25 活断層問題

2007年12月 7日 (金)

東電がこっそりやっていた活断層評価…値切らなくても今回の地震を再現することはできなかった~耐震設計小委員会合同WGを傍聴して~

12月5日に耐震設計小委員会の合同WGが開催されました。東電より,過去の活断層評価の誤りを認める報告がなされ,そのように報道されています。

ポイントは2点あると思います。

活断層見落としはやむを得なかったというのは本当か????

1点は、東電が1980年代に行った海底地形調査と活断層評価について、その当時の知見では、活断層の見落としがあったことはやむを得なかったとしている点に変わりはないことです。断層関連褶曲について2000年の岡村論文が出るまでは、褶曲と断層とを別物として評価していて,それはしかたなかったという姿勢でいます。この点については、国の審査ともどもまだまだ問題にすべきだと思います。電力への指南と国の審査の両方を行っていたという衣笠某委員は欠席でした。

東電の報告資料
http://www.tepco.co.jp/tepconews/images/071205a.pdf
11ページあたりから。岡村論文については20ページ。

こっそりやっていた活断層評価…値切らなくても今回の地震を再現できなかった

もう1点は、2003年6月に、F-B断層を20kmとした評価を実は行っていて、それを隠していたという点です。隠していたことはもちろん問題ですが、その評価結果も問題です。産総研に合わせて断層の長さ20kmとし,M7,震央距離18.5kmの条件で大崎の方法により応答スペクトルを引いています。応答スペクトルはS2の応答スペクトルを全体的に下回っており,だから当時特に問題にしなかったということです。

東電の報告資料
http://www.tepco.co.jp/tepconews/images/071205a.pdf
解析条件は22ページ。大崎スペクトルは23ページ。

この事実は,仮に東電が活断層の「値切り」をやらずにまっとうに評価していたとしても,今回の地震を再現することができなかったことを意味するのではないでしょうか。地震動の評価手法の問題です。大崎の方法の過小評価が改めて示されるということでしょうし,じゃあ断層モデルなら再現できたのかという点についても問題になるのではないでしょうか。

以下新聞記事情報です。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071205-00000150-mai-soci

*****************************
<柏崎刈羽原発>「活断層」認める報告書 東電が異例の撤回/毎日新聞

 東京電力は5日、新潟県中越沖地震を引き起こした断層の可能性が指摘される「FB断層」について、柏崎刈羽原発の設置許可申請当時(88年)の見解を改め、「活断層である」と認める内容の報告書をまとめ、経済産業省の作業部会で報告した。東電は03年に、この断層が活断層である可能性を既に認識していたというが、中越沖地震を受けて活断層と断定した。電力会社が活断層の評価を完全に撤回し、公表するのは極めて異例だ。

 東電によると、設置許可申請時、文献調査や海上音波探査などからFB断層は長さ7~8キロで、地形が複雑に変形した「しゅう曲構造」はあるが、5万年前以降の地層をずらしていないため、活断層とは評価していなかった。ところが00年に、しゅう曲構造と活断層の関係を認める論文が専門家から出されたため、国の指示で再評価した結果、FB断層は長さ20キロの活断層である可能性があるとの文書をまとめ、03年に国に提出した。中越沖地震を受け、海域の音波探査を詳細に実施したところ、長さ約23キロの活断層であると断定した。

 03年当時、FB断層が活断層である可能性を公表しなかったことについて、東電は「FB断層を活断層として評価しても、原発の耐震基本設計に影響を与えないとの結果が出たため、あえて公表しなかった」と話している。【河内敏康】

 ▽渡辺満久・東洋大教授(変動地形学)の話 しゅう曲構造があるにもかかわらず、地層をずらしていないとの理由から活断層でないと評価するのはかなり特殊な見方で、あり得ない。80年当時の文献でもしゅう曲構造と活断層の関係を認めているのに、なにを今さらといった感じだ。同じ理屈で他の原発でも見落としがあるかもしれないので調べ直すべきだ。

 ◇耐震設計の信頼性を根底から揺るがす事態

 新潟県中越沖地震の震源だった可能性が指摘されている海底の断層について、柏崎刈羽原発建設時に「活断層でない」としていた東京電力が、活断層だったことを認めた。活断層の過小評価は、耐震設計の信頼性を根底から揺るがす事態だ。

