35 耐震設計

2007年11月28日 (水)

柏崎刈羽7号機の地震応答解析試算について-強引に許容値以下に収めるのはやめて設計時と全く同等な評価で判断せよ

11月28日に行われたマダラメ委員会下にある設備健全性評価ワーキンググループのサブワーキンググループの第2回会合で,東京電力は柏崎刈羽7号機について,「地震応答解析の試解析結果について」という資料を提出しました。試解析からわかることは,弾性限界の許容値と比較した場合には,中越沖地震により機器や配管に発生した応力は,許容値を超えてしまうのが必至であることと,東電はそれを「詳細解析」というマジックを使って,許容値以下になんとかかんとかねじ込もうとしていることです。他号機を含めた本格的な解析と評価は来年6月までかけるとのことです。

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9月の概略影響評価との違い

7号機の試解析をみると,9月に電力各社が他の原発や再処理工場で行った「概略影響検討」と異なる点がいくつかあります。9月が建屋基礎の応答スペクトルだけですべてを代表させていたのに対し,各階の観測記録を用いている(地震計がない階については解析したもの)こと,応答倍率の簡易評価だけでなく,詳細な解析評価を行っていること,それから決定的な違いは,機器や配管が破損,破壊してしまう限界点に対応した許容値ではなく,弾性限界の許容値と比較していることです。

原発の耐震設計では設計用最強地震から策定したS1と設計用限界地震から策定したS2の2つの基準地震動が用いられます。これらに対応する許容値は考え方が異なっており,S1に対しては,弾性限界の範囲内にあり,機器や配管が変形しても元に戻ることを要求しています。これは地震後に原発を再使用することを念頭においているのだと思います。鋼材では,弾性限界は降伏点とよばれ,これがそのまま,S1に対応する許容値となっています。これに対し,S1を上回るS2は,およそ起こり得ないが想定だけしておこうという地震動であり,これに対しては,弾性限界をこえて塑性領域に入り,機器や配管が元に戻らない変形やひずみを起こすことを許し,それでも破損や破壊まではいたらず,放射能の閉じ込め機能が維持されることを要求しています。許容値もS1に対する許容値より
も大きく(緩く)なっています。鋼材では,材料が延性破壊を起こす終局点の3分の2の値で定められています。

9月の評価で電力各社は,柏崎刈羽原発以外の原子力施設について,破損や破壊を引き起こす限界に対応した許容値以下であるかどうかが問題にしました。しかし,柏崎刈羽原発では再使用が問題になっていますので,比較する相手は,弾性限界の許容値です。

許容値以下にねじ込もうと必死

Sisan1

今回東電が出してきた試解析からわかることは,弾性限界の許容値と比較した場合には,中越沖地震により機器や配管に発生した応力は,許容値を超えてしまうのが必至であることと,東電はそれを「詳細解析」というマジックを使って,許容値以下になんとかかんとかねじ込もうとしていることです。ねじ込もうと必死になっていることが伝わるのが,資料の6ページ目にある図です。左からたどると,まず応答倍率法による簡易評価を行う,それでも許容値を超えてしまったら,設計時と同等な評価を行う,それでも許容値を超えてしまったら減衰定数をいじって小さくしてしまう,それでも収まらなかったら時刻歴解析を行って小さくしてしまう,それでも収まらなかったら解析コードをいじって小さくしてしまう…と続きます。常識的に考えれば,2番目の設計時と同等な評価を行って許容値を超えてしまったらその時点でアウトとすべきでしょう。

