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2019/06/24

<政府交渉報告>原発の使用済燃料問題…使用済MOX燃料の冷却に300年!??

みなさまへ
6月21日に参議院議員会館にて開かれた政府交渉についてご報告させていただ
きます。(拡散希望)

阪上 武(原子力規制を監視する市民の会)

★使用済MOX燃料の冷却「300年以上かかる」(エネ庁)
★第二再処理工場の「目途は立っていない」(エネ庁)

原発の使用済燃料問題に関する政府交渉報告
http://kiseikanshi.main.jp/2019/06/23/143333/

6月21日の午後、参議院議員会館において、原発の使用済燃料問題をテーマと
した院内集会、政府交渉、全国交流集会が持たれ、40名ほどが参加しました。
集会、交渉には原発の使用済燃料のリラッキング、乾式貯蔵、中間貯蔵の問題を
抱える佐賀、愛媛、関西、静岡、新潟と青森県むつ市から参加があり、文字通り、
この問題での全国の交流の場ともなりました。茨城県東海村からの参加もありま
した。

政府交渉の相手方は、原子力規制庁の核燃料サイクル施設の審査部門、発電用原
子炉の審査部門、技術基盤部から合わせて5名、資源エネルギー庁から2名、原
子力委員会事務局から2名が対応しました。福島みずほ議員も参加され、リラッ
キングの安全上の問題について、改めて説明を受けたいとの発言がありました。

★使用済MOX燃料が使用済ウラン燃料と同等の発熱量となるのに「300年以
上かかるのは事実」(エネ庁)
★第二再処理工場の「目途は立っていない」、「研究開発で特性を把握しながら
具体的に検討していく課題と認識している」(エネ庁)

交渉で、参加者が一番驚いたのが、プルトニウム燃料(MOX燃料)をプルサー
マルで用いた後の使用済MOX燃料の発熱量が、使用済ウラン燃料と同等になる
のに300年以上かかることをエネ庁が明言したときでした。こちらで示した資
料は100年までしかなく、100年以上かかりますねと聞いた答えがこれでし
たのでなおさらでした。ウラン燃料ですら、使用後15年経って発熱量が下がっ
てからでないと、乾式貯蔵に回すことはできません。使用済MOX燃料は、30
0年以上経たないと再処理はおろか、運搬することもできないことになります。

使用済MOX燃料の再処理については、六ヶ所再処理工場では技術的にできず、
第二再処理工場で行うことになっていますが、エネ庁は、「研究開発で特性を把
握しながら具体的に検討していく課題と認識している」とし、目途はあるのかと
問うと「目途は立っていない」と答えました。プルサーマルにより出てくる使用
済MOX燃料は、原発サイトのプールで300年以上冷やし続けなければならな
いことになります。原発を抱える地元の住民にしてみればたまったものではあり
ません。交渉の場でも、各地の住民から批判の声があがりました。

★中間貯蔵・乾式貯蔵後の使用済燃料の行き先は決まっていない

交渉では、六ヶ所再処理工場の稼働期間について、日本原燃が40年としている
ことをエネ庁に確認しました。中間貯蔵・乾式貯蔵の搬出時には六ヶ所再処理工
場は操業が終っています。審査中のむつの中間貯蔵施設について、申請書では搬
出先について、「契約者に返還する」としか書いていないことを規制庁に確認し
ました。第二再処理工場の目途はたたず、中間貯蔵・乾式貯蔵後の使用済燃料の
行き場がないことが改めて確認されました。

★再処理量をプルサーマルで使う分だけに制限する計画の認可は経産大臣が下す
(エネ庁)
★プルトニウム利用計画「電事連は六ヶ所再処理工場竣工までに示すと言ってい
る」(エネ庁)
★毎年度出すよう求めている原子力委員会決定に反する

日本のプルトニウム大量保有について国際的な批判がある中で、原子力委員会は、
昨年7月31日の決定文書において、「プルトニウム保有量を減少させる」とし、
「プルサーマルの着実な実施に必要な量だけ再処理が実施されるよう認可を行
う」としています。さらに「今後、電気事業者(等)…は、今後プルトニウムの
所有者、所有量及び利用目的を記載した利用計画を改めて策定した上で、毎年度
公表していく」とあります。交渉の場で原子力委員会事務局は、この文書の要求
事項を関係者に求めたとし、関係者は、エネ庁、文科省、電気事業者、原子力機
構などが入るとしました。エネ庁は、「プルサーマルの着実な実施に必要な量だ
け再処理が実施されるよう認可を行う」とある認可は、再処理等拠出金法に基づ
くもので、認可を行うのは経産大臣であると述べました。

