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2024/12/31

【大崎市放射能ごみ焼却住民訴訟】仙台高裁で不当判決ー放射能汚染基準の80倍緩和の恒久化先取り

12月25日、仙台高裁において大崎市放射能汚染廃棄物一斉焼却住民訴訟の判決言い渡しがありました。

 

結論から言えば、単に地裁の不当判決を踏襲、住民の訴えを棄却しただけでなく、地裁判決を補足強化し、あからさまに現状追認、原発推進、ひいては現体制擁護の判決だということです。本判決は放射能汚染廃棄物のクリアランスレベル(汚染物として取り扱わなくてよい基準)100Bq/kgを80倍にも緩め、8000Bq/kg以下であれば実質的に一般廃棄物と同様な取り扱いで良いとする汚染対処特措法を恒久化させるという意味を持ちます。8000Bq/kg以下であれば放射性廃棄物がいくらあろうと、それに取り囲まれた生活・被ばくは忍従せよという原発推進派にとって極めて都合の良い宣言文のような判決です。「被ばくはできるだけ少なく」から「ある程度の被ばくは我慢しろ」という大転換の先取り判決と言えます。

 

高裁判決はこちらからDLできます
地裁判決はこちらからDLできます

 

以下、その要点を紹介します。

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(1)焼却ありき、放射能ごみ処分のためには低線量被ばくは受忍すべきという、恐ろしい被ばく認識

 高裁判決の原発推進、現体制擁護の偏った姿勢は、争点の一つであった人格権侵害(放射能ごみ焼却により、被ばくの健康生命に対する危険性に不安を抱え続けてしなければならないこと)についての判決文に端的に表れています。

 判決文は「特措法(汚染対処特措法(筆者注)により基準を大幅に緩和し、8000Bq /kg以下の汚染廃棄物を一般の廃棄物と同様に焼却することを可能とした取り扱いに対し、原発事故の被害者というべき住民が不安を覚えることは当然」「本試験焼却により、・・セシウム137が相当程度排出される可能性は否定できず、これが拡散することによって周辺地域の住民に健康被害をもたらす抽象的な危険(太字は筆者、以下同じ)があることまでは否定し難い」などと一見、住民に寄り添ったかのような表現をしています。

 しかし、その直後にあいまいな根拠(後述)で「現実に排出される放射性物質は、年1mSv以下という基準を下回ることが予見されており」「実際にも本件試験焼却前後の空間線量にも有意な差は見受けられなかったことからすれば、本試験焼却は、周辺住民に健康被害が発生する具体的な危険性を生じさせるものではなかった」と主張しています。いうまでもなく、低線量被ばくの危険性、特に内部被ばくの危険性はがんや白血病の発生率の上昇、乳幼児複雑心奇形の増加、乳児死亡率の上昇、循環器系疾患の増加、免疫低下による各種疾患の増加、体内の活性酸素増加による老化現象の促進などが報告されています。1年間の試験焼却での空間線量の評価だけで「具体的な危険性がない」というのは、放射線による急性障害が出ない限りは問題ないということと実質同じ意味になり、あまりにも乱暴な結論です。

 その上で、判決文は、「控訴人らが主張する本件試験焼却による健康被害については・・様々な事情を比較衡量したとき、社会生活上受忍すべき限度を超えると言える具体的な危険性があるものであったとは言えない」として、平穏生活権を侵害していないと結論しています。極論すれば放射線被ばくによる急性障害が出ない限りは、被ばくは「受忍すべき」ということになります。

 

(2)汚染対処特措法により汚染廃棄物基準を従来の80倍に緩めた点を強調、一方で政府の同法施行3年後の見直しの不履行は不問に

 高裁判決では、「認定事実」において汚染対処特措法が制定された経緯や、8000Bq/kg以下の汚染廃棄物は一般廃棄物と同様の扱いにしたことの仔細を「補正」として一審判決の該当記述を全面的に差し換えました。一方で、この汚染対処特措法の附則で、政府は施行後三年を経過した場合に検討を加え「所要の措置を講ずる」、「放射性物質により汚染された廃棄物、土壌等に関する規制の在り方その他の放射性物質に関する法制度の在り方について抜本的な見直しを含め検討を行い」「法制の整備その他の所要の措置を講ずる」とされているにもかかわらず、政府は何もやっていないことについての言及はありません。現状追認、行政擁護、政府与党をはじめとする原発推進派の意向を先取り、法の番人としての司法の役割を投げ捨てたものとしか言いようがありません。