逆に許容値を超えたことが明らかに

Sisan2

では7号機の試解析の結果はどうだったのか。東電が今回評価した対象は,9月と同様に原子炉圧力容器,炉心支持構造物,残留熱除去系配管,残留熱除去系ポンプ,主蒸気配管,原子炉格納容器の6か所しかありません。再循環系配管の分岐部やノズル部はありません。結果をみると,どれも算出応力は弾性限界の許容値を下回っており,OKに見えます。7号機は7機の中では最も揺れは小さく,水平方向については,S2による設計値とほとんど変わりません。上下動については,設計を大きく超える揺れが観測されています。特にきびしいのが配管系です。評価結果の表をよくよくみると,残留熱除去系配管と主蒸気系配管については,評価B2となっており,脚注をみると,「減衰定数は試験研究等により妥当性が確認された値を適用」とあります。すなわち設計時と全く同等な評価ではないのです。これは先ほどの6ページ目の資料と比較すると,設計値と全く同等な評価を行ってダメだったから次の段階に進んだということであり,すなわち,設計時と全く同等な評価では許容値に収まらないということを意味します。

設計時と全く同等な評価で判断せよ

「減衰定数」をいじって許容値以下に収めるというのは,中部電力も浜岡原発の新指針対応評価で使った手です。このようにして強引に許容値以下に収めようとしています。それでも収まりきらない場合は補強工事で再使用の道をさぐろうとしています。昨日の会合でも小林英男氏は補強工事を積極的に行うようにと発言していました。

今後,7号機よりも大きな揺れを観測した1~4号機を含め,解析を行うとのことですが,私たちとしては,設計時と全く同等な評価を行うこと,それにより少しでも弾性許容値を超えた場合は,強引に収めるようなことはやめ,その時点でもう再使用しないとすることを要求したいと思います。

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2007年11月26日 (月)

中越沖地震により炉内構造物に生じた発生応力が弾性限界を超えた-耐震計算書の考察(2)-

東京電力の耐震計算書から、中越沖地震により、炉内構造物(シュラウド)に生じた発生応力が、弾性限界を超えている可能性が明らかになりました。この件について、3ページの説明資料を作りました。ファイルは図表が入っていますのでこちらをご覧ください。

ファイルのダウンロードはこちら

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中越沖地震により炉内構造物に生じた発生応力が弾性限界を超えた
柏崎刈羽原発の多数の安全上重要な機器・配管に変形・ゆがみが生じたことを示唆
-東京電力柏崎刈羽原発3号機耐震計算書の考察(2)-

2007年11月26日
福島老朽原発を考える会

 中越沖地震では,基準地震動S2を大きく超える揺れが柏崎刈羽原発を襲った。焦点の一つはこれが許容値を超えたかどうかである。許容値には2種類あり,一つが弾性限界を示すもの(以下「弾性限界の許容値」という),もう一つが施設の機能に影響を及ぼす過大な変形,亀裂,破損に至る限界に対応するもの(以下「破損限界の許容値」という)である。「弾性限界の許容値」を超えると,機器や配管が変形し,ゆがみが生じている可能性が出てくる。「破損限界の許容値」を超えると,機器や配管が破損する可能性が出てくる。少なくとも「弾性限界の許容値」を超えた時点で,原発の再使用はまかりならんということになるだろう。

 私たちは,東京電力に対し柏崎刈羽原発の耐震設計の詳細設計資料(3号機の工事計画認可申請書のうち建屋や機器・配管関係の耐震性についての計算書等)の公開請求をしている。その一部(原子炉建屋とタービン建屋の耐震性についての計算書)については閲覧が可能になったが,機器・配管関係の耐震計算書は未だに公開されていない。しかし,原子炉内にあり,燃料を取り囲むように設置された炉心シュラウドと呼ばれる炉内構造物の耐震計算書については,2001年(東電原発不正事件の1年前)に福島第二原発3号機のシュラウドひび割れ問題が発生したときに,経済産業省系の原子力公開ライブラリから入手していた。(工事計画認可申請書は,かつて公開されていた時期があったが,電力会社の要請により,再び非公開になったという。)これを改めて検討したところ,炉心シュラウドの下部銅では,中越沖地震によりこの部分に発生した発生応力が,弾性限界を示す許容値を超えていることが明らかとなった。再循環系配管や主蒸気系配管など他の安全上重要な機器・配管についても,「弾性限界の許容値」を超えていた可能性が十分にある。柏崎刈羽原発を再使用することは機器・配管の安全管理上も許されない。

