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2007年11月26日 (月)

中越沖地震により炉内構造物に生じた発生応力が弾性限界を超えた-耐震計算書の考察(2)-

東京電力の耐震計算書から、中越沖地震により、炉内構造物(シュラウド)に生じた発生応力が、弾性限界を超えている可能性が明らかになりました。この件について、3ページの説明資料を作りました。ファイルは図表が入っていますのでこちらをご覧ください。

ファイルのダウンロードはこちら

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中越沖地震により炉内構造物に生じた発生応力が弾性限界を超えた
柏崎刈羽原発の多数の安全上重要な機器・配管に変形・ゆがみが生じたことを示唆
-東京電力柏崎刈羽原発3号機耐震計算書の考察(2)-

2007年11月26日
福島老朽原発を考える会

 中越沖地震では,基準地震動S2を大きく超える揺れが柏崎刈羽原発を襲った。焦点の一つはこれが許容値を超えたかどうかである。許容値には2種類あり,一つが弾性限界を示すもの(以下「弾性限界の許容値」という),もう一つが施設の機能に影響を及ぼす過大な変形,亀裂,破損に至る限界に対応するもの(以下「破損限界の許容値」という)である。「弾性限界の許容値」を超えると,機器や配管が変形し,ゆがみが生じている可能性が出てくる。「破損限界の許容値」を超えると,機器や配管が破損する可能性が出てくる。少なくとも「弾性限界の許容値」を超えた時点で,原発の再使用はまかりならんということになるだろう。

 私たちは,東京電力に対し柏崎刈羽原発の耐震設計の詳細設計資料(3号機の工事計画認可申請書のうち建屋や機器・配管関係の耐震性についての計算書等)の公開請求をしている。その一部(原子炉建屋とタービン建屋の耐震性についての計算書)については閲覧が可能になったが,機器・配管関係の耐震計算書は未だに公開されていない。しかし,原子炉内にあり,燃料を取り囲むように設置された炉心シュラウドと呼ばれる炉内構造物の耐震計算書については,2001年(東電原発不正事件の1年前)に福島第二原発3号機のシュラウドひび割れ問題が発生したときに,経済産業省系の原子力公開ライブラリから入手していた。(工事計画認可申請書は,かつて公開されていた時期があったが,電力会社の要請により,再び非公開になったという。)これを改めて検討したところ,炉心シュラウドの下部銅では,中越沖地震によりこの部分に発生した発生応力が,弾性限界を示す許容値を超えていることが明らかとなった。再循環系配管や主蒸気系配管など他の安全上重要な機器・配管についても,「弾性限界の許容値」を超えていた可能性が十分にある。柏崎刈羽原発を再使用することは機器・配管の安全管理上も許されない。

発生応力が基準地震動S2による設計値を超えた

 中越沖地震により,柏崎刈羽原発の機器・配管に生じた応力の評価を東京電力はまだ出していない。しかし,地震により機器・配管に生じた応力が,基準地震動S2による発生応力(設計値)を超えたことは,既に公表されている原子炉建屋の応答スペクトルから明らかだ。例えば,右は4号機の原子炉建屋基礎における床応答スペクトルであるが,機器や配管の固有周期が集中する0.1~0.3秒の固有周期領域のすべての領域において,中越沖地震による応答加速度(太線)がS2による設計値(細線)を大きく上回っている。応答加速度をもとに機器・配管の発生応力を算出するとS2による発生応力を上回ることは,結果を待たずとも明白であろう。

右図
「柏崎刈羽原子力発電所における平成19年新潟県中越沖地震時に取得された地震観測データの分析に係る報告(第一報)」平成19年7月30日東京電力株式会社より

2つの許容値と2つの基準地震動

 2つの許容値は,2つの基準地震動S1,S2に対応している。原発の耐震設計において,基準地震動S1については,それにより機器や配管に発生する発生応力(設計値)が,「弾性限界の許容値」を超えてはならない。基準地震動S2については,それによる発生応力(設計値)が「破損限界の許容値」を超えてはならない。また「破損限界の許容値」は「弾性限界の許容値」よりも大きい。すなわち,

S1による発生応力<弾性限界の許容値
S2による発生応力<破損限界の許容値
弾性限界の許容値<破損限界の許容値

の関係にある。これを小さい順に並べたときに,

S1による発生応力<S2による発生応力<弾性限界の許容値<破損限界の許容値

となる場合には,中越沖地震による発生応力が,S2による発生応力(設計値)を超えていたとしても,これが直ちに「弾性限界の許容値」を超えたとは限らず,詳細な解析が必要となる。ところが,S2による発生応力(設計値)が,「弾性限界の許容値」と「破損限界の許容値」の間で設定されている場合には,