 

(3)汚染廃棄物処理が進まない実態を仔細に説明、一般ごみとの「混焼」処理を強調、反対する原告らを言外に「非国民」扱い

 高裁判決は「事実認定」において、(2)で述べた他、更に全面差し替え箇所があります。そこでは「汚染対処特措法および同施行規則に基づき8000Bq/kg以下の廃棄物については通常の処置方法でも、周辺住民、作業員ともに、その被ばく線量が・・年間1mSvを下回るものとして、市町村で安全に処理できるものという扱いになった」と強調しています。それにも関わらず、処理が進まない実態のなかで、宮城県が環境省の協力で一般ごみとの「混焼」による処理を決めた経緯を説明、それに全ての地方公共団体が同意したと説明しています。

 一般ごみと「混焼」したからと言って、放射能は分解されず、飛灰には濃縮されて高濃度になり、バグフィルタからの微小なセシウム粉じん漏れや焼却灰の管理型処分場(一般ごみと同じ)への持ち込みに、住民が安全性への懸念を持つことは当然です。わざわざこうした経緯を仔細に差し替え説明することで、それに危惧を持ち裁判で争う住民は社会性のない、自己主張をする特殊な人間であるかのような印象を持たせます。

 

(4)根拠薄弱な安全性の主張、原告らのリネン吸着法や尿検査結果について無視

 高裁判決は放射能ごみ焼却の安全性の部分でも「従来の基準とされていた100Bq/kgを大幅に変更したものであるから、・・控訴人らが、新たな不安を覚えることは当然」などと、一見、原告らに寄り添った表現をしている部分があります。しかしこれはリップサービスとも言えるもので、これに惑わされてはなりません。判決は原告らが提出した、リネン吸着法による3焼却炉(玉造、中央、東部各クリーンセンター:以下CC)周辺の秋・冬・夏の風向きによるセシウム微小粉じん漏れを示すデータ、玉造CC風下住民の尿検査による内部被ばくデータ、玉造CC稼働中の公定法(環境省が定めた排ガス測定法)の時間延長によるセシウム粉じん漏れデータ、玉造CCの老朽化による稼働停止後の、リネン吸着法結果の大幅低下、同住民の尿検査による内部被ばく状態の低下データ等を全て「焼却により不溶性の放射性物質が飛散していることや、飛散した放射性物質が人体に影響を及ぼす程度の濃度で飛散していることを適格に示す証拠はない」として一蹴しています。

 一方で、判決が焼却の安全性の根拠としているのは、①環境省や国立環境研による福島県内外の焼却炉によるセシウム除去率調査や、②福島県の仮設焼却炉2箇所で調査した結果をまとめた国立環境研のいわゆる「大迫論文」に過ぎなせん。①はバグフィルタがセシウムを99.9%捕捉するということを客観的に裏付けるデータ等の添付、引用はありません。②は福島県内の仮設焼却炉2箇所(具体的施設不明)での電子式インパクタによる分析結果ですが、バグフィルタは、数百本もの沪布ユニットで構成されるそれ自体複雑なプラントともいえるものですから、設備の設計、建設時の施工状態、保守状態、老朽化等により、その設備能力は大きく異なることは自明であり、仮に②の大迫論文結果(その論文自体の問題点はここでは割愛する)が正しいとしても、それが、全てのバグフィルタの能力を保証するものでないことは自明です。実際に原告らが実施した玉造CCでの稼働中の公定法(時間延長による検出下限を大幅に低下させた)では、大迫論文の3倍(3号炉)から13倍(4号炉)の粉じん漏れを検出しました。

