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2009年3月29日 (日)

莫大な量の放射能が行方不明のまま、事故原因も不明なまま、ガラス溶融炉の再加熱を行うな!

六ヶ所再処理工場・高レベル廃液大量漏洩事故
莫大な量の放射能が行方不明のまま、事故原因も不明なまま、ガラス溶融炉の再加熱を行うな!
国は原燃への事業指定を取り消せ!

 青森県六ヶ所再処理工場における高レベル廃液大量漏洩事故発生から2ヵ月以上たったが、未だに約131リットル分の行方不明の放射能の所在も事故原因も全く分かっていない。しかし、日本原燃は、これらが全く分からないまま、事故の最終報告書の提出もなしに、固化セル内の部分的な洗浄作業が終了次第、天井耐火レンガが損壊したままのガラス溶融炉の再加熱を行うという方針を表明している。原子力安全・保安院も、原燃の言う通り、何らの申請・許可というプロセスを経ることなしに、「法律で定められている安全上必要な措置」が取られていると判断されれば、再加熱を認めるという方針を表明している。
 私たちは、現状況下において、以下の諸点を問題にしていかければならないと考えている。

■行方不明の放射性物質の所在が全く明らかにされていない
 原燃は、「固化セル換気系排気フィルタユニット表面の線量当量率の測定結果はバックグラウンドレベル・・・であり、主排気筒モニタに有意な変動はなかった。このことから、・・・滴下した高レベル廃液は全てセル内に留まり、蒸発したものは固化セル換気系で処理され、主排気筒から放出された放射性物質の有意な放出はなかったと判断される」(2月24日付の2回目の事故の改正報告書添付資料10)としている。保安院も、2月2日の原子力安全委員会で出した文書で、「本事象による周辺環境への影響はなかった」としている。Photo_8
 原燃は、約131リットルもの高レベル廃液が蒸発しながら、高レベル放射性物質が全てセル内に留まっていると判断している理由として、ヨウ素など揮発性の放射性物質についても、気体とならず、漏洩して落ちた場所に固体としてこびりついているとの見解を示している。
 しかし、原燃は、この見解を裏付ける基本的なデータを公表していない。漏洩事故を起こした貯槽(供給槽A)内の放射性物質で種類と濃度が明らかにされているのは、セシウムなど3種のみである。漏洩した放射性物質の総量、漏洩した放射性物質の全ての種類とその量を未だに公表していない。固化セル換気設備の全てのフィルタの捕集性能、主排気筒各種モニタの性能などを公表していない。
 原燃は、セル内の一部の場所にこびりついているとする高レベル放射性物質が、行方不明量と一致するかどうか調査し、公表すべきである。一致しないのであれば、セル内の他の場所もくまなく調査すべきである。それでも一致しないのであれば、外部に放出された疑いが濃厚ということであり、放出の実態を調査すべきである。外部への放出はなかったという見解は、行方不明分の全ての所在を明らかにして初めて口にすることができる。全ての所在を明らかにすることなしに青森の方々を納得させることはできない。 Right090328_8
 しかし、原燃は、調査もせずにいきなり高圧洗浄作業を行っている。調査しない理由としては、セル内は元々放射能のレベルが高いので、放射能測定では検出できないということをあげている。だから洗浄して回収するしかないと。しかし、高圧洗浄の目的は、2月24日付の2つの改正報告書に「セル内機器の放射能レベルの低減等」とあり、行方不明分の所在の調査のためではない。原燃は、高圧洗浄という強引に洗い流すというやり方ではなく、丹念に採取し分析するなど、まともな手段を取るべきである。時間と手間がかかる手段をとらず、高レベル廃液で汚染された固化セル内の機器を一刻も早く掃除して、次の工程に進みたい一心なのだろう。原燃は、洗浄して回収した放射性物質の種類と量を最終報告書で公表する予定だとしているが、供給槽A内の既に濃度が公表されている3種以外のものの種類・量も公表するかどうかは分からないとしている。
 保安院は、排気筒モニタさえ確認していれば、途中のフィルタ等で捕集された放射性物質の測定を行う必要はないという見解を示している。それ故、行方不明分の調査に対する原燃への指導はなく、ただ静観するだけという態度を取っている。
 原燃と保安院は、行方不明の放射性物質の所在を明らかにせぬまま、事故を幕引きする方向へと進んでいっている。