 活断層が過小評価されていた例は他にもある。今年3月の能登半島地震では、北陸電力が三つに分かれているとしていた断層が一体となって動いて発生した。同社はこのうち1本については「活断層ではない」としていたが、専門家からは「通常なら1本のつながった活断層として評価する」との声が上がっていた。中国電力島根原発を巡っても、同社が長さ10キロとする原発近くの宍道断層について、広島工業大の中田高教授が「長さは20キロ」との調査結果を発表している。

 毎日新聞が昨年、全国の原発周辺にある活断層のうち、国の地震調査研究推進本部(推本)の調査対象になった17断層について、電力会社の調査結果と比較したところ、15断層で電力会社の方が想定地震を小さく見積もっていた。柏崎刈羽原発に近い長岡平野西縁断層帯についても、推本の調査ではマグニチュード(M)8の巨大地震が想定されたが、東京電力の想定はM6.9だった。

 原発が想定外の揺れに襲われる事態は、東北電力女川原発で03年と05年の2回、能登半島地震で志賀原発、中越沖地震で柏崎刈羽原発と、既に4回に達した。各電力会社は今、昨年9月に改定された国の原発の耐震指針に基づき、耐震性のチェックを進めているが、活断層の過小評価を繰り返すことは許されない。十分に安全側に判断して耐震性の評価を進めない限り、国民の原発の耐震性への不安は解消できない。【鯨岡秀紀】

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2007年9月 7日 (金)

東大地震研纐纈(こうけつ)氏の断層モデル…西落ち,東落ちどちらか決められない

総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会耐震・構造設計小委員会の第13回会合(8月24日)
http://www.meti.go.jp/committee/materials/g70824bj.htm
において,委員の一人である纐纈(こうけつ)氏(東大地震研)による断層モデルが提示されました。

2007年新潟県中越沖地震の震源過程と強震動(纐纈委員提出資料)
http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g70824b17j.pdf
http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g70824b18j.pdf

Koketu

上図で青い四角が柏崎刈羽原発です(クリックすると拡大します)。纐纈氏は,東落ち(原発に向かって下がる)と西落ち(原発に向かって上がる)の2つの断層モデルを検討していますが,結論は,

「強震動波形インバージョンおよび経験的グリーン関数法の解析から断層面を断定することは現時点で難しい」

というものです。どちらでも今回の地震の揺れが再現できるということです。どちらのモデルにしろ,断層は原発直下に延び,アスペリティを原発近傍に配置しています。また,纐纈氏の資料には,

「順方向破壊伝播でなければパルスは出ないのか?」

というタイトルのシートがあります。パルスが出たとして,原発に向かって上がるモデルだけを検討した入倉氏を暗に批判しているようです。

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2007年9月 5日 (水)

東電が切り縮めていた海底活断層の立体模式図

変動地形学の専門家,鈴木康弘氏(名古屋大学)・渡辺満久氏(東洋大学)・中田高氏(広島工業大学)による,中越沖地震の震源近くの海底断層構造を模式的に示した図が名古屋大学のサイトにアップされました。
http://www.seis.nagoya-u.ac.jp/INFO/niigata070716/katsudanso2.pdf

Kaitekatudanso

図には,

「この図は東電の設置許可申請書(公開版)に掲載された資料から容易に推定されるものであるが、原発設計時には全く考慮されていなかった。」

との説明があります。東電はこの活断層を4つに切り,約1.5~8kmに縮め,評価対象から外していました。東電は今,活断層の再調査を行うとしていますが,それよりも,過去の調査結果から「容易に推定される」はずの推定をせずに,切り縮めていた事実関係とその責任を明らかにすることが先でしょう。

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2007年8月31日 (金)

柏崎刈羽原発は活褶曲(しゅうきょく)上にある。「真殿坂断層」が動いた!