 判決文が「本試験焼却は・・混焼による処理の安全性を確認するために実施したものである」(判決文10p 「5 本件指定基準及び本件試験焼却の安全性について」)というのであれば尚更、原告らが提出した数々の、調査結果について、真摯に検討すべきであることは明らかです。しかし、見米正裁判長らは、原告らが要求した証人尋問を頑なに拒み、一方で「適格に示す証拠はない」と結論していることは、最初から政府環境省方針や被告らを擁護する偏った姿勢であったことを明らかにしています。

 特に30年という長い半減期を持つセシウム137が問題になっているのですから約1年間の試験焼却中と直後のデータだけでは決定的に不足です。それで良しとするのは、それこそ「希釈して薄めれば良い」という原発推進派の考え方そのものです。長半減期の核種は地球環境と人間を含む全ての動植物に蓄積し濃縮します。高裁裁判官の誰一人として、この程度のことに気付かず2020年から2年間の本焼却を経て、玉造CCが稼働停止になった後の変化まで調査した、原告の証拠資料に目を向けようともしない姿勢は批判されるべきものです。

※原告が裁判所に提出したバグフィルタ漏れ、周辺住民の尿検査結果等の一連の調査結果を報告集会でプレゼンしました。資料はこちらからDLできます。

 

(5)覚書・申し合わせについての形式的判断は基本的に変わらず

 高裁判決は、地元住民組織と被告らが交わした覚書、申し合わせ違反について、詭弁とも言える地裁判決の決定を基本的に引き継ぎました。これは既に地裁判決で批判していますので、そちらをご覧ください。

このような不当な判決に、控訴人団・弁護団は速やかに上告の意思を表明した声明を出しました。

 

汚染水の海洋放出、汚染土の再利用、放射能ごみ焼却、汚染木を燃料とするバイオマス発電を止めるために、放射能バラマキを止めるために、引き続き、大崎放射能ごみ焼却住民訴訟に注目し、支援していきましょう。

 

2024.12.31 
青木一政

 

2024/03/30

やはり玉造クリーンセンターからセシウム粉塵は漏れていた-新たな確証

 宮城県大崎市での放射能汚染ごみ一斉焼却住民訴訟に対して、ちくりん舎ではこれまでも、様々な調査を通じて、焼却炉からのセシウム粉塵漏れを立証して裁判所への意見書の提出などを通じて支援してきました。今回、あらたに玉造クリーンセンターからのセシウム粉塵漏れを確証する調査結果を得ることができました。最新の調査結果を紹介します。

【調査の目的】

玉造クリーンセンターは2022年3月で稼働停止しました。そのため、その前後でのリネン吸着法結果を比較することにより、玉造クリーンセンターからのセシウム粉塵漏れがあったかどうかを再確認する。

【調査方法と期間】

2018年10月~2019年1月に実施したリネン調査ポイントと同じポイントで、玉造クリーンセンター稼働停止後の変化を確認しました。今回の調査は2023年11月~2024年1月に実施しました。

【調査結果】

下図は玉造クリーンセンター稼働停止前後のリネン吸着法結果を示します。図の横軸は2019年1月の各測定ポイントの結果です。

縦軸は2024年1月の同測定ポイントの結果を示します。青点線は2019年1月と2024年1月のセシウム137の自然減衰(半減期30.2年)を示します。従って、青点線より下部の領域は、2019年より2024年の結果が減少した領域であり、上部の領域は上昇した領域となります。青点線上は2019年と2024年での結果が同一レベルであることを示します。

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【考察】

(1)     測定した全ての点が、青点線より下部の領域にあります。このことは、玉造CCの稼働停止により全ての測定ポイントで大気中セシウム粉塵濃度が減少したことを示しています。

(2)     2019年の結果(横軸)では0.05から0.28と測定ポイントにより大きな幅があります。一方で、2024年の結果(縦軸)では0.02~0.09程度と測定ポイントのばらつき幅は減少しています。尚、A-7点が依然高めであるのは、地表面の汚染が継続しており、それが再浮遊していると考えられます。

