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2008年7月 5日 (土)

欠陥ガラス溶融炉の悲痛な叫びが六ヶ所再処理工場は動かしてはならないと訴えている

 六ヶ所再処理工場のガラス固化溶融炉は7月2日深夜、ガラスがうまく流下せずに停止しました。再開してわずか1日、トラブルは1本目で生じたのです。問題のガラス固化溶融炉は、白金族元素の堆積によるトラブルにより、昨年12月からほぼ半年の間止まっていました。調査の過程で根本的な欠陥が明らかになったにもかかわらず、原子力安全・保安院は6月30日に運転再開を容認しました。今回のトラブルは、この再開容認が間違っていたことを明らかにしました。日本原燃は、前例がなく原因は不明、再開の目処は立っていないとしていますが、前回のトラブルで下部に溜まった白金族元素を含む残留物が流下ノズルに残り、これが影響したような場合には手の打ちようがないでしょう。

 原燃にとって、再開後の運転は、決して失敗が許されないものでした。ボロが出ないうちに早々に試験を終える手はずまで整えていました。それでも失敗したのです。欠陥ガラス溶融炉の悲痛な叫びは、アクティブ試験を即刻中止することを求めています。六ヶ所再処理工場は動かしてはならないと訴えています。今こそ、再処理止めよ!との声を上げていきましょう。

■東奥日報
◆ガラス固化試験を停止/原燃
2008年7月3日(木)
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2008/20080703124715.asp

 日本原燃は三日、六ケ所再処理工場で二日再開したばかりのガラス固化体(高レベル放射性廃棄物)製造試験を、ガラス溶融炉の加熱の不具合のため、同日中断したと発表した。環境への影響はないが、法令が定める「故障の修理のため特別の措置を必要とする」事例と判断し、国の原子力安全・保安院に報告した。原因は不明で、試験再開の見通しは全く立っていない。原燃が目指していた再処理工場アクティブ試験(試運転)の七月内終了は、ほぼ不可能となった。
 原燃の説明によると、二日正午に製造試験を再開し、溶融炉のガラスに高レベル放射性廃液を加えながら、午後九時十一分、最初の固化体容器へガラスを流下させる作業を始めた。
 しかし、作業開始から間もなく、容器への注ぎ口となる流下ノズルを適切に加熱できない状態に陥り、ガラスの粘りが強まって流れなくなり、同九時四十三分に作業を中断。炉をさらに加熱するなど対策を講じて作業を再開したが、それでもガラスは流れず、三日午前零時五十八分に流下作業を停止した。
 その後、データ収集を行うとともに、同五時半には炉を流下作業をしない状態に切り替え、三日正午に製造試験中断を最終決定して国へ報告した。
 ノズルは、流下作業時には、周囲に巻き付けた銅製の高周波加熱コイルで熱を加え、ガラスをスムーズに流す一方、作業終了時には空気を吹き付けガラスを固め、流下を止める“栓”代わりにする仕組み。今回はこのコイルに不具合が生じた可能性があるが、再処理工場では前例がなく、さまざまな原因を視野に確認を進めているという。
 ガラス固化体製造をめぐっては、溶融炉の底に廃液中の金属(白金族)が堆積(たいせき)する不具合が発生し、二〇〇七年十二月に試験が中断。原燃は半年をかけて炉の運転方法の改善を検討し、国の了承を得て試験を再開したが、その直後のトラブルとなった。

■原燃
http://www.jnfl.co.jp/press/pressj2008/pr080703-1.html

平成20年7月3日
報道関係各位
日本原燃株式会社

ガラス溶融炉運転性能確認試験の停止

 ガラス溶融炉運転性能確認試験につきましては、ガラス溶融炉の試験運転の諸準備が整ったことから7月2日正午に再開しました。
 ガラス溶融炉内の温度が所定の値に達したことから、同日21時11分からガラスの流下を開始しましたが、十分な流下が確認されず、21時43分流下操作を一時停止しました。
 その後、22時36分から流下操作を再開しましたが、十分な流下が確認できなかったため、7月3日 0時58分に流下操作を停止しました。
 現在、通常の運転モードから白金族対策を考慮した低温保持運転モードへ移行しており、原因について調査中です。
 本事象については、「使用済燃料の再処理の事業に関する規則」第19条の16第2号にあたるとして国へ報告し、また同旨を青森県、六ヶ所村に対しA情報として通報しましたのでお知らせします。
 なお、本事象による施設内外への放射線等による影響はありません。

以上

■保安院
日本原燃(株)再処理施設高レベル廃液ガラス固化建屋ガラス溶融炉Aにおけるガラスの流下停止について
http://www.meti.go.jp/press/20080703006/20080703006.html

2.原子力安全・保安院の対応
 本事象は、再処理施設の故障があった場合で、当該故障に係る修理のため特別の措置が必要であり、再処理に支障を及ぼすと判断されたことから、法令に基づく報告があったもの。
 原子力安全・保安院としては、今後、事業者が行う原因究明及び再発防止策について、報告を受け、厳格に確認してまいりたい。
 なお、現地の原子力保安検査官により、放射性物質の閉じこめ機能は維持されていること、本事象に伴い、敷地境界周辺のモニタリングポスト等の指示値に異常がないことを確認している。