プルトニウム利用計画については、今年3月にも示される予定になっていました
が、いまだに出ていません。エネ庁に確認すると、出ていないことを認めたうえ
で、「電事連は六ヶ所再処理工場竣工までに示すと言っている」と述べました。
しかし、プルトニウム利用計画は、六ヶ所再処理の稼働がなくても出さなければ
ならないし、原子力委員会決定に従うと、プルサーマルの具体的な計画がないと、
再処理量が決められないはずです。その点、原子力委員会事務局に聞きましたが、
「六ヶ所再処理工場の許可も下りていない状況なので計画が立てられない」と繰
り返すだけでした。国として具体的な計画はもっておらず、事業者まかせになっ
ていることが明らかになりました。

★資源エネ庁の広報誌「サイクル・アイ」のウソに抗議

資源エネルギーの広報誌にある核燃料サイクル図について、以前には、プルサー
マル後の使用済MOX燃料が、高速増殖炉用の核燃料サイクルのための再処理工
場に送られるようになっていたものが、最新のものでは、高速増殖炉用の核燃料
サイクルそのものがなくなりました。高速増殖炉計画がとん挫したので、それ自
体は当然のことなのですが、最新のものでは、使用済MOX燃料が、六ヶ所再処
理工場に再び送られ、サイクルが回っているように描かれています。しかし、エ
ネ庁もはっきり認めているように、六ヶ所再処理工場では、使用済MOX燃料の
再処理ができません。これは明らかにウソです。エネ庁に対して抗議した上で撤
回するように求めました。エネ庁は部署が違うのでと逃げるだけでした。

★乾式貯蔵のキャスクに異常があれば原発のプールで蓋を空けなければならない
(審査ガイド)
★乾式貯蔵の審査ガイドは原発の廃止措置の前のものしかない(規制庁)
★原発が廃炉となりプールがなくなれば乾式貯蔵の安全性は担保されない状態に

乾式貯蔵の安全上の問題について規制庁に聞きました。乾式貯蔵の使用期限につ
いては、キャスクに対して規制要求をしており、50年や60年の期限があるが、
貯蔵施設に対して使用期限の規制要求はしていないとのことでした。

乾式貯蔵の審査ガイドによると、キャスクの閉じ込め機能の異常が生じた場合は、
原発の燃料プールで蓋を開け、水中で修復を行うことになっていますが、50年
や60年も経てば原発は廃炉になっており、燃料プールもないはずです。これで
どのように安全性を担保するのかと聞きましたが、規制庁は、いまある審査ガイ
ドは、原発の廃止措置前のもの。原発の廃炉後にどうするのかについて、規制要
求を定めたガイドはないと回答がありました。目先のことしか考えておらず、こ
れでは乾式貯蔵の安全性は担保されません。

★玄海原発3号機のプール容量が説明もなしに増やされていた

玄海原発3号機のプールの容量について、これまでずっと九電は、「1炉心+1/
3炉心」の空きを除いた管理容量で説明していました。ところが最近になって、
「1炉心」の空きを除いただけの「制限容量」に説明もなしに変えていました。
これについて、地元から国としての責任を明らかにするよう求めましたが答えま
せんでした。

★むつ中間貯蔵の航空機落下評価は確率評価だけ

近くに米軍・自衛隊基地がありF35戦闘機が墜落した場所からも近いむつ中間貯
蔵施設について、航空機落下について審査で考慮しているのかを聞きました。今
審査中で、航空機落下も項目に入っているとの返事でしたが、実際にやっている
のは墜落の確率評価であり、実際に墜落を想定しているわけではないようです。

2019/06/11

6/21<院内集会&政府交渉>原発の使用済燃料問題

みなさまへ(拡散希望)

主催団体・質問書が決まりました。
全国から集まります!ぜひご参加ください!

***********************
<院内集会&政府交渉>ここがいま脱原発の焦点!
原発の使用済燃料・乾式貯蔵・リラッキング問題
http://kiseikanshi.main.jp/2019/06/10/144255/

6月21日(金)13:20~ 参議院議員会館

質問書はこちら
http://kiseikanshi.main.jp/wp-content/uploads/2019/06/0621-shiyozumi-nenryo-sitsumon.pdf

原発の使用済燃料の行方が不透明なまま増え続けていることにより、子どもや孫
たちに危険な核のゴミを残していいのかという強い不安が周辺住民の間で広がっ
ています。

核燃料サイクル政策が事実上破綻し、プルトニウム保管量を抑えるために再処理
の制限が迫られる中、政府は行き場を失った原発の使用済燃料の貯蔵能力を拡大
することにより矛盾を先送りし、原発再稼働を進めようとしています。

