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2007年11月15日 (木)

柏崎刈羽原発の解放基盤表面での地震波(はぎとり波)は地中のおよそ2倍

東京電力がようやく一部公表した耐震計算書に,柏崎刈羽原発の解放基盤表面での地震波(はぎとり波)が同じ深さの地中の地震波のおよそ2倍であることを示す資料が見つかりました。中越沖地震による最大加速度が1000ガルを大幅に超えるのは必至ではないかと思い,4ページの説明資料を作りました。ファイルは図表が入っていますのでこちらをご覧ください。

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柏崎刈羽原発の解放基盤表面での地震波(はぎとり波)は地中のおよそ2倍
中越沖地震による最大加速度が1000ガルを大幅に超えるのは必至!
-東京電力がようやく一部公表した耐震計算書より明らかに-

2007年11月15日
福島老朽原発を考える会

 東京電力本店原子力情報コーナーを通じ,8月9日付けで柏崎刈羽原発の耐震設計の詳細設計資料(3号機の工事計画認可申請書のうち建屋や機器・配管関係の耐震性についての計算書等)の公開請求をしていたところ,10月30日にその一部(原子炉建屋とタービン建屋の耐震性についての計算書)の閲覧が可能になったとの連絡を受けた(機器・配管関係は年内をめどにとのこと)。開示された資料の閲覧,コピーに出向いたところ,原子炉建屋の耐震性についての計算書から,柏崎刈羽原発における解放基盤表面における地震波が,同じ深さの地中における地震波のおよそ2倍となることを示す資料が見つかった。

 耐震設計では,基準地震動S1,S2を解放基盤表面に入力する。解放基盤表面とは,原発敷地において一定以上の固さをもつ地中の地盤の上部を仮想的にはぎとった表面であり,この表面における地震波を「はぎとり波」という。原発の耐震設計における地震動の想定の妥当性を確認するためには,この「はぎとり波」と基準地震動を比較しなければ意味がない。中越沖地震により柏崎刈羽原発では,1号機の原子炉建屋の基礎で最大加速度680ガル,1号機の解放基盤表面とほぼ同じ深さの地中で993ガル,より浅い地中で760ガルおよび867ガル,サービスホールの地中で728ガルといった値が観測されている。今回公開された資料は,このような観測結果から「はぎとり波」を作成すると,最大加速度が1000ガルを大幅に上回ることを示唆している。

柏崎刈羽原発では地中での地震波は「はぎとり波」のおよそ半分

 柏崎刈羽原発3号機の解放基盤表面は,海面下285m(地表から290m)に設定されているが,ここに入力する基準地震動S1の最大加速度振幅は300ガル,S2は450ガルである。耐震設計では,その後,地盤を埋め戻した地震波を地盤の諸定数と一次元波動理論により算出し,さらに原子炉建屋付近での揺れを算出した上で,原子炉建屋の質点モデルに入力するという手順を踏む。

 今回公表された資料によると,地盤を埋め戻した後の同じ海面下285mでの地震波は,S1が150ガル,S2が222ガルと,解放基盤表面における基準地震動のおよそ半分になっている。地震波は上に伝搬していくが,原子炉建屋の基礎がある海面下38mまでは,大きな変化は見られない。

埋め戻しで小さくなる理由

 なぜ地盤の埋め戻しにより,このように小さくなるのか。11月6日に東京電力本社で行われた市民との交渉の場で聞く機会があった。おおざっぱには,重たい地盤を乗せることによって揺れが抑えられるとのこと。より正確に「埋め戻し」の過程をたどると,まず,解放基盤表面に入力する地震波(2Eとする)を2分する(EとE),次に地表までの地盤を乗せて,一方のEについて,地表まで伝搬させたあと反射したものをまた同じ地中まで伝搬させる。この反射波をFとする。もう一方のEと反射波Fを合成させたものが,埋め戻したときの同じ位置での地震波となる。その際,Fについては深い地盤を往復させる間に減衰すること,EとFの合成は波として合成するので,相殺する部分があることから,2Eよりも小さくなるとのことであった。

著しい差異は軟弱地盤のせい

 埋め戻しにより半分になるということは,逆にみれば,柏崎刈羽原発においては,解放基盤表面での「はぎとり波」は,地盤を埋め戻した場合の地震波,あるいは同じ深さの地中の観測波の約2倍ということになる。

 2005年8月に宮城県沖の地震に襲われた女川原発では,解放基盤表面と同じ深さの地中で221ガル(水平東西方向)が観測された。東北電力はその後,上部の地盤をはぎとった「はぎとり波」を作成したが,その最大加速度は284ガル(水平東西方向)であった。比をとるとおよそ1.3倍であり,柏崎刈羽原発のような著しい差異がない。これは,女川原発の地盤が固く,解放基盤表面が海面下わずか8.6mであり,解放基盤表面より上部の地盤が小さいことから,はぎとりによる影響が小さいのであろう。これに比べて,地盤が軟弱な柏崎刈羽原発は,解放基盤表面が非常に深く,その上部の地盤が大きくて重いことから,はぎとり,埋め戻しによる影響が大きくなっていると思われる。

中越沖地震による解放基盤表面での地震波は1000ガルを大幅に上回る

 中越沖地震では,1号機の海面下250mのG10という観測点に埋められていた地震計が,最大加速度993ガルを観測した(このデータは加速度の最大値だけが残っており波形データは上書きによって失われた)。1号機の解放基盤表面は海面下284mであるから,ほぼ,解放基盤表面と同じ深さでの観測値といえる。3号機と同様に,「はぎとり波」と地中の地震波が2倍,半分の関係にあるとし,これを単純に適用すれば,この地震による解放基盤表面でのはぎとり波の最大加速度はおよそ2000ガルということになる。1号機の地中では、海面下122m(G9)で最大780ガル、海面下40m(G8)で最大867ガルを記録している。地震波形が残っているサービスホールの地中182mに埋められた地震計も最大で728ガルを観測している。単純に2倍すると1500ガル近くになる。

 東京電力は,「はぎとり波」の作成を行っているというが,その結果を一向に出してこない。993ガルについては,データの信頼性を口にしはじめている。「はぎとり波」を作成すると余りに大きな値になることから,数値の扱いに苦慮し,公表できずにいるのではないだろうか。

地震動想定における原発の耐震安全性の崩壊

 中越沖地震のマグニチュードはわずか6.8であり,柏崎刈羽原発から震源までの距離は23kmもある。この条件から,解放基盤表面において1000ガルを大幅に超える地震動を想定することは,大崎の方法では全く不可能であり,おそらくは新指針による方法でも難しいだろう。地震の想定(活断層評価)に続き,地震動の想定についても,原発の耐震安全性の崩壊が改めて問題となるであろう。

福島老朽原発を考える会(ふくろうの会)
〒162-0825 東京都新宿区神楽坂2-19銀鈴会館405号AIR気付
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