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2012/03/05

【204】大飯原発3・4号機について原子力安全委員会ストレステスト検討会に対し意見書を発出

みなさま

福島老朽原発を考える会(フクロウの会)および国際環境NGO FoE Japanは、原子力安全委員会宛に、大飯3号機・4号機の安全性に関する総合評価(ストレステスト)の一次評価に関して、公開書簡を発出しました。

http://dl.dropbox.com/u/23151586/120304_letter_anzeniinkai.pdf

************************

2012年3月4日

原子力安全委員会 
委員長 班目 春樹様 委員各位
発電用原子炉施設の安全性に関する総合的評価検討会
外部有識者各位

福島老朽原発を考える会(フクロウの会)
国際環境NGO FoE Japan(地球の友ジャパン)

関西電力(株)大飯発電所3号機及び4号機の安全性に関する総合的評価に関する原子力安全・保安院の審査書に対する原子力安全委員会の確認について(意見)

 発電用原子炉施設の安全性に関する総合的評価(以下「ストレステスト」)の一次評価について、本問題に関心を有し、影響を受ける可能性のある一般市民として意見を申し上げます。

1.原子力安全委員会の「確認」は実質的には再稼動への「お墨付き」

 委員長は2月20日の記者会見で、「一次評価だけでは安全性評価としては不十分である」、「再稼働の是非は政府が判断する。原子力安全委員会は判断しない」旨発言されました。しかし、大飯原子力発電所の再稼動で政治判断を下すとされる枝野経済産業大臣ら4閣僚が安全上の判断でよりどころとするのは、原子力安全・保安院の審査書と原子力安全委員会の「確認」です。したがって、原子力安全委員会による「確認」を終えた段階で、原子力安全委員会が、実質的には、再稼動へのお墨付きを与えることになってしまいます。福井県やおおい町が、ストレステスト一次評価に対して疑念を表明している現状では、原子力安全委員会の「お墨付き」は、福井や関西の地元住民に対して、運転再開の容認を強要するための材料としてはらたくでしょう。
 昨年の8月、泊原子力発電所3号機の運転再開が問題になったとき、原子力安全委員会は、手続き上判断をすることはできないし、判断はしないとの立場でした。実際には、保安院が原子力安全委員会の場で報告したことが原子力安全委員会の「承認」と報道され、これが、地元自治体や住民に対し運転再開の容認を強要するための材料として利用されました。委員長の記憶にも新しいことだと思います。このようなことを繰り返さないためにも、委員長の意図を貫徹するためにも、手続きを進めるべきではありません。

2.審議日程が拙速

 今後の審議日程は、3月5日、その後3月7日となっており、あまりに拙速です。これでは形式上の審議すらまともにできるのかどうか危惧されます。それで十分な審議ができるのでしょうか。
 原子力安全委員会が消滅する前に審議を終えたいというのは、行政側の勝手な都合です。このようなスピード審議は無責任です。安全確保を最優先して、結論を出さずに審議未了で打ち切り、今後は原子力規制庁の審査にゆだねることが、責任ある対応だと考えます。審議を行うのであれば、スケジュールに縛られることなく時間をかけるべきです。これが保証されないのであれば審議を行うべきではありません。

3.「福島と同様な地震・津波が襲っても福島と同じような事故には至らない」という原子力安全・保安院の判断基準の意味

 検討会の第1回で、外部有識者からの最初の質問は、ずばり「判断基準は何か」というものでした。しかし保安院は、審査書の12章に書いてあるとおおまかに答えるだけでした。12章には、「福島第一原子力発電所を襲ったような地震・津波が来襲しても同原子力発電所事故のような状況にならないことを技術的に確認する」とあります。しかし、保安院の審査書はこの判断基準を満たしているかどうか、下記の点で、疑問です。

1)福島原発事故の原因は究明されていない

 そもそも、福島原発事故は収束しておらず、原因もわからない状態です。「福
島第一原子力発電所を襲ったような地震・津波が来襲しても同原子力発電所事故のような状況にならないことを技術的に確認する」のであれば、少なくとも地震
による配管破断の可能性をはじめ、事故原因について精力的に調査を進めている国会事故調査委員会の結論を待ち、それまでは結論を保留すべきではないでしょうか。

