【記者会見報告】尿検査をうやむやに?~秘密会の果たした役割を市民が検証
10月18日、参院議員会館にて「尿検査をうやむやに?~秘密会の果たした役割を市民が検証」との内容で記者会見を行いました。
この記者会見は、福島県民健康管理調査の検討会委員会前に、「秘密会」が行われ、「進行表」が存在していたことに関するものです。
福島県はこの問題について調査委員会を立ち上げ、休日をはさみわずか5日間で「報告書」を発表しました。報告書は、この「秘密会」および「進行表」による発言内容の「調整」や「抑制・誘導」はなかったと結論づけています。
私達市民団体や福島県民は、昨年来、内部被ばく調査の一環として尿検査を行うよう要求してきましたが、今回明らかになった「進行表」の内容からは、この問題が「秘密会」を通じてどのように扱われたのか、その一端が明らかになります。
尿検査の問題やその他の問題が、「秘密会」でどのようにあつかわれたか、具体的に検討し、今回の「秘密会」「進行表」の問題点と、その後の、県の対応について問題点を明らかにしました。
結論として私達は、下記を求めます。
(1) 福島県は今回の「秘密会」による運営の責任者を明確にし、再発防止のための処分を明確にすること。
(2) 健康管理調査を率いている山下俊一氏は、「秘密会」による運営の責任を取り辞任すること。
(3) 福島県は被災者の立場に立って、予防、早期発見・早期治療の考え方にもとづいて、健康管理体制を抜本的に見直すこと。
また記者会見では、私たちがこれまで1年半に渡り進めてきた、尿検査の最新結果を紹介し、改めて尿検査による内部被曝調査の意義についてご紹介しました。
添付資料B(福島県調査委員会による「チェックリスト」)をダウンロード
本件についての問い合わせ先
フクロウの会・放射能測定プロジェクト 青木一政
090-7245-7761
以下、記者会見資料のテキストを貼り付けます。
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尿検査をうやむやに?~秘密会の果たした役割を市民が検証
福島老朽原発を考える会事務局長・放射能測定プロジェクト
青木一政
1. 要旨
福島県と福島県立医大が行っている、福島県民健康管理調査の公開の検討会の前に、「秘密会」が行われ、討議内容を規定する「進行表」が存在していたことが新聞報道により明らかにされた。福島県はこの問題について調査委員会を立ち上げ、休日をはさみわずか5日間で「報告書」を発表した。報告書は、この「秘密会」および「進行表」による発言内容の「調整」や「抑制・誘導」はなかったと結論づけている。
私たちは、今回の問題が、委員による公開の検討会の場での議論によってではなく、非公開の場で 、当事者である県民に対して秘密裏に合意形成が行われ、健康調査がすすめられている点にあると考える。
私達市民団体や福島県民は、昨年来、内部被ばく調査の一環として尿検査を行うよう要求してきた。今回明らかになった「進行表」の内容からは、この問題が「秘密会」を通じてどのように扱われたのか、その一端が明らかになっている。尿検査の問題やその他の問題が、「秘密会」でどのように問題にされたか、具体的に検討することで、今回の「秘密会」の問題点とその後の、県の対応について問題点を明らかにしたいと考える。
結論として私達は、下記を求める。
(1) 福島県は今回の「秘密会」による運営の責任者を明確にし、再発防止のための処分を明確にすること。
(2) 健康管理調査を率いている山下俊一氏は、「秘密会」による運営の責任を取り辞任すること。
(3) 福島県は被災者の立場に立って、予防、早期発見・早期治療の考え方にもとづいて、健康管理体制を抜本的に見直すこと。
合わせて、私たちが約1年半に渡り進めてきた尿検査の最新結果をご紹介し、改めて尿検査による内部被曝調査の意義についてご紹介いたします。
2. 健康管理検討会は「秘密会」と「進行表」にそって粛々と進められた
(1) 福島県による「調査結果」報告書について
福島県はこの問題について、10月5日に調査委員会を立ち上げ、10月9日にはその「調査結果」を発表した。(資料は下記からダウンロードできる)
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/download/1/gaiyou.pdf
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/download/1/houkokusyo.pdf
その報告書によれば、
① 「秘密会」の目的は「資料の事前説明」であり、
② 委員の発言内容の調整を行ったという「事実は認められなかった」とし、
③「秘密会」の存在や内容について「口止めを行ったという事実は認められなかった」、としている。
また、「進行表」についても、県として「議論を一定の方向に誘導する意図はなく」、委員の発言の「抑制・誘導」は確認できなかったとしている。
しかし、この「調査報告書」なるものを仔細に検討するだけでも、県の調査が、「秘密会」問題を早々に幕引きを図るために、強引に事前の意見調整や抑制、誘導はなかったと強弁していることは明らかである。以下、今回の「秘密会」「進行表」による健康管理検討会の問題点について具体的に指摘する。
(2) 尿検査による内部被ばく検査について
(添付資料-A 第3回「進行表」、添付資料-B福島県調査委員会による「チェックリスト」参照)