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2007年11月15日 (木)

柏崎刈羽原発の解放基盤表面での地震波(はぎとり波)は地中のおよそ2倍

東京電力がようやく一部公表した耐震計算書に,柏崎刈羽原発の解放基盤表面での地震波(はぎとり波)が同じ深さの地中の地震波のおよそ2倍であることを示す資料が見つかりました。中越沖地震による最大加速度が1000ガルを大幅に超えるのは必至ではないかと思い,4ページの説明資料を作りました。ファイルは図表が入っていますのでこちらをご覧ください。

ファイルをダウンロード

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柏崎刈羽原発の解放基盤表面での地震波(はぎとり波)は地中のおよそ2倍
中越沖地震による最大加速度が1000ガルを大幅に超えるのは必至!
-東京電力がようやく一部公表した耐震計算書より明らかに-

2007年11月15日
福島老朽原発を考える会

 東京電力本店原子力情報コーナーを通じ,8月9日付けで柏崎刈羽原発の耐震設計の詳細設計資料(3号機の工事計画認可申請書のうち建屋や機器・配管関係の耐震性についての計算書等)の公開請求をしていたところ,10月30日にその一部(原子炉建屋とタービン建屋の耐震性についての計算書)の閲覧が可能になったとの連絡を受けた(機器・配管関係は年内をめどにとのこと)。開示された資料の閲覧,コピーに出向いたところ,原子炉建屋の耐震性についての計算書から,柏崎刈羽原発における解放基盤表面における地震波が,同じ深さの地中における地震波のおよそ2倍となることを示す資料が見つかった。

 耐震設計では,基準地震動S1,S2を解放基盤表面に入力する。解放基盤表面とは,原発敷地において一定以上の固さをもつ地中の地盤の上部を仮想的にはぎとった表面であり,この表面における地震波を「はぎとり波」という。原発の耐震設計における地震動の想定の妥当性を確認するためには,この「はぎとり波」と基準地震動を比較しなければ意味がない。中越沖地震により柏崎刈羽原発では,1号機の原子炉建屋の基礎で最大加速度680ガル,1号機の解放基盤表面とほぼ同じ深さの地中で993ガル,より浅い地中で760ガルおよび867ガル,サービスホールの地中で728ガルといった値が観測されている。今回公開された資料は,このような観測結果から「はぎとり波」を作成すると,最大加速度が1000ガルを大幅に上回ることを示唆している。

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2007年9月14日 (金)

3号機の耐震計算書から…発生応力が弾性限界を超え機器・配管に変形が生じた!

中越沖地震では,S2の設計値を大きく超える揺れが柏崎刈羽原発を襲いました。中越沖地震による重要な機器や配管における発生応力が,S2による発生応力を超えたことはほぼ確実だと思われます。

焦点の一つはこれが許容値を超えたかどうかです。S1の許容値を超えると,弾性限界を超え,機器や配管が塑性変形によりゆがみが生じている可能性があります。S2の許容値を超えると,破断の可能性まででてきます。少なくともS1の許容値を超えた時点で,原発の再使用はまかりならんということになるでしょう。

そこでかつて,2001年(東電事件の1年前)にシュラウドのひび割れ問題が発生したときに,経済産業省系の原子力公開ライブラリーで手に入れた柏崎刈羽3号機の設工認にある炉心シュラウドの応力計算書を開いてみました。今現在は東電の要請で非公開とされてしまい,改めて東電に公開請求をしています。

①S1による発生応力
②S2による発生応力
③S1に対する許容応力
④S2に対する許容応力

と並べたときに,中越沖地震による発生応力は,②を超えたことがほぼ確実で,③を超えるかどうかが問題になります。一般的には,②を超えても③を超えたとは限りません。ところが,応力計算書にはこんな数字がありました。

シュラウド下部胴 P07 SUS316L 一次一般膜応力
 荷重の組合せⅠ,Ⅱ+S1 許容応力状態 ⅢAS
 …応力強さ 7.5 許容値 9.4 (kg/mm2)

