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2024/12/20

【論文】「南相馬住民の尿検査による内部被曝調査と土壌粉塵吸入による影響」が環境放射能研究会Proceedingsに掲載されました

12月19日、第25回環境放射能研究会の論文集Proceedingsに「南相馬住民の尿検査による内部被曝調査と土壌粉塵吸入による影響」が掲載されました。

 

環境放射能研究会は主催:高エネルギー加速器研究 機構 放射線科学センタ,日本放射化学会 α放射体・環境放射能部会、共催:日本原子力学会 保健物理・環境科学部会、日本放射線影響学会,日本放射線安全管理学会 によるもので毎年3月に開催されています。そこでの口頭発表後、論文化、査読を経て掲載されるものです。

 

放射線防護に関わる「権威」ある研究会論集に本論文が掲載されたことの意味は大変大きいと考えております。12月17日の汚染土再利用反対の院内集会での小生のプレゼンもこの研究に基礎づけられています。

 

本論文の抜き刷り版はこちらからDLできます。

 

小論の「はじめに」および「謝辞」の部分をここに紹介します。

1.はじめに
福島原発事故を起因とする放射性Cs 摂取による内部被曝については、山菜、野生キノコ等極めて
高い食品についての情報は一般的に理解されており、コントロールも比較的容易であるが、土壌
粉塵の再浮遊と吸入摂取による影響がどの程度のものであるか、という点について実証的な研究
やデータはほとんどない。コントロールも難しく、慢性摂取状態になることが予想されることから、
詳細な調査が必要である。
我々は既に2014 年に避難指示が解除された南相馬市原町区西部地域の住民の尿検査による内部
被曝実態調査を2017 年から2021 年にかけて実施した。その結果、対照群である西日本
(兵庫県、福岡県)住民と比べ、明らかに内部被曝している実態を明らかにした[1]。しかしこの
調査では、その要因である食品摂取、大気中粉塵の吸入の程度などは明らかでなく課題として残
された。今回、同地域住民を対象に、食品中のCs 摂取および大気中粉塵と内部被曝影響の関係に
ついて調査を行った中で,大気中のCs 粉塵の吸入による影響が無視できないことが判明した。
福島原発事故から13 年が経過し、避難指示区域は既に全て解除され、帰還困難区域においても
特定復興再生拠点として避難指示の解除が始まっている。この解除基準は、「除染により放射線量
が概ね5 年以内に避難指示解除に支障ない基準以下に低減」というものであり[2]、事実上従来の
避難指示解除と同様に空間線量率で評価されている。一方で福島県の面積の70%は山林であり、
この山林の除染はほとんど行われていない。既に解除された地域においても宅地周辺の空間線量率
が再上昇している場所があり、周辺の山林等の影響によると考えられる。特定復興再生拠点は福島
第一原発周辺の高濃度に汚染された地域や放射性プルームの影響により高濃度に汚染された山林に
囲まれた場所であり、粉塵吸入による内部被曝について懸念が残る。避難指定解除は放射線被曝
影響を受けやすいとされる乳幼児、妊婦などを含め特段の制約なく生活をしてよいことを意味する。
本研究の成果は,こうした期間ありきの政策の妥当性に大きな疑問を呈するものとなった
※下線は引用者による。

5.謝辞
本研究に当たり、南相馬市住民の検査や戸別訪問調査にあたり南相馬市在住の小澤洋一氏のご
尽力
があったことを、ここに記して感謝申し上げます。論文化にあたりご助言いただいた鈴木譲
東大
名誉教授に感謝いたします。また本研究は高木仁三郎市民科学基金、パタゴニア日本支社
環境助成金
プログラムの助成を受けて実施できましたことを報告し感謝の意を表します。

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Proceedings全体はこちらからDLできます。

 

2024/03/19

第25回「環境放射能」研究会で口頭発表をしました

3月13日につくば市にある高エネルギー加速器研究機構で開催された第25回「環境放射能」研究会で口頭発表をしました。

会場には107名、オンラインで38名が参加されました。プログラムはこちらからDLできます。

私(フクロウの会/ちくりん舎 青木一政)は「南相馬住民の尿検査による内部被曝調査と土壌粉塵吸入による影響」というタイトルで発表しました。

当日のプレゼン資料はこちらからDLできます

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会場には鈴木譲東大名誉教授や京大の今中哲也先生もおられ、短い時間でしたが、リネン吸着法の今後の課題や、ハウスダストやリネンのセシウム吸着についての議論ができ大変有意義な時間となりました。

 

 

2023/10/25

南相馬の野菜栽培農家を訪問-ヒアリングと検体採取

10月20日、南相馬市原町区の野菜栽培農家さん6軒を訪問してヒアリングと検体採取をしてきました。

「新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会」と「放射能ごみ焼却を考えるふくしま連絡会」共催で福島の汚染土(除去土壌)中間貯蔵施設やイノベーションコースト構想施設を見学するツアーに参加。ツアー終了後、ちくりん舎からの参加者3名で南相馬へ1泊し、南相馬で放射能汚染を調査している小澤洋一さんの案内で実現したものです。

調査の目的は「高木基金22年度助成成果報告会」での発表で、南相馬住民の方の尿検査アンケートで「野菜自家栽培」と答えた方が、比較的高い値を示す傾向が見られたため、これが野菜摂取によるものか、農作業等によるセシウム粉塵の吸入によるものかを明らかにすることです。結果は、これからの分析を待たなければなりませんが、本報告では、訪問の様子を紹介します。ーー

以下、FB記事をもとに若干の追加訂正をしたものですーー

イノベツアーで小高まで行ったので、ちくりん舎の3人と台湾から来たジェイさんは1泊延して南相馬へ。目的は尿検査で比較的高めの傾向を示した自家栽培野菜を食している農家さん6軒の訪問ヒアリングと畑の土、栽培野菜のサンプリン。

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小澤洋一さんが同行してくれました。皆さん気さくに、親切に対応してくれました。こういうことが出来るのも、20ミリ基準撤回裁判で築いた人間関係、信頼感だと思います。汚染された土地で暮らさざるを得ず、眼の前の畑で野菜を作って食べる。尿検査でセシウムが出たからと言って、調べに来られたら、普通は心穏やかではないはず。


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でもそれぞれの事情や最近の健康状態、お互いの変わり様(20ミリ裁判提訴から、かれこれ10年、お互いに歳をとりました)も含めて親戚を訪ねたような雰囲気。上がってお茶を飲んでいけとすすめられましたが6軒回るのでそれはさすがにできませんでした。

いろいろ話して吐き出したいこともきっとあったと思うと少し残念。このような関係が築けただけでも20ミリ裁判はムダではなかったと、つくづく思います。

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詳細の結果は未だどちらとも断言できませんが、お一人だけ「野菜自家栽培」ではないのに、24時間尿からのセシウム排泄量が高い方がいらっしゃいました。その方は家の前に大きな花壇があり、花の世話で草むしりなど、ほとんど毎日2-3時間庭にいるとのことでした。その大きな庭の向こう側に道路があるのですが、ダンプトラックの往来が田舎道にしては激しいのです。30分くらいのヒアリング中に5-6台は通りました。聞いたところ、山に採石場があり、復興工事などで砕石場へ向かうダンプが多いとの話です。ダンプが通れば目に見えない細かい粉塵が舞い上がります。おそらくこれを日常的に吸い込んでいる結果に間違いありません。

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やはり現地へ行ってみての調査の重要性を再認識しました。