S1による発生応力<弾性限界の許容値<S2による発生応力<★<破損限界の許容値

となり,このような部位については,詳細な解析を待たずとも,中越沖地震による発生応力が少なくとも★の位置にあることから,「弾性限界の許容値」を超えたことが示される。

シュラウド下部銅P07における数値

 後者の関係がシュラウドでは下部銅にあった。柏崎刈羽原発3号機のシュラウドの耐震計算書に,

シュラウド下部胴 P07 SUS316L 一次一般膜応力
荷重の組合せⅠ,Ⅱ+S1 許容応力状態 ⅢAS…応力強さ  7.5 許容値  9.4(kg/mm2)
 荷重の組合せⅠ,Ⅱ+S2 許容応力状態 ⅣAS…応力強さ 10.6 許容値 15.1(kg/mm2)

とある。上段がS1による発生値と許容値(弾性限界の許容値),下段がS2による発生値と許容値(破損限界の許容値)を示している。これを小さい順に並べると,

S1による発生応力7.5<弾性限界の許容値9.4<S2による発生応力10.6<破損限界の許容値15.1

となる。すなわち,S2による発生応力を超えたことが確実な時点で,「弾性限界の許容値」も自動的に超えてしまうことになる。シュラウド中間胴の下部については,弾性限界の許容値=S2による発生応力,中間胴の上部と上部胴では,S1による発生応力<S2による発生応力<弾性限界の許容値<破損限界の許容値となっており,詳細な解析をしなければ「弾性限界の許容値」を超えていたかどうかは不明である。しかし少なくとも下部胴については,「弾性限界の許容値」を超え,変形によるゆがみが生じている可能性が否定できないのではないだろうか。シュラウド以外の機器・配管にもこのような部位が多数あるはずだ。

柏崎刈羽原発3号機工事計画認可申請書「炉心シュラウドの応力計算書」より(前頁の図も同じ)

変形があっても動かそうとする危険な動き

 国は既に,柏崎刈羽原発における中越地震による発生応力が,弾性限界を上回っていることを前提に,それでも原発を動かすための理屈をひねり出そうとしている。

 中越沖地震について,原子力安全・保安院が設置している耐震設計・構造小委員会の検討項目は,大きく2つあるが,2つめの「今回の地震による柏崎刈羽原子力発電所への影響の検討」はさらに3つに分かれていて,その2つめに「耐震安全上重要な機器・配管に対する影響の検討(弾性範囲を超える力を受けた機器・配管の健全性評価については運営管理・設備健全性評価WGにおいて検討)」とある。すなわち,発生応力が弾性範囲を超えるかどうかを,耐震設計・構造小委員会で検討し,超えた場合の評価を「中越沖地震における原子力施設に関する調査・対策委員会」(マダラメ委員会)の下にある運営管理・設備健全性小委員会評価WGで行おうとしている。既にこのWGの委員である小林英男氏などは,「変形をうけると材料はかえって強くなる」などと発言している。第2回会合では,小林英男氏の質問と保安院の回答が以下のように文書で示されている。

問 経験した地震に対して,機器が実力としてどのような挙動をしたか,どのような応答をしたかについて確認する必要がある。どうして耐えたのか,塑性化すると強度は増す。規格にとらわれない実力値で評価するといった新しい視点をいれた評価を期待する。その結果が耐震基準,設計基準に役に立つ。(小林委員)

答 外観上特に損傷が認められない機器について,地震による応答が認可された工事計画上の耐震設計における許容応力を超える場合には,ご指摘のとおり,機器の実力としての評価を行う必要があると考えている。

 許容値を持ちだして「安全余裕」に逃れるばかりか,許容値を超えて変形・ゆがみの可能性があっても「実力」があるとして,再使用への道筋をつけようとしている。たいへん危険な動きではないか。「弾性限界許容値」を少しでも超えれば当然アウトだ。「実力」や「安全余裕」に逃げ込むことも許さないという姿勢で,再使用はまかりならんとの声をあげていこう。

福島老朽原発を考える会(ふくろうの会)
〒162-0825 東京都新宿区神楽坂2-19銀鈴会館405号AIR気付
TEL03-5225-7213/FAX03-5225-7214

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コメント

少々突飛と思われるかも知れませんが、些か旧聞ながら、共産党機関紙『赤旗』の記事(http://www.jcp.or.jp/akahata/aik/2002-04-10/07_0301.html)に見られる、「日立金属」と原発の配管とは、関係ありませんか?記事の内容は汚職に関するものなのですが。

投稿: 田仁 | 2007年11月26日 (月) 22時04分

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受信: 2007年11月27日 (火) 08時36分

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