 荷重の組合せⅠ,Ⅱ+S2 許容応力状態 ⅣAS
 …応力強さ 10.6 許容値 15.1 (kg/mm2)

すなわち
①S1による発生応力   7.5(kg/mm2)
②S2による発生応力  10.6
③S1に対する許容応力  9.4
④S2に対する許容応力 15.1

となっており,②が③を上回っているのです。この場合,②を超えたことが確実な時点で,③も自動的に超えてしまうことになります。中間胴の下部は②=③,中間胴の上部と上部胴では,①<②<③<④になっていました。少なくとも下部胴については,S1の許容値を超え,塑性変形によるゆがみを生じている可能性が否定できないのではないでしょうか。他にもこのような部位はあるはずです。

国は既に,柏崎刈羽原発における中越地震による発生応力が,S1の許容値を超え,弾性限界を上回っていることを前提に,それでも原発を動かすための理屈をひねり出すための体制をとっています。

中越沖地震について,原子力安全・保安院が設置した耐震設計・構造小委員会の検討項目は,大きく2つあるのですが,2つめの「今回の地震による柏崎刈羽原子力発電所への影響の検討」はさらに3つに分かれていて,その2つめに「耐震安全上重要な機器・配管に対する影響の検討(弾性範囲を超える力を受けた機器・配管の健全性評価については運営管理・設備健全性評価WGにおいて検討)」とあります。すなわち,発生応力が弾性範囲を超えるかどうかを,耐震設計・構造小委員会で検討し,超えた場合の評価をマダラメ委員会の下にある運営管理・設備健全性小委員会評価WGでやろうとしているのです。既にこのWGの委員である小林英男氏などは,「変形をうけると材料はかえって強くなる」などと言って,弾性限界を超えても原発を動かすための理屈を探っています。この場で原発再使用宣言を出そうとしています。

20日には,電力の検討結果が出てくると思いますが,S1許容値を少しでも超えれば当然アウトです。許容値を超えない場合があるかもしれませんが,「安全余裕」に逃げ込むことは許さないという姿勢で,再使用はまかりならんとの声をあげていきましょう。

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2007年8月28日 (火)

柏崎刈羽1号機の地盤で観測された993ガル

中越沖地震では,柏崎刈羽1号機の地下(海面下)250mの地盤で,993ガルという大きな揺れを観測しています。建屋基礎での680ガルはよく問題にされるのに,なぜこの993ガルを問題にしないのだろうかと思っていたら,毎日新聞で以下の記事が流れました。

柏崎刈羽原発:揺れは想定の2.7倍 耐震策見直しも
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/20070716/news/20070826k0000m040151000c.html

「新潟県中越沖地震の際に、東京電力柏崎刈羽原発直下の岩盤で記録された揺れ(993ガル=ガルは加速度の単位)は、「事前に予測できない断層による地震への備え」として、全国の原発が共通に想定している揺れの約2.7倍だったことが東電の観測で分かった。専門家からは「中越沖地震の揺れを共通の想定にすべきだ」との指摘が出ている。各原発が大幅な耐震想定の見直しを迫られる可能性が出てきた。」

というものです。原発の耐震設計では,基準地震動S1,S2を,解放基盤表面に入力します。解放基盤表面は,地震波のS波速度が700m/s以上の堅さをもった地盤の上面を仮想的にはぎとった面のことで,柏崎刈羽1号機の場合は地下284mの位置に設定されています。

Dscf1253

中越沖地震では,その解放基盤表面に近い地下250mの地盤中に設置されていた地震計で,最大993ガル(東西方向)が観測されたのです。下図でG10とある箇所です。

1gokig10

毎日新聞の記事は,これを耐震設計において設定が求められる事前に予測できない断層による地震(震源を特定しない地震)の基準にすべきではないかと問題提起しています。現状(旧指針)では,M6.5震源距離10kmの地震を想定することを全ての原発に一律に課しています。それが解放基盤表面で370ガル程度。新指針では,これが若干引き上げられることになりますが,それでも450ガル程度だということです。