(3)     これらの結果は2019年において、玉造クリーンセンターからのセシウム粉塵漏れが発生し、それが風の影響で流され、濃度の高い地点が発生していたことを裏付ける確実な証拠と言えます。

(4)     2024年には、玉造クリーンセンターからのセシウム粉塵漏れが無くなったことにより、周辺一体で、大気中のセシウム粉塵は大幅に低下しました。

【結論と今後の課題】

今回の調査から、玉造クリーンセンターから明らかにセシウム粉塵漏れがあったことが確証されたといえます。引き続き、春、夏の風のパターンでも調査を継続する予定です。

【参考】

2019年の調査の場所と数値の関係を次頁に示します。

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2019年1月玉造クリーンセンター周辺のリネン吸着法調査結果

 

2024/03/15

汚染土「再利用」するな!Q&Aリーフレットが出来ました

環境大臣宛ての署名をすすめている「放射能拡散に反対する会」が分かり易いQ&Aリーフレットを作りました。

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配布の協力をお願いします。枚数はできるだけまとめいただき、最低30枚からでお願いいたします。300部以上はご相談の上。

 お申込みは e-mail こちら まで

 ご氏名、ご送付先住所、ご連絡先お電話、必要枚数を明記してください。ご意見ご感想もお待ちしております。

★カンパをお願いします★

チラシ制作・発送のほか、活動を継続していくためカンパをお願いします(必須ではありませんが送料実費+プラスアルファ程度で)。

●ゆうちょ銀行からの振替の場合

口座記号番号 00230-9-136053/口座名称(漢字) 放射能測定プロジェクト

口座名称(カナ) ホウシャノウソクテイプロジェクト

通信欄に「汚染土カンパ」とご記入ください。

●他の金融機関からの振込の場合

銀行名 ゆうちょ銀行/金融機関コード 9900/店番 029/預金種目 当座

店名 〇二九 店(ゼロ二キユウ店)/口座番号 0136053

お振込み後、e-mailにてお知らせください。

ご支援、ご協力に感謝いたします。

2024/02/23

矢板市で木質バイオマス発電の問題点についてお話しました

2月18日矢板市で木質バイオマス発電の問題点についてお話しました。

昨年10月、矢板市にあるシャープ栃木工場の敷地の一部を製材業のトーセンが買取りバイオマス発電施設を稼動させるとの報道がありました。

矢板市周辺も福島原発事故の影響で放射能汚染されています。放射能の再拡散や環境悪化、最近各地で火災事故の頻発が報道されており、不安を感じた市民グループの要請で学習会で講演しました。

学習会の前に予定地を案内してもらいました。国道4号線沿いの広い敷地の脇にデカーレという大きな看板が立っていました。国道4号線を挟んだ反対側には団地や住宅街があります。

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小規模な集まりでしたが皆さん真剣に聞いてくださり、予定の1時間を大幅にオーバーしてしまいました。講演終了後の質疑も活発に行われました。

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当日のプレゼン資料はこちらからダウンロードできます。

主催者の方からアンケートを送っていただきました。一部を紹介します。
〇バイオマスは環境にやさしいものと思っていたので、今日のお話を聞いてとてもびっくりしました。これからは環境のことにもっと関心を持っていこうと思いました。
〇バイオマス発電は良くない。
〇木質バイオマスそのものが木の枯渇に繋がることが問題となる。木質バイオマスは間伐材に限定すべきと思う。
〇青木さんの資料データと丁寧なご説明はとても分かりやすくて、ぎょっとしたり、うーんと唸ったり。やっぱりバグフィルターは漏れ、結局は放射能ばら撒きになると再確認できました。周りに伝え、市にもお願いしていければと思います。ありがとうございました。
〇「バイオマス発電は環境を汚さない」という情報の盲点をつかれたおもい。無知であることの恐ろしさ。成長期の子供のいる人は心配だと思う。どうもベネフィットよりリスクの大が大きいようですね。

2024/02/17

汚染土「再利用」するな!環境大臣宛ての署名にご協力下さい

フクロウの会も呼びかけ団体として下記の環境大臣宛て署名活動を開始しました!