東洋大の渡辺満久さんらの調査,解析により,柏崎刈羽原発近くで,活断層に押されて地盤が曲がる活褶曲(しゅうきょく)が動いたとみられる隆起が確認されました。

地震のたびにずれるのが断層,地震のたびに曲がる動きをするのが褶曲で,周辺や地下で活断層が動き,その影響で地表で曲がる動きをすることがあるようです。

地元で反対運動を続けてこられたみなさんは70年代から,この地域の褶曲と断層が再活動する可能性を指摘してきました。国と東電は「断層,褶曲は,活断層,活褶曲ではない」と否定していました。新聞記事に「真殿坂断層」とあり,これが動いた可能性が指摘されていますが,この「真殿坂断層」こそ,70年代から活断層か否か,敷地直下に延びているかが論争となっていたものです。東電は一貫して否定していました。(図はクリックすると大きくなります)

Madonozaka4

Danmen

「原発予定地盤は劣悪!」
1974年9月柏崎刈羽原発反対守る会連合/柏崎原発反対同盟
http://www.kisnet.or.jp/net/jishin/197409.pdf
P20の図に加筆

Madonozaka3
社党国会調査団・柏崎原発反対同盟・守る会連合・地区労(写真集)より
http://www.kisnet.or.jp/net/jishin/19770425photo.pdf

国,東電のこれまでの誤りについては,事実関係と責任が明らかにされなければなりません。30年前の東電の調査や判断,国の審査も問題ですが,東電は,昨年の調査後も「褶曲や断層はあるが、約12万年前から14万年前以降は動いていない。活褶曲や活断層ではないと考えられる」としていましたから,東電には今でも調査,判断能力がないことになります。柏崎刈羽原発については,活褶曲の上にあることが明らかになった以上,閉鎖するしかありませんし,東電に原発を立地する能力はないということになるのではないでしょうか。

柏崎原発の地盤10センチ隆起 活褶曲が動いた可能性(朝日新聞)
http://www.asahi.com/special/070716/

「新潟県中越沖地震で、東京電力柏崎刈羽原発付近から柏崎市街地までの地盤が、幅約2キロ、長さ約10キロにわたり10センチ程度隆起していたことが東洋大、名古屋大、広島工業大グループの解析でわかった。活断層に押されて地盤が曲がる活褶曲(しゅうきょく)が動いたとみられるが、東電は「活褶曲はない」という前提で原発を建設、現在も見解を変えていない。研究グループは「東電の調査および国の審査の信頼性が問われる」と話している。」

「同原発が地震のたびに隆起する活褶曲の上にあるという指摘は、1号機建設前から地元の研究者から出ていた。隆起が判明した地域の東縁にある活断層「真殿坂断層」や地震を引き起こした活断層などのずれによって、活褶曲が動いて地面が持ち上がったとみられる。」「東電は原発建設時、ボーリング調査などをもとに、敷地が活褶曲上にあることを否定してきた。昨年9月から10月にかけて原発周辺で人工的な振動を加えて地下の様子を探る調査を行った後も「褶曲や断層はあるが、約12万年前から14万年前以降は動いていない。活褶曲や活断層ではないと考えられる」としていた。」

刈羽原発周辺、断層ずれ隆起か…東電は活動ないと判断(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070830it16.htm

「新潟県中越沖地震で震源となった海底断層から分岐した、陸側の断層(長さ約10キロ・メートル)がずれて、東京電力柏崎刈羽原子力発電所周辺地域が10センチ前後隆起したと見られることが東洋大などの解析でわかった。」

「原発周辺の断層としては、建設前の1970年代前半に東電が実施した地下構造調査で原発の東方約1キロに見つかった「真殿坂(まどのさか)断層」(長さ数キロ・メートル)が知られている。研究チームが、人工衛星が取得した地震後の被災地周辺の画像を解析したところ、この真殿坂断層から柏崎市の市街地に至る帯状のエリアが10センチ前後隆起したことを突き止めた。東電は、「真殿坂断層の上に13万年前以降に積もった地層は変化はない」として、真殿坂断層は活動しない断層と判断した。」

「しかし、同大の渡辺満久教授(地形学)は「断層近くの地表面に30メートルの段差が見られ、活断層である可能性は十分考えられた。東電や国の審査は断層の活動度を甘く評価していたのではないか」と話している。」

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2007年8月17日 (金)

原発直下に延びた断層にアスペリティ(強震動を引き起こす固着域)が!?