乾式貯蔵施設や中間貯蔵施設の設置、貯蔵ピットのリラッキングが予定されてい
ますが、貯蔵した使用済燃料が将来どうなるのか、まったく見通しが立っていま
せん。

原発の使用済燃料問題は、いま推進側にとって頭の痛い問題であり、逆にここを
止めれば、脱原発へ大きく舵を切ることができる最大の焦点でもあります。

乾式貯蔵などが予定または予定されようとしている佐賀、愛媛、静岡、福井・関
西、そして中間貯蔵施設が建設中の青森県むつ市、及び首都圏等から参集して、
院内集会と政府交渉を行います。ぜひご参加ください。

日時:6月21日(金)参議院議員会館ロビーにて通行証配布(13:00)
 13:20~14:20 事前集会
 14:30~16:00 政府交渉(規制庁・エネ庁・原子力委:調整中)
 16:20~17:20 全国交流集会

場所:参議院議員会館議員B104(地下鉄永田町駅/国会議事堂前駅)

主催:玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会/原発さよなら四
国ネットワーク/ふるさとを守る高浜・おおいの会/避難計画を案ずる関西連絡
会/浜岡原発を考える静岡ネットワーク/核の中間貯蔵施設はいらない!下北の
会/国際環境NGO
FoE
Japan/原子力規制を監視する市民の会/福島老朽原発を
考える会

問合せ:090-8116-7155 阪上まで/資料代:500円

 

2019/06/01

大崎市にて試験焼却リネン監視結果の報告と今後の監視の進め方を議論

 

5月30日「大崎耕土を放射能汚染させない連絡会」幹事会が開かれました。その中で、昨年10月16日から進めてきた放射能汚染廃棄物試験焼却の監視結果を説明しました。また今後の進め方についても議論をしました。

 

 

大崎市では市内3か所のクリーンセンターで汚染稲わら、汚染牧草など農林業系放射能汚染廃棄物の一斉焼却が昨年10月16日から行われています。ちくりん舎では地元のグループと協同で6か月にわたり、リネン吸着法により大気中粉じんの放射能濃度を監視してきました。

 

また地元の上宮協栄会は試験焼却の差止をもとめる仮処分の訴えを裁判所に提起しており、リネン吸着法による漏れデータもその重要な証拠として裁判所に提出しました。

 

今回はこれら半年にわたる監視結果を改めて説明するとともに、リネン吸着法がバグフィルターから漏れている微小粒子をどうしてとらえることができるのか、理論的な説明も行いました。また仮処分の訴えでは裁判所は焼却事務組合側の主張そのままに却下する決定を下しましたが、その裁判所の決定についての解説と批判も改めて説明しました。当日の説明会資料は下記からダウンロードできます。(ファイルが大きいので2つに分割しています)

 

ダウンロード - 説明資料(前半)

ダウンロード - 説明資料(後半)

 

 

役員会では今後の監視の進め方についても話し合いました。ちくりん舎からは夏場は冬場と逆方向の風が吹くので、夏場の漏れの傾向を示すデータが取れれば、焼却炉からの漏れを示すより有力な材料になることを説明して夏場の監視を提案しました。

 

この提案について地元の皆さんからも賛同が得られ急きょ夏場の時期の監視を行うことがきまりました。

再送<政府交渉報告>原子力防災・安定ヨウ素剤配布のここが問題!

みなさまへ(拡散希望)

5月28日午後に参議院議員会館にて、原子力防災(安定ヨウ素剤の配布及び避
難退域時検査について)に関する院内集会と政府交渉が行われました。
http://kiseikanshi.main.jp/2019/05/30/114499/

パブコメを出そう
http://www.jca.apc.org/mihama/bousai/pubcomme_siryo20190514.pdf
FFTV https://youtu.be/k-fmxqmONrQ

集会には、浪江町から兵庫県に避難された菅野みずえさん、福井県おおい町の宮
崎さん、米子市議の土光さん、関西から、黒田さん、増田さん、島田さんが来ら
れ、会場には、武藤類子さん、松本徳子さんもみえていました。設定をお願いし
た福島みずほ議員には政府交渉にご参加いただきました。

<院内集会>

院内集会では、まず菅野みずえさんから、福島第一原発事故の避難の状況をお話
いただきました。避難所での放射線測定(スクリーニング)において、10万カウ
ントの針が振り切れるような状況であったのに、名前も聞かれず、記録もとられ
なかったとのことでした。