進行表の記載 今回の3地域(浪江、飯館、川俣山木屋)以外を対象とした小規模調査の結果を見た上で、(尿による内部被ばく検査の是非を)判断したい。
・ 但し、WBCの今後の普及とGe半導体の逼迫状況(牛肉等)を考えると、尿検査でWBCを代替えするのは困難ではないか。
委員会(議事録)の記載
【山下座長】
今後、尿検査をする意味があるのか。
【明石委員】
ICRPでは1日量の基準があるが、1回量についてはない。今回の尿検査では極めて微量しか検出されなかった。(略)たとえば、1日5リットルの尿が出る前提で、つまり相当薄まっている前提で、問題ないと言える数値が示せるか、検証にもう少し時間をいただきたい。
県の判断 進行表に記載のある内容に関する直接的な発言はなかった。
私達の批判:この秘密会が行われる3週間前(2011.6.30)に、尿検査により福島市内の子ども10人全員が内部被ばくしていることが我々の調査で明らかになった。当日午後には原子力災害対策本部に対して、尿検査を含む内部被ばく検査を行うよう要請行動を行った。尿検査による内部被ばく検査は社会的にも大きな焦点になっていた。
「進行表」では、わざわざ下線を引いて尿検査は困難であることを強調している。しかもその理由は牛肉検査等で「Ge半導体が逼迫」しているから困難だとしている。
明石氏は、山下座長の「尿検査をする意味があるか」という問いかけの答えとして、当を得ていない。医者として1日5リットル尿を出す人間を想定しているのも驚きだが、「相当薄まっている前提で、問題ないと言える数値が示せるか」と言う。明石氏は尿で検出された値そのものよりも、「問題ないといえる数値が出せるかどうか」が関心なのである。明石は「問題ないという数値」を検討するから待ってくれというのである。しかし、この後の第4回検討委員会から今日まで、尿検査について再度議論された形跡はない。しかも肝心の尿検査も実施されていないのである。
「進行表」にもとづく「秘密会」で「尿検査で代替は困難」との合意が委員のなかでの合意として事は進んでいるというのが実態である。
[参考]
2011.5.22 フクロウの会他、福島市内の子ども10人の尿検査(検出限界0.3Bq/L)。10人中10人の尿からセシウム検出。
2011.6.30 上記結果を記者会見にて公表。原子力災害対策本部に対して尿検査など内部被ばく検査の要請。
2011.7.10 放射線医学総合研究所による先行検査、120人のWBCおよび尿検査。
(検査検出限界:WBC320(Cs134),570(Cs137)Bq/Body,尿検査13Bq/L)。
2011.7.17 福島県健康管理調査「秘密会」第3回、尿検査について「困難ではないか」と「進行表」に記載。
2011.7.24 福島県健康管理調査第3回検討委員会、上記尿検査について審議。
2011.8.30 フクロウの会他が福島県に対して要請行動。尿検査、WBCの検出限界を下げ被ばく低減を目的とした調査を求める。
2011.10.17 福島県健康管理調査第4回検討委員会。これ以降、尿検査、WBCについての検討の記録は無し。
(3) SPEEDIの問題について
進行表の記載 「SPEEDI再現データ(3月15日の課題)の質疑に終始しない」「(SPEEDIの話題のみが着目される可能性あり、そうならないよう願います。また、そうなった場合は、「線量評価員会」で検討とそらしてください。)
委員会(議事録) なし
県の判断 進行表に記載のある内容に関する直接的な発言はなかった。
ただし、SPEEDIの話題が一度も出なかったのは、進行表の記載に起因するとの見方もできる。
私達の批判:SPEEDIの話題が検討会で出なかったのは、まさに「そうならないように」委員が「秘密会」での調整、合意に従ったからと考えるのが自然。
(4) 健康診査追加項目について
進行表の記載 健康診査追加項目について、統一見解が得られていません。予算の有効配分と実効性を踏まえて、あれもこれも追加は不可です。
委員会(議事録) 【安村委員】関係者との調整は今後となる。
県の判断 進行状況の周知であり、誘導等と言えるものではない。
私達の批判:これも「秘密会」で「統一見解が得られていない」「あれもこれも追加は不可」だから「調整は今後となる」という発言となったと考えることが自然。委員会の発言は「秘密会」での調整を受けての発言と捉えることが合理的。
(5) 避難区域住民の健康検査について
進行表の記載 (下記の範囲で議論をお願いします。)1.白血球スクリーニングとしての有用性?から血算も追加せず。2.現時点案 3.生活習慣病予防の観点から、腎機能(Cr,e-GPR,UA)追加。
委員会(議事録)
【安村委員】
放射線による影響ばかりでなく、避難生活による生活習慣の変化などが想定される中で、生活習慣病の予防が極めて重要と言う観点に立ち、早期発見・早期治療のため健康診査を実施するもの
県の判断 進行表に記載のある内容に関する直接的な発言はなかった。
私達の批判:進行表」の範囲での調整、結論を安村委員は見事に補足説明して見せている。県の報告書では「進行表に記載のある内容に関する直接的な発言はなかった」から調整や誘導にあたらない、としている。むしろ委員は「進行表」の結論にそって、分かり易く言い換えていると言える。
3. 福島県による調査報告書は真摯な分析となっていない
(1)「進行表」どおりのセリフを発言していないので、調整、誘導ではない?