■アスペリティを原発直下においた入倉氏のモデル

8月10日に開かれた原子力安全委員会「耐震安全性に関する調査プロジェクトチーム」第3回会合の資料がアップされました。
http://www.nsc.go.jp/senmon/shidai/taishinpjc/taishinpjc003/taishinpjc003.htm

この中に,中央防災会議や耐震指針検討分科会(新指針策定会議)の委員でもあった元京大教授の入倉孝次郎氏のモデルが提示されています。入倉孝次郎地震動研究所のサイトにも報告があります。
2007年新潟県中越沖地震の震源断層と強震動-柏崎刈羽原子力発電所を襲った破壊的強震動-(耐震プロジェクトチーム第3回会合資料)
強震動記録から見た2007年新潟県中越沖地震の震源モデルの検討(入倉氏他)

入倉氏は強震動の第一人者で,新しい指針で原発の耐震設計に取り入れられる断層モデルによる強震動予測のモデル(入倉レシピ)を作った人でもあります。浜岡原発運転差止訴訟では,原告被告双方の証人として証言したのですが,証言内容はどちらかというと被告中部電力側の意向に沿うものでした。そんな入倉氏が、「柏崎刈羽原子力発電所を襲った破壊的強震動」という刺激的な副題をつけた報告を原子力安全委員会に設置された委員会に報告したのです。

入倉氏は,この地震の断層が,南東傾斜(原発に向かって下がる)か北西傾斜(原発に向かって上がる)かについては,まだ決着していないとしながらも,「震源近傍の強震動記録からは北西落ちが有力である」とし,北西傾斜の断層の中に3つのアスペリティ(特に強い揺れを発生する固着域)を設定したモデルを提示しています。断層は原発直下に延びており,アスペリティは海岸線に沿って並んでいます。中央のアスペリティは原発の直ぐ沖合の深さ5kmの辺りにまで達しており,その延長線上に原発があるという具合になっています。

Irikura1

Irikura2

さらに,入倉氏は,柏崎刈羽原発の地下5階で観測された強震動波形は3つの顕著なパルス波をもつとし,柏崎刈羽原子力発電所を「キラー・パルス」が襲ったとしています。「南東上がりの震源断層面にある3つのアスペリティから地震動は指向性効果によりパルス的な形状を持つことが示された。このような破壊伝播方向に生じるディレクティビティ・パルス波は1995年阪神・淡路大震災のときに構造物の破壊を引き起こすキラーパルスと同様のものと考えられる。」と説明しています。

Irikura3_4

柏崎刈羽原発における観測波(速度波形)に現れた3つのアスペリティによる3つの波
2007年新潟県中越沖地震の震源断層と強震動-柏崎刈羽原子力発電所を襲った破壊的強震動-(耐震プロジェクトチーム第3回会合資料)より
東電が公表した波形は以下の報告書の中にあります
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu07_j/images/070730d.pdf

■アスペリティを原発直下におく意味

入倉氏が,断層を原発側にのばし,強震動を引き起こすアスペリティをほぼ直下にもってきたことにはどのような意味があるのでしょうか?

うがった見方をすれば,今回の柏崎刈羽の事態を他の原発の耐震問題に波及させないために特殊な要因をもってきた,となるのかもしれません。特にキラーパルスの話はそのようにも見えます。しかし,柏崎刈羽原発で観測されたすさまじいデータから,モデルが正しいと信じれば,アスペリティを直下にもって来ざるを得なかったというのが実のところではないでしょうか。

たかだかM6.8の地震によって引き起こされた原発での揺れはすさまじいものでした。地表面は,5号機で1567ガル,1号機で1259ガル(水平方向合成値)でした。原発以外のサイトで1000ガルを超えたのは,旧西山町1018.9ガル(3成分合成)くらいです。1号機の地下250メートルの解放基盤表面相当の地盤でも993ガル!!,建屋では1号機の基礎で680ガル,タービン建屋の1階で2058ガル,応答スペクトルも4号機ではほぼ全ての領域で設計の2倍程度といった数値が並んでいます。

■釜江氏のモデルもアスペリティが原発直下に

京大原子炉実験所の釜江克宏氏は当初,南東傾斜の断層にアスペリティを2つ配置したモデルによる計算を行いました。しかしそれでは,柏崎付近の揺れ(特に速度震幅や変位震幅)が再現できず,原発周辺に第3のアスペリティを置く必要があるとし,新たに,北西傾斜の断層にアスペリティを3つ配置したモデルを提起しています。入倉氏のモデルに似ているのですが,原発に最も近いアスペリティが一番南東にあるなど,入倉氏のモデルとは異なる点もあります。

当初のモデル(新潟県中越沖地震の震源のモデル化 Ver.1)
福井県原子力安全専門委員会の資料(当初のモデル→新モデルの提起)
新しいモデル(新潟県中越沖地震の震源のモデル化 Ver.2)

