【汚染水問題】福島原発汚染水対策WGからみえる状況
来週3月4日13時~参議院議員会館にて汚染水と再稼働で政府交渉があります。よろしくお願いいたします。
汚染水問題について24日に開かれた原子力規制委員会の汚染水対策WG(ワーキンググループ)をネット傍聴しましたので感想を含めて報告します。
汚染水対策WG資料
福島第一原発・汚染水対策WGからみえる状況
2014年2月27日
阪上 武(福島老朽原発を考える会)
◆H6タンクから100トン(全ベータ約23兆ベクレル)の漏えい
・H6タンクからの漏えいについては、報道されているように、人為的な弁操作がなされていました。別のEタンクへ汚染水を移送中に、汚染水をH6の既に満水状態だったタンクへ流す弁操作が行われ、発覚前に戻す操作が行われていました。
・東電は作業員らにヒアリングを行っていますが、いまのところ弁操作を行った人は特定できず、意図的に行われたのか、ミスによるものかも不明です。
・汚染水WGでは、その場合でも、100トンもの大規模な漏えいは防げたはずだとして、①警報がなったのにポンプを止めず、警報の誤作動と判断したこと、②移送先の水位が上がっていないことを確認してポンプを止めていれば漏えい拡大は防げたのではないか、③弁が三重になっているうち二つは常に開けていたこと、などが問題になりました。他に、漏れていた時期に行われた弁にタグを付ける作業との関係についても質問がでました。
・①の警報がなったのに対処できなかった件については、移送元でも移送先でもないタンクの警報だった、14時の警報後、15時と15時半に見回りをしたが、漏えいは見つからなかったので警報の誤作動と判断した、との回答でした。これに対して、規制庁側からは、タンクの周辺だけではなく、上部もみていれば見つかったのではないかという指摘がありました。
・警報が鳴ったのにポンプが止まらなかった件については、東電から、タンクは、まず95%で最初の警報が鳴り、ポンプは自動的に止まる、その後、手動でさらに継ぎ足し、98%で次の警報が出る手前まで汚染水を入れる運用をしていたという説明がありました。今回は98%の警報が出たのですが、この警報ではポンプは自動的に止まるようにはなっていなかったとのことです。それだけタンクが逼迫していた時期があったということです。規制庁は95%での運用はできないのかと指摘していました。
・②の移送先の水位監視ですが、水位が上がりすぎたらポンプを止めるという監視しかしておらず、水位が上がらない場合の対処はなかったという回答でした。
・③の弁の運用については、弁が一つのタンクもあり、移送作業の効率を考えて、三重のものも2つは開けて、1つの操作で済むように運用していたとの回答でした。
・WGでは、最後に、更田委員が東電に対し、リソース(人的資源)は足りているかと質問する場面がありました。東電は、タンクについては人員は足りているが、福島事故以降緊急状態がずっと続いていると述べました。他では足りていないところもあるとも。大変な状況での作業が続いており、人員は足りていないのではないでしょうか。分社化を控え、柏崎刈羽にも人を割かなければならず、それをはっきりと言えないのだと思います。国が乗り出すというのであれば、国の管理下において、作業者を公務員にして身分と給料を補償して必要な人員を確保するようにすべきだと思います。
・この場面で更田委員は、何かあったらきちんと悲鳴を上げて欲しいなどとと言っていましたが、問題は規制委・規制庁側にあるのではないでしょうか。国が乗り出すといいながら、作業はすべて東電任せで、たまに開くWGで上から注文をつけるだけです。リソースが足りていないのは規制委・規制庁の側です。そもそも再稼働の適合性審査できゅうきゅうの更田委員がこのWGを仕切っていることも問題です。汚染水問題だけで頭をつかう委員が誰もいないのです。再稼働審査を中断して、規制委・規制庁のリソースを汚染水問題に投入すべきだと思います。
◆護岸付近の汚染状況
・特に1・2号機のタービン建屋より海側護岸の地下水で、非常に高い放射能濃度が続いています。1-16という地下水の測定点では、11月くらいから上がりはじめ、12月に全ベータで1リットルあたり100万ベクレル、正月あけに200万ベクレル、2月には300万ベクレルとなっています。他の測定点でもトリチウムの値が上がり続けているところがあります。