8000Bq/kgもの放射能を含む汚染土をなし崩し的に全国各地の公共工事等で「再生利用」と称して盛り土材などに使ってしまおうという計画です。放射能のばらまきそのものです。

署名はこちらから出来ます。是非ともご協力をお願いします。
※署名するとカンパの要請メッセージが出てきますが、これはChange.orgの経費に充てられるものですので必須ではありません。

 

2024/02/01

急ぎ!【賛同団体募集】国際原子力機関(IAEA)専門家会合(第3回)公開を求める要望書

【団体賛同の呼びかけ】

国際原子力機関(IAEA)専門家会合(第3回)公開を求める要望書

除去土壌の再生利用等に関する国際原子力機関(IAEA)専門家会合(第3回)が2024年2月5日から同年2月9日まで非公開で開催されるとの報道発表がありました。

直前になりますが、本会合を公開で行うよう求める要望書(添付)を提出したく、賛同を募集いたします。時間がないため、先行して22日に呼びかけ団体で提出し、連名で5日当日朝までに提出したいと考えます。なお、IAEA本部には本日21日付で送信致しました。

 

ご賛同いただける場合は、24日(日)21時までに、

団体名とご連絡先を stopshokyakuf@yahoo.co.jp までお送り下さるようお願いいたします。

【賛同団体募集】国際原子力機関(IAEA)専門家会合(第3回)公開を求める要望書 (gomif.blogspot.com)

 

呼びかけ団体 

●放射能拡散に反対する会

担当:和田

●フクロウの会

担当:事務局長 青木一政

 

 

2024/01/28

大崎放射能ごみ焼却住民訴訟控訴審-第1回法廷で結審

1月25日仙台高裁において大崎放射能ごみ焼却住民訴訟控訴審の第1回法廷が開かれました。

控訴理由書はこちらからDLできます。

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仙台高裁前での開廷前集会であいさつする草場弁護士

この第1回法廷での最大の焦点は、第1審判決が「放射性微粒子の拡散により住民の平穏生活件が侵されているという主張に対しては、環境省やICRPの主張を鵜呑みにして権威にすがって棄却。原告が主張した放射性微粒子の吸入による内部被ばくの危険性についての科学論争には、踏み込むことを避けた」点について、矢ケ崎克馬琉球大名誉教授と青木一政ちくりん舎副理事長の証人尋問を実現させることにありました。

冒頭で原告弁護団代表の松浦弁護士が控訴理由書を説明。第1審が形式的判断で原告主張内容にほとんど踏み込まず、事実上の門前払い判決であったことを批判しました。その上で矢ヶ崎克馬琉球大名誉教授と私の証人尋問申請をしました。

小林久起裁判長はこれについて、被告側の意見を聞いた後(もちろん不要と主張)、「裁判所としても証人尋問は不要と考えている」と発言。一瞬、傍聴席からざわざわと驚きと落胆と怒りの混じった様な反応が起こりました。

すかさず原告弁護団が次々と発言し、色々な観点から証人尋問の必要性を次々に述べました。小林裁判長はさすがにこのまま閉廷とは行かず、裁判官で合議するとして一旦法廷から退席しました。約30分くらい異例に長い合議が続きました。その間、傍聴席からは「なぜ証人尋問をしないのか」「尋問が不要とだといる理由は何か」「裁判所は原告が明らかにした焼却炉煤塵漏れを理解しているのか」などと不満や不安の声が飛び交いました。

長い長い合議の後、再度登壇した小林裁判長は再び「証人尋問の必要はないと考える」と発言。しかし発言はそれだけでは終わりませんでした。概略、以下のような発言が裁判長から述べられました。

ーー本審としては、第1審の様な形式的、外形的な判断枠組みは維持出来ないと考えている。除染特措法の8000ベクレルが事故直後の除染実施のための緊急避難的なものであった経緯や、地元住民との「申し合わせ」、「協定書」締結時は放射能が撒き散らされるという予想はつかなかったし、「重金属等」と「等」の文言が入っていること。被告側も煤塵が漏れていないとは主張していないことなど。また原告側の証拠が十分提示されていることから、新たな判断枠組みで判決をしたいーー