Kamae

■断層モデルが原発耐震問題に与える影響

アスペリティが直下にあるかもしれないというのは,これはこれで他の原発の耐震問題にも十分に影響を与える問題を含んでいます。浜岡原発運転差止訴訟で,アスペリティを原発直下にもってくるのに苦労した経験からは感慨深いものさえあります。以下,断層モデルごとに原発の耐震評価との関係を考察してみました。

1.南東傾斜(原発に向かって下がるモデル)

最大余震を含む余震分布などから有力視されているモデルです。この場合には,震源断層が原発の沖合20kmあたりで確認されている海底活断層につながりますから,この海底活断層について,東電が調査で発見していながら,長さをわずか8kmに値切って無視したという経緯が直接的に問題になるでしょう。さらに,このモデルの場合には,断層が原発から比較的離れた位置にあるので,なぜ震源断層が離れているのに原発だけが激しく揺れたのかが問題となるでしょう。新指針により導入される入倉氏の断層モデルや大崎スペクトルに代わって断層の広がりやアスペリティが考慮できるとのふれこみで登場した耐専スペクトルも,断層が遠くて小さな揺れしか再現できないでしょう。過小評価が問題となり,モデルが使い物にならないということになるでしょう。さらに,原発の揺れやすい地盤にも焦点があたるでしょう。

2.北西傾斜(原発に向かって上がるモデル)

地殻変動のデータなどから有力視されているモデルです。海底活断層の値切り問題については,やや後景に退くかもしれません(もちろん免罪される訳ではないのでこれはこれで問題にしなければなりません)。アスペリティを直下にもってくれば,モデルの正当性というのも問題にならないかもしれません(というか,モデルを正当化するためにアスペリティをここにもってきたのでしょう)。問題は,断層が原発直下に広がっていてアスペリティが直下にあるというような想定が,設計段階でできるのか,そもそもこのような場所に原発を立地してよいのかということでしょう。設計段階の想定については,例え東電が,活断層の値切りを行わなかったとしても,直下に延びた断層にアスペリティなどという想定はできなかったでしょう。新指針対応にしてもそうです。

中部電力は,浜岡原発3・4号機について新指針に対応した耐震報告書を他の原発に先駆けてことし2月と3月に提出しています(早いのは裁判対策でしょう)。新指針は,基準地震の想定に際しては,起こりうる最大の地震にさらにばらつきや不確かさを考慮する事になっています。中部電力は,想定東海地震に対し,ばらつき・不確かさとしてアスペリティを原発直下に移動させた仮想的東海地震というものを想定してこれをもとに基準地震動を作成しています。これに対し,原告は,アスペリティを直下にもってくるだけでは当たり前の東海地震にしかならない,深さや枝分かれ断層の影響なども考慮しないと新指針の要求に従ったことにはならないと反論しています。

入倉氏のモデルに従えば,今回の中越沖地震では,その「仮想的」を超える事態が現実に起こってしまったということになります。現実に従えば,活断層が原発直下に延びている,震源を浅くする,アスペリティを直下に想定する,というのは当たり前にやらなくては行けないことで,さらにばらつきや不確かさを考慮しなければなりません。そのような想定を行っている原発は日本にひとつもありません。

3.南東傾斜+北西傾斜(産業総合研究所のモデルなど)

南東傾斜と北西傾斜の両方が動いたというモデルもいくつか提示されています。産業総合研究所のモデルは,南東傾斜が主断層,そこから北西傾斜の分岐断層が原発に向かって延びているというものです。この場合には,1.と2.で考察した両方がいろいろな形で問題となるでしょう。

4.旧指針の評価方法は問題外

旧指針下では行われていた,活断層を地表面に現れている所だけを評価し,その真ん中に震央を置いて,地震を想定するというようなやり方が通用しないというのは,どの断層モデルについても言えるでしょう。それだけでも,既存の全ての原発の耐震安全性が問題になるでしょう。

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2007年8月 1日 (水)

震源断層モデルの諸説

中越沖地震の震源断層モデルについて,各機関から異なる説が提示されています。陸に向かって下がる断層なのか,海に向かって下がる断層なのか,はたまたそれの組み合わせなのか。この地域の地質は複雑なようです。