中越沖地震では,今のところ陸域でも海上保安庁による海域の緊急調査でも,地震を引き起こした断層が表面に現れている箇所の発見には至っていません。

女川原発を襲った宮城県沖の地震の例では,解放基盤表面と同じ深さの地盤中の観測値から,上面をはぎ取り,解放基盤表面の値を推測すると,30ガル程度大きくなりましたから,柏崎刈羽の場合,中越沖地震による解放基盤表面上での値は,はぎ取りにより,1000ガルを超えることになるでしょう。

ここで問題は,東電がこの肝心要の地震データについて,加速度の最大値を除く地震波形のデータを上書きで失ってしまったということです。直接の観測波形から,最大速度やスペクトル波形,はぎ取りの作業を行うことができなくなってしまったのです。能登沖地震でデータを失った志賀原発と同じミスを繰り返していたのです。東電は,余震データや,サービスホールの地盤データなどから推測するとしていますが,そこには,人為的な操作が入り込む余地がありそうです。最も保守的な最悪の状況で,地震波形の推測をするよう,監視していきましょう。

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2007年8月 1日 (水)

柏崎刈羽原発で観測された地震動の応答スペクトル

東電が,地震観測データに一部応答スペクトルをつけた資料をHPにアップしています。

「柏崎刈羽原子力発電所における平成19年新潟県中越沖地震時に取得された地震観測データの分析に係る報告(第一報)(PDF 2.04MB)」
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu07_j/images/070730d.pdf

昨日からはじまった斑目委員会に出た資料はこれと同じものです。応答スペクトルというのは,地震波を建屋に入力したときに,固有周期ごとに最大の応答加速度を拾って描いた図です。原子力施設の主要な機器や配管の固有周期は0.1秒から0.3秒に集中していますから,このあたりの周期での値が問題となります。

応答スペクトルについては,原子炉建屋基礎マットについて各号機のものがあります。加速度の最大値では,1,2号機が目につきましたが,応答スペクトルでは,4号機の東西方向が目につきます。ほぼ全ての領域でS2による設計値を超えています。(16ページ)原子炉の機器・配管の固有周期が集中する0.1~0.3秒の領域において,4号機の東西方向は,全般的に設計の倍以上になっています。中の機器に何らかの影響があったのではないでしょうか。それに,M6.8の地震でこれですから,耐震設計が根本から誤っていたことを改めて,まざまざと見せつけるものとなっています。

Datatepco
4号機原子炉建屋地下5階基礎版上の応答スペクトル(東電報告書より)
太線:観測結果 細線:S2による設計値

それから,報告には,地盤に埋めた地震計について,観測された最大加速度の一覧があります(添付資料)。東西方向について、下から順に並べると以下のようになります。解放基盤表面は-200mから-250mあたりです。

■1号機
・地盤 -250m…993ガル -122m…739ガル -40m…867ガル
・建屋 地下5階(-32.5m)…680ガル 2階(+12.8m)…884ガル

■5号機
・地盤 -300m…450ガル -180m…407ガル -100m…586ガル -24m…388ガル
・建屋 地下4階(-17.5m)…442ガル 3階(+27.8m)…697ガル

これをみると,解放基盤表面から上に向かい,マイナス150mあたまで減衰した後,増幅に転じ,建屋に入って一旦下がった後,再び増幅するという感じです。(5号機の-24mの値が外れてしまいますが。)一貫して減衰するとの東電本社交渉での説明はやはり違うようです。

地盤については、サービスホールを除いて、最大加速度しか残っていないので、女川原発で観測された宮城県沖の地震のように解放基盤表面での観測波をその付近での地震波から直接的に作成することができなくなりました。それに今回データが失われた地震計の中には、そもそも1000ガルしか計れない仕様のものがあったようで、最大加速度についても振り切れたとしかわからないデータがいくつかあります。いかに地震に対して無防備であったのかを示しています。