その後、交渉の内容に関わる問題について、宮崎さん、土光さん、避難計画を案
ずる関西連絡会、原子力規制を監視する市民の会からお話がありました。

<政府交渉>

交渉には、原子力規制庁放射線防護グループから、竹本泰子氏(課長補佐)、渡
邊裕貴氏、新井知大氏(被ばく医療防災専門職)の3名が、内閣府原子力防災担
当から、林田浩一氏(参事官補佐)と藪本順一氏(専門官)の2名が参加しまし
た。規制庁は主に竹本氏、内閣府は主に林田氏が対応しました。

◆「40歳以上は服用の必要なし」について

・「チェルノブイリ原発被ばく者の調査では、40歳以上でもリスクはある」と認
める
・WHOガイドライン2017には「40歳以上は服用の必要なしとは書かれていな
い」と認める

安定ヨウ素剤の配布について、現在パブコメ中の解説書の改定案に「40歳以上は
服用の必要なし」と書かれた件について、市民側はこの文言の撤回を求めて問い
ただしました。規制庁の竹本氏は、「子どもや妊婦を優先させる。40歳以上でも
希望者には配布する、配布しないわけではない」と何回も繰り返しました。

市民側は、原子力安全委員会に提出された、40歳以上でも相対リスクが上昇して
いることを示すチェルノブイリ被ばく者の調査資料を示しながら確認をとりまし
た。規制庁は、この資料から40歳以上でもリスクはあることが示されていること
を認めました。

また、改定案に「40歳以上は服用の必要なし」との根拠として「WHOガイドラ
イン2017年版においては、40歳以上の者への安定ヨウ素剤の服用効果はほとんど
期待できないとされている」と記されているが、WHOガイドライン2017年版に
はそのような文言がないことについて聞きました。

規制庁は「40歳以上の人は安定ヨウ素剤投与の有益性はより低くなる可能性が高
い」との文言があると回答しました。しかし「服用効果はほとんど期待できな
い」とは意味が全く違います。他にあるのかと聞くと、他に挙げることはできず、
WHOガイドライン2017年版には「40歳以上は服用の必要なしとは書かれていな
い」ことを認めました。

◆UPZ(30キロ圏)の住民への安定ヨウ素剤の事前配布について

・緊急配布が困難な場合は、地方公共団体が必要と認めれば事前配布できる
 「普通の解釈では、地方公共団体とは、市町も含まれる」
 「しかし、緊急時安全対策交付金の制度上、県が申請することになっている」
・被ばく前から直後までの服用が有効と周知することに
 →UPZでは被ばく後でないと安定ヨウ素剤が配布されない矛盾

UPZでの事前配布について、解説書では、原則緊急時配布となっていますが、
それでは効果のある被ばく前の摂取は不可能です。UPZについても事前配布と
すべきだという立場で質疑をしました。

解説書では、緊急時配布が困難な住民に対し、地方自治体が必要と判断した場合
という条件付きで、UPZでの事前配布を認めています。米子市、境港市、鳥取
県の判断により、希望者への事前配布が実現していますが、福井県では、市町が
必要性を認めても、福井県が動かず、事前配布ができない状況となっています。

米子から、解説書の文言「地方自治体が必要と判断した場合」とある地方自治体
には、市町村は含まれるのか、市町村だけでも必要と判断した場合は、国費によ
る事前配布ができるのかとの質問が出ました。

回答した内閣府は、文言にある「地方自治体」は普通に解釈すれば市町村も含ま
れるが、交付金の制度上、県に交付することになっているので、市町村に交付す
ることはできないと述べました。市民側は「地方自治体」に市町村が含まれるの
であれば、解説書の趣旨に従い、市町村の判断だけで国費による事前配布ができ
るようにすべきだとし、検討を求めました。

今回の解説書の改定案では、安定ヨウ素剤の服用のタイミングについての記載が
膨らみ「放射性ヨウ素にばく露される24時間前からばく露後2時間までの間に安
定ヨウ素剤を服用することにより、放射性ヨウ素の甲状腺への集積の90%以上を
抑制することができる。」「安定ヨウ素剤の服用効果を十分に得るためには、服
用のタイミングが重要であり、平時から住民に適切な服用のタイミングについて
周知する必要がある。また、安定ヨウ素剤の備蓄、事前配布、緊急時の配布手段
の設定等の平時からの準備が必要となる」との文言が追加されました。

これに従えば、今後は平時から、安定ヨウ素剤は被ばく前から被ばく直後までに
服用するよう平時から周知することになります。ところが、UPZでは、安定ヨ
ウ素剤を避難時に一時避難所やスクリーニングポイントで受け取ることになって
おり、その避難指示は、500μSvという高い値が観測されて始めて出ることにな
っています。被ばくしてからでないと避難できず、安定ヨウ素剤も受け取れない
のです。指針そのものに矛盾があります。