・地震調査研究推進本部 地震調査委員会…余震分布から陸に向かって下がる南東傾斜の震源断層モデルを提示。
http://www.jishin.go.jp/main/chousa/07jul_chuetsu_oki/index.htm

・国土地理院…地殻変動により,気象庁と逆の海に向かって下がる震源断層モデルを提示。
http://www.gsi.go.jp/WNEW/PRESS-RELEASE/2007/0726.htm

・産業総合研究所 活断層研究センター…陸に向かって下がる主断層に,陸に向かって上がる分岐断層を組み合わせたT字型の断層モデルを提示。柏崎の沈降を説明するために分岐断層を設定した。
http://unit.aist.go.jp/actfault/katsudo/jishin/niigata070716/report/horikawa/index01_070724.html

・東大地震研…やはりT字型。ただし,陸に向かって上がる断層を主とし,それが柏崎の下を抜けて長岡平野西縁断層帯の一つである鳥越断層につながっているという説。陸に向かって下がる断層が分岐し,これが余震分布と一致する。
http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/topics/niigata20070716/satow2.htm(以下の図も)

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2007年7月28日 (土)

震源断層がひずみ集中帯の一部をなす長岡平野西縁断層帯の一部である可能性

中越沖地震:震源は巨大断層帯の一部か 原発の北数キロ
毎日新聞
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20070728k0000m040180000c.html

「新潟県中越沖地震の震源断層が、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)の北側数キロの地下で、原発北東側の内陸部にある鳥越断層とつながっている可能性があることが、東京大地震研究所の佐藤比呂志教授(構造地質学)らの研究で分かった。当初の想定より、断層が原発近くを通っている可能性があることを示す結果。」

「鳥越断層は、マグニチュード(M)8クラスの地震が起こる可能性が指摘されている長岡平野西縁断層帯(新潟市沖-小千谷市)の一部。」

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2004年新潟県中越地震の10日前の2004年10月13日、文部科学省地震調査委員会は長岡平野西縁断層帯について,「断層長さは83km、地震の最大規模はマグニチュード8,発生確率は国内活断層の中でやや高いグループ」との評価を発表しました。断層帯が一体のものとして活動した場合には,M8クラスの地震が起こるというのです。これに対し,東電はこの断層帯にある断層の一つである気比ノ宮断層のさらに一部しか考慮していません。発生する地震もM6.9です。この点について,地元の反対運動や,柏崎刈羽1号機設置許可取消裁判の原告は,東電の評価が過小評価であると批判していました。

参考:柏崎刈羽原発の地震地盤論争と新指針(『通信』より)原子力資料情報室
http://cnic.jp/modules/news/print.php?storyid=445

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この断層帯の評価について,近藤正道参議院議員からの質問主意書に対し,政府は以下のように答弁(平成十六年十一月二十六日)していました。
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/syuisyo/161/touh/t161007.htm

「文部科学省地震調査研究推進本部地震調査委員会が平成十六年十月に公表した「長岡平野西縁断層帯の長期評価について」(以下「地震調査委員会評価」という。)においては、新潟市の沖合から越後平野南部に位置する長岡平野西縁断層帯を構成する複数の活断層全体が一つの区間として活動した場合、マグニチュード八程度の地震が発生する可能性を指摘しつつも、同断層帯を構成する断層について、一部の断層以外には活動履歴に関する詳しい資料が得られていないことや海域における断層の位置に関する資料が不足していることから、今後、精度の高いデータを集積して、最近の活動履歴や平均活動間隔を正確に把握する必要があるとしているところであり、地震調査委員会評価をもって、敷地周辺の陸域及び海域の断層に関する詳細な地質調査の結果等を踏まえてなされた柏崎刈羽原子力発電所の耐震設計審査の結果を直ちに見直す必要があるということにはならないものと考える。今後の対応については、同断層帯に関するデータの集積状況や学術的研究の進展状況を踏まえ、必要に応じ、検討を行ってまいりたい。」

報道をみると,今回の中越沖地震と3年前の中越地震は,この長岡平野西縁断層帯の東端と西端で発生したものであること,この長岡西縁断層帯を含む,北海道から日本海沿岸にそって九州に続く巨大な「ひずみ集中帯」の一部をなしており,「ひずみ集中帯」がアムールプレートと北米プレートのプレート境界をなしていること,中越,玄海沖,能登沖,中越沖と,「ひずみ集中帯」の活動が最近活発になっていることが指摘されています。