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2007年7月29日 (日)

観測値がS2を超えていた意味

■耐震設計の根底が誤っていた

・東電は,柏崎刈羽原発の原子炉建屋最下階における観測値(暫定値)を公表し、合わせて、柏崎刈羽原発おいて,基準地震動S2(柏崎刈羽原発の場合,2~7号機のS2の最大加速度は450ガル,1号機は300ガル)を建屋に入力した場合の建屋最下階における応答加速度の評価値(設計値)を公表しました。
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu07_j/images/070719a.pdf

・観測値が設計値を大きく超えるものがあり,1号機の東西方向は,設計値273ガルに対し,観測値が680で約2.5倍、2号機の東西方向は,設計値167ガルに対し,観測値が606ガルで約3.6倍でした。上下方向についても6号機では,設計値235ガルを大幅に上回る488ガルを記録しています(以下が観測値,カッコ内が設計値)。

----南北方向--東西方向--上下方向
1号機-311(274)-680(273)-408(235)
2号機-304(167)-606(167)-282(235)
3号機-308(192)-384(193)-311(235)
4号機-310(193)-492(194)-337(235)
5号機-277(249)-442(254)-205(235)
6号機-271(263)-322(263)-488(235)
7号機-267(263)-356(263)-355(235)

・設計値とのこれだけ開きは,直下地震の想定が甘かったというだけでは説明がつきません。想定した地震から地震動を推定する評価方法に大幅に過小評価があったことは疑いないでしょう。同じ評価方法が全国の原発で使われています。

・過小評価は地震の度に問題になっていました。2004年三陸南地震,2005年宮城県沖の地震が襲った女川原発で想定を超えました。金沢地方裁判所は昨年,耐震性の不備を理由に志賀原発2号機に運転差止の判決を下しました。その志賀原発を今年能登沖地震が襲いましたが,やはり想定を超える揺れでした。女川原発を襲った2つの地震で,松田式,金井式を用いた大崎の方法の過小評価が明らかになりました。新指針に合わせて開発された耐専スペクトルも同様に過小評価でした。国や電力は,スラブ内深発地震の特異性によるものとしています。しかしその後,志賀原発でも過小評価が明らかになり,今回と続いています。浜岡についても耐専スペクトルが他の評価方法と比較して過小評価であることが確認できます。

■機器・配管の変形が起きている可能性

・S1とS2では,地震時に機器や配管にはたらく応力の許容値についての考え方が違います。以下が耐震設計審査指針の記述です。

Sisin001

・浜岡原発運転差止裁判において,被告中部電力は以下のように説明しています。

■Asクラスの建物・構築物の基準地震動S2に対する許容値
…仮に発生した応力値が材料の弾性を示す範囲(変形しても元に戻る範囲)を超え,構造物が塑性変形に至る場合であっても,倒壊等の施設の機能が喪失するという限界状態にいたらないよう,かなりの安全余裕が設けられており,機器・配管の基準地震動S2に対する許容値も,材料の過度な変形や破損に対して安全余裕を持った値に設定されている。

■Asクラスを含むAクラスの建物・構築物及び機器・配管に対して適用される基準地震動S1に対する許容値
…更に余裕を持って各施設が弾性を示す範囲に設定されている。

・S1は,変形しても元に戻ることを確認するための基準地震動です。ところがS2はこれと異なり,機器や配管がもとにもどらない変形(塑性変形)が生じることを覚悟し,それでも壊れないことを確認するための基準地震動です。S2を大きく超えたということは,再使用が保証できない揺れが襲ったということです。

・朝日新聞には,保安院が,原発の中枢部に変形があるかもしれず,精査の方針という記事が流れています。外観検査では問題なくても,機器や配管の内部で,あるいはミクロな部分で塑性変形が起きているおそれがあります。そのような柏崎刈羽原発が二度と使用されるようなことがあってはなりません。
http://www.asahi.com/national/update/0728/TKY200707280448.html

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