規制庁は、被ばく前の服用を周知することを認めました。矛盾の指摘については
何も答えられませんでした。市民側は改めて事前配布の拡大を求めました。

◆避難退域時検査について

・内部被ばくの把握については判断基準もマニュアルもなく今後の検討課題
・現状のスクリーニングの基準は甲状腺の内部被ばくは考慮されていない

避難所で行われる被ばく測定(スクリーニング)については、福島第一原発事故
直後に、13,000カウントの基準が10万カウントにひきあげられただけでなく、当
時のマニュアルでは行われるはずだった、内部被ばくを把握するための、鼻スメ
アや甲状腺測定を含む2度目のスクリーニングが行われなくなってしまい、内部
被ばくの把握というスクリーニングの主目的が失われてしまいました。

これに対し、現状の指針では、スクリーニング(避難退域時検査)について、目
的に中には「内部被ばくの抑制」がうたわれ、内部被ばくが疑われる場合には、
鼻スメアや甲状腺スクリーニングなどが行われると書いてあります。しかし、具
体的にどのような場合に内部被ばくを疑うのか、鼻スメアや甲状腺スクリーニン
グの判定基準は何なのか、このような測定をどこでやるのかが書いておらず、マ
ニュアルにも記載がありません。これでは何も実行されないことになります。

規制庁の回答は、鼻スメアや甲状腺スクリーニングは拠点病院で行う、内部被ば
くを疑うのは、鼻や口元で放射能が検出されたらというものでした。福島第一原
発事故以前のマニュアルでは、避難所で行う検査を、各県に3か所程度の拠点病
院でないと行わないというのは大きな後退です。それに、鼻や口元の放射能をど
うやって検知するのでしょうか。そのような話は初耳です。

現状の指針では、ガイガーカウンターによる体表面汚染のスクリーニングでは、
①頭部・顔面、②手指及び掌、③靴底の三か所を測定することになっています。
鼻や口元の放射能の検出というのは、このうちの①頭部・顔面の測定を指してい
るのか?どこに書いてあるのか?体表面汚染のスクリーニングは4万カウントが
基準だが、今の話は、基準はいくらなのか?結局規制庁は何を聞いても答えられ
ず、今後の検討課題だと回答しました。内閣府に聞いても首を横に振って聞いた
ことがないと言いました。

4万カウントの根拠について聞くと、IAEAの体表面スクリーニングの基準が6万
カウントで、それよりも小さい値にしたとの回答でした。しかしIAEAの基準は甲
状腺の内部被ばくを考慮したものではありません。福島第一原発事故当時のマニ
ュアルに記載の13,000カウントは、甲状腺等価線量100ミリシーベルトに相当す
るものでした。IAEAは甲状腺防護のための包括判断基準を甲状腺等価線量で50ミ
リシーベルととしていますから、これに合わせるのであれば、13,000カウントよ
りも厳しくしなければいけないはずです。40,000カウントでは、甲状腺等価線量
で300ミリシーベルトにもなり、甲状腺の内部被ばくを考慮したものではありま
せん。これに対し規制庁からは何ら反論はありませんでした。

さらに、現状の指針とマニュアルでは、ガイガーカウンターによる測定は、車両
だけを測り、40,000カウントを下回れば、乗車した全員が検査なしで通過してし
まいます。これでは、人の内部被ばくの把握などできようがありません。これに
ついては、各地から、このようなやり方を変えるよう要求がありました。

★交渉を通じて、特に「40歳以上は服用の必要なし」の解説書の文言に根拠がな
いことが明確になりました。パブコメでこの文言の撤回を求める意見を集中しま
しょう。また、解説書に追加された「服用のタイミング」の記載に照らしても、
UPZでも事前配布を原則とすること、避難退域時検査については、内部被ばく
把握のための検査内容とするよう、指針の見直しを求めていきましょう。

<パブコメを出そう!>********************

是非パブコメに意見を集中しましょう。以下に避難問題を案ずる関西連絡会と原
子力規制を監視する市民の会で作成した文例がありますので参考にしてください。
http://www.jca.apc.org/mihama/bousai/pubcomme_siryo20190514.pdf

「安定ヨウ素剤の配布・服用に当たって」のパブコメはこちらから
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=198019201&Mode=0

「原子力災害対策指針」のパブコメはこちらから
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=198019103&Mode=0

阪上 武(原子力規制を監視する市民の会)

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