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陸域に行くほど深くなる「主断層」と浅くなる「分岐断層」…産総研のモデル

産業総合研究所は,海域から陸域に行くほど深くなる「主断層」に,陸域に行くほど浅くなる「分岐断層」を組み合わせたモデルを出しています。「分岐断層」が原発近くまで伸びています。

出雲崎では、隆起・東向きと逆断層の上盤の動き、柏崎では、沈降・西向きと逆断層の下盤の動きで、分岐断層を設定しないと、主断層だけでは説明できないという考え方だと思います。以下は産総研活断層センターのHPの記述です。

2007年7月中越沖地震の断層モデル(第一報)
http://unit.aist.go.jp/actfault/katsudo/jishin/niigata070716/report/horikawa/index01_070724.html

Fault_v11

北東側で観測された量は,概ね主断層のみで説明できるが,柏崎付近の水平変動や沈降は主断層だけでは説明できない.そのため,余震分布を参考に,分岐断層を導入した.

 この分岐断層の存在範囲は,観測量で拘束できている.現在の位置よりも北東側へ伸ばすと,沈降域が拡大し,海岸沿いで観測された結果と合わなくなる.南西側へ延長すると,柏崎2あるいはP柏崎の水平変動が柏崎1よりも大きくなってしまい,観測と矛盾する.

 データを説明するためには,分岐断層の上端の深度が浅いことが必要であり,深いモデルでは,沈降域,柏崎付近の変動を説明するのは困難である.伏在断層が高角なのは,柏崎付近の沈降を説明するために必要であるが,高角でありながら逆断層成分が卓越している点で,物理的に存在しにくいものとなっており,今後の検討課題である.

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2007年7月27日 (金)

海底から原発に向かう断層…気象庁とは逆向きの国土地理院の断層モデル

国土地理院が公表した新潟県中越沖地震の断層モデルは、気象庁とは逆向きで、海底から、柏崎刈羽原発に向かってだんだん浅くなっています。また、今回の地震では2つの断層が動いたとされていますが、気象庁がほぼ同じ位置であるのに対し、国土地理院のモデルは横に並んでいます。このモデルに従えば、断層の延長線上に原発がくることになります。産経新聞は、国土地理院の図と原発周辺の地図を重ね、原発まで数キロと伝えています。

朝日新聞
http://www.asahi.com/special/070716/TKY200707270037.html
国土地理院HP
http://www.gsi.go.jp/WNEW/PRESS-RELEASE/2007/0726.htm
震源断層モデルの概念図
http://www.gsi.go.jp/WNEW/PRESS-RELEASE/2007/0726/0726-4.pdf

Kokudotiriin1 Kokudotiriin2

毎日新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070727-00000028-maip-soci

2007072700000028maipsociview000

産経新聞

Kokudosankei

読売新聞

Kokudoyomiuri

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原発は活断層の上には建ててはならない

今回の地震を引き起こした活断層が,柏崎刈羽原発の敷地直下に伸びていることが明らかになりました。

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<朝日新聞より>

東電は自らがホームページで「活断層の上には建てていません」と述べています。

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<東京電力HPより>
http://www.tepco.co.jp/nu/knowledge/quake/quake-j.html#anchor1

また、以下の文書は、原子力百科事典ATOMICAにある、原発の立地審査指針の解説です。ここからも明らかなように,原発は活断層の直上に建ててはならないことは当然のことです。柏崎刈羽原発はそもそも立地してはならない原発でした。

1.原子炉立地審査指針

原子炉は、どこに設置されるにしても、事故を起さないように設計、建設、運転及び保守を行わなければならないことは当然のことであるが、なお万一の事故に備え、公衆の安全を確保するためには、原則的に次のような立地条件が必要である。

(1) 大きな事故の要因となるような事象、例えば、立地場所で極めて大きな地震、津波、洪水や台風などの自然現象が過去になかったことはもちろん、将来にもあるとは考えられないこと。活断層の真上を避けることは当然のことであるが、設置場所の過去の地震歴、周辺の活断層の分布状況等を十分に調べ、地盤についても十分調整した上で、敷地として適切か否かを評価している。また、災害を拡大するような事象も少ないこと。これは例えば、隣接して人口の大きな都市や大きな産業施設があるかとか、陸、海、空の交通の状況などの社会環境や、地盤が軟弱といった自然条件を考慮することである。

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