福島県の「秘密会」調査報告書では「進行表」の存在について、8回の検討会議のうち6回分についてその存在を認めている。その上で「疑わしい記述」があるものとして、第3回、第6回のものを資料として付け、その記述と、実際の検討会の議事録の該当部分との比較をして検証している。
その第3回の検証結果が前述のものである。しかし、県の調査報告では、これらの「疑わしい記述」についてほとんど、「進行表に記述のある内容に関する直接的な発言はなかった」から、結局、「秘密会」での「進行表」は、事前に委員や職員の間で、意見調整や誘導をしたものではない、としている。
「直接的は発言」は無いから、調整、誘導は無いというのは、委員が小学生のように「進行表」どおりのセリフを発言していないから、問題ない、という論理である。
(2)甲状腺がん患者の説明を「秘密会」でしたのはプライバシー保護を理解してもらうため?
第8回の「秘密会」で、甲状腺がん患者に関する委員からの説明については、「秘密会」当の場で説明することで「患者のプライバシーを守る必要性があること」を認識してもらうために説明したものであり、がん発生に対する各委員間の意見のすり合わせがあったとは認められないとしている。
しかし、プライバシーの問題であるなら、それを検討会の場で宣言し、その部分については書面のみの提示で、発言などでは控えれば済むことで、「秘密会」で確認する必然性は全くない。
「秘密会」の存在、内容の口止めについて、報告書では「口止めを行ったという事実は認められなかった」としている。しかし「むやみに他言なさらぬよう」「(秘密会の終了後)三々五々向ってください」と職員が発言したことは認めている。これは口止めと理解することが普通で、口止めでないと理解する方が無理がある。
(3)福島県は「秘密会」の議事録、録音記録を公表すべき
県の報告書では、一連の検証に当たって、「進行表」と検討会および「秘密会」の議事録、録音記録と照合したと再三述べている。しかし、肝心の「秘密会」議事録、録音記録は公開されていない。福島県総務部に問い合わせたところ、情報公開請求をせよとの反応である。
「進行表」と検討会議事録の比較分析においても、何故か、「秘密会」議事録の内容は記されていない。「秘密会」での「進行表」にもとづく議論が、検討会の議論に対して、調整、誘導でないことを証明するためには、「進行表」が「秘密会」でどのように議論され、どのような結論になったか、そして、それは「検討会」議事録ではどのように、反映されたか、これを対比させなければわからない。
福島県の調査報告書が「秘密会」議事録の内容を欠落させ、「検討会」議事録で「直接的な発言」はないから調整、誘導がなかった、との評価は如何にも無理がある。「秘密会」議事録の該当部分を公表してそれとの対比で「検討会」議事録にはどのように反映されたか。これこそが問題の核心である。
福島県は「秘密会」議事録、録音記録を全て公表すべきである。
4. 福島県は「健康管理調査」の抜本的見直しをすべき
今回の「秘密会」の存在は、健康管理調査に対する県民の不信を決定的なものにした。
1年半近くたつにもかかわらず、基礎調査のためのアンケートの回収率は30%にも満たない。今後、これが改善される見通しはない。
8月末に日本疫学会に発表された山下らの論文でも、問題点としてこのアンケート回収率の低さが課題として挙げられている。住民をモルモットにする彼らの健康調査の意図からしても、この低回収率は問題として認識されているのだ。
福島県は健康管理調査の抜本的見直しをするべきである。先ず、山下俊一氏をリーダから更迭すべきである。「県民の健康状態を見守る」「県民の幸福増進」「長期に渡る低線量被ばくの影響を調査する」と言ってはばからない山下が進める調査が、県民の被ばく防止、被ばくによる健康被害防止ではなく、住民をモルモットにする疫学調査であることを既に多くの県民は見抜いている。
福島県は、県民の被ばく被害防止のために、健康管理調査を抜本的に見直し、体制を改めるべきである。
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