■事故原因をでっちあげで確定しようとしている
 2月24日付の1回目の事故の改正報告書(以下、2・24第1事故改正報告書)では、事故の原因は全く明らかになっておらず、供給槽Aのエアリフトのパージ空気流量(図1)が流量設定弁への「人等の接触により変動する可能性がある」としているだけである。しかも、パージ空気流量が約65リットル/hに増加した日は、これまでの記録がなく、点検も行われておらず、全く不明なままである。そうであるにもかかわらず、マスコミを通じて、「可能性が高い」(2月25日東奥日報等)とか、「それにより設定数値が変わったことが判明した。人為的なミスが原因と断定」(2月25日読売)というように確定したかのように触れ回っている。原燃は、最終報告書でも、「人等の接触」をこのまま原因として確定しようとしている。でっちあげでしかない。
 また別の貯槽についても、1月24日にパージ空気流量が3倍増加していたことに気付いた、という事実が2・24第1事故改正報告書により初めて公表された。これについても、いつ増加したのかさえ分からないにもかかわらず、供給槽Aと同じ原因をでっちあげている。原燃は、この貯槽については、液量が変化した日を公開することも拒否している。
 保安院は、事故原因をきちんと究明させるのかという問いに対して、原因がはっきりしなくても必要な措置が取られていればよいという見解を示している。改正報告書に書かれている事故原因に対する見解表明についても、現在改正報告書を精査中であるとの理由で拒否している。

■保安院は、改正した法令に基づけば、今回の事故が法令報告対象に該当することを認めているにもかかわらず、法令報告対象に格上げしようとしない
 今回の事故は、高レベル廃液の約149リットルもの大量漏洩であり、しかも明らかにされているだけで約300兆ベクレルもの放射能が行方不明なのであるから、「使用済燃料の再処理の事業に関する規則」(以下「規則」)第19条の16の3「再処理施設の故障により、使用済燃料等を限定された区域に閉じ込める機能、外部放射線による放射線障害を防止するための放射線のしやへい機能若しくは再処理施設における火災若しくは爆発の防止の機能を喪失し、又は喪失するおそれがあつたことにより、再処理に支障を及ぼしたとき。」に該当する法令報告対象の事故とされて当然である。第19条の16に該当する場合は、原子炉等規制法第62条の3の規定により、事故の状況及びそれに対する処置を経産大臣に報告することを義務づけられる。しかし、保安院は、今回の事故がこれまでの「規則」では法令報告対象とならないとの認識から、対象とならないことを問題であるとし、3月9日、セル内であっても高レベル廃液が漏洩した場合は対象となるように「規則」の「第19条の16の運用について(内規)」を改正した。それでも、今回の事故に対しては改正された「規則」を適用せず、原子力防災課ではなく、法令報告に該当しないものとして核燃料サイクル規制課で取り扱うという方針を示した。今回の事故に対する原燃からの報告書は、法令に基づいてではなく、口頭での指示により提出を求めたものであるから、事故の最終報告書の受領とは関係なしに、「法律に基づく安全上必要な措置」が取られていると判断されさえすれば、原燃は次の工程、すなわちガラス溶融炉の再加熱に移行することができるとの見解を示した。しかし、保安院は、今回の事故に対して「そもそも配管から高レベル廃液が漏れないように(工場は)設計されている。重大なトラブルとして扱う必要がある」(2月3日東奥日報)という見解を示しており、その見解に基づいて、「規則」を改正した。自らの見解に忠実であるならば、今回の事故を法令報告対象に格上げすべきであり、少なくとも、それと同等の措置を取るべきである。最終報告書を法令報告と同等のレベルに位置付け、これを受領するまで、ガラス溶融炉の再加熱を許可しないという対応を取るべきである。

■まともな原因究明を行った上で、まともな再発防止策を策定、実施しなくても、「法律で定められている安全上必要な措置」が取られていると判断しようとしている
 保安院は、最終報告書の提出なしに、そして、何らの申請・許可の手続きなしに、「法律で定められている安全上必要な措置」が取られていると判断されれば、ガラス溶融炉の再加熱を許すという方針である。しかし、事故に対するまともな原因究明とそれに基づく再発防止策の実施なしに、彼らの言う「安全上必要な措置」が取られたと判断することはできない。
 原燃は、2・24第1事故改正報告書で、事故原因をでっちあげた上で、1回目の事故への「対策」を示した。しかし、原因が分からないのに出した「対策」に意味はなく、そのような「対策」によっては、当然安全は確保されない。
そのいい加減に出した「対策」すら、まともに実施していないにもかかわらず、また、対策がまだ策定されていない事項があるにもかかわらず、原燃と保安院は、「安全上必要な措置」が取られているとの判断を下そうとしている。
 原燃は、2・24第1事故改正報告書では、1月30日付の1回目の事故の報告書(以下1・30第1事故報告書)での「再発防止対策」を、「当該設備に対する対策」と「水平展開」という形で分け、「水平展開」で出した「対策」の実施は、ガラス溶融炉再加熱と最終報告書提出の前提条件とはしないとの見解を示した。しかし、それらの多くは、供給槽A以外の重要な槽(高レベル濃縮廃液、不溶解残渣廃液、プルトニウム濃縮液を内包する貯槽等)の液量変化監視ルールと漏洩液受皿の液位上昇が発生した際の対応方法を手順化、ルール化するという、ガラス固化設備に直接関係する「対策」である。
 2・24第1事故改正報告書では、「当該設備に対する対策」として4点挙げ、その他1点について対策が未だ策定されていないとしている。4点のうちの1点、「エアリフトのパージ空気流量の変動防止」については、パージ空気流量が「計画的に定格流量以上流れにくい構造に変更する」ことを「対策」としてあげている。しかし、原燃は、この「対策」の実施も、ガラス溶融炉再加熱と最終報告書提出の前提条件にはしないとの見解を示した。次工程への移行を急ぎたいが為に、構造的変更を伴う手間のかかる「対策」の実施を、次工程への移行の前提条件から外したのである。「水平展開」の「対策」の実施のみならず、「当該設備に対する対策」さえまともに実施せずに、溶融炉再加熱に移行し、事故の幕引きを行おうとしている。
 1回目の事故において1月15日に漏洩を加速させた原因とされている事象への対策、2月1日の2回目の事故の対策はまだ全く出されていない。これらについては組織要因の分析とあわせて報告書を取りまとめるとしている。原燃と保安院は、組織要因についての報告書の提出は、ガラス溶融炉再加熱の前提条件にはしないとの方針であり、従って、これらの対策の策定も前提条件から外しているということである。