2)津波高さの想定について

 例えば津波の想定は11.4メートルで、福島事故の14メートルよりも低くなっています。これについて、前回の検討会で保安院は、福島ではもともとの想定高さプラス9.5メートルの津波が来たので、大飯もそのようにしたと説明しています。そこでは、若狭では福島のような大きな津波が来ないことが前提となっています。これで本当に「福島第一原子力発電所を襲ったような地震・津波の来襲」を想定したことになるのでしょうか。
 関電は最近になって、もともとの想定高さをかさ上げしたため、ストレステストの前提とされる津浪高さは、プラス9.5メートルよりも小さくなっています。また、関電は検討会の場で、想定高さの更なるかさ上げを検討すると回答しましたが、それがいつになるのかは不明です。
 関電などが行った津波跡調査は、地震・津波に関する意見聴取会でも不十分だとの結論となり、再度の詳細調査が実施される予定です。関電の調査範囲は、敦賀・美浜・三方地区に限られています。この再調査結果は11月頃になりますが、保安院は、「この再調査結果と再稼働は関係ない」として、再調査結果を踏まえようとしていません。

3)京都府が求める津波調査を行うよう求めてください

 京都府と京都府にある自治体は連名で、宮津、舞鶴などで古文書にある過去の大津波について調査するよう国に要請しています。しかし保安院は「丹後地域
の津波調査はやらない」「京都府には回答していない」と、自治体からの正式な要望さえ無視しています。

4)地震による配管破損の可能性について

 また福島第一原発事故において、地震による1号機での非常用復水器(IC)系配管破損の可能性、3号機での高圧注水系(HPCI)配管破損の可能性は否定できません。政府事故検証委員会中間報告も17:50に原子炉建屋入口で線量計が振り切れた原因として、「それ(放射性物質)が建屋内に漏えいしたということ以外に考え難い」と書いています。保安院も可能性を否定しておらず、配管が破損したかどうかを確認するには、現地調査が必要であることを認めています。国会事故調査委員会はこの問題に正面から取り組んでいます。しかし保安院は、大飯原発のストレステストの評価にあたっては、福島原発事故で配管が破損した可能性については考慮していません。

4.ストレステストは二次評価と合わせて評価しなければ意味がない

 これまで2回の検討会の中で、外部有識者から下記のような疑問が提起されました。「大飯原発3・4号機の炉心損傷を想定した評価を行うのに際して、大飯原発1・2号機の状況はシビアアクシデントが発生しているという最悪の事態を想定しているのか」、「大飯原発3号機の評価を行うのに際して4号機はどうか」、これに対して、保安院は、一次評価の想定は炉心損傷までで、シビアアクシデントの想定は二次評価で行うと回答しました。それでは、炉心損傷の想定についても最悪の事態を想定したことにはなりません。
 このことは、ストレステストの一次評価と二次評価を分けることはできず、合わせて一つのものとして評価しなければ意味がないことを示しています。これは保安院側のストレステスト意見聴取会でも問題となり、委員から、一次評価と二次評価を合わせて行うよう指摘がありましたが、保安院は取り合わず、強引に審査書をまとめてしまいました。
 そもそも、ストレステストについて、原子力安全委員会が平成23年7月6日付で出した指示文書「東京電力株式会社福島第一原子力発電所における事故を踏まえた既設の発電用原子炉施設の安全性に関する総合的評価の実施について」には、一次評価と二次評価の区別はありませんでした。一次評価と二次評価を分けたのは保安院の側で、平成23年7月22日付指示文書「東京電力株式会社福島第一原子力発電所における事故を踏まえた既設の発電用原子炉施設の安全性に関する総合評価の実施について(指示)」に記載があります。この経緯について、「安全委は、もともと欧州並みのテストを求めていたが、原発再稼働を急ぐ保安院が1次評価を設けたため、安全委のテストは2次評価に棚上げされた。」との報道もあります(読売新聞2月22日付社説)。
 また、大飯3・4号機の二次評価について、保安院は、昨年末までに提出するよう、電力会社に指示をしており、その指示はまだ生きていると述べています。しかし、関電をはじめ、二次評価結果を提出した電力会社は一社もありません。電力会社は、出さない方が再稼動のために得策だと考え、保安院はこれを黙認しているというのが実際のところではないでしょうか。二次評価はいったいいつになったら出て来るのか、保安院を問い質してください。
 原子力安全委員会が、真に原発事故の再発防止のために機能しうるためには、少なくとも二次評価の審査の終了を安全確認の条件にすべきではないでしょうか。