・東電はここを水ガラス(土を科学的に固めて壁にする)で囲み、アスファルトで覆う作業を続けています。しかしその外側の北側でも、トリチウム濃度が上がっているところがあります。
・汚染源は、地下のトレンチに事故時にたまった超高濃度の汚染水だと言われています。6千トンあるとのことです。これがタービン建屋とつながっており、あらたな汚染水が供給されている可能性もあるということです。これに対処するために、いま、トレンチにコンクリートを流して漏れを止める作業と、タービン建屋との接続部を氷で塞ぐという作業が行われています。
・東電は、1~4号機の海側に遮水壁をつくり、間を埋め立てる作業もしています。もう4号機側を少し残すだけとなっていますが、2~4号機では、地下水が水ガラスの上端よりも高く、水ガラスを乗り越えて海に注いでいるため、完全にふさいで埋め立ててしまうわけにはいかないという状況になっています。シルトフェンスを通していますが、これでは十分に除去できません。
・最終的には6千トンの超高濃度汚染水を汲み上げるということですが、これをそのままタンクに入れてしまうと、周辺の空間線量が上がってしまう(それほどの濃度!)ので、即アルプスにかけなければいけない、しかしアルプスの能力が耐えられるのかどうか、という議論が行われています。アルプスについては福島での別の会合で4つの核種で、濃度基準をクリアできないという報告もあります。
◆ストロンチウムと全ベータの放射能測定値が誤っていた件
・全ベータ線の放射能の内訳は、ストロンチウムとイットリウムが約1:1(定常状態)という関係ですので、全ベータの約半分がストロンチウムになるのが自然です。ところが昨年6月以降、ストロンチウムの値が全ベータよりも大きくなる逆転現象がおきるようになったということです。どちらかの値が誤っていることになります。
・結論的には試料によっては、どちらの側にも誤りがありました。ストロンチウムについては、5・6号機の試験室で行われた測定値に誤りがありました。全ベータについては、濃度が高い試料について、放射線の数え落としにより過小評価が出ることがあったということです。これらが明らかになったのは今年2月になってからのことです。全ベータの誤りは、濃度を下げてから測るようになった昨年10月までは可能性があったということです。
・ところが、東電は、原因がわかる前から、一方的にストロンチウムの測定だけに誤りがあると決めつけ、逆転現象がみつかって以降は、値が小さい、全ベータの値しか公表しませんでした。
・8月に測定した地下水のデータで、ストロンチウム1リットルあたり500万ベクレル、全ベータ90万ベクレルというものがありました。東電は全ベータの90万ベクレルしか公表していませんでした。しかし実際には、ストロンチウムの値が正しく、ストロンチウムが500万ベクレル、よって全ベータは1000万ベクレルだったのです。およそ10分の1の過小評価でした。
・8月19日には、大問題になった300トンのH4タンクからの汚染水漏れが発覚していますが、このときの測定値も間違っていました。これは汚染水WGの後に報道されていますが、漏えいした水の測定値が、当時1リットルあたり8000万ベクレルと公表されましたが、実際にはこれの10倍の8億ベクレルだったということです。300トンでは、240兆ベクレルとなります。
・この300トンの汚染水については、8月23日にタンク内の汚染水も測定されています。当時2億ベクレルと発表されていましたが、汚染水WGの資料によると、後に3億2千万ベクレルに訂正されたようです。これがもし本当は10倍だったということになればとてつもない数値になります。
・タンクからの汚染水は、溝を通って直接湾外に出ます。広島原爆で放出されたストロンチウムよりも遙かに多い量が放出されたのです。安倍首相の「ブロックされている発言」について、改めて問題にしたいですね。
以上
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