実質的な結審宣言です。原告弁護団は、それでは判決までにもう一度、これまでの主張と証拠を整理した文書を出したいと発言。3月末にその文書提出、その後、6月6日15時から判決するとして閉廷しました。

さて、この小林久起裁判長の一見原告に寄り添った様な発言をどうとらえたら良いのか。裁判長のこの様な心証発言と言うのは異例なことらしい。仙台高裁の中では「気骨ある」人という評判や、今年で定年退職を迎えるので裁判を長引かせたくないのではないかという期待の一方、リップサービスでまた裏切られるのか、という不安もある。

法廷後の報告集会で原告団長阿部忠悦氏から「判決まで半年近くある。裁判所への要請行動などできることをやっていきたい」との決意表明がありました。

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新たに提出した証拠書類について説明するちくりん舎青木一政

 

焼却炉排ガス吸入による風下住民の内部被曝-新たな証拠提出(大崎住民訴訟)

放射能ごみ焼却の中止を求める大崎住民訴訟の控訴審第1回法廷が1月15日仙台高裁で開かれました。

フクロウ放射能測定プロジェクトではちくりん舎と共同でこれまでも、リネン吸着法風下住民の尿検査、稼働中の玉造クリーンセンター(以下CC)での排ガス検査などで住民訴訟を支援してきました。

今回の控訴審に向け、玉造CCの排ガス中のセシウム粉塵漏れと、それを吸入することで風下住民がセシウムを体内に取り込んでいたことを示す新たな証拠を提出しました。

以下、この新たな証拠の内容について解説します。

新証拠の要旨(調査目的と内容)
・2020年から放射能汚染ごみ焼却を続けて来た玉造CCは2022年3月31日に稼働を終了しました。
・私たちは同CCにおいて放射能汚染廃棄物焼却中の2021年に風下住民の尿検査を実施し、排ガス中のセシウム粉塵吸入による内部被ばくが発生していることを既に明らかにしています。
・今回、同CCの老朽化にともなう稼働停止により、風下住民の内部被曝状態の変化を調べるため、稼働停止から約1年3か月経った2023年6月から10月までに前回の被験者を対象に再度、尿検査を実施しました。

下図がその結果です。

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図の横軸は玉造CC稼働中の風下住民のs4時間尿中セシウム排泄量(以下Cs24ex)を示します。単位はBq/dayとなります。図の縦軸は玉造CC閉鎖後約1.5年後の風下住民のCs24exを示します。図の各点が被検者個人に対応します。黒点線は、約1.5年間のセシウム137の自然減衰(半減期30.2年)を示します。つまりこの黒点線の上方にプロットされた人は2021年の検査に対して23年の検査でCs24exが増加したことを示します。また黒点線の下方にプロットされた人は23年の検査でCs24exが減少したことを示します。黒点線上の人は2回の検査で変化が無かったことになります。

被験者18名のうち12名が減少、3名が上昇、3名が同等であることが読み取れます。全体の被験者のうち66%の被験者が、玉造CC閉鎖によりCs24exが減少したということは、玉造CCが稼働中は同CCからの排ガスを吸入することで風下住民はセシウムを体内により多く取り込んでいた。玉造CCが稼働停止したことで、排ガス吸入によるセシウムの取り込みが無くなったことを示す有力な根拠となります。

詳しくは裁判所に提出した証拠書面をお読みください。こちらからDLできます

2023/10/05

大崎市放射能ごみ焼却住民訴訟で不当判決

10月4日、仙台地裁において大崎市農林業系放射能汚染廃棄物の一斉焼却の中止を求める住民訴訟第一審の判決言い渡しがありました。判決は「原告らの請求をいずれも棄却」するという不当判決でした。

