が確認された場所もあったこと、これらが国が詳細調査の対象としなかった地域であったことから、これを踏まえて、「渡利の子どもたちを守る会」(Save Watari Kids)や住民の皆さんとともに、渡利地区の特定避難勧奨「地域」指定や、全域での詳細調査の実施などを求める署名4000人分を提出したことなどが紹介されました。
しかし、それにもかかわらず、10月8日の住民説明会では、国・福島市が「勧奨地点指定を見送り除染をがんばる」とだけ繰り返し、住民の怒りを招いたこと。さらに同28日の対政府交渉でも国側がまともな対応をおこなわなかったことが報告されました。
阪上さんは、除染を行うとしても年単位の時間がかかり、渡利の地形的な特性から線量が逆に上がっていく箇所もあることを踏まえれば、その間だけでも子ども・妊婦を避難させるべきだと指摘。避難勧奨「地区」指定や、南相馬市のような子ども・妊婦基準の導入、全域詳細調査の実施などは、今や地域全体の要求になっていると結びました。
阪上さんに続いて、「渡利の子どもたちを守る会」代表の菅野吉広さんによる現地からの報告。「渡利の子どもたちを守る会」の活動の経緯を語って頂きました。
会発足のきっかけとなったのは、5月の学校除染説明会。突然、一方的に「明日から除染します」という教育委員会に詰め寄った5人が中心となって、自主的な線量調査を開始しました。その後、7月には市に自主避難への賠償などについて要望書を提出。夏休みに学校校舎を利用して、線量の比較的低い教室を利用して子どものための茶道教室などのイベントを行うなどしてきました。
渡利地域の状況を語る菅野さん
菅野さんは、線量調査で、一度除染した場所もすぐに線量が戻り、さらには以前より線量があがってしまうことがあること、そのなかには小学校周辺もあることを発見。後に山から新たに降り注ぐセシウムがコンクリに付着することが原因と知るが、国や市がこうした状況を認めていないことを指摘。仲間の5分の1ほどはすでに自主避難しているが、経済的に避難が難しい人が多いのでやはり補償が必要だとしました。10月28日の対政府交渉では、「国はこんなに酷いものか」と驚くと同時に、これを動かすには民衆の力しかない、と意を新たにしたと語りました。
お二人の話に続いて、質疑応答と自由討議の時間がもたれました。東京の私たちにできることは何か、という会場の参加者の問いに対して、やはり会場から、抗議や応援の声を国会議員や閣僚に届けるというやり方を提起する声があがると、別の方が具体的に届け先を挙げるなど、終始活発な議論が行われました。
また、郡山から自主避難中の方が「事故直後、何を信じていいか分からなかったが、FoEの満田さんやフクロウの会の阪上さんの活動に感謝している」と声を詰まらせたり、実家が福島にある方が「東京にいる私が声をあげるしかない。経産省の座り込みで、集まることが力を生むことを実感した」と語るなど、自主避難者などの福島の人々と東京で活動する人々の言葉が行きかう時間となりましたた。
次に、この日が最終日となった経産省前の「原発要らない全国の女たち」のアイリーン・スミスさん、「子どもたちを放射能から守る全国ネットワーク」や「放射能から子ども達を守ろう・三郷」からのアピールがありました。
集会は最後にアピールを読み上げて全員で確認をしました。
その後も、20人ほどの人が会場に残って1時間ほど車座で交流会を行い、どのように福島を支援する動きを作っていけるかなど、活発な議論が続けられました。
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