5.具体的な質問書を出しなおしてください

 保安院の審査書には、具体的な質問を列記してください。第1回検討会の際に、安全委員会が示した「関西電力(株)大飯発電所3号機及び4号機の安全性に関する総合的評価(一次評価)に関する原子力安全委員会からの質問事項」は、抽象的で一般的な言葉の羅列であり、大飯3・4号機固有の問題には何一つ触れられていませんでした。
 すでに一部述べました通り、私たちは多くの具体的な疑問を有しています。それを原子力安全委員会に質問していただきたいと考えていた私たちは、大いに驚き、かつ失望の念を禁じえませんでした。
 一方、外部有識者からの質問は具体的であり、有意義なものであったと思いま
す。保安院による意見聴取会においても個々の委員から非常に具体的な質問がだされており、保安院が答えていない多くの疑問が残されています。
 ぜひ、原子力安全委員会として、保安院の意見聴取会委員の質問も踏まえ、具体的な質問書を出しなおしてください。

6.今後の検討課題が種々残っている状態で判断は下せないはず

1)活断層の連動について

 審査書では今後の検討課題となっていた活断層の連動について、関西電力が2月29日に公表した資料にある応答スペクトル図によれば、大飯原発周辺の3つの活断層が連動して動けば、揺れは、機器の固有周期が集中する領域で、基準地震動Ssを超えることが明らかになりました。これにより、制御棒挿入時間などが、評価基準値を超えるおそれがあります。評価基準値を超えれば運転できないことを保安院は認めています。

2)免震化の前倒し、緊急時の要員確保

 上記以外にも検討課題は種々残っています。評価基準として何を用いるのかが明確でない問題についてはIAEAも指摘しています。また、事務棟の免震化を前倒しさせるとありますが、それがいつになるのか不明であり、それまでの安全性が確認されていません。緊急時の要員の確保について、保安院は原発から3キロ圏内の要員をあてにしていると回答していますが、その要員が地震で被災する可能性について外部有識者からの再質問には答えていません。また、陸路での人員の移動が不可能な場合についてどうするのかという外部有識者の質問に対して、保安院は、「船をつかって、または空路で要員を移動させる」と回答しましたが、津波などが想定される状況でこれは現実的でしょうか。冬の大飯原発では、雪に阻まれて孤立状態になることもあると聞きます。

3)安全率、許容値

 保安院側のストレステスト意見聴取会で置き去りにされた問題が下記のように
種々あります。

・  制御棒の挿入性を検討の対象から外している
・  基礎ボルトなど機器の強度について、安全率を削って評価している
・  原子炉建屋などの構造強度に関わる許容値について、耐震バックチェックの基準より甘い許容値を適用することを認めている
・  本来の設備は福島原発事故前から改善せず、消防車や非常発電装置などの外部仮設設備だけで安全だとしている
 
 このような状況で、拙速に判断を下せるはずはないと思われます。

7.一般市民からの質問・意見を審議に反映させるべき

 原発の再稼働に対しては、多くの国民が、不安と関心を有しており、保安院における意見聴取会および原子力安全委員会における議論を見守ってきました。ひとたび事故が起こったときの影響の広さや深刻さは、福島原発事故が示しているとおりです。
 大飯3・4号機の運転再開の手続きの一環として行われているストレステストの審査・確認は、その後の原発の運転再開の基準となります。そうした意味で、すべての国民が、影響をうける可能性を有しているのです。
 傍聴者の発言を不快に思われるかもしれませんが、発言の多くは、手続きの不合理さに対するやむにやまれぬ意見の表明だった点はご理解下さい。
 現在の形式的な意見受付だけではなく、ぜひ、一般市民からの意見を受け付けるための会合を設けてください。そして、原子力安全委員会として、これらの意見を委員会の議論に反映して下さい。
 私たちは当事者であり、潜在的な被害者です。専門家のみによって進められる審査・確認では、不十分であると考えています。

以上

連絡先/福島老朽原発を考える会(フクロウの会)
東京都新宿区神楽坂2-19-405 TEL/FAX03-5225-7213/阪上武090-8116-7155

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