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 争点は以下の三点でした。原告らの住民組織との①覚書違反、②申し合わせ違反、③放射能汚染ごみ焼却により周囲に放射性セシウムを含んだ微小粒子が拡散することによる人格権侵害(平穏生活権)、①の覚書について、「重金属物質を含まない」という文言がある点について、セシウムは重金属に当たらない、という極めて形式的判断でこれを退けました。②の覚え書き「機能・設備を変更する場合は住民の合意を得る」に対して、放射能ゴミ焼却はそれに当たらないと、これも極めて形式的判断で棄却。また同申し合わせの「住民から不安・疑問が出された場合は直ちにその改善に努めます」という文言についても、努力義務を定めたものにすぎないとしました。③の放射性微粒子の拡散により住民の平穏生活件が侵されているという主張に対しては、環境省やICRPの主張を鵜呑みにして権威にすがって棄却。原告が主張した放射性微粒子の吸入による内部被ばくの危険性についての科学論争には、踏み込むことを避けました。

 また、原告の主張で実現した、f実際の放射能ごみ焼却中の排ガス検査(環境省の定めた「公定法」の時間延長)結果で、ばいじんが被告側の依拠する国立環境研大迫論文の3~12倍漏れていることが判明、環境省の説明の99.9%捕捉論の根拠が崩れたにもかかわらず、そのことを無視しています。

 原告団は、本判決が「穴だらけ」のものであるとして、即刻控訴することを表明。原告団長も即刻控訴することを表明しました。

 原告団・弁護団声明はこちらからDLできます。

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 青木正芳弁護団長からは、覚え書きや申し合わせは、いずれも公害防止のためのもの。締結当時の経緯、趣旨、目的に沿って理解しなければいけないと指摘。だから玉造CCでダイオキシンが問題になった時、覚え書きの趣旨に沿って止めたではないか。裁判所は放射能の問題になると対応がおかしくなる…どうしてこうなるのか、と指摘されました。

 バグフィルタからの微小粒子漏れ、実際の焼却炉での公定法の時間延長による排ガス調査など、技術面で全面的に協力してきた、ちくりん舎・青木一政にも発言を求められ、「汚染水の海洋放出、汚染土(除去土壌)の全国での再利用など、政府は放射能ばらまきを本気で進めている。薄めて流せば害はない、というのは20世紀の考え方だ。地球規模で人間の活動による影響がでている。私たちの主張は横断幕にある「放射能 拡散させるな!」ということそのものだ。環境省が根拠とする大迫論文の99.9%捕捉論が、原告主張の方法でデータで突き崩したことは大きな成果だ。こうした積み上げの元に控訴審でも共に頑張りましょう」との発言をしました。

 

2023/09/15

【報告】ちくりん舎オンライン学習・懇談会「福島復興の暗い闇」

9月8日ちくりん舎オンライン学習・懇談会「福島復興の暗い闇」が開催されました。

当日は約40名のご参加がありました。参加されたみなさまありがとうございました。

 

ちくりん舎の青木から、福島第一原発汚染水海洋放出に関する問題点の説明があり、その後、放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会の和田央子氏が、政府のずさんな放射能ごみ処理の問題点、「福島イノベーションコースト構想」なるものの実態を説明されました。

 

イノベ―ションコースト構想とは原発事故被害者への補償や救済を置き去りにしたまま、有り余る「復興予算」に群がる企業群(なんんと東電下請け企業や東電出身者も暗躍している)や政府系NPOなどが数々のハコモノ建設推進、その中には軍事研究と関連するようなものまで含まれていることなど、まさにショックドクトリンそのものであることを説明されました。

 

また若者をターゲットに絞って巨額の金を使った「安全」「復興」キャンペーンがすすめられていること。そして、なんと、これらの構想の下敷きになっているのが、米国でプルトニウム生産と水爆開発を行って汚染された地域を「復興」と称して汚染処理はそのままに「新たな街づくり」進めた「ハンフォオード・モデル」であることなどが報告されました。ち密で広範な調査に基づく氏の報告は大変貴重なものでした。

 

◉当日のZOOM録画はこちらからご覧になれます。

Zoom

 

◉和田央子氏のプレゼン資料はこちらからDLできます

 

◉当日参加された皆さんからのアンケートを、ご本人の了解を得て紹介させていただきます。
 こちらをクリックしてDLできます。

 

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