■遂に高レベル廃液漏洩事故まで起こした原燃の組織的欠陥。国は直ちに事業指定を取り消すべきである。
 保安院は、1・30第1事故報告書に不足があるとして、組織要因についての追加報告書の提出を要求した。原燃は、2・24第1事故改正報告書では、1・30第1事故報告書にあった組織要因について言及した部分を全て削除し、別途報告するとした。原燃広報は、組織要因についての報告は、3月中に提出する予定の事故の最終報告書におり込むと言っている。
 今回の事故は、異常事態にまともに対処できない、そればかりでなく、日常的な基本的な管理が全くできないという原燃の普遍的な組織的欠陥をまざまざと示した。極めて厳重な管理が要求される高レベル廃液を扱っているという基本姿勢すら完全に欠落しており、杜撰極まりない管理しかなされていなかった。高レベル廃液供給槽の液位を変動監視するシステムがありながら、変動監視を行っていなかった。高レベル廃液が漏洩後すぐに蒸発するということが分かっていながら、漏洩液受皿などの警報が頻発しても、高レベル廃液の漏洩を疑わず、シール水が流入したとか、計器のトラブルだと思いこみ、数回目視で受皿を監視しただけで、6日後にしか受皿内の液体を分析しなかった。廃液供給配管には廃液が流れ込んでこないものと思い込み、一度使うと密閉性が保てなくなる金属製ガスケットを再使用して配管を閉止していた。漏洩が疑われる十分なデータや警告がありながら、都合のよい解釈しか行わなかった。
 大量漏洩を起こした1回目の事故後も、組織的欠陥は全く改められることなく、それが2回目の事故を招いた。1回目の事故の後も、廃液供給配管内には「通常の液体状廃液」しか存在しないと思いこみ、配管のフタのボルトを緩めただけで、内部を確認せずに、配管内の廃液の回収作業を行ったため、固体状になっていた廃液の残留に気付かなかった。そのような状態で、またしても漏洩は起こらないと思いこみ、再使用品の金属製ガスケットで配管を閉止したため、2回目の事故を起こした。
 原燃の組織的欠陥は、2002年2月の使用済燃料プール水漏洩事故時に大問題となり、「総点検」が行われたが、2004年3月に保安院は、組織的欠陥は克服されたものとして、原燃が提出した「品質保証体制点検結果報告書」を了承した。しかし、その後も、組織的欠陥に起因する事故が頻発し、遂には、高レベル廃液の漏洩事故を起こすまでに至った。今回の事故は、原燃の組織的欠陥が実際には克服できていなかったということを如実に示した。保安院の極めていい加減な形での了承が今回の事故を招いたのである。
 原燃と保安院が、組織要因についての報告書の提出とは関係なく次工程に移行するという方針を出していることは、原燃の全く変わらないスケジュール優先の組織体質、保安院の自らの責任に対する自覚の完全なる欠如を明確に示している。今回の事故によって、固化セル内にとどまらない原燃の全体にわたる組織的欠陥が改めて明白な形で示されたにもかかわらず、組織要因についての報告書を、特別報告として出さずに、今回の事故の最終報告書の一部におり込むとしていることも、組織的欠陥に対する認識が如何に軽薄なものかを示している。
 今回の事故を受けて、「根本原因まで深堀した分析と再発防止策の検討」、「品質保証体制の再構築と組織風土の改革」を行うなどとしているが、過去に問題とされながら、何らまともに対処してこなかった事を、過去の問題を棚に上げて、繰り返し言っているだけである。原燃には再処理工場を動かす資格はない。保安院は、自らの誤りを認め、原燃には組織的欠陥を改める余地はないとの判断を下し、原燃への事業指定を取り消すべきである。

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