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2008年7月 3日 (木)

六ヶ所再処理工場ガラス固化溶融炉再開容認に抗議する

本日行われた核燃料サイクル安全小委員会で、六ヶ所再処理工場ガラス固化施設のガラス溶融炉の運転再開が、欠陥を抱えていることが明らかになったにもかかわらず容認されてしまいました。傍聴した市民らは、経済産業省別館前で抗議行動を行い、原子力安全・保安院に対し抗議文を提出しました。以下は、別館前でまいたビラです。

「080630まきビラ(PDFファイル)」をダウンロード

********************
原燃のガラス固化技術は完全破綻

保安院・核燃料サイクル安全小委員会は
ガラス固化溶融炉の運転再開を認めるな!

六ヶ所再処理工場本格稼動を諦めろ!

■原子力安全・保安院は、ガラス溶融炉運転再開に向けての動きを強引に推し進めています。月内の運転再開を強行するために、20、24、26日と立て続けに核燃料サイクル安全小委員会再処理WGを非公開で開催し、本日30日の小委員会にて、トラブル対策として原燃が出してきた6月11日付報告書を承認しようとしています。しかし、この報告書は、白金族元素の堆積等のトラブルに対し、何らの対策も打てないことを明らかにしただけです。重大な欠陥が明らかになったガラス溶融炉の運転再開を認めさせてはなりません。

トラブルの元凶である白金族元素の堆積を防ぐ対策なし!

■原燃は報告書で、白金族元素の堆積について、監視強化と回復運転による対処を言うだけで、堆積を防ぐことを放棄しています。攪拌を含む回復運転がうまくいかないことは、昨年の試験で既に確認済みです。対策には、運転継続を断念して止め、ガラスを全量抜き出すドレンアウトまで含まれています。最初からうまくいかないことが予定されているのです。

崩壊熱を全く考慮せず!濃縮器を設計段階から外していた!

■第4ステップにおいて、原燃は、温度管理にはじめから失敗し、白金族元素の堆積に加え、低粘性流体の発生という問題も生じています。模擬廃液を用いた化学試験の知見は、実廃液では役に立ちませんでした。また、報告書で原燃は、実廃液で生じる崩壊熱について全く考慮していなかったと信じ難い告白をしています。

■また、ガラス溶融炉に注ぐ廃液の濃度が低いという問題が生じ、そのことが運転の不安定性をもたらしていることが明らかになっています。濃度を上昇させるための濃縮器は、東海村の実験炉にはあったのに、六ヶ所再処理施設では、経済的な理由で設計の段階で外してしまっています。明らかに設計ミスです。

実廃液ではガラス固化できないという異常事態

■報告書では対策として、濃度調整のための調整液をつくって添加するとしています。再処理過程で生じる廃液にわざわざ別の廃液を混ぜないとガラス固化できないというのは、ガラス固化技術の破綻というべきです。

再開試験はボロが出る前に少ない本数で終了

■報告書では、今後の確認方法として、連続して10本のガラス固化体が製造できれば、「安定した運転状態の維持」が確認されるとし、それができた場合は洗浄運転を行い、その後6本程度製造できれば、「白金族元素の影響を考慮し、管理された運転状態の維持」が確認できるとしています。しかも、途中で白金族元素が堆積して不具合が発生した場合でも、回復運転を行い、その後6本程度製造する運転を行えば、それでよしとしています。極端な場合、はじめの1本で不具合が生じても、回復運転を行い、その後6本程度製造することができれば、試験はクリアされたことになります。

■しかし、第4ステップでは、16本目で初めて偏流が発生し、18本目で炉底攪拌を必要とする基準に達したと判断され、その後、攪拌と洗浄運転を行ったにもかかわらず、炉内環境の悪化が進んだことにより、39、40本目で再び偏流が発生しています。この結果を踏まえれば、報告書の確認方法は、トラブルが発生する前に試験を終わらせてしまおうと考えていると言わざるを得ません。

欠陥ガラス固化体が生み出されている

■原燃は、基準温度1100℃に達しない状態で作ったガラス固化体は欠陥品であることを認めています。報告書には、目標温度に達しない状態で作られたガラス固化体が30本中19本も存在することを示す表があり、6月11日の保安院交渉において、市民が説明を求めたのに対して、保安院は具体的な説明を拒否し、「保安院として確認したので心配ない」と官僚的態度に終始しました。保安院は、ガラス固化のトラブルが安定性の問題あり、安全性の問題ではないと言うのであれば、まず、ガラス固化体が欠陥品でないかどうかを確認する上で、最も肝心な指標であるガラス温度の管理状態について、納得のいく説明をすべきです。

■このまま試行錯誤で、ガラス固化試験を続ければ、多数の欠陥ガラス固化体が製造され、余分なガラス固化体も生み出され続けます。この炉の方式・構造のままでの打開策はありえないというのが、試験結果と今回の報告書から得られる結論です。ガラス固化製造能力がない以上、アクティブ試験は中止すべきであり、工場本格稼働も断念すべきです。

2008年6月30日 文責:福島老朽原発を考える会

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